新任執行役員研修は、なぜ今これほど求められているのか
社員研修・人材育成

新任執行役員研修は、なぜ今これほど求められているのか

企業を取り巻く変化が早くなり、意思決定のタイミングを逃すことがそのまま競争力の低下につながるようになりました。
事業の複雑さは増し、組織の専門分化も進む。こうした状況では、従来の「部門を強くする」だけでは企業全体の未来を守れません。

新任の執行役員が最初に向き合うのは、この変化の波です。
プレーヤーとして成果を出す力や、部門をまとめるマネジメント力だけでは足りなくなり、経営全体を見渡しながら未来をつくる視座へと移らなければならない。
その役割移行は、想像以上に大きなジャンプです。

新任執行役員研修は、この段差を一人で超えなくてもいいように設計されたプログラムです。
役割に向き合う捉え方や、意思決定の基準、経営チームとしての関わり方を、実践的なテーマと対話を通して育てていきます。

新任執行役員に求められる役割と視座

役員になると、肩書きが変わるだけではなく「見える世界」そのものが変わります。
日々の判断が、そのまま組織の文化や事業の流れをつくっていく。自分の動きが会社全体へ影響していく感覚は、部門長時代とは比べものになりません。

執行役員が担う主要な役割

それを端的に整理すると次の五つに収まります。

・全社的な意思決定を担うこと
・戦略を実行に落とし込み推進すること
・価値観や行動規範を体現し、組織文化をつくること
・役員チームとして協働し、事業間連携を支えること
・未来のリーダーを育てながら、組織の可能性を広げること

これらは単体のスキルではなく、視座の引き上げによって初めて実行できる内容です。

視座の転換が難しい理由

成人発達理論の観点では、人は「自分が信じ込んでいる前提」によって行動を決めています。
役割が変わるということは、この前提を問い直す体験を意味します。

「自分が正しいと思ってきたやり方を手放す」
「全社観点で判断するために、見えていなかった部分にも責任を持つ」
この移行は、意図的な内省や対話のプロセスがなければ難しいものです。

研修では、この役割移行をスムーズにするための思考の棚卸しや、価値観の再整理から始めていきます。

新任執行役員研修の目的

企業ごとにテーマは異なっても、根底にある目的は三つに集約されます。

1)視座を経営レベルへ引き上げる

自分の管掌領域に閉じず、会社全体の最適化が判断軸となる状態を育てます。
具体的には、財務構造の理解、外部環境の読み解き、事業間の相互作用の理解などが含まれます。

2)役員チームとしての連動性を高める

経営は一人で担うものではありません。
意思決定の質を高めるには、心理的安全性のある対話、論点の深まり、多様な視点が必要です。
新任役員は特にチームへの参加感が弱くなりがちで、最初の段階で関係性づくりを意識することが大切です。

3)主体性・オーナーシップを育てる

ここはワークハピネスとして特に重視する部分です。

レンタカー理論でいえば、役員は「車を使う人」ではなく「車を所有する人」に近い存在です。
会社の未来に対して自分でハンドルを握り、責任と自由を持って動く立場です。
エンパワーメントは、能力を与えることではなく、言い訳が不要になる環境を整えること。その環境づくりは役員自身が率先して担います。

この視点が身につくと、役員の行動が周囲の主体性を引き出し、組織全体に影響していきます。

新任執行役員が習得すべき内容

研修が扱う領域は多岐にわたりますが、大きく三つの柱で理解すると整理しやすくなります。

1)経営判断に必要なスキル

戦略思考、財務リテラシー、リスクマネジメントなど、経営における基礎体力となる要素です。
意思決定の精度は、この領域が整うほど高まります。

・事業の構造把握
・全社最適での判断基準
・ミドルマネジメントとの連動
・投資判断の視点

2)リーダーシップと関係性

役員の影響力は、スキルよりも「あり方」に強く現れます。
どのように対話し、どのように意思決定し、どのようにチームを導くのか。
ここには心理的安全性、価値観の共有、対話の質が深く関連します。

