人を育てる

2019.12.03

メンター制度のメリット・デメリット|目的とリスクを押さえて社員育成を成功させよう!

2012年度に、厚生労働省より発表された『メンター制度導入・ ロールモデル普及マニュアル』をきっかけに、注目度が急速に高まった「メンター制度」メンター制度とは、新入社員・若手社員に対して「業務上の上司ではない」「他部署の」「年齢の近い」先輩社員が相談に乗り、メンタル(精神的)サポートを行う制度を指します。

現在、メンター制度を取り入れていない企業の人事部ご担当者のなかには、メンター制度の導入を検討されているケースは珍しくありません。そこで、今回はメンター制度導入におけるメリット・デメリットについてご説明いたします。

メンター制度とは

先述したように、「メンター制度」とは先輩社員(目安として入社3~5年)が後輩社員の話を聞き、精神的なサポートを行う制度です。相談に乗るサポーター役の他部署の先輩社員を「メンター(mentor)」(助言者・指導者、という意味)と呼び、相談する後輩社員を「メンティー(mentee)」(被育成者、という意味)と呼びます。

同じような社内でのサポート制度として、「エルダー制度(ブラザー・シスター制度)」「OJT」「コーチング」「ティーチング」がありますが、これらは全て、サポート内容や目的に関して異なる特徴を持っているため注意が必要です。

以下に、それぞれの制度に関する簡単な特徴と、メンター制度との相違点を挙げます。

【エルダー制度(ブラザー・シスター制度)】

「同部署内」の「年齢の近い」先輩社員が「新入社員」に対して、主に「(実務指導を含む)キャリア面」でのサポートを行います。そのため、エルダー制度では指導者側にメンタルサポートの役目は課されていません。また、対象者は実務に慣れていない新入社員に限られます。

しかし、メンター制度では「(業務評価に関わらない)他部署内」の先輩社員が「新入社員や若手社員」に対して、主に「メンタル面」でのサポートを行い、業務に関する実務指導は一切行いません。

【OJT】

「同部署内」の先輩社員や直属の上司が、「新入社員や若手社員」に対して、「実践的な実務指導」を行います。エルダー制度以上に「実務」という限定された指導範囲となり、指導者の年齢や役職も問われないため、かなり年齢や立場が上の上司、というケースも考えられます。

メンター制度では、年齢の近い別部署の先輩社員が後輩社員のメンタル面に特化してサポートを行う点が異なるのです。

【コーチング】

指導者(コーチ)が、対象者の「具体的な目標の達成」を叶えるために、対象者がゴールに向かう過程で解決すべき課題や選択肢を提示し、対象者の自発的行動を後押しする対話手法です。

メンター制度では、メンティーは具体的な目標を掲げる必要はなく、メンタル面での問題をメンターに相談することで、精神的成長を遂げることが期待されているのです。

【ティーチング】

指導者(ティーチャー、先生・講師)が、対象者(生徒)が抱える課題に対する答えを、「理由や手段」を含めて論理的に教えることで理解させ、成長させる手法です。

メンター制度では、メンターは具体的な答えを提示するのではなく、メンティー自身がメンタル面の問題や懸念事項をメンターに相談し助言をもらいつつ、自らの力で解決していくことを目指しています。

メンター制度の目的とメリット・デメリット

昨今、「新入社員・若手社員の早期離職率の増加」が社会問題となっています。そこで、解決方法として注目されているのがメンター制度です。

というのも、若年層の早期離職理由に、「社内で相談できる人がいないため、精神的に孤立する」「多忙な環境下のため、一人で悩みを抱えてしまう」という点が挙げられることから、メンタル面でのサポートが離職を防ぐ手段として有効であると見なされているためです。

さらに、厚生労働省によりメンター制度の導入が積極的に勧められる背景として、女性社員のキャリア形成の促進を図る目的も外せません。今後のキャリア形成に迷う女性若手社員の相談に、キャリア面で少し先を行くロールモデルの女性先輩社員がアドバイスをすることで、女性社員がキャリア形成への一歩を踏み出しやすくなると期待されているのです。

