
部下指導スキルとは?効果的な教え方・関わり方・信頼関係の築き方まで徹底解説【2025年最新版】
部下を育てることは、上司やリーダーにとって最も重要であり、同時に最も難しい仕事のひとつです。
「何度言っても変わらない」「厳しくすると関係が悪化する」「どう関われば成長するのか分からない」――そんな悩みを抱える管理職は少なくありません。
現代の職場では、単に“教える”だけではなく、部下の主体性を引き出す“支援型指導”が求められています。
本記事では、部下指導に必要なスキルや考え方、実践手法、レベル別の指導ポイントまでを体系的に解説します。
新人から中堅、ハイパフォーマーまで、「育てる上司」になるための実践ガイドとしてご活用ください。
なぜ「部下指導スキル」が今、重要なのか
管理職が直面する「部下が育たない」時代の課題
近年、多くの管理職が口をそろえて言うのが「部下がなかなか育たない」という悩みです。
これは単に若手社員の能力や意欲の問題ではなく、環境変化による「育成構造の変化」が背景にあります。
終身雇用や年功序列が崩れ、キャリアの多様化が進む中で、部下は会社に依存せず「自分の成長軸」で働く時代に突入しました。かつてのように「上司の言うことを聞いて覚える」スタイルは通用しません。上司の指導方法が時代に合っていないと、部下は簡単にモチベーションを失い、離職につながることもあります。
また、職場の成果主義が進む一方で、管理職自身もプレイングマネージャーとして日々の業務に追われ、部下育成に時間を割けない現実もあります。その結果、教育が属人的になり、チーム全体のパフォーマンスが伸び悩むケースが増えています。
現代のマネージャーには「短期間で成果を出す指導」ではなく、「中長期的に自走できる人材を育てる指導」が求められています。
価値観の多様化と指導スタイルの変化(リモート・Z世代対応)
働き方改革やコロナ禍を経て、リモートワーク・ハイブリッドワークが当たり前になった今、部下指導の現場にも大きな変化が訪れています。
対面での何気ない声かけや観察が難しくなり、オンライン上での信頼関係構築やモチベーション管理が新たな課題となりました。
さらに、若手世代、特にZ世代の価値観は、従来の世代とは大きく異なります。
彼らは「上司の言うことを聴く聞く」よりも「自分の意見を尊重されたい」「納得感をもって働きたい」と考えています。その他、「フィードバックのスピード」「目的共有の透明性」を重視する傾向があります。
そのため、上意下達型の指導では反発を招きやすく、むしろ主体性を奪ってしまうケースも少なくありません。
今の時代に必要なのは、「上司が答えを与える指導」ではなく、「部下の考えを引き出すコミュニケーション」。
個々の価値観を理解し、Google社が提唱した“心理的安全性(Psychological Safety)”心理的安全性を担保したうえで、本人の目標や動機に寄り添うスタイルが求められています。
このような指導スキルは、Z世代との信頼関係構築だけでなく、離職率の低下やチームエンゲージメント向上にも直結します。
「教える」から「引き出す」へ――指導のパラダイム転換
従来の「上司が教える」スタイルから、「部下の主体性を引き出す」スタイルへ。
この変化は単なる流行ではなく、組織の成長に不可欠な「マネジメントの進化」です。
コーチング理論でも、「人は自分で気づいたときに最も行動が変わる」とされています。
つまり、指示やアドバイスだけではなく、質問を通して気づきを促し、自分で考える力を伸ばすことが、真の意味での“育成”です。
たとえば、ミスを指摘するだけでなく「次にどうすれば防げると思う?」と問いかける。
成果が出たときには「何がうまくいったと思う?」と振り返らせる。
こうした対話を重ねることで、部下は自らの行動を内省し、再現性のある成長を遂げます。
このような“引き出す指導”は上司自身の学びにもつながり“引き出す指導”は、上司にとっても学びが多く、チーム全体の「考える文化」を育む効果があります。
