先日、ワークハピネスの研修開発会議に参加して面白い変化を知りました。
若年層の研修現場で、
「自分の成長テーマは何でしょう?」
このような問いかけをすると、以下のような質問をしてくる子が増えてきたとのこと。
「成長しなければいけないのですか?ありのままの自分でいれば良いと思うのですが?」
昭和世代の人々がすんなりと受け入れた「成長」という価値観にZ世代は不快感や疑念を持っているらしいのです。
これは興味深い変化。
早速、ネットや書籍等で、Z世代を調べてみました。
かつて、競争が嫌いで自分らしさを大切にする「ゆとり世代(1987年〜2004年生まれ)」が入社してきたとき、企業は戸惑いました。
「Z世代(1996年〜2015年生まれ)」はゆとり世代の若者の特徴を有しつつも、さらなる進化を遂げている模様です。
まずは、「ゆとり世代」のおさらい。
彼らは大幅に学習時間が削減された新学習指導要領、いわゆる「ゆとり教育」を体験した世代です。
幼少期から、親や先生から、ナンバーワンよりオンリーワンを目指しなさい。好きなことを探して、自分らしくありなさい。そう言われ続けました。
そして、大学全入時代の中、5割超の学生がAO等の推薦入学で大学に進学しました。推薦入学によって重要となるのが内申点。
なので彼らは、先生の言うことを素直に聞き、遅刻や提出物期限破り等の失点を嫌います。
この影響か?企業に入ってからも指示待ち傾向。
仕事においてはお膳立てが必要で、マニュアルを欲しがります。
「ゆとり教育」の体験と同じ以上に重要なのが携帯電話です。
ほとんどの子は中学から高校までに携帯電話を持ち、彼らは、友人たちとメール等でいつでもつながれる初の世代となりました。
自慢したり、目立ったりするとクラスの裏掲示板でいじめにあいました。
その結果、周囲の空気を読んで無難な発言をし、協調性が高く、リーダーシップをとりたがらなくなりました。
彼らを一言で表現するなら「素直で優しい子」です。
また、少子化の影響で一人っ子も多く、両親とその両祖母の6ポケッツで幼少期から欲しいものは何でも買ってもらってきたので、物欲が少なく、「お金が欲しい!」といったハングリー精神は総じて低い傾向があります。
同時に、生まれてからほとんどの時代を平成不況の中を生きてききて、親世代の減給やリストラや見聞きし、長く続いた就職氷河期経て社会に出たのでてきたので、安定志向が高く、高望みをせず、現状維持は成功ととらえます。
経済成長を見たことがなく、ニュース等で何度も超高齢化社会と年金問題等の暗い未来予想を見せられてきたので、将来不安は大きく、消費が嫌いで貯金が大好きです。
車ばなれ、酒ばなれ、海外旅行ばなれ等、若者の消費”ばなれ”が進みました。
異性に対する積極性も減退し、「草食男子」という言葉も生まれました。
以上の生育環境の結果、空気を読んで争わず、自分らしいスモールライフを求めるのが「ゆとり世代」の特徴です。
「ゆとり世代」は「成長」に意義を唱えたりしませんでした。
仮に、「脱成長」の価値観を持っている子がいても、従順で調和を重んじる彼らがそれを講師に向かって発信することはありませんでした。
むしろ、彼らは将来不安が大きいので「必要とされ続けるために(将来リストラされないために)成長しましょう!」と問い掛ければ素直に課題に取り組みました。
ゆとり世代とも違うZ世代
Z世代も「ゆとり教育」経験者なので「ゆとり世代」と同様な傾向があります。
自分らしさを重視して、空気を読んで、人を傷つけず、協調的で指示待ち。
ところが、Z世代にはゆとり世代とは大きく異なる思春期体験があります。
それは、スマホ&SNS。
ゆとり世代にもmixi等のSNSはあったのですが、ベースが携帯電話なので、情報量も少なく、その活用方法は友達とのつながりがメインでした。
ところが、小さなPCであるスマホでは発信できる情報量が激変しました。
Instagram、Twitter、TikTok等で、写真や動画をアーティストの様に発信できるようになったのです。
ゆとり世代がつながれる世代だとしたら、Z世代は発信もできる世代です。
空気も読むけど、自分らしい発信もする。
匿名の裏アカウントを持って、積極的に自己主張する人も登場しました。
様々な友人やインフルエンサーたちのありのままの日常が見て育ってきたので、多様性に大変寛容。
自分は自分、人は人。
気に入らない人はLINEでブロック。つながりを断ちます。
Instagramの鍵アカで気の合う仲間同士だけでプライベートを共有。
自分の居心地の良いコミュニティーだけを選んで楽しく過ごす。
子供の頃から、仲間の発信に「いいね!」を送り、自分の発信にも「いいね!」をもらう。
自ずと承認欲求が高くなり、発信を通した自己ブランディングも意識するようになりました。
友人の中には、プチ・インスタグラマー、インフルエンサー、ユーチューバー、TikTokerもいるので、自分もなんでもできそうな万能感を持っています。
一方で、エモい投稿をしたときに「いいね!」が少なくて、海より深く落ち込むことも経験済。
Tiktokの調査による「Z世代白書」によれば、Z世代の特徴は、次の3つだとか。
・矛盾した”多面性”
・不完全なものほど信じる
・なんでも”かじる”
「矛盾した”多面性”」とは、
・世間体をとても気にするけど、同時に個性も重視する
・「いいね!」の数で一喜一憂する承認欲求が強いが、自分が純粋に楽しいと思えるコトも大事
・向上心が強いと思いきや、果てしなくネガティブな時もある
スマホ&SNSネイティブな彼らは、前の世代と違って「つながり」と「発信」の両面を体験してきました。そこから多面性と多様性尊重という資質を得ました。
そもそも人間は矛盾した生き物。
「成長」一辺倒は人間として不自然なのです。
Z世代は、多面性は矛盾ではなく、それが人間だと自覚している文化人なのです。
