導入事例

組織開発

経営幹部の意識改革から風土改革を実現する

雲南農業協同組合(JA雲南)

最初、現場のヒアリングでわかった課題が、組織全体に蔓延していた「何を言っても上は聞かない、何も変わらない」というあきらめでした。ヒアリング結果をレポートにしてまとめ、経営幹部に共有しました。
まずは経営幹部は最初にお互いに意見をぶつけ合う関係を作ることから始め、結果として経営幹部や現場のキーマンを中心に組織横断的な視点で議論される場が作られ、風土変革が進んでいきました。

課題
  • 何をしても評価は変わらないという「事なかれ主義」
  • 問題を先送りにしてしまう風土
  • 見出しづらくなってきたJAの存在意義
実施策
  • 100名以上の現場ヒアリングを実施しレポート化、経営幹部に共有
  • 経営幹部でのワークショップで「存在意義」や「組織体制」などを議論
  • 現場のキーマンを探し出し、ボトムアップ型の組織へ
効果
  • 組織に愛着を持ち、想いを持って行動し、挑戦する風土が生まれた
  • 1年目女性職員の一言から始まった「ふれあい祭り」の大成功
  • 組織変革の定着・ルール化を促進するために、いくつかの会議体や情報共有の仕組みが立ち上がった

現場の一人ひとりが、主体的に組織の将来を作っていくという、ボトムアップ型組織への転換を実現した

将来への希望が見いだせない状況

JA雲南は島根県の東部に位置し、1市2町を管轄する中山間地に囲まれた農業協同組合である。
八岐大蛇(やまたのおろち)伝説の神話の地でもあり、豊かな水源に恵まれた良質米と奥出雲和牛の産地として高い評価を得ている。農協の事業は、農業の指導から、金融、介護まで、幅広く、地域に密着し、地域に貢献するという役割を担っている。

しかし近年、人口減少・農家の高齢化・食文化の変化・民間企業の農業参入などで組織は年々縮小し、提供サービスの範囲が変わらない中で、職員数は全盛期の半数近くにまで減少していた。
また、不祥事の発生による行政から業務改善命令を受けるなど職員は疲弊し、将来に対しての希望が見出せない状況であった。

こうした課題感から、弊社(WorkHappiness)に、『職員が愛着と希望を持てる組織にしたい』と、風土変革プロジェクトの声がかかった。

希望を持てない真の原因は?

弊社が依頼を受けて、最初に実行したのは、現場のヒアリングである。役員・部長はもちろん、現場の様々なメンバーにまで、1年間で合計100名以上ものヒアリングをして回った。そこで見えてきたのは、組織全体に蔓延した「何を言っても上は聞かない、何も変わらない」という“諦め”だった

たとえ、現場が何か新しいことをしようと思ったとしても、「前例がないから」「予算がないから」「他部署の話だから」と、上司から一蹴されてしまうのである。次第に、現場からの意見も出なくなり、何をしても評価は変わらないという「事なかれ主義」が蔓延していたのである。
この背景には、過去20年間の良き時代に築いた実績に甘え、その時代に合わせた新しい工夫に取り組むことを疎かにしてきたという歴史がある。「誰かが何とかしてくれるだろう」と問題を先送りにする悪しき風土が出来上がっていたのだ。

さらに、JA雲南の存在意義が揺らいでいるという課題も浮き彫りになった。
本来の農協は、農家に対して、ゆりかごから墓場まで、様々な支援を行い、貢献するために存在している。農家が困っていれば、刈り取りの手伝いまで行い、地域の信頼を獲得していくことが大前提である。
しかし全国の農協の傾向としては、利益の大きい「金融業」が高く評価され、一方で農家との接点を持つための施設や職員の数は減っているという事情がある。こうなると職員たちも、農家のために仕事をしているという実感が持てず、自分たちの存在意義とは何なのか?が曖昧になり、将来に希望を持てなくなっていたのだ。

経営幹部の意識改革からスタート

上記ヒアリングの結果をレポートにまとめ、経営幹部(役員・部長・支店長)に共有した。経営幹部にとっては大変頭の痛い内容だったが、自分たちが現場にヒアリングしたとしても、生の声を聞くことはできないため、素直に受け止めるしかなかった。