今、企業が求めているのは、知識伝達型の上司ではなく、共に成長を導く「ファシリテーター型リーダー」なのです。
部下指導スキルの前提となる“信頼関係”とマインドセット
心理的安全性を高める関わり方
部下指導スキルの土台となるのは「心理的安全性」です。
心理的安全性とは、上司や同僚に対して「自分の意見を言っても否定されない」「失敗しても責められない」と感じられる状態を指します。
この状態があることで、部下は自ら意見を出し、改善提案や挑戦を恐れずに行動できるようになります。
心理的安全性を高めるためのポイントは3つです。
- リアクションを否定ではなく“受容”から始めること。
たとえ部下の意見が未熟でも、「そういう考え方もあるね」と受け止めてから意見を伝えることで、安心感が生まれます。 - ミスに対して感情的にならず、“学びの機会”として扱うこと。
「なぜ失敗したのか」ではなく「次にどうすれば良くなるか」を一緒に考える姿勢が重要です。 - 小さな承認を積み重ねること。
「報連相が早かったね」「助かったよ」など、日常の中で肯定的フィードバックを繰り返すことで、信頼のベースが築かれます。
信頼関係は、特別なイベントで生まれるものではなく、日常の“反応の積み重ね”によって育まれるのです。
ハラスメントを生まない伝え方・注意の仕方
部下を指導する場面では、「厳しさ」と「ハラスメント」の線引きが非常に重要です。
伝え方を誤ると、意図せず相手を傷つけ、信頼関係を損なってしまうこともあります。
ハラスメントを防ぐためには、次の3つの観点を意識しましょう。
- 人格ではなく“行動”に焦点を当てる。
「あなたはだらしない」ではなく、「提出期限が守られなかった」という具体的な行動にフォーカスすることで、指摘が建設的になります。 - “指摘”よりも“提案”の形で伝える。
「こうしてほしい」よりも「こうしたらもっと良くなると思う」と伝えることで、受け止めやすくなります。 - 1対1の場を選び、感情を整理してから話す。
周囲の目がある中で叱責すると、部下は「恥をかかされた」と感じやすく、防衛反応を起こします。冷静な環境で対話することが大切です。
上司が「成長を願って伝えている」という姿勢を一貫して持てば、注意や指摘も“信頼の証”として受け取られます。
部下のタイプ・状況に応じた関係構築
部下と信頼関係を築くうえで欠かせないのが、「タイプや状況に合わせた関わり方」です。
部下によって、求めるサポートやモチベーションの源泉は異なります。
たとえば、
- 挑戦志向タイプには、自由度と裁量を与えて伸ばす。
- 安定志向タイプには、手順やルールを明確に伝え、安心感を重視する。
- 承認欲求タイプには、小さな成功を認めて自信を積み重ねさせる。
また、プライベートや体調など、個々のコンディションによって指導の受け止め方も変わります。
「なぜ動けないのか?」と責める前に、「最近どう?」と一言声をかけるだけでも、関係性は大きく変わります。
“結果を出すチーム”は、メンバーが安心して本音を言える関係の上に成り立っています。
部下指導スキルを磨く前に、まず「相手を知る・尊重する」姿勢を持つことが出発点です。
上司に求められる“支援者”としての姿勢
現代のマネジメントでは、上司は“命令者”ではなく“支援者=(サポーター)”としての役割が求められています。
部下の成長を「管理する」のではなく、「支援する」意識への転換が重要です。
支援者としての上司は、次のような姿勢を持ちます。
- 結果だけでなく、努力やプロセスを認める。
成果が出ていなくても、挑戦した姿勢を称えることで、部下の意欲を引き出せます。 - 完璧を求めず、成長の段階を一緒に喜ぶ。
「まだできない」ではなく、「少しできるようになったね」と伝えることで、継続的な挑戦を促せます。 - 部下の“なりたい姿”に寄り添う。
自分の理想像を押し付けるのではなく、部下が描くキャリアや価値観に関心を持ち、その実現を後押しするのが理想的な上司像です。
