
アンガーマネジメント研修とは?職場のストレス・感情コントロール力を高める効果的なプログラムを解説
職場で「つい感情的に言ってしまった」「叱責で関係性が悪化した」といった経験はありませんか? リモートワークや多様な価値観の広がりによって、組織内コミュニケーションの難易度は高まっています。特にリーダーやマネジメント層は、自身の感情をコントロールし、相手に配慮した対応が求められる場面が増えています。
アンガーマネジメント研修は、怒りやストレスと上手に向き合い、冷静かつ建設的なコミュニケーションを実現するためのプログラムです。
本記事では、アンガーマネジメント研修の目的や効果、具体的なプログラム内容、成功事例、オンライン対応まを解説。管理職・リーダー層を中心に、組織全体の心理的安全性向上や職場環境改善を目指す企業担当者に役立つ情報をお届けします。
アンガーマネジメントとは?

アンガーマネジメントは信頼されるリーダーとして成長することはもちろん、自身の感情を適切に管理するための役割も果たします。
まずは、アンガーマネジメント研修の目的や背景、そしてその意義について解説していきますう。
アンガーマネジメントの基本概念
アンガーマネジメントは、怒りという感情を理解し、適切にコントロールする技術です。怒りを抑え込むのではなく、「上手に怒ること」や「怒る必要のないことは怒らなくて済むようになること」を目標にしています。
アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで生まれたと言われています。現在では世界中の企業や教育機関で活用され、日本でも、職場での感情管理スキルとして重要視されるようになりました。
怒りには個人差があり、同じ状況でも人によって反応が異なることを理解することで、他者への理解と配慮も深まります。職場において多様な価値観を持つメンバーと協働する際には、特に重要となる視点です。
感情コントロールが求められる背景

現代の職場環境では、感情コントロール能力がこれまで以上に重要視されています。働き方や人材が多様化し、価値観や経験が異なる相手との円滑なコミュニケーションがより求められるようになったためです。
こうした背景から、アンガーマネジメントは企業研修としても高い注目を集めています。
さらに世代間ギャップや、価値観の違いによる摩擦も増えていることから、管理職はさまざまな背景を持つメンバーを統率しつつ、接し方を工夫しなければなりません。
複雑な環境下でのトラブルは、「どちらが悪い」と割り切れないケースも多くあります。怒りや損失の大きさではなく、その裏にある哀しみや価値観に目を向けなくてはいけないのです。
アンガーマネジメントには、単なる感情のコントロールを超えて、職場全体の信頼関係を築き上げるツールとしての機能が期待されています。
企業研修として注目される理由
アンガーマネジメント研修は、組織のパフォーマンスを向上させ、健全な職場環境の構築につながる取り組みです。
感情的な衝突や不適切なコミュニケーションは、チームワークを悪くしたり、離職率を増加させたりする原因になります。
リーダーや従業員が感情コントロールするスキルを身につけると職場での対人関係が改善され、心理的安全性の高い環境が構築しやすくなります。企業にとって安定した環境が整うだけでなく、精神的負担をコントロールする術を身に着けることは、従業員にとっても公私にわたってメリットとなります。
またアンガーマネジメントは、ハラスメントの防止にも寄与します。安心して働ける環境整備は、優秀な人材の確保にもつながります。組織内の理解と協力が深まることで、よりスムーズな組織運営が可能になるのです。
アンガーマネジメント研修で扱う主な内容・プログラム例
効果的なアンガーマネジメント研修では、理論の理解から実践的なスキルの習得までを含む、体系的なプログラムが展開されています。
ここでは一般的なアンガーマネジメント研修で実施されるプログラム構成やその具体的な内容を見ていきましょう。
怒りのメカニズムを理解する
アンガーマネジメントでは、まず「怒り」という感情がどのように生まれ、行動に影響するかを理解します。
「怒り」は、ライターの着火にたとえられます。ライターのガスは、「マイナス感情や状態」です。ここに「こうあるべき」という着火スイッチが加わると、火花が生まれます。この炎が「怒り」です。「マイナス感情や状態」が大きければ大きいほど、怒りは強く発現しやすくなり。
また「べき」という価値観が他人と異なる場合、知ない間に相手の着火スイッチを入れてしまうことになるのです。
