アクションラーニングとは何か|人事が導入すべき理由・効果・進め方・事例・コーチ資格まで徹底解説
社員研修・人材育成

アクションラーニングとは何か|人事が導入すべき理由・効果・進め方・事例・コーチ資格まで徹底解説

組織を取り巻く環境が急速に変化する中、管理職育成・次世代リーダー育成・現場課題の可視化において「アクションラーニング」が再注目されています。
課題解決と人材育成を同時に実現する手法として多くの企業が導入し、人材育成や組織開発の文脈で活用が広がっていますが、世界中の企業が取り入れていますが、日本ではまだ誤解も多く、アクティブラーニングとの違い、質問会議の進め方、コーチ資格の必要性などが十分に整理されていません。
この記事では、人事部が押さえるべきアクションラーニングの本質・効果・導入手順・事例・評価方法を包括的にまとめます。

アクションラーニングとは

企業が抱える“リアルな課題”を題材に、少人数チームで問いを深めながら解決策を導き出す学習・組織開発手法が、アクションラーニングです。
特徴は、学びと実践が同時進行する点で、研修中に生まれたアイデアがそのまま組織改善につながる設計になっていることが重要となります。

アクションラーニングの定義と意味

アクションラーニングは「行動(Action)と学習(Learning)を往復させることで、個人の成長と組織の課題解決を同時に進める学習法」とされています。
単なるディスカッションではなく、質問主導の対話によって思考の枠を広げ、行動計画へ落とし込んでいきます。

● 重要な特徴

  • 実在する課題を扱うため、成果が組織に還元されやすい
  • 質問中心で進むため、思考の固定化を防ぎ突破口を見つけやすい
  • 個人のリーダーシップ・メタ認知能力・協働スキルが自然に強化される

世界で広がった背景と人材育成手法としての位置づけ

アクションラーニングが国際的に普及した理由には、働き方や組織の変化があります。
特に、正解のない複雑課題(VUCA環境)が顕在化し、従来の“知識伝達型研修”では太刀打ちできなくなったことが大きな要因です。

● 普及の背景

  • 企業課題が高度化し、「即実務に効く人材育成」が求められた
  • 世界的にプロジェクト型・対話型・自律型学習が主流になった
  • グローバル企業で、変革リーダー育成法として高く評価された

● 人材育成としての位置づけ

  • リーダー育成、次世代管理職育成の主要メソッド
  • 組織開発(OD)と研修の橋渡しとなる
  • “学び→現場実践→組織成果”の循環を生み出す手法として定着

アクションラーニングとアクティブラーニングの違い

よく混同されますが、両者の目的と設計思想は明確に異なります。

項目アクションラーニングアクティブラーニング
主目的組織課題の解決とリーダー育成受講者が能動的に学ぶための授業方法
扱うテーマ実在の業務課題授業内容・ケーススタディ
進め方質問中心の対話で深掘り発表・グループワーク・討論
成果物具体的な改善案・行動計画学習理解度・主体性向上
対象企業の管理職・若手・次世代人材学生・社会人研修全般

アクションラーニングは「実務成果」まで求められる点が決定的に違うといえます。

従来の研修との構造的な差分

アクションラーニングは、従来型研修と比べ「学びの起点」「成果の種類」「行動変容の深さ」が大きく異なります。

● 変化のポイント

  • 知識を“教える”研修から、課題を“自分たちで解く”研修へシフト
  • 組織の実課題を扱うことで、研修効果がそのまま業績につながる
  • 講師依存ではなく、受講者同士の質問・対話によって気づきを促進
項目従来の研修(知識注入型)アクションラーニング(課題解決型)
アプローチ講義中心質問中心の対話
モデル知識 → 実践(ギャップ大)実践 → 学習(即改善)
現場適用性戻ると使われないことが多い研修中に改善案が完成
行動変容個人任せチームで習慣化を促す
成果受講満足度・理解度業務改善・行動計画・組織学習

アクションラーニングが注目される理由

アクションラーニングは、従来の研修では到達しにくかった「行動変容」と「組織変革」を同時に実現できる点が評価され、多くの企業で導入が進んでいます。特に、現場が抱えるリアル課題を題材にしながら、参加者の自律性・協働力・リーダーシップを同時強化できる点が、現代の人材育成ニーズと強くマッチしています。

自律型人材育成との親和性

現代の人材育成では「自分で課題を捉え、意思決定し、行動を改善できる人材」の需要が高まっています。アクションラーニングは、まさにその能力を鍛えるために最適な設計です。

● 親和性が高い理由

  • 質問中心で進むため、受け身ではなく“自ら思考する習慣”が育つ
  • 実在する組織課題を扱うため、「自分ごと化」が自然に生まれる
  • 行動計画の実行まで含むため、自主性・責任感が鍛えられる

学習主体者を「自律型人材」へ転換するプロセスが組み込まれている点が最大の特徴です。

組織課題の可視化と改善を同時に進められる強み

アクションラーニングの大きな利点は、研修そのものが“組織診断”の役割も担うことです。少人数チームの対話によって、普段顕在化しない課題が浮き彫りになります。

● 研修を通じて得られる効果

  • 課題の構造、根本原因、ボトルネックが明確になる
  • 部門間で認識のズレが表面化し、改善契機になる
  • 研修成果=改善案・アクションプランとして現場に戻せる
項目一般的な研修アクションラーニング
課題把握参加者の主観・講義内容に依存対話で本質課題を可視化
改善アクション個人の意思に委ねられるチームで改善案を構築
組織改善への寄与間接的研修が直接的に改善を生む

“学び”と“改善”が分離せず、同時並行で進む点が他手法にない強みです。

心理的安全性の向上と対話文化の形成

アクションラーニングでは、心理的安全性の確保が重要な前提となり、プロセスの中にも安全な対話設計が組み込まれています。
質問ベースの進行は、相手を否定するのではなく、理解し、視点を広げることを目的とするため、自然と対話の質が高まります。

● 得られる変化

  • 否定されない環境が、発言意欲と挑戦意欲を高める
  • 上司・部下間でも率直な意見交換がしやすくなる
  • “質問文化”が組織に浸透し、学び合いが定着する

心理的安全性は離職防止・エンゲージメント向上とも親和性が高く、アクションラーニングを通じて組織風土そのものが変化するケースも多く見られます。

管理職育成・次世代リーダー育成で効果が高い理由

管理職・次世代リーダーに求められる能力は、知識よりも「状況判断」「合意形成」「問いを立てる力」「チームで成果を出す力」です。
アクションラーニングは、まさにこれらの能力を実践の中で鍛えるための構造を持っています。