こうした姿勢を持つ上司のもとでは、部下は「この人の期待に応えたい」と自然に成長していきます。
つまり、信頼関係と支援の姿勢こそが、あらゆる部下指導スキルの基盤となるのです。
上司に求められる主要な「部下指導スキル」一覧
部下指導スキル「傾聴」 ― 話を“聴く”力で信頼を築く
効果的な指導の第一歩は「聴くこと」から始まります。
傾聴スキルとは、単に話を聴く聞くのではなく、相手の意図・感情・背景まで理解しようとする姿勢のことです。
部下が何を考え、どんな不安を抱えているのかを丁寧に聴くことで、「この上司は自分を理解してくれている」という信頼が生まれます。
その結果、指示や助言も素直に受け入れられ、関係性が格段に良くなります。
傾聴のポイントは以下の3つです。
- 相手の話を遮らない(最後まで聴く)
- 相づちや要約で「聴いている姿勢」を示す
- 評価やアドバイスを急がず、まず共感を返す
“聴く力”こそ、すべての指導スキルの出発点です。
部下指導スキル「フィードバック」 ― 行動を変える伝え方
「できていない点」を指摘するだけでは、部下は萎縮してしまいます。
フィードバックスキルとは、相手の行動を“変化”へと導くための伝え方の技術です。
効果的なフィードバックのコツは「事実+感想+提案」の3ステップ。
例:「報告が遅れたこと(事実)で、全体の進行に少し影響があったね(感想)。次回は前日までに共有してもらえると助かる(提案)」
このように伝えることで、相手を責めずに改善の方向性を示せます。
また、ポジティブフィードバック(良い点を具体的に伝える)を意識的に増やすことで、部下の自信と成長意欲を引き出すことができます。
部下指導スキル「コーチング」 ― 主体性を引き出す質問力
現代のマネジメントにおいて最も注目されているのが「コーチングスキル」です。
これは、上司が答えを与えるのではなく、質問を通じて部下の考えを引き出す技法です。
たとえば、「なぜできなかった?」ではなく「次にどうすればうまくいくと思う?」と尋ねる。
このような問いかけが、部下の思考を促し、自発的な行動につながります。
コーチングでは特に以下の3つが重要です。
- オープンクエスチョンを使う(Yes/Noで答えられない質問)
- 否定せずに答えを受け止める
- 行動につながる“気づき”を促す
主体性を引き出す質問力を持つ上司は、部下に「自分で考える力」を育てることができます。
部下指導スキル「ティーチング」 ― 基礎を教え、再現力を高める
一方で、部下の成長初期段階では「教える力=ティーチングスキル」も欠かせません。
経験の浅い社員に対しては、基礎知識や手順を明確に伝えることで、安心して仕事に取り組める環境をつくることが重要です。
ティーチングのポイントは次の3つです。
- 抽象的な指示ではなく、具体的な行動レベルで伝える
- 一度で終わらせず、理解度を確認しながら進める
- 成果を確認し、再現できるように振り返る
教えるスキルと引き出すスキル(コーチング)を適切に使い分けることが、真の指導力につながります。
部下指導スキル「目標設定・進捗管理」 ― 成長を見える化する
部下が自発的に動けない原因の多くは、「何をどこまでやればいいのか」が曖昧なことにあります。
そのため、上司には「目標を明確に設定し、進捗を見える化するスキル」が求められます。
SMARTの原則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)を意識して目標を設定し、週次・月次で振り返りを行うことが効果的です。
また、進捗管理の際は「評価」ではなく「サポート」の姿勢で関わることがポイント。
「今どんな壁がある?」「何がうまくいってる?」と対話的に進めることで、部下は安心して課題を共有できるようになります。
部下指導スキル「承認・モチベーション向上」 ― 継続的な行動を支援する
部下が努力を続けるためには、「承認」が欠かせません。
承認スキルとは、成果だけでなく、日々の行動や姿勢を肯定的に認める力です。
