ダイバーシティ

2019.08.13

徹底的なダイバーシティ経営 株式会社ランクアップ 代表取締役 岩崎裕美子さん

今回のリーダーズインタビューは、株式会社ランクアップ代表取締役 岩崎裕美子さんです。45名の社員がほぼ女性で売上75億円。『ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社』を実現している岩崎さんの徹底的なダイバーシティ経営とその経営に至った背景、想いを熱く語っていただきました。


株式会社ランクアップ 代表取締役 岩崎 裕美子さん

1968年2月8日北海道生まれ。1988年に藤女子短期大学卒業後、JTBに入社。
その後、15年間広告代理店に勤務し、新規開拓営業として多くの通信販売の化粧品会社を担当。1999年から取締役営業本部長として活躍。
しかし、長時間労働のワークスタイルで止まらない社員の離職に悩む。その経験から長時間労働のない経営を目指し、株式会社ランクアップ設立。オリジナルブランド「マナラ化粧品」は、ヒット製品である「ホットクレンジングゲル」をはじめ、多くの女性から支持され、現在、75億円を売り上げる。2013年には通信販売業界では初の東京ワークライフバランス認定企業の育児・介護休業制度充実部門に選ばれる。著書に『ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社』(クロスメディア・パブリッシング)


岩崎
先日のサラリーマン川柳コンクールの第1位、2位ご覧になりました?

「退職金 もらった瞬間 妻ドローン」
「じいちゃんが建てても孫はばあちゃんち」

現状がとてもよく表現されていると思いました。
男性は家庭において子育てで”戦力外”。それゆえ、子育て中の働く女性は企業において“戦力外”になってしまう。少し極端な言い方ですけれど、多くの企業は正直なところ、長時間労働できない人材はいらないというのが現状なのではないでしょうか?

子どもの送り迎えをするためには時短を取らなければならない。
子どもが病気になり1週間出社できなくなる。
このような状況の子供を抱えた女性社員はいらない人材になってしまうわけです。いくら優秀な社員だとしても、です。

”長時間労働“という制約によって本当に多くの優秀な女性社員たちの能力が活かされていない・・。私はこの状況を本気で変えていきたいんです。

岩崎さんの“情熱”ビシビシ伝わってきます。その情熱はどこから来るのですか?

岩崎
私が出産を体験したからですね。

私は仕事が大好きです。前職の会社では昔は寝る間も惜しんでまで仕事、仕事、仕事(笑)。毎日終電の日々でした・・。
でも出産して働き方ががらっと変わりました。変わらざるをえないのです。
『自分の時間が一切ない』という状況に陥りますから、仕事がしたくても”時間をかけて“仕事することがまったくできないんです。

以前の私は「仕事は時間をかけるもの」そう思い込んでいたのですが、「時間をかけなくてもできる仕事の仕方があるのだ」と私が出産を経験して、初めて気づくことができたのです。

仕事が好きで仕事が命で、キャリアを積んできて、さてこれからだ!!というときに出産を迎える・・。その結末は?

「出産したらお払い箱、2軍落ち」
キャリア形成の大切な時期に戦力外通告。”誰でもできる仕事”に追いやられる。
仕事が大好きだから、長時間働いて結果を出してきたけれど、いざ自分が長時間働けない人になってしまったら、もう活躍できる仕事には就けない。

「出産したら仕事における自分の人生がおわる・・・。」?
大げさかもしれないですけど、キャリアを積んできた女性にとっては、長時間労働できなくなることは退職を意味するのです。
ただ、私は出産したとしても、絶対に一生仕事で活躍したい!と本気で思っていたので、「育児と仕事の両立」を、どうしたら乗り越えられるのか?本気で考えたのです。そして、自分自身が悩んで実行したことが長時間労働の撲滅でした。
「長時間労働さえなくなれば出産しても女性は活躍できるはず」
私はこれを世の中に証明したい!と思っているのです。

長時間労働が女性活躍推進における最も大きな弊害であることは、多くの企業経営者は頭では理解されていると思いますが、なかなか実行するのは難しいのが現状のようです・・。

岩崎
その気持ち、とってもよくわかります。実は私もこの化粧品会社を始める前は、ブラック企業の取締役でしたから。残業できない社員はいらないと本気で思っていました。だから寝ないで仕事して、売上をどんどん上げていたんです。しかし業績と引き換えに社員は疲れ果てて次々と退職していきました。