● 効果が高い理由

  • 複雑課題を分解し、問い直す思考力が鍛えられる
  • ステークホルダーを巻き込みながら解決案をつくるリーダー力が向上
  • チーム運営、対話促進、心理的安全性づくりが体験を通じて身につく
  • 管理職研修で起きがちな「現場で使えない」を防ぎ、即実務に転用できる

“知っている管理職”ではなく、“動かせる管理職”を育てられる点が評価されています。

アクションラーニングの構成要素

アクションラーニングは、単なるグループワークではなく「成果が出る学習の型」を持つ手法です。
その中心にあるのが 課題(Issue)・質問中心の対話(Questioning)・グループ学習(Learning Group)・アクション/振り返り(Action & Reflection)・コーチ(Coach) の5要素です。
これらが揃うことで、参加者の学習と組織課題の解決が同時に進行しやすくなります。

課題(Issue)

アクションラーニングの起点となるのは、「組織にとって解く価値があるリアルな課題」です。
抽象的なテーマではなく、放置すると損失や停滞を生む“本質的で重要なイシュー”が選ばれます。

● 課題設定のポイント

  • 「影響範囲が大きい」「複数部署に関わる」など組織的意義が高い
  • 根本原因が不明確で、答えが一つではない
  • 参加者自身が当事者意識を持ちやすい
  • 解決策が実務に還元される

良い課題が設定されると、学習効果も改善効果も一気に高まります。

質問中心の対話(Questioning)

アクションラーニング最大の特徴は「質問が主役」になることです。
質問には、思考の固定化を外し、新たな視点に気づかせる力があります。

● 質問中心の対話が生む効果

  • 課題の深掘りが進み、盲点が明らかになる
  • 批判ではなく理解を促す対話が生まれる
  • 発言が偏らず、全員が思考に参加できる
  • 問い直しを通じて創造的な解決策が生まれる
会話タイプ従来の議論アクションラーニング
進め方意見の主張・説得質問による探索
雰囲気先入観・対立が生まれやすい安全で創造的
結果表面的な結論で終わりがち本質課題に到達しやすい

グループ学習(Learning Group)

アクションラーニングは個人学習ではなく、「複数の視点が集まるチーム学習」が前提です。
メンバーの多様性が、課題理解と気づきの幅を一気に広げます。

● グループ学習の強み

  • 異なる立場・経験が融合し、新しい発想が生まれる
  • メンバー同士の観察やフィードバックで行動変容が進む
  • チームワークや心理的安全性が高まり、組織学習が促進される

多様な視点が「問いの質」「解決策の質」を高める核心要素です。

アクション / 振り返り(Action & Reflection)

アクションラーニングでは、議論して終わりではなく、
行動して試し → 結果から学び → 再び改善案をつくる
という循環を回すことで、成果と成長を最大化します。

● このフェーズが重要な理由

  • 実践から得た気づきは、理解度が深く定着しやすい
  • 現場での改善効果が見える化され、研修のROIが向上
  • 試行錯誤の中で、リーダーシップ・協働力が強化される

振り返りでは「どの問いが思考を変えたか」「行動の障壁は何か」などを分析し、学びを次に活かします。

アクションラーニングコーチの役割と重要性

コーチは、アクションラーニングが“ただの会議”にならないためのキーパーソンです。
議論の質を高め、学習効果を引き出すための進行と介入を行います。

● コーチの主要な役割

  • チームが「質問中心の対話」から逸れないよう軌道修正
  • 思考・行動パターンに気づかせるメタ認知サポート
  • 心理的安全性の確保
  • 学習ポイントの言語化支援
  • 行動計画の実行を促すフォロー
コーチがいる場合コーチがいない場合
対話が深まり、課題の本質に到達しやすいただの議論で終わる可能性が高い
学習ポイントが明確になる気づきが曖昧なまま解散する
行動計画が現実的・具体的解決策が机上の空論になりやすい

コーチの有無で成果が大きく変わるため、アクションラーニングの中核的存在といえます。

アクションラーニングの進め方(質問会議のプロセス)

アクションラーニングは、“質問中心の会議”という独自の進行を持つため、プロセス設計が成果を大きく左右します。
事前準備→質問会議→アクション創出→振り返りの一連の流れを丁寧に整えることで、学習効果と組織改善が同時に進む仕組みが生まれます。

事前準備(課題設定・メンバー選定・目的共有)

準備段階の質が、アウトプットの質をほぼ決めます。
特に課題設定が曖昧だと、議論が散らかり学習効果も薄くなるため、人事の介入が重要です。

● 主な準備内容

  • 課題設定:複雑性があり、解く価値のあるリアルな課題を選ぶ
  • メンバー選定:多様性(部署・キャリア・立場)を意図的に組み込む
  • 目的共有:研修目的・成果物・制約条件・リーダーシップ期待値を明確化
  • 役割確認:課題提供者(Problem Owner)とコーチの存在を事前説明

準備が整っているほど、会議そのものの生産性が高まります。

質問会議の進行手順

質問会議は、主に「質問フェーズ」「意図の確認」「課題の再定義」「アクション創出」の4段階で進行します。
発言の優劣を競うのではなく、問いを通して思考を深め、本質課題へ到達する流れが特徴です。

質問フェーズ

まずは、メンバーが課題提供者に対して自由に質問を投げかけます。
質問は、「情報収集」よりも「視点を広げる」ことに重きを置きます。

● 質問のポイント

  • 原因・背景・前提の問い直し
  • 価値観・優先順位を揺さぶる質問
  • 利害関係者視点の質問
  • 未来に向けた可能性を広げる質問

→ この段階で“気づきの材料”が揃います。

意図の確認

質問の背後にある「なぜその問いを投げたのか」を共有するプロセスです。
これにより、誤解が解消され、より深い共通理解が生まれます。

● 意図確認の効果

  • 質問が相手批判でないことが伝わり、安全性が高まる
  • 参加者同士の視点が可視化され、学習価値が増す
  • 課題の枠組みが整理されやすくなる

課題の再定義

質問を通して得られた材料をもとに、本当に解くべきイシューを再設定する段階です。
これにより、最初の想定とは違う本質課題が見つかることが多くあります。

再定義前再定義後
売上が伸びない顧客との接点が少ない構造が未改善
メンバーのモチベ低下評価基準が曖昧で努力が見えにくい
離職率が高い現場での心理的安全性が低い

「正しい問題を解く」ための核心プロセスです。

アクション創出

再定義された課題に対し、現場で即実行可能なアクションをチームで作り上げます。
机上のアイデアではなく、「明日から動ける行動」をつくることが重要です。

● 行動案の例

  • ステークホルダー3名へのヒアリング
  • KGI/KPIの仮設定と週次レビュー開始
  • 現状プロセスの見える化(フローチャート化)
  • 試験的に1つの施策を2週間だけ実装してみる