では、以下にメンター制度を導入する上での考えうるメリット・デメリットをご紹介します。

【メンター制度導入によるメリット・デメリット概略】

対象メリットデメリット
会社・メンタリングチェーンにより、会社の人間関係が強化される
・メンタル面での問題による新入社員・若手社員の離職率が低下する
女性社員のキャリア形成が促進され、女性管理職候補者を育成できる
・メンターとメンティーの関係がうまく行かない場合、離職を促進させる
・メンターの業務効率が悪くなる
・メンティー直属の上司の理解が得られない場合、社内で軋轢が起きる
メンター・メンティーの指導を通して、メンター自身の成長が見込める・時間を取られるため、業務負担が重くなる
・メンティーとの関係がうまく行かない場合、精神的ストレスが掛かる
メンター自身の業務評価にはつながりにくい
メンティー・職場や仕事に関する精神的不安を解消しやすくなる
・社内に評価を気にせずに相談できる先輩がいるため、安心して仕事ができる
・年齢の近い先輩社員に接することで、自分のキャリアのイメージがわく
・メンターとの関係がうまく行かない場合精神的ストレスが掛かる

【会社にとってのメリット】 

・メンターとメンティーの関係が他部署間でも受け継がれ、会社の人間関係が強化される(※)。
・メンターの支援によってメンタル面での問題による新入社員・若手社員の離職率が低下する。
・メンターにとって女性社員のキャリア形成が促進され、女性管理職候補者を育成できる。

※メンティーであった新入社員が、将来メンターとなって次の新入社員を教える流れを「メンタリングチェーン」と呼びます。そのつながりを活かすことで、さらに社全体での人間関係が強化され、社内コミュニケーションが活性化していくとされています。

【会社にとってのデメリット】

・メンターとメンティーの関係がうまく行かない場合、離職を促進させるリスクがある。
・メンターに業務負荷や精神的ストレスが掛かることで、業務効率が悪くなるリスクがある。
・メンティー直属の上司の理解が得られない場合、社内で軋轢が起きるリスクがある。

【メンターにとってのメリット】

・メンティーの存在によって、メンター自身の成長が見込める(※)。

※メンティーの育成に関わることで、メンター側も「自発的な業務意欲の強化」「キャリア形成へのモチベーションアップ」「マネジメント能力の向上」など、仕事の能力をアップさせる機会を得ることができます。

【メンターにとってのデメリット】

・メンティーのケアにより時間が取られるため、メンターの業務負荷が重くなる。
・メンティーとの関係がうまく行かない場合、メンターに精神的ストレスが掛かる。
メンター自身の業務評価にはつながりにくい。

【メンティーにとってのメリット】

・メンティーが職場や仕事に関する精神的不安を解消しやすくなる。
・メンティーが社内に評価を気にせずに相談できる先輩がいるため、安心して仕事ができる。
・メンティー自身が年齢の近い先輩社員に接することで、自分のキャリアのイメージがわく。

【メンティーにとってのデメリット】

・メンターとの関係がうまく行かない場合、精神的ストレスが掛かる。

メンター制度導入で社内をより活性化させよう!

新入社員・若手社員の離職率の高さにお悩みの場合、メンター制度の導入は検討に値する施策と言えます。しかし、メンター制度によって離職率が加速する可能性も否めません。そのため、まずは導入前にメンター制度導入の目的とメリットを全社員に説明し、理解を得る必要があります。

また、入社年数から無作為にメンターを決めるのではなく、メンターとしての資質とメンティーとの相性を重視し、可能な限り適切と思われるメンターを選定するようにしましょう。メンター候補の社員には、メンター養成講座や研修・セミナーを受講する機会を与えることも視野に入れ、ぜひメンター制度導入のご検討をおすすめします。

この記事を書いた人この記事を書いた人

ワークハピネス

株式会社ワークハピネス

「世界中の組織をワークハピネスあふれるチームに変える」をミッションに、人材開発、組織開発、事業創造支援を主に行うコンサルティングファーム。人の意識を変え、行動を変え、組織を変えることに強みを持つ。

INDEX