経営幹部の意識改革は、まず最初に、役員・部長・支店長が、お互いに意見をぶつけ合えるような関係を作ることから始めた。同じ組織とはいえ、長年のセクショナリズムから、お互いがどのような仕事をしているのか分からず、相互に信頼しあっている状態とはいえなかった。弊社のコンサルタントがファシリテーターをつとめ、何度も何度もワークショップを行った結果、徐々にお互いが思ったことを言い、また聞けるような関係ができていった。さらに、JA雲南の存在意義は何なのか?ということを突き詰め、自分たちがこの地域で果すべきこと、それを実現するための組織体制をどう作っていくかを、複数回に分けて何度も議論を重ねていった。

この結果、経営幹部の間では、JA雲南は地域活性化のリーダー的役割になるべきだという共通認識が生まれ、これをいかに組織内に浸透・定着させていくかというフェーズに移っていった。

経営幹部がワークショップで明らかにしたこと

■JA雲南の存在意義、大切にすべき価値観
■最適な人員配置(適切な役職権限と人数配置)
■重点的な投資の方向性(ヒト・モノ・カネの使い方)
■専門的な能力開発(知識や経験を計画的に)
■組織機能の最適化(組織図の見直し)
■理想的な行動・思考習慣(日常で体現される姿)
■人や組織を動かす仕組み(人事・会計・会議・教育等)

現場のキーマンを通じた意識改革

まずは現場のキーマンを探すことから始めた。役員・部長へのヒアリングから、現場で影響力を持つ担当者を聞き出し、さらにその担当者にも同じことを聞き、紹介によって複数のキーマンを探し出した。キーマンには、弊社からヒアリングという体で時間をいただきつつも、実は、現場の一人ひとりが、主体的に組織の将来を作っていくべきだというボトムアップの考え方を浸透させることを目的としていた。

経営幹部から直接考えを伝えるというアプローチも当然行っていたが、それだけではなかなかスムーズに浸透しないため、こうした地道な活動も必要になるのだ。キーマンは現場において大きな影響力を持つうえ、理解力も高いことが多く、新しい考え方を現場に広めてくれる役割を担った。

組織改革の「定着」のための会議体

組織変革の定着・ルール化を促進するために、いくつかの会議体や情報共有の仕組みが立ち上げた。弊社が他社事例などを元にいくつか提案した中で、JA雲南の組織にあうものが採用されていった。

例えば本店では、組織改革を推進する委員会が立ち上がり、組織横断的な視点で議論される場が作られた

今までは、現場が何かを提案しても、「前例がないから」という理由で、上司に一蹴されてしまう風土が蔓延していた。そこでこの委員会は、委員長に常務を就け、決定事項を管理職が集まる会議で定期報告する役割を担うことで、企画の実行力を高めた。また、全職員に対して、経営メッセージや組織内外の活動などを現場目線の内容で月1回の壁新聞を発行し、タイムリーに情報を共有する仕組みも整えた。

一方、支店では、各支店長が中心となって「自分たちが働きやすい環境を自分たちが作る」と自主的にワークショップを開催した。その結果、誰でも自由に意見を言える場ができ、現場の声をどんどん吸い上げられるようになった。
例えば、お客様の意見を聞いて、必要だと感じたキッズスペース設置、レイアウト変更、業務プロセス整備など、今までなら「事なかれ主義」で放置していた課題を次々に改善していった。
更に、部門横断的に組織を活性化したいと願う「女子会」や、JA雲南の将来を考える「若手会」なども次々と立ち上がった

風土改革のノロシとなった「ふれあい祭り」の大成功

変革の火種は徐々に形になって現れてきた。最初の変化は、「ふれあい祭り」の大成功だった。「ふれあい祭り」とは、 JA雲南合併20周年を記念し、地域との関係性をより良いものとするためのお祭りの企画である。この企画は、若手女性職員の一言からスタートした。

従来の組織風土であれば、「前例がなく」「予算もなく」「時間もない」という状況から、「ふれあい祭り」を企画しようという声は絶対に上がらなかっただろう。もし上がったとしても、一瞬にして、上司に否定され、企画が立ち消えてしまっていただろう。しかしこの女性職員は違った。入社1年目で組織を動かすハードルを知らなかったというのもあるが、地域活性化のリーダー的役割になるべきだという組織のミッションと照らし合わせ、純粋に「なぜやらないのだろう?」という想いが彼女をつき動かしたのだ。

お祭りは結果として、地域の皆様にも多数参加いただき、大成功のイベントとなったわけだが、それ以上に、組織が変わったという実感を持つ上で、大きなきっかけとなった。彼女の一言から始まり、その企画を支援するキーマンと会議体が後押しし、意識改革を行った経営幹部が理解を示し、これらの条件が全て一致したことで、前例のない「ふれあい祭り」が実現したのだ。