振り返り(Reflection)の取り入れ方

振り返りは、“学習が定着し、行動が進む”ための重要なプロセスです。
特にアクションラーニングでは、進め方・質問の質・チームの機能性などをメタ的に振り返ります。

● 振り返りの観点

  • 今日の質問で最も思考が動いたポイント
  • チームとして機能した点/阻害した点
  • 次回に改善すべきコミュニケーション
  • 行動計画の実行に向けた障壁の洗い出し

→ 振り返りの質が、次回の対話と改善の質を決定します。

人事が管理すべきポイント

アクションラーニングは“場をデザインする研修”のため、人事が管理すべき領域も多くあります。

● 管理ポイント

  • 適切な課題選定の支援
  • 問題提供者・ステークホルダーへの事前説明
  • コーチの配置と運営基準の統一
  • 会議のタイムマネジメントと全体進行の設計
  • アクション実行状況の追跡(伴走)
  • 成果物(改善案・学習レポート)の回収と評価
領域人事が担う役割
企画目的設定・課題選別・メンバー構成
運営コーチ配置・質問会議の設計
効果測定アクション実行率・学習レポート回収

アクションラーニングのよくある失敗例と防止策

アクションラーニングは強力な手法ですが、設計を誤ると“ただの会議”になりやすい特徴もあります。

● よくある失敗

  • 課題が曖昧で議論が散らかる
  • 質問ではなく“アドバイス大会”になる
  • コーチ不在で通常会議化する
  • メンバーの階層差が大きく発言が偏る
  • アクションが抽象的で実行されない
  • 振り返りがなく、学習が定着しない

● 防止策

  • 課題は明確なイシューに絞り込む
  • 研修冒頭で“質問中心”のルールを徹底
  • コーチを必ず配置し、軌道修正を行う
  • 多様性を保ちながらも階層バランスを意識
  • 行動計画は「誰が・いつ・何を」まで具体化
  • 毎回の振り返りで改善ポイントを可視化

アクションラーニングの効果

アクションラーニングは、「個人の成長」と「組織改善」が同時に進む希少な学習手法として評価されています。
単に知識を学習するだけでなく、現場での行動変容や業績への貢献が生まれやすい点が、他の研修にない特徴です。

個人レベルの効果

アクションラーニングでは、参加者が“実在する課題”に取り組むため、個々のビジネススキルが短期間で強化されます。

● 個人スキルに現れる主な効果

  • 課題解決能力の向上
     └質問を通じて本質を見極め、問題の構造化ができるようになる
  • コミュニケーション力の改善
     └意見の押しつけではなく、対話を通じた合意形成が進む
  • 内省(Reflection)の習慣化
     └行動を振り返り、自分の思考パターンに気づく
  • メタ認知の向上
     └「今の自分はどう考えているか」「何が行動を妨げているか」を俯瞰できる

これらの能力は管理職・次世代リーダーに必須であり、「主体性」「判断力」「協働力」を裏側から支える基盤になります。

組織レベルの効果

アクションラーニングは、個人だけでなく“組織の学習能力”にも強く作用します。
特に「サイロ化」「課題放置」「現場の声が上層に届かない」などの典型的課題に有効です。

● 組織レベルに生まれる変化

  • 部門連携が強化される
     └多様な立場のメンバーが協働することで、横のつながりが生まれる
  • 課題が可視化される
     └日常では言語化されない課題が、対話を通して明確に浮かび上がる
  • 主体性が高まる
     └「自分たちで解決する習慣」が組織に根づき、自走型組織へと変化
  • 心理的安全性が醸成される
     └質問ベースの対話が、否定・断定ではなく探求を促す文化を育てる
組織課題アクションラーニングがもたらす効果
部門間の断絶異部署メンバーの協働で相互理解が進む
課題のブラックボックス化本質課題の言語化・構造化が進む
受け身文化自主性・当事者意識が強化される
発言しづらい風土質問中心の対話で安全性が高まる

→ 組織改善と人材育成が同じプロジェクト内で同時に起きるのが大きな特徴です。

研修と業務成果の結びつき(ROI視点)

アクションラーニングは「研修の投資対効果が見えやすい」点で、多くの企業から支持されています。
理由は、成果が“行動”と“改善案”として具体化し、現場に持ち帰られるためです。

● 業務成果と結びつきやすい理由

  • 研修テーマが実際の業務課題である(=即効性が高い)
  • アクションプランが研修内で完成する(=実行率が高い)
  • 行動と振り返りを繰り返すため、成果が可視化される
  • 上司・ステークホルダーを巻き込むため、組織内の承認が得られやすい

● ROI視点で捉えやすい指標

  • 業務改善によるコスト削減
  • 生産性向上(リードタイム短縮、エラー削減など)
  • 顧客満足度・従業員満足度の向上
  • 管理職の行動変容(1on1頻度、意思決定スピードなど)
  • 研修後のアクション実行率・達成率
ROI領域測定しやすい成果例
生産性プロセス短縮、無駄工数削減
組織改善離職率低下、エンゲージメント向上
顧客成果問い合わせ対応速度改善、満足度上昇
人材育成管理職スキル向上、行動変容の定着

→ 他の研修と違い、「研修で得た学びが、すぐ仕事に使われたか」が明確に分かるため、投資対効果の説明がしやすいというメリットがあります。

アクションラーニングの事例

アクションラーニングは、階層別・テーマ別の幅広い研修領域で活用できる柔軟性の高い手法です。
特に、複雑性の高い課題や、既存の施策で成果が出にくい領域に強い効果を発揮します。

