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優れたリーダーの育て方〜可愛い子には旅をさせろ〜

元ソニーのCEOだった平井一夫さんが書いた「ソニー再生 変革を成し遂げた『異端のリーダーシップ』」を読んだ。

平井氏は見事にソニーを再生させた素晴らしいリーダーだが、あまりマスコミ等には登場しなかったので、私の想像していた人物像は「帰国子女で英語が堪能」「プレゼン上手」という情報から、

黒い目をした外国人?

ドライな人?

ところが、著書を読んで私の予想は大きく裏切られた。

平井氏はとても共感力が高くて誠実で謙虚なダイバーシティーリーダーでした。

彼の様なリーダーが日本に増えて欲しい。

彼の様なリーダーを育てたい。

そう、強く思った。

この本は、著者が巨大多国籍企業であるソニーを再成長軌道に乗せるまでの体験談。

そこにはカリスマ性の無い普通のサラリーマン経営者が謙虚に等身大でリーダーシップを発揮した姿が描かれている。

著者はソニーの子会社であるCBSソニーに大卒で入社する。出世を望まず、仕事とプライベートを分けて平凡な人生を送ろうと思い、家族と過ごす時間を大切にするために自宅を緑豊かな宇都宮に構え、新幹線通勤を行う。

ところが、帰国子女だったことから、自身の希望に反してニューヨークへの駐在を命じられる。

その後、上司の都合で、プレイステーションの米国展開を手伝うこととなり、ゲームビジネスの世界へ。本業の音楽ビジネスに戻れることを期待して、お手伝いのつもりでゲームの仕事に関わっていたら、またもや上司の都合でソニー・コンピューター・エンターテイメント・アメリカ(SCEA)の社長を押しつけられる。そしてついには、2013年、ハワード・ストリンガーから押しつけられて、巨大企業ソニーのCEOへ。

そこから6年。ソニーを率い、連結営業利益7,350億円という巨大な利益、20年ぶりの最高益更新を達成すると、56歳の若さであっさりとCEOの職を辞して権力の座から退いてしまう。

なんたる清々しさ。

権力の座に恋々としているお爺さんたちのみみっちさ、人間の貪欲さと引き比べると、

その潔さに、

しびれた。

前任者のハワード・ストリンガー氏から8年連続営業赤字であるソニーのトップを任された当初、著者は周囲から多くの批判を受けます。

「エレキが分からない平井に社長が務まるハズがない」

「ソニーがテレビをやめるか、平井が辞めるか。どちらが先になるか見ものだな」

「そろそろソニーはアップルに買収されるんじゃないの」

そんな批判を見事に覆して、平井氏は見事にソニーを再生させた。

著者は自身を「出世欲のない平凡なサラリーマン」と認識していた。

そんな著者がなぜ巨大企業のソニーを再生できたのか?

そこには凡人だと自認しているからこそなし得た本物のリーダーシップがあった。

平井氏のリーダーシップ原則はとってもシンプル。

次の2つだけだ。

1 「肩書きで仕事をしない」
   

2 「異見」を求める

「肩書きで仕事をしない」

彼のリーダーシップにおける行動規範は次の言葉に集約されている。

「もし部下による選挙が行われたとして、自分は当選するか?」

肩書きから来る権力で仕事をするのではなく、人間として尊敬されて影響力を発揮するという大原則を自分に課す。

「厳しい局面で逃げるリーダーに票は集まらない。だから、逃げる姿を見せてはいけない」と彼は述べる。

だから「つらい仕事こそリーダーがやる」

彼の最初のつらい仕事は30代前半で経験したリストラの実行だった。

CBSソニーからお手伝いで出向いたSCEAはプレイステーションの米国でのマーケティング方針の混乱が原因で現場の士気が落ちていた。

日本のソニー本体とその米国子会社、そしてソニーコンピューターエンターテイメント(SCE)の日本の本社から現場に異なる命令が降りて来て、社員は右往左往。幹部社員は、現場よりも親会社を見て仕事をする平目ばかり。さらに、各部門長が競争して足を引っ張り合う始末。