「ふれあい祭り」を発案し副実行委員長に任命された女性職員のコメント

地域への感謝、職員同士の交流、たくさんの想いが込められた企画でしたが、資金・人・時間など様々な壁が立ち塞がっていました。
何をしていいのか分からず焦っていたところ「今できることをやればいいんじゃないか」こんな励ましの言葉をいただき気持ちが楽になりました。「悩むより考えて動く、前進しなければ何も変化は起こらない」ということを得たことは収穫でした。

本番当日、予想をはるかに越える約1,500名の方が来場し、笑顔に溢れているのを見て、涙が出そうになりました。農協離れという言葉を聞くこともありましたが、地域の皆さんからパワーをもらったのは、私たちJA雲南ではないでしょうか。この成功体験が私たち職員の勇気・自信となったのは間違いないと思います。そして私たちをサポートしてくれた方がたくさんいたことにも感謝しています。「想いを持って行動し、挑戦し、気付く」この祭りを通して私なりの「組織風土変革」がひとつ見つかったような気がします

風土変革と経営改革は車の両輪である

「どんなに風土が良くなっても経営が安定しないと元に戻ってしまう」と組織改革推進委員長のメッセージである。当初は風土変革にスポットを当てていたが、この頃より経営改革にも同時に取り組んだ。

JA雲南の抱える課題は地域住民や行政も同じ。それぞれが別々に動くのではなく、連携していく必要がある。今後は、地域活性化のリーダー的な存在や役割を担うべく、限りある経営資源の最大活用や環境に合わせてサービス形態を再定義していきたいと思う。

経営改革で取り組んだ事項

■やるべき事業、やめるべき事業を整理して実行
■組織機構の見直し
■今後の事業の柱となるものを作り上げる
■人事異動や評価の仕組み
■決算数値を把握できる財務システム
■ナレッジ共有の仕組み
■意思決定プロセスの整備

クライアントの声

内部統制管理室 室長 
嘉本 智美 様

JA雲南は、度重なる不祥事で常務が辞任、2度目の業務改善命令を受けるなど職員が組織に愛着と将来の希望を失い、ネガティブスパイラルに陥っていた。業務改善計画推進の役割を担うこととなった私は、業務改善計画の重要な柱の一つとして「組織風土改革」を掲げた。そして自分たちの力では改革はできないと判断し、私が絶大な信頼を寄せている方の紹介でWorkHappinessにたどりついた。平成24年11月。山陰独特のどんよりとした重力が強いような曇り空。時折、冷たい雨が降っていた。その日の午後からは「WorkHappiness」とのキックオフ大会。この外部コンサルが受け入れられるか不安であったが、疑心暗鬼な気持ちとは裏腹にその会議の内容と話しぶりは、決意と覚悟を持ったアグレッシブなものであった。果たしてこれまでの20年でJA雲南は何を得て、その代償に何を失ったのだろうかと考えさせるものだった。

その夜、いくつかの顔が脳裏を過ぎった。親しくしていた何人かの先輩や同僚、部下が志半ばで逝ってしまった。痛恨の極みだった。彼らはもっともっとここで働きたかったはずだ。私も彼らと一緒に仕事がしたかった。彼らが今のJA雲南を見たらどう思うのだろうか?これが最後のチャンスだと思った。

まるで私たちの一つ一つの魂の全歴史が刻まれている「アカシック・レコード」に導かれるがごとく巡り合ったWorkHappiness。
その取り組みの中で組織風土改革にあらためて必要と感じたものは、情熱・熱意・正義・信頼・あきらめない力、そして愛。
それは、古代からかわらない人間としての本質を形成するものだった。いにしえから地球の暗闇をやさしく、静かに照らし続けた月の光のように、歴史が伝達する、大切な不変のものだった。

今、まだこの取り組みは途中にあり、道は険しく長い。しかし、この文章を書きながら、あのキックオフ大会の時に感じた「これを逃したら未来永劫、組織風土改革など出来ない」という気持ちを再度思い起こしている。

  • クライアント雲南農業協同組合(JA雲南)様
  • 事業内容営農指導事業、購買事業、信用事業、共済事業、生活関連事業 等
  • 業種農業協同組合
  • 会社規模 301 ~ 1000 名

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