たとえば、「お客様対応が丁寧だったね」「準備のスピードが上がったね」といった言葉が、モチベーションを大きく高めます。
承認の目的は“褒めること”ではなく、“存在を認めること”。
小さな承認の積み重ねが、部下のエンゲージメントと定着率を高めます。
部下指導スキル「権限委譲」 ― 自走するチームをつくる
最後に、成熟したチームを育てるうえで欠かせないのが「権限委譲スキル」です。
すべてを上司が判断していては、チームは成長しません。
部下に一定の判断権と責任を任せることで、当事者意識と自律性が育ちます。
ただし、丸投げはNGです。
「目的」と「期待する成果」を明確に伝えたうえで、「困ったらいつでも相談していい」とサポート体制を整えることが大切です。
任せることは“放任”ではなく、“信頼”の表現であると言えます。
権限委譲が進むほど、上司は「仕組みで支える」マネジメントへと進化できます。
部下を効果的に指導するためのステップ・プロセス
「部下指導スキル」は単なるコミュニケーション能力ではなく、“プロセス設計”の力でもあります。
感情や経験に頼った指導ではなく、ステップを踏んで体系的に関わることで、部下の成長を着実に支援できます。
ここでは、成果につながる5つのステップを紹介します。
ステップ1:現状把握と期待の共有
最初のステップは「現状把握」と「期待の共有」です。
上司が思う課題と、部下が感じている課題にはズレがあることが多いため、まずは相互理解を深めることが大切です。
具体的には、次のような対話を行いましょう。
- 「今どんな業務が得意?どこで悩んでる?」
- 「この仕事を通じてどんな力をつけたい?」
- 「上司として何をサポートできそう?」
こうした質問を通じて、部下の“現在地”を把握し、上司の期待や組織の方向性とすり合わせます。
この段階で信頼関係が築けていないと、後の指導が形だけのものになってしまいます。
まずは「理解し合う」ことが最初の一歩です。
ステップ2:課題の明確化と目標設定
次に行うのが、「課題の明確化」と「目標設定」です。
多くの部下は“何を改善すべきか”を漠然としか理解していません。
上司は、観察と対話を通じて「具体的な行動課題」に落とし込む必要があります。
例:
✕「もっと頑張って」 → ○「商談後のフォロー連絡を24時間以内に行う」
✕「チームを意識して」 → ○「週1回の情報共有ミーティングで1つ意見を出す」
そして、SMARTの原則(※英語の略称:Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound:具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)に基づいて目標を設定します。
このとき、「組織目標」と「本人の成長目標」をセットで考えるのがポイントです。
上司の役割は、“目標を与えること”ではなく、“目標を一緒に作ること”です。
ステップ3:行動計画・実践サポート
目標を立てたら、次は“実践できる形”に落とし込む段階です。
多くの部下は、「何を」「いつまでに」「どうやって」行動すれば良いかが明確にならないと、動けません。
上司は、以下の3点を意識してサポートします。
- 優先順位を明確にする(同時に多くの課題を与えない)
- 実行ステップを細分化する(1週間単位で行動を設定)
- 定期的なチェックインを行う(進捗と感情の両面を確認)
このフェーズでの上司の関わり方は「管理」ではなく「伴走」。
「今、困っていることはある?」「他にサポートが必要?」と尋ねながら、部下が自信をもって動ける環境を整えることが鍵です。
ステップ4:振り返りとフィードバック
行動後の「振り返りとフィードバック」は、成長の質を高めるプロセスです。
ここでは、「何ができたか」「何が課題だったか」「次にどう活かすか」を対話を通じて整理します。
効果的な振り返りの流れは以下の通りです。
- 本人に話させる(まずは自己評価を引き出す)