著者は、この状態を整理するために、政治的な動きばかりする幹部社員に馘を宣告する。

非情な宣告。

「つらい仕事」

この「つらい仕事」を、若い平井氏は人事部に任せず、自ら対応する。

彼曰く、

「『平井さんは良い時には表に出てくるくせに、嫌な仕事だけは我々にやらせるんですね』そう思われてしまったらもう、人は動いてくれない」

ソニーのCEOに就任してからも、幹部への「卒業」の宣告は必ず自らの言葉で伝え続けた。

それが、「今まで会社に貢献していただいた人に対する敬意」であると同時に誰にとっても「つらい仕事」だから。

「厳しい局面で逃げるリーダーに票は集まらない。だから、逃げる姿を見せてはいけない」

リーダーに求められる当たり前の態度だが、最後まで一貫性を持ってやり抜けるリーダーは少ない。

ポジションが上がるにつれて、様々な雑事は部下や秘書がやってくれる。やがて実務能力が落ちて意思決定だけが自分の仕事だと勘違いする経営者は多い。

「つらい仕事こそリーダーがやる」

全てのリーダーが堅持すべき大原則だ。

「異見」を求める

平井氏いわく、

「異見を言ってくれるプロ」を探し出して自分の周囲に置くことは、リーダーとして不可欠な素養」

「そのためには自分自身が周囲から『この人はちゃんと異見に耳を傾けてくれる』と思われるような信頼関係を築く必要がある」

ゲームビジネスもエレキも素人。分からないことは「分からないから教えて欲しい」と周囲に頼り、自分なりの意見を持ちつつも「異見」を求めて決断の精度を高める。

これもダイバーシティー経営が叫ばれる昨今であればリーダーとして保持すべき当たり前の態度だが、その実践には相当の努力が求められる。

会議でリーダーが発言すれば、多くの人は聞き役に回ってしまう。

CEOが現場に顔を出せば、忖度されて悪い話は耳に入らない。

「異見」を集め続けるためには、常に人の話に耳を傾け、周囲から忖度されないフランクで謙虚な態度を保ち続ける必要がある。

平井氏は現場を回ったタウンミーティングで

「プライベートな質問でも何でもOK」と伝え、

「奥様とはどこで出逢われたのですか?」という問いに

「グットクエスチョン!」と笑顔で応じる。

工場を回り、特別な食事が用意されることを拒み、食堂で社員と肩を並べて食事をする。

「肩書きで仕事をしない」

「異見」を求める

とってもシンプルで誰でもできそうに思える。

でも、このシンプルな事を一貫性を持ってやり切った平井氏には非凡な能力がある。

この非凡な能力はいかにして身につけたのか?

答えは彼の生い立ちにある。

彼は小学校1年生で父親の転勤に伴い、ニューヨークに移り住む。

英語など全く分からない少年が、日本人が一人もいないクイーンズ地区の地元の小学校に囲った。

母親は大いに心配し、彼に次の3つの言葉が英語で書かれたカードを持たせた。

「トイレに行きたい」

「気持ちが悪い」

「親に連絡してほしい」

彼は、小学校1年生にして、「猛烈な孤独感と無力感」を体験する。

そして、地元の小学校になんとか慣れた小学校4年生で再び父親の転勤で日本に戻る。

すると自分が生まれ育った日本で、またもや猛烈なカルチャーショックを体験する。

1週間分の宿題をまとめて提出すると先生から怒られる。

理由を聞くと、「ここは日本だ。アメリカじゃない!」と理不尽な答え。

米国の学校では清掃員がいたから先生に「なんで僕たちが掃除をしないといけないの?」と聞いたら凄まじく叱られる。

生まれ育った日本で再び異邦人扱い。

中学生で今度はカナダに移り住む。

大人になるまでに4度も日本と海外を行ったり来たり。

大学では日本のICUに通う。

そこは様々な国からの留学生が交ざっている、カルチャーミックス。

友人から聞く様々な実体験に基づく話は、本で読んだり授業で聞いたりするのとはまったく異なる圧倒的なリアリティー。

ICUでの最大の学びは、

「自分は何も分かっていないんだ」ということ。

小学1年生から、何度も繰り返したカルチャーショック体験が平井氏をダイバーシティーリーダーに育てたことは間違いない。

異郷の地では、多様性を受け入れる柔軟性と「知らないことは知らない」と尋ねる謙虚さがなければ生きてはいけない。

同時にカルチャーは違えど、人類共通の人として尊敬される態度を知ったはずだ。

優れたリーダーの育て方。

結論。

「可愛い子には旅をさせろ」

以上


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この記事を書いた人この記事を書いた人

吉村慎吾

公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。

現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。

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