キャリアコーチングを内製化するには?失敗例もふまえてやり方や心構えを解説
社員研修・人材育成

キャリアコーチングを内製化するには?失敗例もふまえてやり方や心構えを解説

各社員が明確なキャリアプランを持って働けるかどうかは、企業にとって自社の将来にも関わる大事な課題です。キャリアプランを描く上で役立つのがキャリアコーチングですが、外部のサービスを利用する代わりに、自社で内製化する手もあります。

本記事では、キャリアコーチングの内製化を検討している方向けに、キャリコーチングの目的ややり方、心構え、役立つヒントなどを解説します。キャリアコーチングの内製化で知っておくべき基本をひととおり把握できるので、ぜひご一読ください。

キャリアコーチングの目的

キャリアコーチングでは、社員がキャリアに関して抱える悩みや問題を解決できるよう、良き方向へと導くサポートを行います。直接的な答えを与えるのではなく、自分自身の中に答えを見いだして解決できるよう誘導するのがポイントです。

社員の悩みや問題には、社内だけでなくプライベートな事柄も含まれます。個人が歩む人生も踏まえつつキャリアプランを描けるよう支援します。

本人がまだ自覚していない強みやスキルを、第三者としての客観的な視点から見つけてキャリアプランを立てやすくするのも、キャリアコーチングの大事な目的です。キャリアコーチングにより社員の悩みが解消されると、「この会社で引き続き働きたい」との意欲も増し、継続的な人材の定着や愛社精神にもつながっていきます。

キャリアコーチングのやり方

社内でキャリアコーチングを内製化する際、どのようなやり方で進めていけばよいのでしょうか。相談を進める上での基本的な流れを、3つのステップで解説します。

【ステップ1】仕事でなりたい理想の姿を明確にする

まずは社員への課題として、数年後の将来を見据えて仕事を通じて実現したい自分の理想の姿を明確化してもらいます。その際、「5年後には多くの部下を指揮するマネジメント的立場に就いている」「10年後にはプライベートも充実させつつ上流工程に携わるエンジニアとして活躍している」など、「○年後の自分」として具体的なイメージを描き出すよう促しましょう。

また、個人としてだけでなく、会社の一員としての視点で考えさせることも大切です。自分が所属組織の中でどう変わっていきたいか、周囲にどのような影響を与える人材になりたいかが具体的にイメージできれば、より現実に沿ったプランが描きやすくなります。

一方で、社員が本当に望んでいる姿であれば、必ずしも現実的なプランでなくても構いません。自分の中に幅広い選択肢や可能性があることを意識させることも大事なためです。

【ステップ2】今までの経験やスキルを整理する

次に、社員がこれまで培ったスキルや経験の棚卸しをして、今の自分を見定めます。過去に所属していた部署やチームでの経験・実績、勉強した専門分野、取得したスキル・資格、築き上げてきた人脈などをポイントに、でるだけ細かく洗い出して整理をします。

第三者のメンターの目を通してであれば本人が気付かない部分も客観的な視点で把握・評価できます。相談者の長所といえる人柄や、強みといえる経験・スキルなどが見えてくるでしょう。

過去の実績や経験、資格以外にも、仕事をする上で、あるいは人として大切にしてきた考えや価値観、見本としている人なども洗い出すと、より深い部分での本人の希望やこれまでたどった道のりが見えてきます。

以上の一連の作業を通じて、理想とのギャップ、今の自分に足りない部分が明確化され、次のステップへとつなげることができます。

【ステップ3】理想を実現するためにやるべきことを洗い出す

ステップ2で整理した現状の保有スキルや経験などをベースに、描いた理想の自分を現実にするために、何をするべきか、何が必要かを具体的に考えていきます。例えば3年後にはこの分野の専門知識を身に付けている、5年後にはこのポジションに就いている、などいつまでに何を成し遂げるかの具体的な道筋を立てます。道筋を立てることで、理想を現実に落とし込むことが可能です。