なので、彼らは「不完全なものほど信じる」のです。
前傾、「Z世代白書」に掲載されていた若者の発言からの引用です。
“一つの側面だけじゃわからない。色々な面を見ないと人間として共感できないし、親近感が湧かない“
“カッコつけているところもゆるいところも、全部見えると初めて本物に見えてくる“
SNSネイティブな彼らは、広告が嫌いで、友達やインフルエンサーの方が親近感が湧いて信憑性を感じます。
ネガティブな面を見せることは、むしろ信頼を得らために必須なのです。
そして彼らは何でも”かじる”世代です。
一つのことに集中して取り組んでダメだと辛い。だから、保険をかけて色々試します。
キャビンアテンダントを目指して頑張っていたのに、コロナで採用ゼロ。
飲食店を持ちたいと頑張っていたのにコロナで飲食店の未来が不透明。
アメリカ同時多発テロ、リーマンショック、東日本大震災、新型コロナ、、とさまざまな未曾有を体験し、将来が不透明で不確定だと感じている彼らは一つのことに固執しないというサバイバル手法を身に付けました。
良い意味で、やり切らない、執着しないところがZ世代のスタイルなのです。
「Z世代〜若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?」原田曜平著
によれば、Z世代を象徴する特徴的な価値観は”Chill(チル)”だとか。
”Chill(チル)”は、元々はアメリのラッパーたちのスラングで”Chill out”の略。
日本語に訳せば、「まったりする」というニュアンス。
『何してる?』
『YouTube見て、チルってる』
って感じで使います。
Z世代にとって、スマホは必需品。多くの人は依存症です。
スマホで、YouTubeとかTiktokを見たり、ゲームしてれば楽しいし、合間に友達とLINEでやりとりすれば孤独も感じない。
そんな環境が生んだ彼ら特有の文化が”Chill(チル)”
家で、まったりとする時間がとても大切なのです。
現在、中2で、Z世代ど真ん中の私の息子に、
「何している時が一番楽しい?」と聞いたら、
「YouTube見たり、ゲームしたりしてダラダラしているとき」と言いました。
パパに通じるように”Chill(チル)”を”ダラダラ”に言い換えてくれたのでしょう(笑)。
長く続いた「アベノミクス」の効果で、コロナ前はどこの企業も慢性的な人手不足でした。
そんなわけで企業に勤めるZ世代は就職の超売り手市場を経験して入社しています。
チヤホヤされて、人生、何とかなると感じている。
そして、スマホさえあれば楽しく生きていくのにそれほどお金は必要ない。
頑張れば誰でも成功して豊かになるわけではないし、世界は不確かで、努力した結果が報われる保証もない。
一つのことに執着するのは危険。
毎日に”Chill(チル)”は必須。
スマホ&SNSネイティブのZ世代が「脱成長」の価値観を持つようになったことも頷けます。
そして、講師に、
「成長しなければいけないのですか?ありのままの自分でいれば良いと思うのですが?」
と質問。
Z世代は、発信に慣れているし、多様性は尊重されるべきだという価値観も強いので、「脱成長」を発信する心理的なハードルが低いのです。
ところで、若者の教育を担っている大人は「脱成長」価値観を持つ若者にどう対処すれば良いのでしょうか?
まず、彼らが多様性に寛容で人間の矛盾した多面性を理解している文化人だということを尊敬しまししょう。
そして”Chill(チル)”を大事にしている彼らのライフスタイルを尊重しましょう。
彼らが望んでいるのは、コスパ良く、自分らしい成功をして、チルれることです。
あなたらしい成功を手伝う姿勢で接すればわかりあえます。
まずはやってみよう!は通じないので、彼らが納得するまで理由を説明し、丁寧に寄り添って教えてあげましょう。
褒められて育ったので、9割ほめて、「素晴らしい!君は才能があるね!あと、ここをもう少し変えたら完璧だね」って感じで。
そして、不完全なものほど共感して信頼するので、カッコはつけず、あなたのネガティブな側面、ゆるい側面、失敗談等、ダメな部分を積極的に見せて行きましょう。
趣味や子育て等に関して、相談して頼るのもありです。
ところで、Zの次にくるのはアルファ世代です。
彼らを特徴づける環境は、きっとAI&ロボットとなることでしょう。
「Z世代マーケティング 世界を激変させるニューノーマル」
ジェイソン・ドーシー、デニス・ヴィラ著からの引用です。
“…その日、仕事から帰宅した私たちがキッチンに入ると、当時6歳だった娘のライアの声が聞こえた。「アレクサ、12+13はいくつ?」「アレクサ、レインボーのつづりは?」と言っていた…ライアがアレクサを頼らない日はない。天気を訊くにもアレクサ。目覚ましをセットするにもアレクサ。ジョークで笑うにも、ちょっとした質問をするにもアレクサだ。…つねにスマートデバイスに囲まれ…電話を使うときには「ヘイ、シリ」と呼びかける…”
アルファ世代がどんな新入社員に成長するのか?
今から大変楽しみです♪
株式会社ワークハピネスは人材育成研修・組織開発コンサルティングを通して
人と企業の「変わりたい」を支援し、変化に強い企業文化をつくる支援をしています。
新入社員〜管理職・役員研修のほか、全社向けチームビルディングまで
貴社の職場課題に合わせたカスタマイズ対応が可能です。
ウェブサイトにはこれまでに弊社が支援させていただいた研修および
組織コンサルティングの事例を掲載しております。ぜひご参考ください。
公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。
現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。