理職向けリーダーシップ開発

管理職層は、日々の業務負荷により「考える時間」と「他者と対話する機会」が不足しがちです。
アクションラーニングでは、実務課題を扱いながらリーダーシップが自然と鍛えられます。

● 典型的な取り組み

  • 部署横断で管理職を混成チーム化
  • 現場の複雑課題をテーマに対話
  • アクションプランを実務に即適用

● 期待される成果

  • 問題解決力・意思決定力の向上
  • 他部署との連携強化
  • 1on1やチーム運営の質向上
BeforeAfter
指示型マネジメントが中心質問型リーダーシップへ転換
部署間連携が弱い横のつながりが強化

次世代リーダー候補育成

昇格前の候補者に対して、「視座の引き上げ」「組織視点」「自律性」を育てる手法として非常に相性が良い領域です。

● よくある活用例

  • 若手〜中堅のハイパフォーマーを選抜
  • 経営課題に近いテーマを設定
  • チームで改善案をまとめ経営層に提案

● 得られる効果

  • 経営視点・俯瞰力の獲得
  • 主体的な意思決定力の強化
  • プレイヤーからリーダーへの意識転換

次期管理職をスムーズに輩出するための“実地型アセスメント”としても機能します。

現場課題改善プロジェクト

アクションラーニングは“課題を解く研修”であるため、組織改革施策としても実装できます。

● プロジェクト事例

  • 営業プロセスの見える化
  • 顧客対応のリードタイム短縮
  • 工数削減・エラー削減
  • 部署間連携の仕組みづくり

● 成果につながりやすい理由

  • 現場メンバーが当事者として課題を扱う
  • 解決策が机上論にならず、すぐ現場で試せる
  • 実践→振り返り→改善のサイクルが定着する
改善前改善後
属人的プロセスが多い標準化が進み工数が減少
不満はあるが言語化されない課題構造が明確になり改善が加速

新人・若手の早期戦力化

若手は「知識はあるが応用が難しい」「主体性が弱い」という課題が生まれやすい層です。
アクションラーニングは、実務の中で自ら学ぶ姿勢を育て、早期に自走できる人材へと育成できます。

● 活用例

  • 入社3ヶ月〜半年後のフォロー研修に導入
  • 現場の“困りごと”をテーマに設定
  • チームで原因分析→小さな改善を実践

● 得られる成果

  • 自律性・主体性の向上
  • 職場理解が深まり離職防止につながる
  • 本人の強み・弱みの早期把握が可能

“早期戦力化×定着強化”の両軸で効果が出やすい領域です。

心理的安全性の低い組織での対話再構築

対話が途絶え、課題が表面化しない組織では、通常の研修やワークショップだけでは変化が起きにくいことがあります。
アクションラーニングは「質問」を中心とした対話設計により、安全なコミュニケーション文化を再生する効果があります。

● 活用シナリオ

  • 上司部下間の関係が硬直している
  • 部署間で相互不信がある
  • 発言しても否定されるため沈黙が常態化している

● 介入効果

  • 質問を通じて“否定ではなく理解”がベースになる
  • 本音が引き出され、課題が可視化される
  • チームが再び機能する“対話の型”が根づく
状況アクションラーニング後の変化
発言が少ない、意見が出にくい質問が増え、自然な対話が生まれる
不信感・予防線が強い理解ベースの関係が形成される

アクションラーニング研修の設計方法

アクションラーニングは「場づくり」と「プロセス設計」が成果を大きく左右します。
特に、目的整理・テーマ設定・グループ構成・コーチ配置など、事前の設計がしっかりしているほど、学習・改善の両方が進みやすくなります。

研修目的の整理

アクションラーニングは、多目的に活用できる一方で、目的が曖昧だと効果が散漫になりやすい手法です。
まずは、研修の“狙う成果”を明確に定義します。

● 目的整理の主な方向性

  • 人材育成目的:管理職育成、次世代リーダー育成、若手の主体性強化
  • 組織改善目的:現場課題の解決、部門連携強化、対話文化の再構築
  • 業務成果目的:生産性向上、顧客価値向上、プロセス改善

→ 目的が明確になるほど、テーマ設定や評価軸がブレずに進みます。

対象者・グループ構成

アクションラーニングの強みは「多様性から生まれる視点の広がり」です。
そのため、グループ構成は研修成果を大きく左右します。

● グループ編成のポイント

  • 1グループ 4〜8名 が最適
  • 部署・職種・キャリアを“意図的に”混ぜる
  • 上下関係が強すぎる組み合わせは避ける
  • 課題提供者(Problem Owner)を明確に設定
グループ構成メリット
多様性重視課題の構造化・突破口が生まれやすい
同質性重視現場改善のスピードは速いが視野が狭まりやすい

テーマ選定の基準

テーマ(=Issue)は研修の“核”であり、成功・失敗を決定づける最重要要素です。

● 選定基準

  • 組織にとって解く価値がある(業務インパクトが明確)
  • 答えが一つではない複雑課題
  • 参加者が当事者意識を持てるテーマ
  • 現場で実行可能な改善につながる範囲である
  • 個人のクセではなく“構造課題”を扱える内容

● 避けるべきテーマ

  • 個人の性格や人間関係だけに依存する問題
  • すでに答えが決まっている議題
  • 改善権限が参加者にまったくない領域

研修期間・頻度・運用スケジュール

アクションラーニングの運用には、一定期間継続する“学習のループ”が不可欠です。

● 一般的な運用例

  • 期間:2〜4ヶ月
  • セッション頻度:月2回×2時間 程度
  • プロセス:質問会議 → アクション → 振り返り → 次の質問会議
スケジュール例内容
1週目Kick-off・テーマ共有・グループ編成
2週目第1回質問会議(課題探索)
3〜6週アクション実行・振り返り
7週目第2回質問会議(課題再定義)
8〜10週改善アクションの実行
最終週成果発表・学習レポート提出

→ 継続性が担保されるほど、学習効果と改善効果が積み上がります。

オンライン対応

オンラインでもアクションラーニングは十分成立しますが、対面以上に「進行設計」が重要です。

● 成功のポイント

  • 少人数(4〜6名)でのブレイクアウトルーム活用
  • 発話量を均等にするためファシリテーション強化
  • Miro / FigJam などのオンラインホワイトボードで構造化
  • チャットを質問ログとして活用
  • カメラオン推奨で心理的距離を縮める