アンガーマネジメントでは怒りの元となる感情や状態と価値観のこだわりの調整や理解をすることで、怒りをコントロールします。
感情コントロール技術習得(6秒ルール・認知の歪みの修正)
アンガーマネジメントでは、「6秒ルール」や「認知の歪みの修正」といって技術を習得します。これらの技術は、対面だけでなくオンラインのアンガーマネジメント研修でも応用されています。
「6秒ルール」とは、怒りを感じたら、まずは6秒間待つという方法です。深呼吸をしたり、心の中で数を数えたりすることで、冷静さを取り戻すことができます。
「認知の歪みの修正」では、「べき思考」や「白黒思考」、「過度の一般化」といった、怒りを増幅させる思考パターンを認識し、より現実的で柔軟な考え方に修正する方法を学びます。
「部下は完璧に仕事をするべきだ」という考えを「部下は成長過程にあり、ミスから学ぶことも大切だ」という考え方に変えるといった具合です。。
こうしたスキルを組み合わせ、日常の怒りをコントロールするための方法を学びます。
ケーススタディ・ロールプレイング
研修では理論的な学習だけでなく、実際の職場で起こりうる場面を想定した実践練習も行われます。部下のミスへの対応や顧客からのクレーム処理、同僚との意見対立など、業務内で起こり得るさまざまなシチュエーションでケーススタディを行うのです。
またロールプレイングでは、参加者が異なる立場を演じながら、感情コントロール技術を実践します。観察者からのフィードバックを受けることで、自分の反応パターンや改善点を客観的に把握する方法です。
実践後は、参加者同士でのディスカッションも実施しましょう。他者の視点を学ぶことで、自分の思考パターンを見直すきっかけにもなります。
受講後には、「他者の考え方を知ることで自分の価値観に気づけた」といった感想や声も多く見られます。
受講者の感想・成果事例紹介
アンガーマネジメント研修では、多くの受講者が効果を実感しています。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会では、類型170万人がアンガーマネジメント研修を受講しました。
同法人の調査では、アンガーマネジメント研修を受講した社員では、上司は「自分の部署は、チームワークが良く、風通しが良い」、部下は「直属上司は、私を信頼して仕事を任せてくれる」の項目が大きく改善されたことが明らかになりました。
アンガーマネジメント研修を受けることで、従業員全体に良い効果があったことがわかります。
対象・階層別アンガーマネジメント研修設計
前述のとおり、アンガーマネジメント研修は、すべての立場の従業員に効果的です。
ここでは組織の階層や役割に応じた、アンガーマネジメント研修の内容や重点を見ていきましょう。
新入社員・若手社員:自己理解と対応力向上
新入社員や若手社員向けの研修では、まず自分自身の感情パターンを理解することから始めます。社会人としての基礎的なコミュニケーションスキルと合わせて、感情コントロールの重要性を学習するのです 。
なお、介護や福祉現場でもアンガーマネジメント研修は有効です。福祉分野における対人ストレスの軽減にも役立ちます。
なお、介護や福祉現場でもアンガーマネジメント研修は有効です。福祉分野にける対人ストレスの軽減にも役立ちます。
特に若手 社員には、まだ社会人としての経験があまりありません 。怒りを感じやすい状況はもちろん、自分の思い込みや価値観がどう感情に影響するかを理解して 、将来的な問題を予防しましょう。
中堅・リーダー層:部下指導・信頼関係構築
中堅社員やチームリーダーは、自分自身の感情管理に加えて、部下や後輩への指導場面でのアンガーマネジメントが重要になります。適切な叱り方や建設的なフィードバックの方法、部下のモチベーション管理などを学びましょう。
指導者層の研修では、感情的な指導が部下に与える影響の大きさを理解することも大切です。パワーハラスメントのリスクや、感情的な対応が職場の雰囲気に与える悪影響について学び、世代間の価値観についても理解に努めましょう。
上司と部下という二つの立場を持つ中堅・リーダー層は、上司と部下の板挟みになることも多く、ストレス管理のスキルが求められます。。時間管理や優先順位設定なども含めた総合的なストレス対策で、自分自身の負担も減らすスキルを身に着けます。
管理職・経営層:組織全体の心理的安全性確保
管理職や経営層向けの研修では、組織全体の風土や文化の形成も学びます。リーダーの感情状態が組織全体に与える影響の大きさを理解し、「組織の顔」としての行動を考えましょう。