- 上司が観察した事実を伝える(事実ベースで肯定・指摘)
- 改善の方向性を一緒に考える(押しつけではなく共創)
また、一般的には、ポジティブなフィードバックを多めに(目安として7:3程度)意識すると効果的とされています。フィードバックの比率は「ポジティブ:ネガティブ=7:3」が理想とされます。
良い点を具体的に伝えることで、部下は「次も頑張ろう」という内発的動機を持てるようになります。
ステップ5:成果を承認し、次の成長につなげる
最後のステップは「承認」と「次の成長フェーズへの移行」です。
成果が出たときには、大小に関わらずしっかりと認めることが重要です。
上司の「よくやった」「助かった」の一言は、部下の次の行動を生み出す最大のエネルギーになります。
また、承認の際には「何を」「どのように」良かったのかを具体的に伝えましょう。
例:「お客様への報告メールの文面が丁寧で、信頼感が伝わっていたね。」
このように伝えることで、部下は“何を再現すれば良いか”を理解できます。
最後に、成果の承認を「終わり」ではなく「次の目標への橋渡し」として位置づけること。
「次はどんな力を伸ばしていきたい?」と未来志向で締めることで、継続的な成長サイクルが生まれます。
部下指導スキルを高めるために知っておきたいタイプ別・レベル別の指導アプローチ
効果的な指導を行うためには、「全員に同じやり方」で関わるのではなく、部下のレベルやタイプに合わせてアプローチを変えることが重要です。
ここでは、代表的な4タイプに応じた指導の考え方と実践ポイントを紹介します。
新入社員・若手社員への指導 ― 教育とフォローのバランス
新入社員や入社数年目の若手は、仕事の基礎・考え方・社会人マナーなど、学ぶことが多く不安を抱えやすい層です。
この層への指導では「教える」と「見守る」のバランスが鍵となります。
指導のポイント
- 明確な指示と手順を示す
曖昧な表現ではなく、行動レベルで「何を・どの順に・どの基準で」行うかを明示する。 - 小さな成功体験を積ませる
難しい課題を与える前に、達成できるタスクから任せることで、自信と責任感が芽生える。 - フォロー頻度を高める
1on1ミーティングや進捗確認を短いスパンで行い、不安を放置しない。
上司の姿勢
若手にとって上司は“評価者”よりも“教育者”。
間違いを責めず、安心して質問できる環境をつくることが、早期成長と離職防止につながります。
中堅社員への指導 ― 自立とチャレンジの機会づくり
入社3〜7年目の中堅社員は、ある程度のスキルを身につけており、次のステップとして「自立」と「挑戦」が求められる段階です。
一方で、業務の慣れや惰性により、成長が停滞する時期でもあります。
指導のポイント
- “任せる勇気”を持つ
過度に管理するのではなく、責任あるタスクや小規模プロジェクトを任せることで、リーダーシップ意識を育てる。 - 目標設定を“成果+学び”で構成する
「数字目標」だけでなく、「新しい手法に挑戦する」などの行動目標を併用する。 - 定期的な振り返りを設ける
現場任せにせず、進捗・成果・課題を一緒に検討する機会を設ける。
上司の姿勢
中堅社員に必要なのは“管理”ではなく“信頼”。
失敗を咎めるよりも、「なぜうまくいかなかったか」を一緒に考える姿勢が、自律型人材を育てます。
ハイパフォーマーへの指導 ― 権限移譲と成長支援
成果を出しているハイパフォーマーには、他のメンバーと同じ指導をしてはいけません。
彼らは既に「教えられること」よりも「挑戦できる環境」を求めています。
指導の焦点は、“管理”ではなく“機会提供”です。
指導のポイント
- 裁量と信頼を明確に与える
「任せる」だけでなく、「あなたの判断を信頼している」と伝えることで、責任感とモチベーションが高まる。 - 成長の方向性を共に描く
「次にどんな役割を目指したいか」「どんな強みを伸ばしたいか」を対話で明確にする。 - 挑戦を支援し、失敗を受け止める
新しい領域に挑戦させ、結果が出なくてもプロセスを評価する。