また、最終的になりたい自分の姿へと近づくためにたどるプロセスの中で、達成すべき小さな目標をたくさん立てると、プロセスを詳細にイメージすることができます。実現困難な大きな目標ばかりだと、途中で挫折する可能性も少なくありません。小さな目標であれば、実現するたびに達成感が味わえて次への励みになるとともに、修正が必要であれば都度見直しがしやすいメリットがあります。

キャリアコーチングの心構え

社内でキャリアコーチングを実践するにあたり、いくつか押さえておきたい事柄があります。特に大事な心構えのポイントを2つに分けて解説します。

各社員の主体性を尊重する

社内でキャリアコーチングを実施する際は、メンターとして考えや思いを伝えるよりも、まず各社員の主体性を尊重するのが大切です。各人の描くキャリアプランに、正解や不正解はありません。その社員が目指すところへ納得の行くかたちで到達できるようサポートするのが、キャリアコーチングの目的です。

ただし、せっかくキャリアコーチングで描いたキャリアプランが思うように進まないために、逆に不満が募って離職につながらないよう注意が必要です。あくまで「この会社で働くこと」を前提としたサポートであることを、初めの段階でしっかり伝えておきましょう。

対等の関係を作る

キャリアコーチングでは、社員のプライバシーやセンシティブな話も関わってくるため、相談者が安心して自分の内面を打ち明けやすくするための環境づくりがまず大事です。

社内でキャリアコーチングをする際は、メンターも社員だと上下関係が発生することになります。特に直属の上司など上の立場にいる人がメンターになると、相談者も遠慮しがちになったり、低評価につながるかもという恐れを持ったり、自分の悩みや本音などを打ち明けにくくなります。

具体的な話をする前、あるいは聴く前に、相手をリラックスさせるような言葉をかけるなどの工夫で対等な関係を築くのが大事です。

社員にキャリアプランを考えてもらうときのヒント

各社員を取り巻く状況は歳を追うごとに変化するため、キャリアプランを描く際も年代ごとに意識すべきポイントは徐々に変わってきます。キャリアコーチングを通じて社員にキャリアプランを考えてもらう際に押さえておくべきヒントを、年代別に解説します。

20代

20代の社員は経験・スキルとも不足しています。まず一人前になるために、個人の成功体験を積む方向でキャリアプランを考えるようアドバイスしましょう。営業やエンジニアなどの専門職なら、一定以上の実力をつけられるようにどのような経験を積むべきか、専門知識やスキルを身に付けるべきか考えるよう導きます。

20代の頃は多くの可能性があるので、自己分析を通じて離職の結論にたどり着くこともあり得ますが、あくまで社内での実施なので、それを勧めるものではない点も留意しましょう。

30代

30代の社員には、これまで進めてきたキャリアプランの見直しをアドバイスしましょう。30代ともなると、それぞれの部署や職務での責任が増えていきます。自分だけでなく家族や周囲のことも考える必要も出てくるため、プライベートでのライフイベントも踏まえながらキャリアプランを立てなければなりません。

30代では、これまで蓄積してきた経験や知識・スキルが無駄にならないよう、現状維持をベースに今やっている分野を極めつつ、社内でのキャリアチェンジを図るよう促します。責任ある立場を担う場面も増えるので、他の社員をまとめる力を伸ばしてリーダーを目指すようアドバイスしましょう。

40代

40代の社員には、これまでの経験や知識を活かせるキャリアプランを考えるようアドバイスします。

現場は後輩に任せ、これまで培った専門知識やスキルを活用して後進を育成したり、業務を管理したりする管理職・マネジメント職などを目指すのがおすすめです。

汎用スキルだけでなく、この年代で誰にも負けない得意分野があれば、社内での立場もより強固に確立され、さらなるキャリアアップ・年収アップにつながる可能性も強調しましょう。

キャリアコーチングを必要としている人が持っていた悩み

キャリアコーチングサービスを利用する人は、どのような悩みを持っているのでしょうか。キャリア・転職情報メディア『ポジサラ』が実施したアンケート調査を元に、主要な動機を見てみましょう。