また危機管理や、重要な意思決定場面でのアンガーマネジメントも重要です。プレッシャーの高い状況でも冷静さを保ち、合理的な判断を下すためのスキルを習得します。
また中堅・リーダー層と同様、管理職自身のメンタルヘルス管理も重視しましょう。組織のトップが健全な状態を維持することが、全体の健康な職場環境につながります。
オンライン・ハイブリッド対応の研修設計
近年は、デジタル化が進んでおり、オンラインでのアンガーマネジメント研修も増加しています。オンラインやハイブリッド形式でのアンガーマネジメント研修も適切に設計していきましょう。
オンライン研修の特徴と運営ポイント
オンライン形式のアンガーマネジメント研修では、対面研修とは異なる工夫が必要です。
まずは参加者の集中力維持のために、研修時間を短く区切り、頻繁な休憩を設けましょう。必要に応じ、複数日に渡って実施することで、学習効果を高めることができます。録画やオンデマンド形式を活用し、随時振り返りの機会を設けてください。
チャット機能や投票機能、ブレイクアウトルームなどを活用し、一方向的な講義にならないよう工夫することで、参加者の能動的な活動を促します。
チャット・ワークショップ・動画活用
オンライン研修では、さまざまなデジタルツールを活用することで、高い学習効果を得ることが可能です。
チャット機能は、発言しにくい参加者の意見を引き出したり、リアルタイムでの質問を受け付けたりするのに効果的です。
また動画コンテンツを活用すると、視覚的で分かりやすい学習を提供できます。感情コントロールの実演や専門家のインタビューなどを交えて、多角的な理解を深めましょう。
ワークショップ形式では、デジタルホワイトボードやオンライン付箋ツールを使用して、グループワークやブレインストーミングを実施します。参加者同士の協働作業を通じて、学習内容の定着を図りましょう。
ハイブリッド型運営のコツ
対面参加者とオンライン参加者がいる場合には、ハイブリッド形式がおすすめです。両方のグループが平等に参加できる環境を整えることで、均一で、一体感のある学習となります。
ハイブリッド形式では、会場の音響設備や映像設備を適切に設定し、オンライン参加者にも明瞭な音声と映像を提供するよう心掛けてください。
またグループワークでは、対面参加者とオンライン参加者を混合したチームを作ることで、自然な交流を促進します。対面参加者もデジタルツールを利用することで、すべての参加者が同じ条件での作業が可能です。
研修前には、参加者への事前説明を十分に行い、当日のトラブルを最小限に抑えましょう。
アンガーマネジメント研修実施企業の成功事例を紹介
現在、さまざまな企業でアンガーマネジメント研修が導入されています。ここでは実際の事例を通じて、研修の効果と成功のポイントを見ていきましょう。
事例①:小売業の現場リーダー向け研修
小売業の現場では、クレーム対応や部下指導の場面で感情的になってしまう管理者もいます。就労に慣れていない若い労働者も多く、価値観や労働意識の違いから、「べき」という思いが大きくなってしまうのです。
アンガーマネジメント研修では、怒りのメカニズムやコントロールの仕方を学びます。自分自身の思い込みと怒りのきっかけを知ることで、相手の立場を想像する余裕を獲得するのです。
相手には相手の考え方があると理解し、必要のない怒りを手放すことで、リーダー本人の負担も軽減します。
事例②:IT企業のマネジメント層向けオンライン研修
働き方の多様化を経て、特にIT企業では、リモートワークが主流となりつつあります。一方画面越しのコミュニケーションでは、スレ違いや誤解も生まれやすいことが課題です。
管理職向けの研修をオンライン形式で実施することで、アンガーマネジメントの基本的なスキルを身に着けるだけでなく、オンラインでのやり取りならではの課題や対処法も見えてきました。
管理職のストレス軽減と部下との関係改善につながるだけでなく、オンラインで効果的な指導やコミュニケーション方法を見直す機会ともなりました。
ワークハピネスのアンガーマネージメント研修
ワークハピネスでは、企業ごとの課題に則したマネジメント研修を提供しています。組織の特性や課題に応じて、プログラム内容を柔軟に調整することが可能です。
アンガーマネジメントでは、新入社員向や管理者・マネージャーなど、それぞれの立場にあった研修や学びが重要です。ワークハピネスでは細かな分類に対応し、適した研修をご提案。さらにケーススタディやゲームなどの体験型研修を通じた実践的な学習で、現場に則したスキルを身に着けます。