上司の姿勢
ハイパフォーマーにとって理想の上司は、“評価者”ではなく“スポンサー”。
権限移譲と信頼を通じて、自律的なリーダーを育てることが組織全体のレベルアップにつながります。
モチベーションが低い部下への対応 ― 原因分析と再エンゲージメント
モチベーションが下がっている部下に対して、安易に「頑張れ」と言っても逆効果です。
まずは「なぜ今やる気を失っているのか」を冷静に分析し、再びエンゲージメントを取り戻すサポートが必要です。
指導のステップ
- “原因の層”を見極める
- 業務内容の不満(役割ミスマッチ)
- 人間関係のストレス
- 評価・報酬への不満
- プライベートの影響
どの層に問題があるかを丁寧に聞き出す。
- 共感と理解から始める
まず「そんな状況ならそう感じるのも無理ないね」と受け止める。否定や説教は禁物。 - 小さな目標を再設定する
モチベーションが低下しているときは、大きな目標よりも「一歩先の行動」に焦点を当てる。
例:「今週はこのタスクを仕上げる」「まずは1件成功事例をつくる」など。
上司の姿勢
モチベーション低下は、“怠け”ではなく“サイン”です。
責めるのではなく、原因を共有し、共に立て直す伴走型の姿勢が求められます。
「一人にしない」ことが、再び火を灯す第一歩です。
部下指導スキルアップに役立つフレームワーク・ツール
部下指導を「感覚」ではなく「仕組み」として実践するためには、効果的なフレームワークやツールの活用が欠かせません。
ここでは、現場でよく使われる4つの代表的な指導支援ツールを紹介します。
GROWモデル(Goal・Reality・Options・Will)
「GROWモデル」は、コーチングの基本フレームワークとして世界的に広く使われている指導手法です。近年はAIコーチングツールにも組み込まれるなど、実務現場での活用が広がっています。
上司と部下の対話を、論理的かつ前向きに進めるための枠組みであり、特に目標達成や課題解決の面談に効果的です。
| ステップ | 内容 | 質問例 |
|---|---|---|
| G:Goal(目標設定) | 何を達成したいのかを明確にする | 「今期どんな成果を出したい?」「理想の状態は?」 |
| R:Reality(現状把握) | 現在の状況や課題を整理する | 「今どこまで進んでる?」「うまくいっていない原因は?」 |
| O:Options(選択肢の検討) | 取れる方法やアイデアを出し合う | 「他にどんなやり方がありそう?」「誰に相談できそう?」 |
| W:Will(行動の意志) | 実際に行動へ落とし込む | 「最初の一歩として何をする?」「いつまでにやってみる?」 |
このプロセスを使うことで、上司主導の“教え込み”ではなく、部下自身が“気づいて動く”指導に変わります。
1on1ミーティングの進め方テンプレート
1on1ミーティングは、部下の成長支援・関係構築・課題発見の場として定着しつつあります。
しかし、「ただ雑談で終わる」「評価面談の延長になる」といったケースも少なくありません。
以下のテンプレートを活用することで、目的のある1on1ミーティングを実現できます。
【1on1ミーティング進行テンプレート(30分想定)】
- 冒頭(5分)
雑談・最近のコンディション確認
→「最近どう?仕事の調子や体調は?」 - 進捗共有(10分)
目標・タスクの現状を確認
→「今取り組んでいることの中で順調な点と課題は?」 - 課題・改善(10分)
サポートが必要な部分を一緒に整理
→「何か助けが必要なことある?」「どうすればうまくいきそう?」 - 次のアクション(5分)
具体的な行動・約束を決める
→「次の1週間でまずやることは?」
面談の記録を簡単なシート(例:課題・行動・サポート内容)で残すと、次回のフォローがしやすくなります。
OJT指導チェックリスト/フィードバックシート
OJT(On-the-Job Training)は、現場での育成手法として最も身近で効果的な方法ですが、「教えっぱなし」「確認不足」になりがちです。
