人を育てる

2019.09.10

OJTトレーナーが本当に押さえておくべき大事なこと〜効果的なOJTで早期戦力化!

◆一昔前の新人教育では、「新人は時間をかけてでも、じっくり育てるべき」という風潮がありました。それは多くの企業が終身雇用を前提としており、長期的に新人や未経験者を育成することを良しとしていた時代だったからです。

◆しかし、グローバル市場の競争環境の激化、深刻化する人手不足問題などによって、状況は大きく変化しました。現場からは「早く組織やチームで活躍してほしい(早期戦力化、即戦力化による育成)」という声が多く聞かれるようになっています。そのため、新人や中途社員を「速く育てる人材育成(OJT研修、OJTトレーナー教育など)」が求められるようになっています。

◆ここでは、入社した新人や中途社員を、早期戦力化できるOJTトレーナーを育てるために「本当に押さえておくべき大事なこと」について、お伝えしたいと思います。

OJTとは何?

「OJT」とは「On-the-Job Training」の略称です。実際の業務を通じて、新入社員や中途社員の入社時や、新たに他部署へ配属された時に、上司や先輩社員がその部下や後輩に対して、業務を通じて知識や技術を教える育成方法のことです。

OJTでは、教える側の人トレーナーで、教えてもらう側の人トレーニーと言います。それに対して、「OFF-JT」は「Off-the-Job Training」で、職場外で講習や研修で教育するのが技術を習得する教育訓練のことを言います。

もともと、OJTは、アメリカの職業訓練施設で使われていたプログラム手法で、そのときに使っていたのが次の「4段階職業指導法」でした。

「4段階職業指導法」
  1.やってみせる
  2.説明する
  3.やらせてみる
  4.確認、追加指導する

日本では、海軍司令官であった山本五十六の次の文がOJTの考え方として、よく引用されています。

  1.やってみせ
  2.言ってきかせて
  3.させてみせ 
  4.褒めてやらねば人は動かじ

OJTでトレーニーが陥りがちな状況

本来のOJTでは、トレーナー一方的に「教え込む」よりも、トレーニー主体的に「学び取る」ことを重視するものです。

最初トレーニーは、新しい組織やチームに属し、新しい業務に取り組むため、わからないことだらけの不安定な状態になりやすいものです。そのような状況で、周囲のメンバーはトレーニーの研修や指導でどのように関われば良いのでしょうか。そこで、そのトレーニーが最初に陥りがちな状態を確認してみましょう。

「山登り」を例にして考えてみます。トレーニー自身は、初めての山登りに挑戦します。その時のトレーニーの心境はこんな感じではないでしょうか。

「(持っている)荷物が重いなあ・・・」
「今どこにいるかわからない・・・」
「どこに向かえばいいんだろう・・・」

経験が浅ければ浅いほど、この不安は大きくなります。さらにその不安の中で失敗をしてしまうと、人によっては絶望感や孤独感を持つことさえあるかもしれません。

一方、トレーナーも同時に自分の仕事を抱えています。その限られた時間の中で、トレーニーのサポートをしなければなりません。そのため、そのトレーニーが上記の状況であっても、トレーナー自身に余裕がないと、気づくのが遅れてしまい、うまく対応できないことがあります。

ではOJTトレーナーは、山登りをしようとするトレーニーができるだけ速く目的地に到達する(一人前になる)ためにどうサポートすれば良いのでしょうか。

その「OJTトレーナーに必要な3つの支援」があります。

「OJTトレーナーに必要な3つの支援」
①「持っている荷物(仕事)が重い」→障壁を取り除く
②「現在地がわからない」→現在地を伝え、軌道修正する
③「行き先がわからない」→美しい目的地を見せ、道筋を示す

① 「持っている荷物(仕事の負荷)が重い」

トレーニーは、慣れない仕事のため、最初は自由に動くことができません。身体にも力が入り過ぎているかもしれません。
そこで、OJTトレーナーはトレーニーに安心して仕事ができるような雰囲気を心がけ、時には仕事の見本を示しながら、トレーニーと一緒になって、障壁を取り除きながら、実行を支援していきます

