
新社会人研修が「辛い」と感じる本当の理由。心理・組織・研修設計から徹底分析し、成長につながる研修の作り方を解説
新社会人研修が始まる春は、期待と同じくらい不安が入り混じる時期です。人事の方にとっても、受講する本人にとっても「研修が思った以上に辛い」という声は決して珍しくありません。
自分に向いていないのではないか、周りより遅れているのではないか、叱られるのではないか。そんな思いが積み重なり、研修そのものが重たく感じられてしまうことがあります。
ただ、その辛さの多くは個人の能力ではなく、環境や設計の影響を強く受けています。
目的が見えない、行動への手がかりがつかめない、相談しづらい。こうした状態が続くと、人は主体性を発揮しにくくなり、研修の時間が自分ごとになりません。
逆に、自分で選び、動ける余白が整っているだけで学びの吸収力は大きく変わります。本稿では、新社会人研修が辛く感じられる背景を整理し、負荷を成長につなげるための設計や支援のあり方を詳しくたどっていきます。
なぜ新社会人研修は「辛い」と感じられるのか
辛さの正体は「変えられない領域」に意識が向くこと
新社会人研修が辛く感じられる背景には、自分ではどうにもできないと受け取ってしまう状況があります。初めての環境に入り、評価される基準もわからないまま「正しく振る舞わなければ」という思いだけが先行すると、人は行動の主導権を失ったように感じます。主体性を重んじる立場から見れば、それは自分でハンドルを握れていない状態です。
研修が受動的に進むほど、自分で選び、動くという感覚が弱まり、学びが遠くなることがあります。さらに、正解を求める姿勢が強いほど、間違えることへの恐れが緊張を高め、研修そのものが負荷に感じられます。
こうした状態では、研修の内容自体が難しいというより、自分の行動が組織に影響を持てていない感覚が辛さにつながります。意識が自分では変えられない領域に向いたとき、人は急速に疲れていきます。
逆に、自分が選べる範囲へ気持ちを戻せるだけで、研修の捉え方は大きく変わります。
心理タイプ別の「辛くなるパターン」
研修が辛いと感じる理由は、一人ひとりが抱える思考の癖とも深く関係します。
完璧を求めがちな人は「失敗してはいけない」という緊張が研修のたびに蓄積し、内容に集中する前に心が疲れてしまいます。
慎重で萎縮しやすい人は、周囲との比較が気になり、質問したいことがあっても言葉にできず、わからないまま時間が進むことが負担になります。
孤独を感じやすい人は、相談の相手が見つからず、迷いが解消されない状況に不安が増していきます。
目的を見いだしにくい人は「何のために学んでいるのか」が曖昧で、研修の意義を結びつけにくいまま疲労感が高まります。
研修担当者がこれらの傾向を把握しておくと、必要なサポートの方向が見えやすくなります。個々の心理に丁寧に寄り添う姿勢があるだけで、辛さは大きくやわらぎます。
組織構造が生み出す辛さ
辛さは個人の問題だけにとどまりません。組織全体の構造が、新人の負荷を高めてしまうことがあります。
入社前の期待と現実の差が大きいと、いわゆるリアリティショックが起こり、研修への集中が難しくなります。
人事と配属先、上司の間で期待値がずれている場合も、新人はどこに基準を置けばよいのか迷いやすく、余計な精神的負担が生まれます。教える担当者によって指導のレベルやスタンスが大きく異なると、新人は「どれが正しいのか」を探し続け、行動が遅れます。
さらにオンライン研修の場合、関係性を築きにくく、反応が見えないまま進むため、受講者は自分が理解できているのか確かめづらい状況に陥ります。
こうした組織構造の影響を理解していないと、研修がうまくいかない理由が見えにくく、新人本人の努力不足と誤認されてしまうことがあります。
辛さを軽減し、主体性を取り戻す研修設計
内発的動機づけを引き出す環境づくり
内発的な動機が引き出される環境が整うと、新人は学びを自分ごととして受け取れるようになります。自律性や目的意識が高まると、人は自然と前向きに行動するものです。外から無理にやる気を与えようとするのではなく、もともと持っている意欲を阻む障害を取り除くことが重要になります。
何がわからないのかを言葉にできる空気があるか、意見を伝えても否定されないか、役割や期待が見える形で示されているか。こうした要素が整うと、研修が「やらされる時間」ではなく、自分で選び取り、活かす時間に変わります。
上司や研修担当者は管理よりも、動きやすい土台を整えることに力を向けるほど、若手の主体性は自然に芽生えていきます。
実践型研修が辛さを“成長のエネルギー”に変える理由