以下のチェックリストとフィードバックシートを活用することで、OJTの質を安定化できます。
【OJTチェックリスト例】
| チェック項目 | ○/× | メモ |
|---|---|---|
| 目的・ゴールを最初に共有できているか | ||
| 実演+説明をセットで行っているか | ||
| 本人に実践させ、振り返りを行っているか | ||
| 改善点を具体的に伝えているか | ||
| 成果を評価し、次の課題を提示しているか |
【フィードバックシート例】
- よかった点(具体的に):________________
- 改善点(行動レベルで):________________
- 次回までの課題/行動目標:_______________
OJTは「やらせる」だけでなく、「ふりかえる仕組み」をセットにすることで初めて成長が定着します。
リモートワーク時代に有効なオンライン指導のコツ
リモート環境では、表情や温度感が伝わりにくく、コミュニケーションの“質”が下がりやすいという課題があります。
しかし、工夫次第でオンラインでも高い信頼関係と指導効果を得ることができます。
オンライン指導のポイント
- カメラON・リアクション重視
表情やうなずきで「聴いている」「理解している」を伝える。 - 短時間・高頻度の接触
1回の長時間面談よりも、10〜15分のこまめなチェックインを増やす。 - チャットでの“即時承認”を習慣化
成果報告や進捗共有に対し、「いいね!」「助かる!」など即レスで反応する。 - ドキュメント共有で透明性を保つ
口頭だけでなく、共有シートやタスク管理ツールで状況を“見える化”する。
オンライン時代の上司に求められるのは、「距離を感じさせない関わり」。
“デジタル越しの傾聴と承認”が、今後のマネジメントの基礎スキルになります。
部下指導に関するよくある課題とその解決策(Q&A)
部下指導は「理論ではわかっているけれど、現場ではうまくいかない」と悩む上司が多いテーマです。
ここでは、よくある4つの課題をQ&A形式で整理し、実践的な解決策を紹介します。
Q1:「忙しくて指導の時間が取れない」場合
■課題の背景
プレイングマネージャーが増える中で、「自分の業務で手一杯」「育成まで手が回らない」という声は非常に多く聞かれます。
しかし、指導の時間を後回しにすると、部下の成長が遅れ、結果的に上司の負担が増えるという悪循環に陥ります。
■解決策
- “日常業務の中で指導する”発想に切り替える
業務指示・報告・雑談など、あらゆる接点が育成の機会です。
たとえば「報告ありがとう。次は〜を意識してみよう」と一言添えるだけでも“即時フィードバック”になります。 - 1on1ミーティングを短時間・高頻度で設計する
1回30分×月1回よりも、10分×週1回の方が効果的。
「忙しいからできない」ではなく、「短くても続ける」ことを優先しましょう。 - OJTチェックリストを活用し、属人的な指導を減らす
指導項目を明確化することで、短時間でも要点を押さえられます。
■ポイント
「時間がないから指導できない」のではなく、「仕組みがないから時間が取れない」。
指導の“習慣化”が、マネジメント効率を大きく高めます。
Q2:「厳しく注意すると関係が悪化する」場合
■課題の背景
現代の職場では、上司の叱責が“パワハラ”と誤解されるリスクもあり、「注意できない」「嫌われたくない」と悩む上司は少なくありません。
しかし、問題を放置すれば、組織全体のパフォーマンスが低下します。
■解決策
- “人格”ではなく“行動”を指摘する
例:「あなたはだめだ」ではなく「締め切りが守られなかった点が問題」。
行動レベルで伝えることで、相手は冷静に受け止めやすくなります。 - 「期待」ベースで伝える
「ここは直してほしい」よりも「次はこうなってほしい」と未来志向で伝える。 - 指摘の前後に“承認”を入れる