オンラインでは「沈黙の扱い」を丁寧にしつつ、安全な空気づくりを意識することが鍵になります。

また、オンラインホワイトボードについては、Miro / FigJam に加えて、Microsoft Loop や Notion AI ボードなど最新の共同編集ツールを活用すると、オンラインでも構造化された深い対話が行いやすくなります。

研修レポート/評価方法

アクションラーニングは、学習と業務成果が両方生まれるため、多角的な評価が可能です。

● 代表的な評価指標

  • 学習レポート(気づき・行動変容・メタ認知)
  • アクションプランの実行率/達成度
  • 課題改善の成果(定量・定性)
  • チーム機能性(対話の質、安全性、協働度)
  • 上司・ステークホルダーからの評価
  • 研修後アンケート(行動変容度の自己評価)
評価領域評価内容
個人思考力・質問力・内省力の向上
組織課題改善・部門連携・安全性の向上
業務成果コスト削減・生産性向上・顧客価値

人事の伴走スタンス

アクションラーニングでは、人事が“裏側の設計者”になることで成果が大きく変わります。

● 人事が取るべきスタンス

  • 中立的・支援的な立ち位置でメンバーを支える
  • テーマ選定・ステークホルダー調整など環境整備に注力
  • 会議が脱線しないよう適切にコーチを配置
  • アクション実行のフォローアップを行う
  • 成果発表会の設計・関係者巻き込みを推進
  • 研修終了後の職場定着(1on1 / 次期目標への接続)を支援

→ 人事が“研修だけで完結させず、現場の行動変容まで伴走すること”が成功の鍵です。

アクションラーニングと資格・コーチ制度

アクションラーニングを本来の効果を発揮させるには、“質問中心の対話”と“学習のメタ認知”をリードできるコーチの存在が不可欠です。
そのため、国際的には認定制度が整備されており、企業でも外部コーチの活用や社内育成が進んでいます。

アクションラーニングコーチとは

アクションラーニングコーチ(ALコーチ)は、質問会議の質を担保し、チームの学習を最大化するための専門役割です。

● 主な役割

  • 質問中心で対話が進むよう“プロセス”を整える
  • 議論が脱線した際に中立的に軌道修正する
  • メンバーの発言量・安全性・対話の質を観察する
  • 学習ポイントを言語化し、気づきを深める
  • チームが「問題解決」と「学習」の両方を体験できるよう導く

→ コーチは“内容”ではなく、“進め方・学習”に責任を持つのが特徴です。

認定アクションラーニングコーチの役割

国際資格(例:WIAL 国際アクションラーニング協会など)を持つコーチは、体系的な知識・倫理基準・進行スキルを習得した“専門家”です。

アクションラーニングの資格制度は、WIAL が提供する CALC(Certified Action Learning Coach)・MALC(Master Action Learning Coach)などの国際認定が中心です。日本では JIAL が研修・認定プロセスを担っています。

● 認定コーチが提供できる価値

  • 高度な質問技法(質問の質を引き上げる介入)
  • チームダイナミクスへの理解(安全性・偏り・沈黙の扱い)
  • 課題探索から再定義までの構造化スキル
  • 利害関係者を巻き込むプロセス設計
  • 経営層向けのフィードバックや成果報告の品質
項目認定コーチ非認定の一般ファシリ
質問技法体系的・再現性が高い個人スキルに依存
対話の安全性高く維持できる不安定になりやすい
課題再定義構造的に支援できる深掘りが浅くなる
学習定着メタ認知支援が強い“良い話で終わる”ことが多い

学生アクションラーニングコーチ

学生向けのコーチ制度は、一部大学で探究型学習の文脈で取り入れられている取り組みです。社会人向けとは目的・レベルが異なり、質問力や振り返りの基礎を学ぶ位置づけになります。学生向けのコーチ制度は、教育現場でアクションラーニングが採用される流れから生まれています。

● 特徴

  • 大学生・大学院生が基礎的な質問技法を学び、演習形式で質問技法や対話プロセスを実践的に学ぶ演習形式でコーチングを体験
  • 組織研修というよりも、“探究型学習”や“PBL(Project Based Learning)”の支援役
  • 社会人向けよりも軽量なスキルセットだが、対話力・メタ認知力が育つ

将来のリーダー育成や教育現場のアクティブラーニング支援として活用されています。

資格取得が求められる理由

アクションラーニングは単純なファシリテーションではなく、

「場の安全性」×「質問技法」×「学習のメタ構造」

という複雑なスキルを扱うため、資格制度が導入されています。

● 資格取得が望まれる理由

  • 手法の標準化(質のバラツキ防止)
  • コーチ倫理の担保
  • 組織にとって“投資対効果のある研修”として再現性を確保
  • 導入実績を持つコーチを選びやすくする
  • 形式だけの会議にならないようクオリティ保証

→ 資格は「研修の品質担保装置」として機能しています。

コーチ不在で導入した場合の問題

コーチなしでアクションラーニングを行うと、多くの場合“ただの議論”になります。

● 起こりやすい問題

  • 質問より意見・アドバイスが増え、アクションラーニングALの本質が消える
  • 発言が偏り、心理的安全性が低下
  • 課題が深掘りされず、表面的な結論で終了
  • 対話の構造管理ができず、時間だけが過ぎる
  • 振り返り(Reflection)が形骸化し、学習が残らない
問題具体的な悪影響
質問が機能しない視点が広がらず“いつもの会議”になる
学習が生まれない行動変容が起きず研修ROIが低下
成果が出ない経営層が導入意義を感じられない

社内育成か外部依頼かの判断基準

導入の成功確率を上げるために、人事が“どちらが最適か”を判断する必要があります。

● 外部コーチを使う方がよいケース

  • 初導入でノウハウがない
  • 課題が複雑で深刻(部門対立・組織変革など)
  • 中立性を担保したい
  • 研修の効果を確実に出したい

● 社内で育成する方が良いケース

  • 年間を通じて継続的にアクションラーニングALを運用したい
  • 管理職育成体系に組み込みたい
  • 研修コストを最適化したい
  • 組織文化として“質問型対話”を根づかせたい
方式メリットデメリット
外部コーチ高品質・中立性・即戦力コスト高/依存度が上がる
社内コーチ育成内製化・文化定着・長期運用が容易育成に時間がかかる/初期品質のバラつき