・心理的安全性の土台づくり
・合意形成力
・衝突を建設的に扱うスキル
・エンゲージメントを高めるコミュニケーション

3)自己変革と内省

最も見落とされがちで、最も効果が大きいのがこの領域です。

役割移行には必ず葛藤が生まれます。
不公平感、腹落ちしない目標、信頼できない関係……こうした葛藤は、適切に扱えば成長の起点です。

研修では、
・価値観の棚卸し
・行動パターンの理解
・変えられることに集中する習慣
を通して、自分自身へのオーナーシップを高めていきます。

新任執行役員研修のプログラム構成

研修の形式は企業規模や組織課題によって異なりますが、一般的には次のようなテーマで構成されます。

戦略・経営視点

・事業環境分析
・戦略立案のフレーム
・経営会議での論点整理
・財務データの読み解き

リーダーシップ

・役員としての振る舞い方
・心理的安全性を生む対話
・部下の主体性を引き出す関わり方
・価値観と組織文化の体現方法

経営チームとしての協働

・合議制の意思決定
・利害の異なる部門間調整
・衝突の扱い方
・役員チームの信頼構築サイクル

自己変革・内省ワーク

・価値観の棚卸し
・自分の判断パターンの理解
・変化のボトルネックの特定
・行動変容の設計

ケーススタディ

実際の経営判断を題材にした討議を行うと、視座の転換がもっとも早く起こります。
「正解」ではなく「より良い意思決定の基準」を探る形で進めるのが特徴です。

研修導入プロセス

導入プロセスは明確にしておくほど成果が出やすくなります。

1)事前診断

・役員チームの関係性
・個人ごとの課題
・組織フェーズ
・経営課題

これらを把握し、テーマを調整します。

2)研修設計

一律の正解はなく、企業ごとに必要な領域が異なります。
役割期待、事業モデル、組織構造を踏まえ、最適な組み合わせをつくります。

3)研修実施

対話中心の進め方が特徴です。
机上で知識を学ぶだけではなく、自分の判断基準や行動の癖まで明らかになっていきます。

4)実務での実践

研修には終わりがありますが、学びが終わるわけではありません。
実践との往復によって行動が定着します。

5)フォローアップ

・個別コーチング
・役員会の振り返り
・行動指標の確認
・組織への影響のモニタリング

こうしたフォローがあると、研修効果は長く続きます。

効果を最大化するポイント

新任執行役員研修を導入しても、すべての企業で同じ成果が出るわけではありません。
共通して成果が高まる企業には、三つの特徴があります。

1)明確なゴールの合意がある

「何のために役員になるのか」
「どんな意思決定を増やしたいのか」
ゴールが曖昧なままでは、研修の内容が散らばります。

2)心理的安全性のある場がある

役員同士が本音で対話し、その場で思考を組み替えられる環境がある企業ほど、変化のスピードが早くなります。

3)主体性を尊重する風土

管理や統制でなく、エンパワーメントによって役割を引き受ける状態です。
言い換えると、「変われる環境」が整っているということです。

レンタカー理論の通り、オーナーシップが高まると、役員は自ら行動を変えていきます。

測定・評価方法

役員研修の成果は数値化が難しいと思われがちですが、実際にはいくつか明確な指標があります。

行動指標

・議論での論点の質
・意思決定スピード
・対話の量と深さ
・組織へのメッセージの一貫性
・部門間連携の増加

心理指標

・役員チームの信頼度
・心理的安全性
・エンゲージメント

組織指標

・戦略実行度
・離職率の改善
・部門間の摩擦の減少
・次世代リーダーの育成速度

これらを総合的に見ていくと、研修の変化がより鮮明になります。

新任執行役員研修が特に向いている企業フェーズ

導入効果が大きいのは、次のようなフェーズです。

・事業拡大に伴い役員層を増やしたばかり
・経営会議での議論が浅く、意思決定が遅れがち
・部門間連携が弱く、全社最適での判断が難しい
・創業期から成長期へ移行し、役割の書き換えが必要
・役員層の世代交代が進んでいる

こうしたタイミングでは、新任執行役員が担う「視座のジャンプ」が組織全体の変化につながります。

まとめ

新任執行役員は、企業の未来を左右する重要な役割です。
その役割移行は自然には起こりません。
視座を引き上げ、関係性を整え、主体性とオーナーシップを育てるプロセスが必要です。

新任執行役員研修は、そのプロセスを伴走し、未来の経営を担う人材の成長を支えるものです。
自分自身の判断基準が変わり、対話の質が変わり、組織の動き方が変わっていく。
その波が広がった時、企業は本来の強さを取り戻していきます。

新任執行役員研修の導入をご検討の際は、ぜひワークハピネスにご相談ください。貴社の課題に、一緒に取り組んでいきましょう。

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この記事を書いた人この記事を書いた人

滝澤 正教

人材アウトソーシングのベンチャー企業㈱エスプール(ワークハピネスの親会社)の創立3年目に新卒にて入社。新規現場、プロジェクトの立ち上げから不採算支店を売上日本一の支店に再生するなど、同社の株式上場に貢献してきた。

多数のプロジェクトを通じ、多くのスタッフと携わる中で「人間の無限の可能性」を知り、「人の強みを活かすマネジメント」を広めるべく、2006年よりワークハピネスに参画。

中小企業を中心とした人材開発、組織風土変革コンサルティングPJを推進している。

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