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終身雇用は大悪?

今、日本はOECD加盟37カ国中21位という低い労働生産性に陥っています。

かつての経済大国。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と囃し立てられ、世界経済のお手本であった日本に何が起きているのでしょうか?

日本に高度経済成長をもたらした原動力は「終身雇用」による従業員の高い忠誠心でした。

戦後復興需要や朝鮮戦争特需含め、世界の需要が大幅に上昇するなか、日本企業は長時間労働や休日出勤・転勤・単身赴任等の無理を厭わずに受け入れる勤勉な従業員達の力で大量生産による量的拡大を続けてきました。

そして、バブル崩壊による失われた30年。

日本企業は低い労働生産性から浮上できずに、ズルズルと世界市場での存在感を低下させ続けています。

私は、この低い労働生産性に喘ぐ日本企業の根本原因は「終身雇用」にあると見ています。

日本の高度成長を支えた「終身雇用」が、低成長経済下においては大きくマイナスに作用しているのです。

外部環境が高度経済成長期による人手不足に対応するために採用した「終身雇用」という人事戦略。

外部環境が低成長経済に変化したならば、対応して人事戦略も見直すのが合理的です。

ところが多くの経営者たちは強い労働組合との対決を恐れ、「終身雇用」を放置したまま、その他の慣行を見直しました。

まず、最初に見直したのが「年功序列」的な処遇です。

低成長時代に入ると、事業が拡大しないので仕事やポストが不足します。

「年功序列」的な昇進や昇給を続けると、人件費が高騰して利益を圧迫します。

それ以上に深刻だったのが、優秀な若者のモチベーション低下です。

そこで一部の多国籍企業が「成果主義」や「抜擢人事」といった「実力主義」を導入して「年功序列」的な処遇に風穴を開けます。

「終身雇用」を維持したまま、「実力主義」が導入されると何が起きたか?

実力が相対的に劣る非エリート社員のモチベーション低下です。

能力が高かったり運が良かったりして実績をあげた同僚が昇級したり、抜擢任用される。

不運にも選に漏れた社員は、「私は会社から期待されていない」と嘆き、やる気を下げます。

優秀な若者の離職を防止してやる気を引き出すための一部導入した「実力主義」的な施策ですが中途半端な取り入れ方なので、業績を向上させる原動力とはなりませんでした。

長引くデフレ経済、拡大しない事業。増えないポストの中で政府から強制された定年延長。

「終身雇用」を維持したまま、この苦しい外部環境に対処するために編み出された悪手が「役職定年」です。

例えば、50歳までの部長に昇進していないと、課長の役職を剥奪されて一スタッフに戻るとします。

40代後半で、自分の会社からの評価が高くないことを知った社員はどう思うか?

「俺のサラリーマン人生はオワタ」

「でも、そこそこ良い給料だし、クビにはならないから良しとして妥協しよう」

「でも、この先給料は上がらないのだから、省エネで適当に働こう」

このように考える中年「やさぐれ」社員が大量に発生してしまったのです。

50歳手前。経験豊富で体力も十分。日本にとって貴重な人材なのに、大企業で「飼い殺し」。

これは日本の損失です。

私は今年53歳ですが、高校や大学の同窓会で出会う友人は、この「飼い殺し」された中年「やさぐれ」社員が大半です。

学生時代、あんなに活き活きと輝いていた友人たち。

才能豊かで能力も高く、体力も十分。

「やさぐれ」たいのではなく、「やさぐれ」させる環境があるのです。

「やさぐれ」社員を大量に抱えたまま、国際競争を勝ち抜かなければならない日本の大企業。

「終身雇用」の重荷を背負ったまま、変化の激しいVUCAな時代を乗り越えるのは不可能です。

もうそろそろ「終身雇用」から決別すべき時です。

「終身雇用」を辞めたらどうなるのか?