アクションラーニングに関する誤解・混同されやすい概念

アクションラーニング(Action Learning)は、対話と実践を組み合わせた高度な学習手法ですが、名前のイメージだけで誤解されやすい特徴があります。
特に、アクティブラーニング・ファシリテーション・ブレスト(ブレインストーミング)などと混同されることが多く、正しく理解しないまま導入すると効果が出にくい点が注意ポイントです。

アクティブラーニングとの違い

アクティブラーニングは「受講者が主体的に学ぶ授業形態」の総称であり、教育・研修領域で広く使われる概念です。
一方、アクションラーニングは「実在の課題を解決しながら学習する」より実践色の強い手法です。

● 違いの要点

  • アクティブラーニングは“学習主体性の向上”が目的
  • アクションラーニングは“課題解決+成長”が同時に起こる
  • アクティブラーニングは発表・討議なども含む広い概念
  • アクションラーニングは質問による深掘りが中核
項目アクションラーニングアクティブラーニング
主目的課題解決と学習の両立学習への主体的参加
扱う題材実務のリアル課題授業テーマ・ケース等
進行方法質問ベースの対話発表・討議・演習など幅広い
成果行動計画・改善案理解深化・主体性向上

→ 両者は目的も設計も異なり、「似ているようで本質が違う」点が誤解されやすいポイントです。

ファシリテーションとの違い

ファシリテーションは「議論を円滑に進めるための技法」であり、会議やワークショップ全般に使われるスキルセットです。
アクションラーニングはファシリテーションを含むものの、「質問の質と学習の構造化」が最重要視されます。

● 違いのポイント

  • ファシリテーターは“議論を進める人”
  • アクションラーニングコーチは“学習をつくる人”
  • 議論の中身には踏み込まないが、問いのレベルには介入する
項目アクションラーニングコーチ一般ファシリテーター
主任務学習の促進・質問の質管理会議・議論の円滑化
介入対象プロセス・思考構造・心理的安全性発言整理・合意形成
成果物学習・行動変容・課題再定義会議結論・合意形成

→ つまり、アクションラーニングALコーチは「気づき・成長・構造化」を扱い、ファシリとは役割が根本的に異なります。

ブレストとは異なる「質問型思考」

ブレインストーミングは“アイデアを大量に出す”ことを目的とします。
一方、アクションラーニングは、「問いを立てることで考えを深め、問題の本質を探る」思考法を取ります。

● ブレストとの違い

  • ブレストは“発散”が中心
  • アクションラーニングALは“発散→収束”を質問で支える
  • ブレストはアイデア数が価値
  • アクションラーニングALは“問いの深さ”が価値
思考法目的特徴
ブレインストーミングアイデア創出数・自由度・スピード
質問型思考(アクションラーニングAL)本質の理解・構造化原因探索・視点拡張・仮説精度

→ アクションラーニングは「急いで答えを出す」のではなく、「良い問いで構造を理解する」ことに重きを置きます。

形式だけ真似して失敗するパターン

アクションラーニングは一見シンプルに見えるため、“質問をすれば成立する”と誤解されがちです。
しかし、形式だけ真似しても成果はほぼ出ません。

● よくある失敗例

  • 「質問してください」と言うだけでアドバイス大会になる
  • コーチ不在で、普通の会議と変わらない
  • 課題設定が曖昧で議論が散らかる
  • 振り返り(Reflection)がなく学習が定着しない
  • 結局“良い話で終わって何も変わらない”

● 防止策

  • 質問のルールを明確にし、対話の型を揃える
  • できれば認定コーチを配置し、プロセスを守る
  • 課題(Issue)は明確なイシューに絞り込む
  • 振り返りは必ずプロセス・学習・行動の3点で行う
  • 研修後のアクション実行まで人事が伴走
失敗要因影響
形式だけ真似る学習が生まれない/業務成果に直結しない
コーチ不在対話の質が低下/安全性が崩れる
課題設定の甘さ本質に届かないため改善効果が出ない

アクションラーニング導入ステップ

アクションラーニングは、単発研修というより “組織に学習サイクルを根づかせる仕組み” です。
そのため、導入は段階的に進めることで、成功率と定着率が大きく高まります。

導入前の課題特定と調整

まずは「なぜアクションラーニングを導入するのか?」を明確にし、現場と経営層の期待をそろえる必要があります。

● 実施前に整理すべき事項

  • 現状課題(離職率、部門連携、管理職育成など)の棚卸し
  • アクションラーニングで解決可能な領域/不向きな領域の切り分け
  • 対象部門・対象階層の選定
  • 経営層・現場管理職との温度感調整
  • テーマ選定(Issue)に関する事前ヒアリング
フェーズ成果物
課題特定現状の整理・導入目的の定義
調整対象者決定・ステークホルダー合意

→ 初期段階で“課題と目的がズレる”と、アクションラーニングALの効果が大幅に下がります。

小規模パイロット運用

最初から全社展開するのではなく、小さな単位で試行することで、成功要因・失敗要因を特定できます。

● パイロットに向いている部門

  • 課題意識が高いチーム
  • 管理職が協力的な部門
  • 新しい学習手法に前向きな層
  • 組織変革の必要性が大きい領域

● 運用ポイント

  • 1〜2グループ(4〜8名×1〜2チーム)で開始
  • コーチは外部専門家 or 経験豊富な人材を配置
  • 2〜3ヶ月の短期間でサイクルを回す

→ パイロットの質が、全社導入の説得力に直結します。

定着のためのフィードバック

パイロット実施後は、必ず“運用面・学習面・成果面”の三方向からフィードバックを行います。

● フィードバック項目

  • セッションの質(質問量・安全性・深度)
  • アクション実行率と成果(改善が見えたか)
  • 参加者の学習(内省・メタ認知・行動変容)
  • コーチの機能性(介入の質・構造化の度合い)
  • 現場への波及効果(会議、対話文化の変化)
評価領域見るべきポイント
プロセス対話の質、メンバーの参加度
成果課題改善、KPI変動
学習内省・質問力・視点の拡張

→ この分析をもとに、アクションラーニングALを「組織に合った形」にローカライズします。

全社展開の基準

アクションラーニングを全社に広げるタイミングは、パイロットの成功度合いによって判断します。

● 展開判断の基準

  • パイロットで“再現性のある成果”が出ている
  • コーチ人材が確保できている(外部+社内)
  • 部門間でアクションラーニングALの価値が共有されている
  • 上層部が支援姿勢を示している
  • 運用ルール(周期・レポート・成果発表)が整備されている

