人生100年時代のキャリア開発
最近、キャリア開発研修の依頼が増えています。
背景にあるのは、終身雇用の崩壊とジョブ型雇用への移行です。
終身雇用と総合職採用の時代、キャリア開発は会社都合でした。
配属も転勤も会社都合。従業員は与えられた場所と仕事で受動的に仕事を覚えて対応していく。そして振り返るとそこにキャリアらしきものが浮かび上がる。やがて、そのキャリアの痕跡が、会社都合の異動に考慮されて、一つのキャリアの流れが出来上がる。
キャリア開発は運と偶然の産物でした。
働くものは、キャリア開発の主権を会社に開け渡す代わりに終身雇用を保障してもらいました。
ところが、2019年の春に、トヨタの社長が「終身雇用は難しい」と発言してから、終身雇用の崩壊は多くの大企業の既定路線となりました。
終身雇用を約束しないならば、キャリア開発の主権を従業員に戻すのは当然の流れです。
主体的なキャリア開発のために私たちは何を考えれば良いのでしょうか?
・中高年になってもリストラされずに職にありつけるために、必要なスキルや経験を計画的に積み上げていく
・いざとなった時に頼りになる人脈作りを日頃から心がける
・一つの事に縛られずに多様な経験と学習で自分を常に変化させていく
いずれもキャリアサバイバルと経済的な成功を主眼とした欧米流のキャリア開発理論です。
果たしてこれで十分でしょうか?
人生100年時代、キャリサバイバルに成功して経済的に成功すればそれで幸せはおとずれるのでしょうか?
数十年内にAI&ロボットが多くの職を無人化するという未来予想もあります。
社会に出て65歳まで約40年働いても、その後にまだ40年近い人生が続く可能性があるのです。
40年を2サイクル。
誰も想像できない未来が待っています。
予想がつかないほど遠い未来まで幸せに生きていくための準備がこれからのキャリア開発で最も考慮すべきポイントです。
そこで重要となるのが”ライフワーク”です。
仕事を大別するとライスワークとライフワークに分けることができます。
ライスワークは生きていくために必要な労働。働かざるもの食うべからず。生きていくためには一定のお金が必要です。お金を得るために好き嫌いには関係なくこなす仕事がライスワーク。
そして、お金だけが目的の極端なライスワークは私たちをただただ消耗させていきます。
一方でライフワークは、わたしたちを元気にしてくれる仕事です。自分が好きで得意で意義を感じる仕事に取り組んでいると、心と身体が喜んで元気になります。
消耗するライスワークと元気になるライフワーク。
人生100年時代の幸福を考えたとき、1番大事なのはライフワークの発見です。
給料が高いから、出世に近道だから、という理由で好きでも得意でもない仕事、意義を感じない仕事を続けて無事に定年を迎えたとします。
人よりもちょっと多くの貯金が溜まっているかも知れませんが、まだその先に人生が40年近く続くのです。
時間を持て余し、年老いてまだライスワークを続けるならば、心身が消耗して健康寿命が縮むかも知れません。経済的には安泰でも、それは幸福な一生といえるのでしょうか。
大企業で役員まで上り詰めて、人より多い退職金をもらって引退した知人がいます。悠々自適の引退生活ですが、ライフワークを持っていない人は急激に老けこんで元気がありません。
一方で、ライフワークを見つけた人は、シニアになってからもライフワークを続けることで元気をもらい、健康です。
ライフワークはライスワークよりも報酬が低いかも知れません。
でも、子育てや介護から解放された人生の晩年には、お金よりも健康の方が重要です。
ライフワークとして中小企業の経営支援をしている知人は80歳を過ぎていますが、元気ハツラツです。
話を聞くと、報酬をもらっている仕事だからもちろんストレスもあります。でも、日々の喜びの方が多い。そして適度なストレスは元気の源だと言うのです。
一定の趣味がライフワークだという人もいます。
私の知り合いで、ゴルフがライフワークで、高い目標を持って日々努力しているシニアがいます。飛距離を伸ばすために、日々筋トレを行い、食事に気を配る。試合では高度のプレッシャーに晒されてストレスも多いそうなのですが、それをとても楽しんでいます。
プロゴルファーでは無いので、どんなに努力しても報酬がもらえるわけではありませんが、そんな事は関係ありません。
本人が意義を感じて心から打ち込めれば、それはライフワーク。
そしてライフワークは日々人を元気にします。
釣り、登山、マラソン等々、目標を持ってライフワークに取り組んでいる人はみんな楽しそうです。
私はとどうかといえば、この人材開発や組織開発という仕事がライフワークと確信しています。
好きで、得意で、意義を感じています。
この分野においては探求も挑戦も苦になりません。
日々、ワークショップやコンサルティングの現場で過ごす時間は喜びです。
クライアントから、「ありがとうございます!」と言われるたびに、いえいえ、こちらこそこんな素晴らしい時間を過ごさせていただいて「ありがとうございます!」と感謝の気持ちでいっぱいです。
ダラダラと過ごす休日よりも、仕事している平日の方が元気です。
元気をもらえて、喜ばれて、お金までもらえる。こんな素晴らしいライフワークにたどり着けた私は幸せ者です。
もちろん、ストレスあります。
初めてのテーマで講演やワークショップを行う時、成功するかな?と前の晩に寝れなくなる時もあります。
でも多少のストレスは健康に必須です。
人間は喜びを感じるドーパミンだけじゃなくて、ストレスホルモンであるアドレナリン、そして人とのつながりを感じて分泌されるオキシトシン、この三つのホルモンがバランスよく出ていることが心身を活性化させるみたいです。
悠々自適で安楽だけを追い求めていては健やかに過ごせないのです。
社会に出ていきなりライフワークに辿り着くことはありません。嫌いなことをやって好きなことに気づけます。あらゆる事に先入観なく取り組んで、得意なことと苦手なことが分かります。苦手だと思っていたことも我慢して取り組み続けたら思わぬ時に才能が開花することもあります。
「若い時の苦労は買ってでもしろ!」という諺は、ライフワークに辿り着くためには真実です。
右往左往して苦しみの中からライフワークを発見するので、最初の仕事は何でも良いかも知れません。
私の最初の仕事も公認会計士で、気がついたらライフワークは数字と最も遠い、人材・組織開発コンサルタントでした。
人生100年時代のキャリア開発における最も重要なこと。それは元気をもらえるライフワークを発見できるように、いろいろな仕事にチャレンジする。
しばし苦労して頑張って、やっぱりここではライフワークは見つからないと感じたならば、前向きに異動や転職をする。
ライスワークでのサバイバルに拘泥していたら幸せな100年を過ごすことはできないのです。
最後に、故スティーブ・ジョブズ氏の言葉です。
好きなことがまだ見つからないなら、探し続けてください。
決して立ち止まってはいけない。
本当にやりたいことが見つかった時には、不思議と自分でもすぐに分かるはずです。
すばらしい恋愛と同じように時間がたつごとによくなっていくものです。
だから、探し続けてください。
絶対に、立ち尽くしてはいけません。
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公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。
現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。