退職したら採用すればいいと、毎月のように採用を繰り返しましたが、せっかく社員を育てても次々に退職するというこの現実に、管理職も疲れ果て、ある時管理職も全員退職してしまったのです。とてもショックでした。

そして、私はこの時にいかに”人”が大切であるか初めて知ったのです。結局、会社は私だけではやっていけないのです。人が残らない会社では、企業の継続的な成長はできません。
私はこの苦い経験から残業しない会社を目指し、株式会社ランクアップを作りました。
その結果、ほとんどの社員が残業しないのに10年間売上は右肩上がりで成長するという生産性の高い会社となりました。

半分くらいの社員が働くママなのですが、ママであろうとなかろうと弊社の社員はみんなが同じ時間内で仕事をするという環境にいるため、働く時間が長いから、短いからということで、評価されないということは一切ありません。みんながイキイキ働いている、辞める社員はほとんどいない。結果、採用コストもかかりません。

さらに、決められた時間の中で、質の高い仕事にするために、オペレーティブな仕事に関してはアウトソーシングをするようにしています。そうすることで限られた時間を「創造する」ことに集中して費やすことができる。それが今の会社の成長につながっていると思います。

でも、ここまで徹底するには経営者の“本気”と“覚悟“が必要だと思います。

私は女性が活躍し続ける環境を整備するために、病児ベビーシッター制度も取り入れました。これは、ママが子どもの発熱で急に休まなくていいようにするためです。というのも、ママが働くにはもうひとつの壁があったんです。
それは、子どもの体調不良での突発的な休み。
子どもが小さいときは、急な発熱や、流行病などで、結果的にママが1週間連続で休まなくてはならないことがあるのです。そうなると、結果的に同僚に迷惑がかかるのです。
「ママはすぐ休むから、うちの部署はママはいらない」という雰囲気となり、ママ自身も「みんなに迷惑をかけてしまう・・・」と、最終的には退職するという会社が多いのです。そこで、ママが休まなくていい会社を目指すために、病児ベビーシッター制度を取り入れました。

そのおかげで、子どもが熱を出しても、ママは会社を休まずに済みます。ママが会社を休まなくて済むような仕組みは、ママが働くうえでは本当に大切なのです。

おかげで、今ではママも、ママでない社員も、イキイキと働きやすい会社となり、さらに生産性を上げています。

社員活躍できるように徹底的に考え抜かれる・・。岩崎さんの強い覚悟を感じました。その覚悟の背景を伺えますか?

岩崎
「働きやすくていい会社ですね」とよくいろんな方に言われるのですが、以前は「数字は右肩上がり、でも暗い会社」という時代がありました。

そんな2012年にワークハピネスさんの研修プログラム「ワクワク冒険島」が私たちに大きなものをもたらしてくれました。

私と取締役の日高は「私たちの言うことを聞いていれば良い」無意識的にそういうメッセージを社員に伝えるワンマンな経営をしていたんです。
研修を受けてそれに気づくことができました。

当初も会社として様々な施策を展開していましたが、その施策は「社員のためになにかを”やってあげよう”」というものだった。それが社員にも伝わりますよね。うまくいくわけありません。素敵なレストランでの歓迎会や、5周年記念のご祝儀・・・内容をどんどんレベルアップしても、だんだん社員は慣れてしまい、喜ばなくなってくる・・・。

今だから笑って話せますけど、自分で作った会社が暗いことに本当に悩んでいたのです。
そんなとき社員が「ワクワク冒険島」を受講した時に初めて本音を話してくれた。それによって、社員のみんなが求めていたものが「やりがい」であり「認められること」だったと知ることができました。この事実に私はかなりの衝撃を受けました。

そして、社員に本当に申し訳ないと思い、研修当日に研修会場に謝りに行ったことを今でも覚えています。

実は、「ワクワク冒険島」で見つかった私の課題は「人を認める」ことだったのです。自分をいい人だと自分で思い込み、「いい会社と思われたい!」一心でいろいろな社内施策をやっていた。それは社員のためではなく、自分のためにやっていたことだったことに気づかされたんです。社員の存在を認めていたからではなかったんです。

「雇う人と雇われる人」。
無意識にそういう構造を社員に突き付けていていました。

今でも本当に思います。
『ワクワク冒険島』の研修がきっかけとなって、社員のみんなが“認められないこと”、“やりがいを感じられていないこと”に心を痛めていたことに気づけて本当に良かったです。

ランクアップの新たなスタートのきっかけを創るサポートができ、私たちも本当に嬉しかったです。ここから、さらなる飛躍がスタートしましたよね!