● 展開パターン例

  • 若手 → 管理職 → 全社へと階層別に広げる
  • 課題が顕著な部門から順に導入
  • 内製コーチ育成と並行で規模拡大

→ 全社展開は“勢いではなく、仕組みと人材の準備”が成功の鍵です。

評価指標の設計

アクションラーニングは成果が多面的に出るため、行動・学習・業務成果 の3つを軸に評価するのが効果的です。

● 主な評価項目

  1. 行動指標(Behavior)
    • 質問量・質
    • 振り返り習慣
    • アクション実行率
  2. 学習指標(Learning)
    • メタ認知の深まり
    • 視点の変化
    • チームでの協働度
  3. 成果指標(Result)
    • 課題の改善度(KPI変動)
    • 部門連携・安全性の向上
    • 生産性・顧客価値の向上
指標カテゴリ内容例
行動質問量・会議での参加姿勢
学習内省の深さ・構造化能力
結果業務改善・コスト削減

→ この3軸で評価することで、研修のROIが説明しやすくなります。

アクションラーニングの評価・効果測定

アクションラーニング(AL)は、学習と実務改善が同時に起こるため、評価指標も多層的に設計する必要があります。
特に 定性(行動・対話)+定量(改善成果)+学習プロセス の3軸で測定することで、研修の価値が可視化されやすくなります。

定性指標(行動変容/心理的安全性/対話量)

アクションラーニングALでは、行動・姿勢・対話の質と量といった“目に見えにくい変化”こそが効果の源泉です。

● 主な定性指標

  • 行動変容
    • 質問量・質問の質の向上
    • 自律的な課題設定
    • 実行力・巻き込み力の変化
  • 心理的安全性
    • 発言量の均等化
    • 意見の否定が減り、探究姿勢が増える
    • チームの雰囲気(安心・協働・傾聴)
  • 対話量・対話の質
    • 一方通行の会議から双方向・探索型の対話へ変化
    • 思考の深まり(前提・価値観・構造への問い)
領域観察ポイント
行動質問が増えたか、主体性が高まったか
安全性発言しやすい雰囲気か、相互理解が進んでいるか
対話探究型のやり取りになっているか

→ 定性データは、研修後の職場変化を示す“説得力のあるエビデンス”として使えます。

定量指標(業務改善数/生産性指標)

アクションラーニングALの強みは、研修成果が実務に直結しやすい点です。
そのため、数値化可能なアウトプットを明確に設定すると、経営層への説明がしやすくなります。

● 主な定量指標

  • 業務改善数
    • 改善提案数
    • 実行された改善施策数
    • 定着した施策数
  • 生産性指標
    • リードタイム短縮
    • ミス・手戻り削減
    • 顧客対応時間の短縮
    • 入電・問合せ解決率の向上
  • 組織指標
    • 離職率の改善
    • 部門間連携回数の増加
    • 1on1実施率の増加
指標カテゴリ
業務改善工数削減、プロセス標準化件数
生産性速度・精度・品質の向上
組織改善離職率・連携回数・心理的安全性指標

→ 数値が取れない領域でも、仮設KPIや行動KPIを設定することで測定可能になります。

アンケートと振り返りの設計

アクションラーニングALは“学習→行動→振り返り”という循環が核にあるため、振り返り設計が評価の質を決めます。

● 振り返りで扱うべき内容

  • どんな質問で思考が深まったか
  • 自分の行動パターンをどう理解したか
  • チームとの関わり方の変化
  • 課題の捉え方がどう変化したか
  • 次のアクションに活かす改善点

● アンケート設計のポイント

  • 行動変容を問う設問を入れる
  • 心理的安全性に関する設問を追加
  • 対話の質向上を実感できたか
  • 改善施策の実行可能性を評価
  • 上司・職場での活用見込みを評価
アンケート項目目的
学習気づき・理解の深さを測る
行動実行可能性・実行意欲を測る
組織チームへの波及効果を測る

研修ROIの整理方法

ROI(投資対効果)は、「研修コスト」 vs. 「改善成果・行動変化による価値」 で整理します。
アクションラーニングALのROIは、他研修に比べて可視化しやすいのが特徴です。

● ROI算出の基本ステップ

  1. 改善施策の効果を定量化
    • コスト削減額
    • 生産性向上による時間価値
    • 顧客満足度向上による売上貢献
  2. 行動変容の価値を可視化
    • 管理職の意思決定スピード改善
    • 1on1・会議の質向上
    • 離職防止による採用・育成コスト削減
  3. 研修コストと比較
    • 講師費用+運営費
    • 人件費(受講者の時間換算)
    • コーチ育成コスト
ROIカテゴリ内容
定量ROIコスト削減・効率化・売上寄与
定性ROI行動変容・安全性・対話文化の形成
中長期ROI離職防止・管理職育成・組織学習の定着

→ アクションラーニングALは「定量+定性+文化醸成」を合わせてROI評価することが重要です。

アクションラーニングが向いている組織・向かない組織

アクションラーニングは非常に効果の高い手法である一方、組織風土・課題の性質によって相性が分かれます。
“誰が受けるか”以上に、“どんな組織に導入するか”が成否を決める重要要素です。

対話文化が未成熟な組織(向いているケース)

対話が少ない組織は、一見アクションラーニングに不向きに見えますが、実は最も大きな変化が生まれやすい領域です。

● 特徴

  • 会議が一方向的で発言が限られる
  • 否定・批判が先に立ち、意見が出にくい
  • 認知のズレが放置されやすい
  • 上司への忖度が強く、本音が出ない

アクションラーニング導入により、

  • 「質問」が主役になることで安全性が高まる
  • 上下関係に依存しないフラットな対話が生まれる
  • 問題の構造が可視化され、議論の質が上がる

→ 対話文化の“再構築”として最も効果が出やすいタイプです。

指示待ち文化が強い組織(向いているケース)

主体性が弱く、「正解を教えてほしい」という文化が強い組織も、アクションラーニングと相性が良い傾向があります。

● なぜ向いているのか

  • 質問によって“自分で考える習慣”が強制的に育つ
  • 他者の視点に触れ、行動の幅が広がる
  • 小さなアクションを積み重ねることで“自走”が生まれる

● 見られる変化

  • 受け身でなく“問いを立てる社員”が増える
  • 課題を自分ごととして扱うようになる
  • 改善行動が自然と増える

→ 指示待ち文化を“自律文化”へ転換する有効なアプローチになります。

変革期の組織(向いているケース)