座学中心の研修では、理解したつもりでも、いざ現場に出ると手が止まってしまうことがあります。知識と行動の間に橋がかかっていない状態です。
実践型の研修は、この橋を早い段階でつくる役割を果たします。実際の仕事に近い状況を体験し、混乱や迷いをその場で言語化し、整理して次の行動につなげる。こうしたサイクルが回り始めると、辛かった出来事が「理解できた」「次はこうすればいい」という前向きな気づきに変わります。
疑似業務の中で優先順位に悩んだり、報告の仕方が分からなかったりする瞬間は、まさに現場で起きる状況の縮図です。その体験を研修の中で先に味わっておくと、新人は配属後の不安を大きく減らせます。
実践と振り返りが組み合わさった時間は、研修の辛さを学びに変える最も有効な仕組みになります。
視野を広げる思考技術
研修で辛さが高まるとき、多くの場合、視野が狭まり「自分だけがうまくできていない」と感じがちです。少し俯瞰して物事を見るだけで、状況の受け取り方は大きく変わります。
成果を出す人ほど、自分が変えられる領域に意識を向け続けています。苦手な業務があっても、周囲と比較しすぎず、自分にできる一歩を探し、行動を小さく積み重ねます。課題を整理する力があると、不安が曖昧なまま膨らむのを防げます。何に迷っているのかを分解し、必要な相談や行動に落とし込めると、主体性が戻ってきます。
自分の選択で状況を変えられる実感は、研修の辛さを和らげるだけでなく、エンゲージメントを高める土台にもなります。
研修担当者が押さえるべき「辛さをつくらない」実務ポイント
企業側が陥りやすい誤解と失敗パターン
研修がうまく機能しないとき、若手の特性や努力不足に原因を求めてしまうことがあります。ただ実際は、企業側の設計や環境が辛さを生み出しているケースが少なくありません。
座学を増やすほど理解が深まると考えがちですが、受動的な時間が長いほど新人は自分ごと化しにくくなります。
研修と現場の橋渡しが弱いと「学んだけれど使えない」という状態になり、研修への信頼が下がります。
OJT担当者の指導スタイルがバラバラだと、新人が迷いやすくなり、行動が遅れます。
またオンライン研修では、関係性がつくりにくく、理解度が確認されないまま進むため、不安が蓄積しやすい構造があります。
こうした誤解や見落としが積み重なると、研修の辛さは自然に増えていきます。
辛さを可視化する評価指標
研修が辛いと感じているかどうかは、表情だけでは判断がつきません。行動や言葉の端々にヒントが現れます。
目的の理解度はどの程度か、相談の回数が極端に少なくなっていないか、研修中に発言しているか、課題の提出に必要以上の時間がかかっていないか。こうした観点から様子を捉えると、負荷がどこにあるのかが見えやすくなります。
自己効力感の低下は、辛さの兆しとして特に分かりやすいサインです。「自分にできることはある」と感じられているかどうかで行動量は大きく変わります。指標を軽くチェックするだけで、フォローが必要なタイミングをつかめます。
研修担当者が使えるチェックリスト
研修の質は、事前準備・実施中・研修後の三つの段階で決まります。
研修前には、目的や期待値が明確になっているか、配属先との連携がとれているかを確認します。実施中は、体験の割合が十分か、心理的安全性が確保されているか、フィードバックが適切な頻度で行われているかが鍵になります。研修後は、現場で行動が続くようなオンボーディングが用意されているかを振り返ります。
チェックリストとして整理しておくと、抜け漏れが少なくなり、研修の辛さを未然に防げます。
新人自身が辛さを乗り越えるための思考と行動
相談 → 連絡 → 報告の順番で動けるようになる
行動が止まりやすい新人の多くは、相談が後手に回る傾向があります。迷ったまま考え込み、時間だけが過ぎてしまうと、自分の判断への不安がさらに強まり、辛さが加速します。
相談を最初に置くと、状況の進め方が早い段階で見えてきます。連絡や報告の順番をいきなり意識すると構えすぎてしまうので、まずは「困ったらすぐ相談する」というシンプルな動きが土台になります。
相談が習慣になると、曖昧だった悩みが具体的な言葉に変わり、行動に落とし込みやすくなります。迷いを一人で抱え込まないだけで、研修で感じる負荷は大きく和らいでいきます。
目的認識が曖昧だと研修も仕事も辛くなる
研修で学ぶ内容が腑に落ちないとき、多くは目的がつながっていません。何のためにその作業を行うのか、誰にどう役立てるのかが見えていないと、行動が単なる手順になりやすく、辛さが増えます。
エスプールの研修事例では、プレゼンワークを通じて「誰に、何を、なぜ伝えるのか」を明確にする場面がありました。受講者は目的の甘さを指摘され、ゴールを意識する重要性に気づいたと語っています。