一人ひとりが自ら考え、自分自身の感情をコントロールできるようになるアンガーマネジメント研修をご希望の企業は、お気軽にご相談ください。
アンガーマネジメント研修検討中によくある質問
アンガーマネジメント研修の導入を検討する際には、疑問も出てくるものです。ここでからはくある質問と回答をまとめました。
Q. 内製と外部講師、どちらが効果的?
内製型のメリットは、自社の文化や特有の課題に詳しく、継続的なフォローアップが行いやすいことです。また、コストも比較的抑えることができ、研修内容を自社のニーズに合わせて柔軟に調整できます。
ただし内部の研修担当者は、必ずしもアンガーマネジメントの専門家とは限りません。知識や経験の不足から、参加者の納得感を得にくい場合もあります。
一方、外部講師による研修は、専門的な知識と豊富な経験に基づいた質の高い内容を提供できることが最大のメリットです。客観的な視点から組織の課題を指摘でき、他社事例なども交えた説得力のある研修が行えます。ただし、外部委託の費用がかかることがデメリットです。
外部講師による研修と内製でのフォローアップを組み合わせ、ハイブリッド型で研修を行うのもおすすめです。
Q. 効果測定はどのように行う?
効果測定には、定量的な指標と定性的な評価を組み合わせた多角的なアプローチが効果的です。
定量的な指標としては、ハラスメント相談件数の変化や離職率の推移、従業員満足度調査の結果、などが挙げられます。また研修前後での感情コントロール能力を測定する心理テストを活用することも有効です。
定性的な評価では、参加者へのインタビューやアンケート、上司や部下からのフィードバックなどを行います。
効果測定の結果を基にPDCAサイクルを回すことで、より効果的な研修プログラムを構築していくことができます。
研修は管理職以外にも必要なの?
アンガーマネジメント研修は、組織全体での実施が理想的です。しかし、研修時は、優先順位をつけて段階的に展開することが現実的でしょう。
一般的に管理職にアンガーマネジメント研修を実施するのは、組織全体への影響力が大きいためです。管理職の感情管理能力が向上することで、職場全体の雰囲気が改善され、部下への波及効果も期待できます。
一方で、一般従業員向けの研修も、重要な意味を持ちます。特に顧客対応を行う従業員やチームワークが重要な部署、新入社員などは、早期の研修実施が効果的です。また職場でのハラスメント防止や多様性の尊重という観点からも、全従業員への展開するのが理想的と言えます。
アンガーマネジメントを強化して、よりよい職場環境を目指そう
アンガーマネジメント研修は、組織文化の変革と持続的な成長の基盤となる重要な投資です。感情をコントロールし、建設的なコミュニケーションができる組織は、変化の激しいビジネス環境においても柔軟に対応し、継続的に成果を上げることができます。
まずは自社の現状を客観的に把握し、どのような課題があるかを明確にすることから始めましょう。
アンガーマネジメント研修を通じて職場の心理的安全性を高めながら、従業員が安心して実力を発揮できる環境を整えましょう。

大学卒業後、外資系医療機器メーカーで営業に従事。
6年間で8人の上司のマネジメントを経験し、「マネジャー次第で組織は変わる」と確信し、キャリアチェンジを決意する。
2009年にワークハピネスに参画し、チェンジ・エージェントとなる。
医療メーカーや住宅メーカーをはじめ、主に大企業の案件を得意とする。また、新人から管理職まで幅広い研修に対応。
営業、営業企画、新人コンサルタント教育を担当後、マーケティング責任者となる。
一度ワークハピネスを退職したが、2021年から復帰し、当社初の出戻り社員となる。現在は、執行役員 マーケティング本部長。