組織改革・方針転換・組織再編・新規事業など、変革期にはアクションラーニングが非常に有効です。

● 理由

  • 新しい状況では“正解がないため”、質問型思考が機能する
  • 縦割りを超えた対話が生まれ、変革の推進力になる
  • 組織学習が促進され、変化に強い風土が形成される

● 得られる効果

  • 変革時の摩擦が減少
  • 共通認識が整い、組織の一体感が強まる
  • 次世代管理職育成と変革推進を同時に実現

→ 「変化を乗り越えるための学習手法」として特に効果的です。

成功しにくいケース(トップ不在・目的不明瞭など)

アクションラーニングは強力な手法ですが、条件が揃っていないと効果が出にくい、または失敗しやすいケースがあります。

● 成功しにくい組織の特徴

  • トップマネジメントの関与が弱い
     └導入目的が曖昧なまま現場に丸投げされる
  • 目的が不明瞭でテーマがブレる
     └「何を改善したいのか」が定まらず議論が散らかる
  • 権限がないテーマを扱ってしまう
     └実行できない改善案ばかりが生まれてしまう
  • コーチ不在で、ただの会議になる
     └質問が機能せず、学習が生まれない
  • 短期で結果を求めすぎる
     └学習サイクルの定着前に評価してしまう
失敗要因実際に起こる問題
トップ不在成果が現場止まり、展開できない
目的不明瞭議論が浅く、改善が進まない
権限不足行動が起きず“良い話で終わる”
コーチ不在質問が途切れ会議が形骸化

→ アクションラーニングは「組織として本気で改善したい」という姿勢が欠かせない手法です。

アクションラーニングに関するFAQ

Q1. 最適な人数はどれくらいですか?
A. 1グループ 4〜8名程度 が最適です。
人数が多すぎると質問が偏り、少なすぎると視点が限定されます。多様な意見が生まれつつ、1人ひとりが十分に発言できる人数構成が望ましいとされています。

Q2. 管理職が抵抗を示す場合、どう対応すれば良いですか?
A. 管理職は「答えを出さなければならない」「部下の前で弱みを見せたくない」という緊張から抵抗するケースがよくあります。
そのため以下の対策が有効です。

  • 目的を“学習と改善”に置き、評価の場ではないと明確に伝える
  • 質問中心の進行により、上下関係が露出しにくい場を設計する
  • 事前にオリエンテーションを行い、不安・誤解を解消する
  • 小規模パイロットで成功体験を提供する

“管理職が主役ではなく、チーム全体で学ぶ場”であると理解してもらうことが鍵になります。

Q3. オンラインでも実施できますか?
A. はい、オンラインでも十分に成立します。
ブレイクアウトルームやホワイトボードツール(Miro、FigJamなど)を活用すると対面に近い深い対話が可能です。ただし以下の工夫が必要です。

  • 少人数での運用(4〜6名)
  • 発言量が偏らないようコーチによる場づくり
  • カメラオンの推奨
  • 質問ログとしてチャット活用

オンラインでは“沈黙の扱い”“参加姿勢の見える化”が重要になります。

Q4. 組織の機密情報がテーマに含まれる場合はどうすればよいですか?(テーマの秘匿性)
A. 対応方法は3つあります。

  1. テーマを抽象化する(具体名や数値をぼかす)
  2. メンバーを関係部署に限定する
  3. 機密保持を前提に誓約・ルールを明確化する

アクションラーニングは「深い質問」が前提なので、情報開示レベルは必ず事前に調整し、安心して議論できる環境をつくることが重要です。

Q5. コーチは社内で育成できますか?
A. 可能です。むしろ長期的には社内育成が効果的です。
ただし、初期段階から社内のみで育成するのは難易度が高いため、一般的には以下のステップを推奨します。

  1. 外部コーチでパイロット実施(成功モデルの獲得)
  2. 社内候補者の選定(人事、管理職、研修担当者など)
  3. 外部トレーニング+実地OJT
  4. 社内標準プロセスの整備

社内コーチの育成が進むと、「質問型対話」が組織文化として浸透し、研修効果が持続しやすくなります。

Q6. 研修時間の目安はどれくらいですか?
A. 1回のセッションは 90〜120分 が一般的です。
この時間で「質問」「意図確認」「課題再定義」「アクション検討」「振り返り」までを一通り行えます。
また、成果を確実に出すには 2〜4ヶ月の継続運用(全4〜6回程度) が最も効果的です。

アクションラーニングを効果的に取り入れることが重要

アクションラーニングの本質は、問いを通じて課題の構造を捉え、学習と改善を同時に進める「組織の学習装置」をつくることにあります。現場のリアルな課題を扱いながら、メンバーの思考と行動が変わり、その変化が組織全体へ広がっていく点が最大の価値です。

効果を最大化するには、目的の明確化、適切なテーマ設定、心理的安全性、そしてプロセスを支えるコーチの存在が欠かせません。これらが揃うことで、単なる会議ではなく“深い問いと学習の場”が成立します。

また、アクションラーニングは研修だけで完結させず、現場での実行と振り返りを継続して回すことで成果が定着します。人事が伴走し、改善行動を現場につなげる運用設計が成功の鍵となります。

2025年以降に求められる自律型人材、対話型マネジメント、変化に強いリーダー育成とは非常に相性が良く、育成戦略全体を底上げする施策として位置づけられます。アクションラーニングは、未来の組織づくりに直結する重要な育成メソッドです。

アクションラーニング研修の導入をご検討の際は、ぜひワークハピネスにご相談ください。貴社の課題に、一緒に取り組んでいきましょう。

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この記事を書いた人この記事を書いた人

滝澤 正教

人材アウトソーシングのベンチャー企業㈱エスプール(ワークハピネスの親会社)の創立3年目に新卒にて入社。新規現場、プロジェクトの立ち上げから不採算支店を売上日本一の支店に再生するなど、同社の株式上場に貢献してきた。

多数のプロジェクトを通じ、多くのスタッフと携わる中で「人間の無限の可能性」を知り、「人の強みを活かすマネジメント」を広めるべく、2006年よりワークハピネスに参画。

中小企業を中心とした人材開発、組織風土変革コンサルティングPJを推進している。

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