目的が定まると、行動の意味がつながり、研修の時間が自分と仕事を結ぶ機会に変わります。目的認識は、辛さを下げるだけでなく、自分の役割を理解するための軸にもなります。
優先順位判断とメタ認知
新人が直面しやすい悩みの一つに、どの仕事から着手すべきか迷う場面があります。緊急かつ重要な業務と、重要だが急がない業務が混在すると、判断基準が定まらず混乱しやすくなります。疑似業務型の研修では、この迷いを体験したうえで振り返りを行い、優先順位の基準をつかみます。
完璧主義が強いと一つの作業に時間をかけすぎ、全体の流れが見えにくくなることがあります。そんなとき役立つのがメタ認知です。自分がいまどんな状態にいるのか、何に不安を感じているのかを落ち着いて眺めると、冷静さが戻ってきます。
視野が一段広がると、辛さの濃度は下がり、必要な行動を選びやすくなります。
株式会社エスプール様 新入社員研修の実践事例
導入の背景
エスプールでは、新人が研修で学んだ内容を現場で十分に活かせないという課題が続いていました。知識として理解していても、実際の業務の流れの中で迷いや戸惑いが生じ、行動につながらない状況が見られたためです。この課題を解決するには、実践の中で学びを定着させる仕組みが必要でした。
そこで、体験と行動変化を重視するワークハピネスの研修が選ばれました。配属直前のタイミングで、実際の業務に近い環境を体験できる点が評価され、研修導入の決め手となりました。
研修内容と受講者の変化
研修では、目的意識を高めるプレゼンワークや、優先順位の異なる業務が次々に舞い込む疑似体験が行われました。ある受講者は「誰に、何を、なぜ伝えるのかが曖昧なまま話していた」と気づき、目的認識の重要性を実感したと語っています。また、相談 → 連絡 → 報告の順番を学んだことで、困ったときほど早く相談する習慣が身につき、業務の進め方が格段にスムーズになりました。完璧を求めて動けなくなる若手も、体験を通じて小さく動き出す感覚をつかみ、行動量が自然と増えていきました。
現場評価と定着理由
人事担当者は、研修後の若手が学生の延長から社会人としてのスタンスに切り替わったと感じています。配属前の段階で“現場の空気”に触れたことが、自信につながったと評価しています。行動が止まりがちだった新人も、研修で体験したフレームワークや判断基準を現場でそのまま活用し、早い段階で成果につなげています。実践型研修が定着しやすい理由は、学んだ内容がそのまま明日の行動に直結する点にあります。研修と現場のギャップが埋まることで、辛さに振り回されず、主体的に仕事へ向き合える状態がつくられていきます。
ワークハピネスの新入社員研修が選ばれる理由
主体性を重んじる設計思想と、実践体験を通じて行動が変わるプロセスを大切にしている点が、多くの企業から支持を集めています。スキルや知識だけを伝えるのではなく、自分で考え、判断し、動く力を引き出すことを重視しています。
研修では、現場の状況を模した体験、目的の整理、優先順位の判断など、仕事の基礎になるプロセスを積み重ねます。学びがその日のうちに行動へつながる構造を持っているため、配属後にも迷いにくく、動きが早くなります。蓄積された事例の中には、研修をきっかけにスタンスが一変し、組織の中心になって活躍している若手も少なくありません。
研修の詳細はこちらで資料ダウンロードできます。

まとめ
新社会人研修が辛く感じられる理由には、個人の特性だけでなく、環境や組織構造の影響が大きく関わっています。目的が見えないまま進んだり、相談しづらかったり、行動への手がかりがつかめない状態に置かれると、誰でも負荷を抱えやすくなります。主体性を発揮しやすい環境が整うと、研修は単なる学習の場ではなく、自分の可能性を広げる時間に変わります。
企業側は、管理ではなく環境整備に視点を置くことで、新人の動きは自然と変わります。また新人自身も、相談の習慣や目的意識、優先順位の判断が身につくと、研修の負荷を成長へと変えやすくなります。辛さの背景を理解し、研修と現場をつなげていくことで、若手は安心して仕事に踏み出せるようになります。

人材アウトソーシングのベンチャー企業㈱エスプール(ワークハピネスの親会社)の創立3年目に新卒にて入社。新規現場、プロジェクトの立ち上げから不採算支店を売上日本一の支店に再生するなど、同社の株式上場に貢献してきた。
多数のプロジェクトを通じ、多くのスタッフと携わる中で「人間の無限の可能性」を知り、「人の強みを活かすマネジメント」を広めるべく、2006年よりワークハピネスに参画。
中小企業を中心とした人材開発、組織風土変革コンサルティングPJを推進している。



