「最近努力してるのは伝わってる。そのうえで、〜を改善しよう」
というように、認める→指摘→支援という流れを意識します。
■ポイント
「厳しさ」と「冷たさ」は別物。
“叱る”のではなく“期待を伝える”姿勢が、信頼を損なわない注意法です。
Q3:「成果が出ない部下へのモチベーション管理」
■課題の背景
結果が出ない部下ほど、上司が焦り、つい「もっと頑張れ」と言いたくなります。
しかし、叱咤激励ではなく、モチベーションの“構造”を理解することが解決の近道です。
■解決策
- 「できない理由」を一緒に整理する
スキル不足なのか、目標が不明確なのか、環境要因なのか。
原因を特定しなければ、対策は空回りします。 - 小さな成功体験を設計する
大きな目標を一気に追わせるのではなく、達成しやすい行動目標に分解。
「1日1件の報告改善」などの小目標が、再びやる気を取り戻すきっかけになります。 - “認めるタイミング”を意識的に増やす
成果が出ていなくても、「行動した」「改善しようとした」点を即承認。
「行動が報われる」実感が、モチベーションを再点火させます。
■ポイント
モチベーションは「言葉で上げる」のではなく、「行動で引き出す」。
部下の変化を見逃さず、“努力を評価する目”を持つことが上司の器量です。
Q4:「指導がハラスメントにならないか不安」
■課題の背景
ハラスメント防止への意識が高まる中、指導そのものを避ける管理職も増えています。
しかし、“何も言わない”ことは、部下にとっても組織にとってもマイナスです。
■解決策
- 「目的」と「プロセス」を明確にする
「指摘するのは、成長のため」「改善を一緒に考えるため」と、目的を伝えるだけで受け取り方は変わります。 - 感情ではなく、事実とデータで伝える
「前回の納期は3日遅れた」「メールの誤字が3件あった」など、客観的な事実を基に会話する。 - 1対1・記録を残す形で行う
感情的な場面を避け、冷静な環境で面談を設定。
必要に応じてフィードバックシートに記録を残すことで、誤解やトラブルを防げます。
■ポイント
ハラスメントと指導の違いは、“相手の成長を願っているかどうか”。
伝える側の目的が誠実であり、コミュニケーションが双方向であれば、恐れる必要はありません。
部下指導スキルは“育てる上司”への第一歩
単発の注意・指示で終わらせない「成長支援の仕組み化」
優れた上司ほど、「部下を動かす」よりも「部下を育てる」ことに時間を使っています。
しかし多くの職場では、注意や指示がその場限りで終わり、行動変化につながらないケースが少なくありません。
ポイントは、“指導を仕組み化”することです。
具体的には、以下のような仕組みが効果的です。
- 1on1ミーティングの定期化(週・隔週単位で成長を確認)
- 目標管理シートの共有(上司と部下が同じゴールを見て動ける)
- フィードバックの可視化(評価だけでなく、成長記録を残す)
これらを継続することで、上司個人の感覚ではなく「チーム全体で育てる文化」が根づきます。
つまり、優れた指導とは一度きりの行為ではなく、成長を循環させる“仕組み”そのものなのです。
最終的に、部下指導スキルとは――
「人の可能性を信じ、支援し、共に成長する力」。
それを実践できる上司こそが、チームの未来をつくるリーダーです。
部下指導スキル研修の導入をご検討の際は、ぜひワークハピネスにご相談ください。貴社の課題に、一緒に取り組んでいきましょう。

人材アウトソーシングのベンチャー企業㈱エスプール(ワークハピネスの親会社)の創立3年目に新卒にて入社。新規現場、プロジェクトの立ち上げから不採算支店を売上日本一の支店に再生するなど、同社の株式上場に貢献してきた。
多数のプロジェクトを通じ、多くのスタッフと携わる中で「人間の無限の可能性」を知り、「人の強みを活かすマネジメント」を広めるべく、2006年よりワークハピネスに参画。
中小企業を中心とした人材開発、組織風土変革コンサルティングPJを推進している。






