進んで相談したいと思う人はどのような悩みを持っているのかを把握し、社内でキャリアコーチングを実施する際の参考にしてください。

特に多いのは、将来のキャリアに関する漠然とした不安です。今後のキャリアへの不安は感じているものの、それが何かを具体的に把握するために第三者に相談したかった、何らかの行動を起こすべきだと思ったなどの理由が挙げられています。

次に多いのが、「自己分析が苦手」「向いている職種がわからない」など、自分でやりたいことがはっきりしていないという理由です。

その他、「今の収入に不満を感じていて年収アップを図りたい」「より明確なキャリアアップのビジョンを掲げたい」「上司や同僚との関係がうまくいっていおらず、職場の人間関係などの悩みを相談したかったから」などが主な理由として挙げられていました。

※出典:PR TIMES. 「【調査レポート】キャリアコーチングを受けたきっかけ・動機は?」. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000103533.html, (2023-6-14入手).

キャリアコーチングの内製化に失敗する企業が多い理由

せっかくキャリアコーチングを内製化しても、思うように事が進まず効果が得られないまま失敗するケースは多くあります。失敗の主な理由を2つ挙げて解説します。

形だけの面談になっている

キャリアコーチングが何のための話し合いなのかがきちんと定義・共有されていないため、メンターと社員の片方あるいは双方で目的を理解しないまま、形だけの社内面談で終わってしまう場合があります。これでは、メンターがいくら質問を投げかけても、社員側も聞かれているから答えるだけの受け身の姿勢のままで、「この機会があってよかった」という結果には至りません。

特にメンターが上司となる場合は、部下がどれだけ心を開いて正直に話せるかが重要な課題です。関係上どうしてもしがらみを気にしたり、「評価されているのではないか」などの疑念が働いたりするので、本音を話せるようになるのはおそらく難しいでしょう。

上下関係を気にせず安心して相談でき、プライバシーも守られて信頼関係が築けるメンターが確保できないと、キャリアコーチングはうまくいかないのが現実です。

テクニックで進めようとする

キャリアコーチングはあくまで一対一での相談の場であり、メンターがメインに置くべき姿勢は「傾聴」です。しかし、キャリアコーチングを学んでテクニックを身に付けると、傾聴よりも質問がメインになりがちで、メンターが質問で相談者をコントロールしようとする状況も増えてきます。

信頼関係が十分に築かれていない状況では、メンターがいくら積極的に質問を投げ掛けても、社員が本音を出せる段階ではなく、本人にとっても会社にとっても益とはなりません。

本来は腹を割って話せる関係性の中で、社員が進んでメンターに相談し、メンターはひたすら聞き役に徹して耳を傾け、相談内容に沿って的確にアドバイスをするのがキャリアコーチングのあるべき姿です。

まとめ

キャリアコーチングには、悩みや問題の明確化、無自覚だった強みや長所の発見などのメリットがあります。キャリアコーチングの内製化は有意義な取り組みである一方、趣旨が十分に理解されないまま、傾聴よりも質問重視であったりすると思うような効果が得られず、失敗するケースも多々あります。

「傾聴」や「質問」には技術が必要なため、外部の専門家のサポートを利用するのも一つの手です。ワークハピネスの講師は、優れた洞察力で傾聴のどのタイミングでどういう質問をするかを考え、受講者から本音を引き出しています。本当に望むキャリアプランにたどり着くのに苦労している場合は、ぜひプロのコーチングの導入をご検討ください。

この記事を書いた人この記事を書いた人

滝澤 正教

人材アウトソーシングのベンチャー企業㈱エスプール(ワークハピネスの親会社)の創立3年目に新卒にて入社。新規現場、プロジェクトの立ち上げから不採算支店を売上日本一の支店に再生するなど、同社の株式上場に貢献してきた。

多数のプロジェクトを通じ、多くのスタッフと携わる中で「人間の無限の可能性」を知り、「人の強みを活かすマネジメント」を広めるべく、2006年よりワークハピネスに参画。

中小企業を中心とした人材開発、組織風土変革コンサルティングPJを推進している。

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