岩崎
そうですね。この研修の気づきをきっかけに、社員が本当の意味でイキイキ働ける会社にしたいと本気で思うようになりました。

私と日高は、その後、評価制度を入れることを検討しました。でも、検討の際にまたまた御社からの大きなアドバイスをいただきました。「そもそも役員のお二人が何を伝えたいのか?何を大切にしたいのか?まずはお二人で明確にしたほうがよい」

そのアドバイスに衝撃を受けたのを今でも覚えています。

そのアドバイスをきっかけに、私と日高の中からランクアップで最も大切にしたいことを徹底的に話し合いました。そして、お客様を気にしすぎるあまり、チャレンジできない状態になっていたことになっていたことに気づいたのです。やっていきたいのはチャレンジし続けることだった。そして、導き出されたのが「挑戦」というキーワードです。

この「挑戦」をランクアップの価値観として社員のみんなに伝えたことをきっかけに、今まで生まれなかった新しい展開が見えてきて、さらに会社は成長しました。

今までは、私でないと判断できないことだらけだったのです。が、「挑戦」という価値観ができてからは社員自身でどんどん判断しています。そして私も社員を本当の意味で信頼することができるようになったんです。価値観を共有する仲間として。たとえ、手法が違っても私と同じゴールに向かっていることが実感できるようになりました。

こう思い始めてから、社員一人ひとりが輝き始めた。だから、私は、社員がいつも新しい脳で新しい発想を生み出すことができる環境を整えるだけ。仕事を「クリエイティブ」にすることができるようになることは、「自分がやりたいと思うことを真剣に考えること」につながっていますからね。

とても多くの変化、いや進化を生み出されている。 岩崎さんはまさにイノベーターですよね!

岩崎
いやいや。そんな(笑)。

『ワクワク冒険島』で会社のウミが出ました。ここから本質的な変化の始まりでしたね。

でも、それまでの過程にもすべて意味があって・・。これすべてが会社が成長する流れだったのだと今では思っています。

リーダーとして大事なことは「世の中をこう変えたい!」という想いがあることが、まず最初だと思うのです。それを「貫き通せること」が大切だと思うんでよね。

だから、
“全員に好かれたい”、“嫌われたくない”
という人は社長になれない。

幸いなことに私は共感力が低く(笑)、自分がこうしたい!!と思ったことになりふり構わず突っ走ってしまう突破力があったため、今の会社の成長する仕組みはこれでつくることができました。

そしてワクワク冒険島をきかっけに共感力の必要性を感じ今それを意識できるようになりました。これからが経営者としての人間力を高めるフェーズだと思っています。

岩崎さんから“これからの世の中を創っていく次代のリーダーたち”に 何かメッセージをお伝え頂けませんか?

岩崎
「自分が”やりたいこと”にとことん向き合って、絶対にあきらめない」こと。これこそが世の中に影響を与えるために必要なことだと思います。

とことんやり続けるためには何が必要ですか?

本人の覚悟と志は前提として、これからの時代に必要なリーダーシップは自らのメッセージを発信し続けながら、周囲を巻き込んでいく力ではないかと思うのです。そうしなければ、これからは新しいことは成し遂げられないと考えています。

では、そのために何が必要ですか?

人間力=人を見る力を持つことだと思います。
人を見る力のあるリーダーとは、例えば、ランクアップで言えば、この人に新人を任せたいな〜と思える人のイメージです。
愛情を持って部下を”応援できる”リーダー、メンバーの人生の応援者を担っているリーダーです。こういうリーダーは常に“人”を“繋いで、繋いで”、必ずチームとして成果を出している。しかもメンバーからの信頼は絶大です。

チームを率いて成果を上げられる、そんな優秀な社員にどんどん力を発揮していって欲しい!私はそのために、自分ができることし尽くして応援したいと思っています。

この記事を書いた人この記事を書いた人

ワークハピネス

株式会社ワークハピネス

「世界中の組織をワークハピネスあふれるチームに変える」をミッションに、人材開発、組織開発、事業創造支援を主に行うコンサルティングファーム。人の意識を変え、行動を変え、組織を変えることに強みを持つ。

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