まず、個人としてのメリット。

緊張感が高まり、心身ともに健康になります。

「終身雇用」から「実力主義」に変わるとは、わかりやすく例えるならプロ野球選手のようになるということです。

パフォーマンスが低ければ、「君は、来季は我がチームの構想に入っていない」と「戦力外通告」されるわけです。

自ずと緊張感が高まり、健康管理やトレーニング等の自己成長投資に努力することとなるでしょう。

終身雇用、総合職採用だから許された、転勤命令や配置転換もなくなりますから、キャリア開発も自己責任です。

自分の5年後、10年後の活躍している姿を主体的に描き出し、必要なスキルの学習や、経験へのチャレンジへと向かうでしょう。

今は、意識高い系の方々だけが取り組んでいる「副業」も、意識低い系の人でも取り組み始めるかもしれません。

勤めていても、個人事業主マインドが育ちます。

常に、自分の能力・価値観と会社や社会のニーズをマーケティング。

未来の社会の変化も予測して、能動的にスキル習得や体験獲得に投資を続けることが正しい処世術です。

常に競争環境に身を置くことは、緊張感を伴いますが、アドレナリンとドーパミンが適度に分泌されて心身に良い影響があるでしょう。

「終身雇用」による「飼い殺し」は、ライオンを動物園で檻の中に入れているようなものです。餓死はしませんが、ライオンの本来の能力は発揮できません。

ライオンが生まれ持った能力はサバンナの草原を駆け回り、シマウマのハンティングに一喜一憂することです。

人間も一人ひとり異なった才能を持って生まれてきました。

持って生まれた才能を十分に発揮して必死に生きることが充実した人生につながるのではないでしょうか?

そして、「終身雇用」という檻から飛び出した方が「人生100年時代」にはプラスです。

「人生100年時代」には、約40年前後働いて定年退職した後に、また追加で40年の人生が残されているのです。

この時間を何もせずに余暇として過ごすのは心身ともに不健全です。

人間にとって一番辛いことは「ヒマ」です。

お金があって「ヒマ」なら、世界中を旅する等、ヒマ潰しも何とかなりますが、普通の勤め人にはそんな余裕はありません。

お金が無くて「ヒマ」は最悪です。

その点、個人事業主マインドを持ってビジネス・サバンナで鍛えられた人は逞しいです。

常に、自分と社会をマーケティングして、先を見越してスキル開発や体験・経験に投資を続けてきたので、何歳になっても社会から必要とされ続ける能力を保てます。

会社にとってもメリットも莫大です。

プロ野球チームのように「終身雇用」を捨てて「実力主義」に徹すれば、常に組織のチームメンバーを最適に保てます。

その時、チームに必要な能力のある人材をタイムリーに採用することでイノベーション力を保つことができます。

リストラされる人員の配置転換先を模索する必要もないので、不要となった部署や部門の閉鎖もタイムリーに決断できます。

向上心の消滅したぶら下がり社員が存在することもありません。

事業開発や組織構築に関する柔軟性が飛躍的に高まるので、企業の競争力を高く保てます。

一方でデメリットもあります。

「終身雇用」というアメをぶら下げられないので、真の採用力が求められます。

退出障壁が下がるので、経営に不満を抱いた優秀な社員が会社を離脱するリスクも高まります。

解決先は、本格的な経営力を高めることです。

働く人々にとって魅力的な本格的なミッションとビジョンを掲げ、理に叶った戦略をしっかりとコミュニケーションする。

VUCAな時代、絶対に勝てる戦略などありません。

必要なのは、この経営陣は、

「能力も人柄も信頼できる」

「ついて行きたい」

「一緒に働きたい」

そう、思ってもらうことだけです。

慣れ親しんだ「終身雇用」を捨てるのは勇気がいることです。

でもVUCAな時代、この先何十年も「終身雇用」を維持するのは不合理で不誠実なのです。

「終身雇用」と言う甘い言葉で従業員を安心させて、環境変化で企業が突然死したら、心構えも準備も不十分な従業員たちはただ路頭に迷います。

仏教用語に、

「小善は大悪に似たり。大善は非情に似たり」

と言う言葉があります。

「終身雇用」という甘い響きの「小善」は「大悪」です。

「実力主義」は「非情」に聞こえますが「大善」なのです。


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この記事を書いた人この記事を書いた人

吉村慎吾

公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。

現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。

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