② 「現在地(仕事の現状)がわからない」

仕事を経験していくとわかりますが、最初の頃は今の仕事の出来具合(業務の質や量など)が適切なのかトレーニー自身はわからないものです。
そのため、OJTトレーナーからは、今のトレーニーの現在地(状況)を伝え、途中で軌道修正したり、適切な評価やフィードバックしたりすることが必要です。

③「行き先(目的)がわからない」

人は共感できる美しい目的地(目標)があることで、その目標を達成したいというモチベーションが発揮され、集中力が維持できると言われています。その目標がないと、間違った方向に仕事を進めてしまう可能性が生まれます。
OJTトレーナーはトレーニーと一緒に目標を決め、その目標を達成するための道筋を示す(計画を立てる)ことが大事です。

OJTで大事な心構えとは?

OJTトレーナーの心構えによって、実はトレーニーの成長に大きく差が生まれます。
そのためには、OJTトレーナーはトレーニーの現状(心理面や業務の進捗など)を正しく理解することが必要です。そこで、「OJTトレーナーの大事な心構え」として、5つをピックアップしました。

■「OJTトレーナーの5つの心構え」

①.OJTトレーナーの仕事の捉え方
残念なOJTトレーナーは、OJTを自分の大事な「時間の損失」と考える!
できるOJTトレーナーは、OJTを自分が大きく「成長の機会」と考える!

OJTは、トレーニーの成長の場であるのと同時に、実はトレーナー自身の成長の場なのです。他の人に教えることで、改めて自分の仕事を整理したり、相手にわかりやすい伝え方を学んだりできます。

②.OJTの指導方針
残念なOJTトレーナーは、「トレーナーの方法」に固執して指導する!
できるOJTトレーナーは、「トレーニーの特性」に対応して指導する!

トレーナーが仕事で教える業務内容はある程度決まっているのに対し、トレーナーの教え方の方は千差万別です。また、トレーニーの理解しやすい学び方も様々です。そこで、トレーナーは自分の指導方法をまずは理解し、トレーニーの学び方の特性に合わせて、柔軟にアレンジして指導することが求められます。

③.OJTのゴール設定
  残念なOJTトレーナーは、トレーニーが「技術の習得」をゴールにする!
 できるOJTトレーナーは、トレーニーの「自律的支援」をゴールにする!

仕事で必要な技術やスキルは大事ですが、その習得をゴールにしてしまうと、何も考えずに、与えられた仕事しかこなせなくなってしまいます。新たにチームに加わったメンバーは、まだ組織文化に染まっていません。そのため、ただ今までやっていることを教えるだけではなく、トレーニーが自ら仕事を創ることができるチャンスです。

④.OJTの育成体制
  残念なOJTトレーナーは、「自分の経験スキル」だけで指導する!
 できるOJTトレーナーは、「周囲のリソース」を最大に活用する!

OJTトレーナーは育成担当として任され、責任感が強い人ほど、一人でなんとか指導しようとします。しかし、トレーナーはあくまで責任者であり、相談役です。本来の姿は、チーム全員で育成することなのです。チーム長も巻き込み、他のメンバーの強みを活かしながら、チームで協力体制を整えることが最も大事なことになります。

⑤.仕事での存在意義
✕  
残念なOJTトレーナーは、「今までどうだったのか?(過去の慣習)」を理解させる!
◯ できるOJTトレーナーは、「これからどうしたいか?(未来の貢献)」を思考させる!

過去にとらわれていると組織の成長はありません。過去の良さを残しつつ、「新たに取り組んでいきたいことは何か」「組織に貢献できることは何か」という未来のあるべき姿を描き続けることが組織人の価値であり、周囲から求められることです。

以上、「OJTが教えなければいけない本当に大事なこと」をお伝えしました。OJTトレーナーやOJTリーダーの教育に力を入れるメリットは、新入社員であるトレーニーの成長以上に、そのトレーナーやリーダー、周囲のメンバーの成長や刺激を促すことです。

OJTトレーナーの役割や責任は、ますます大きくなっています。今後さらに、専門的に業務を学ぶOJTと、体系的に仕事を学ぶOFF-JTの両方をうまく活用しながら、トレーナーとトレーニーの両者を育成する重要性が高まっていくのではないでしょうか。ぜひ貴社のOJTが円滑に進んでいくための参考になれば幸いです。

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