私の親友で大手金融機関の労働組合の委員長を長く務めていた彼からの話。毎年、何百という支店を訪ねて現場の本音を酒など呑みながら引き出し、組織の問題点とその解決策を経営に提言するのが仕事。
彼曰く、「ドアを開けて中に入った瞬間で、その支店や部署がうまくいってるかどうかが分かる。」
ポイントは若手の表情だとか。建物の歪みはその構造物の一番弱い部分に出る様に、その組織の歪みは構造的に1番弱い若手にかかると。だから若者が活きいきとしているか、辛そうか。彼らの表情を見ればその組織の状態が秒でわかるのだそうです。
業績へのプレッシャーがかかる場面、ベテランたちは仕事のスキルも経験も豊富なので、要点を押さえて適当に手を抜きつつ、要領良く課題をこなします。また、無謀に高い目標だった時には面従腹背、頑張っている素振りを見せて、実のところ適当に受け流して自分を守ります。一方、業務スキルも低く経験も浅い若者はこの高い業績目標のプレッシャーをもろに受け止めてしまいます。頑張れど頑張れど見えないゴール。この状態が永遠に続くと思いこみ、長時間労働と過度なストレスからメンタルを病んでしまいます。
「若い時の苦労は買ってでもしろ!」とか、「空けない夜はない。頑張ろう!」とかのアドバイスは一部の若者には有効かもしれませんが、苦しみのど真ん中にいる若者には全く響きません。 小学校のクラスでいじめられている子供に対して、親が「世界は広いのよ。小学校のクラスが世界の全てじゃないのよ!」とか、「この状態が永遠に続くわけじゃないんだから頑張りなさい!」なんてアドバイスをしている様なものです。全く子供の救いにはなりません。 苦しんでいる若者を救う唯一の手段は、上司や先輩たちが協力して、実際の業務負荷を下げてあげるだけです。
テレワークになった今、ドアを開けて一発で組織の状況を見抜くのは不可能です。大切なのは若者との対話の時間です。ライン長ではない大人がひたすら若者の本音を引き出して聴く。若者からありのままの気分と現場の状況を聴くと、その組織のマネジメントがうまくいっているのか?戦略に無理がないか?業務のプロセスが陳腐化していないか?チームが前進するための障害が赤裸々となります。
若者が苦しむという事は、事業構造のどこかに無理があるのです。
無理は続きません。
若者の声に真摯に耳を傾け、業務の抜本的な改革を目指しましょう。
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公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。
現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。