理不尽な役職定年制度を廃止しよう!
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理不尽な役職定年制度を廃止しよう!

私は今年で54歳になるが、高校や大学の友人と会うと肌感覚で約8割が仕事に対するモチベーションが驚くほど低い。

このモチベーション低下にかなりの割合で貢献していそうなのが、大企業の約半数で導入されていると言われる役職定年制度だ。

役職定年制度とは多くの場合、大体年齢にして55歳で役員になっていないならば部長や課長といった管理職の役割を解かれ、給料が数割下がるという仕組み。

この役職定年制度は日本人に大きなマイナスを与えている愚策だと感じている。

「青春とは心の若さである」

とか、

「始めるのに遅すぎるということはない」

といった、老いた人々に勇気をくれる清々しい名言が私は大好きだ。

しかし、役職定年制度はこれらの名言を嘲笑うかのように「55歳のあなたには、もう可能性は無いのです」と、理不尽な否定を中高年に突きつける。

「可能性は無い」と会社から宣言されてもなお、モチベーションを失わずに働くのは難しい。

仕事で活躍することが人生をハツラツとさせる重要な要素なのに、ある日突然それを奪われる人の無念さを思うと心が痛い。

役職定年を導入する会社の狙いは、総人件費の抑制と管理職層の若返りによる組織の活性化と言われている。

確かに、総人件費は抑制できるが、組織の活性化に関しては本当にそれが達成できているか甚だ疑問だ。

役職定年によるモチベーション低下は、55歳にして始まるわけではない。

40歳も半ばを過ぎれば、自分が役員になれるかどうかは大体見当がつく。

すると40歳台の半ばあたりから「役職定年」によるモチベーション低下効果は始まってしまうのだ。

この会社で活躍し続ける未来が見えなくなった時点で仕事は惰性モードに入ってしまう。

業務の改革や新事業の立ち上げといった高い目標を描くことは無くなる。

未来の大きな挑戦に備えてのスキルアップや人脈拡大といった努力も消滅するだろう。

そして、惰性モードで働く中高年の大量出現は若者にとってもあまり良い影響を与えない。

自分より高い給料をもらっているのに働かない中高年の存在は若者のやる気に水を刺す。

さらに、先輩たちに対する会社の処遇は未来の自分に対する会社の処遇を想像させるから、会社に対する信頼感も低下する。

先輩たちが何歳になってもイキイキと輝いていればこそ、若者も未来に希望を持てるのだ。

総合的に見ると役職定年制度は間違いなく長期で会社と日本に損害をもたらしている。

ではどうすれば良いのか? 

参考にすべきはプロ野球だ。

プロ野球では、毎年末、率直なフィードバックを選手に与えて緊張感を保っている。

「君には来期も期待している。頑張ってくれ!」と年俸アップを伝えられた選手は、モチベーションを上げると同時に、来季の好業績に対するプレッシャーが生まれる。シーズンオフであっても来季に備えて食事や睡眠等に関して節制を続け、万全な体調でのキャンプインを目指す。

一方で、「君の今期の業績には不満足だ」と年俸ダウンを告げられた選手には危機感からくるモチベーションが生まれ、これまた体調等の自己管理を促す。

場合によっては「君は来季は戦力外だ」と、解雇を告げられる選手もいる。

一人の選手の人生に多大な影響を与える戦力外通告を行うことは、マネジメントにとってもとても辛いことだ。

だから、日頃から選手の業績に目を配り、事前に適切に警告を鳴らし、環境を整え、できる限り選手が長く働けるように配慮する。

マネジメントも選手も真剣勝負なのだ。

本来なら、ビジネスの世界もプロ野球同様、毎期末しっかりとした人事考課を行なってマネジメントが一人ひとりの社員に今期の評価と来季の期待を告げるべきだ。

自己管理が徹底できたプロ野球選手は50歳を過ぎても現役で活躍するように、ビジネス界においても役職を解かれるタイミングは個々人の業績と能力に応じて千差万別であるべき。

ちなみに米国には役職定年制度どころか定年退職制度さえない。

年齢を理由として人を一律に処遇することは不当な差別に当たるから法律で禁じられている。

だから、アメリカのマネジメントは真剣勝負だ。パフォーマンスが低下した中高年社員に対しては対面して個別に降格を言い渡すのがマネジメントの責務。時には、戦力外通告として、解雇を告げる。

解雇を告げるのはマネジメントにとってとても辛い場面だ。だから、上司は日頃から部下の働きぶりをよく観察しているし、降格や解雇を言い渡す日が来てほしく無いから、しっかりと期待を伝え、成長を支援し、早めに警告も鳴らしてあげる。

日々、目標を話し合いながら仕事に取り組んできたので、部下も結果に照らしたネガティブなフィードバックを受け入れてくれる。

日本企業のマネジメントは、終身雇用と年功序列というぬるま湯なマネジメント環境にどっぷりと浸かり過ぎて、本来マネジメントが行うべき重要事項であるはずの人事考課能力が欠落している。

マネジメント個々人の人事考課能力が低いと降格、退職勧奨等の辛い業務が忌避され、野放図な状態となってしまって収拾がつかない。

だから、マネジメント個人に責任を追わせず、会社でルールとして一律の年齢での役職定年や定年退職を設けるという安易な方策に逃げているのが日本の多くの大企業の現状なのだ。

そもそも学生時代には横一線でスタートしたビジネスマン人生だが、働いて数十年も経って40歳を超えてくるとその心身の健康度合いやビジネスでの能力や人脈には甚だしい差がつく。

実際に、同期の友人を見ると、立派な太鼓腹をした堂々たる中年で仕事を惰性でこなしているものもいれば、ビジネスの前線で大きな責任を負いながらもいまだにスリムな体型を保ってフルサイズのサッカーでエースとして活躍している猛者までいる。

心身の若さには著しい個体差が生じている。

そんな個体差を無視して、年齢一律で降格させるというのは何とも理不尽な差別。

経営者の怠慢でしかない。

これは、ダイバーシティーマネジメントという観点からは大失敗。

不当な差別を禁じたSDG’sという観点から見ても不適当

人生100年時代という観点から見ても時代遅れ。

即刻、不当な年齢による差別である役職定年を廃止して、逃げずに真剣勝負のマネジメントに取り組むべきだ。

それは、必ず業績の向上にもつながる。

しっかりと業績や能力を見て一人ひとり個別に処遇すれば、働く者たち全員のモチベーションと緊張感が高まる。

終身雇用に安住する日本のビジネスパーソンは世界一スキルアップ等の自己投資を怠っている。

一方で、終身雇用に安住する日本の経営者は世界一、経営の説明能力が低い。

プロ野球のように、毎期、しっかりと自社の経営戦略と必要とされる人材像を経営者が示し、働くもの一人ひとりをそのビジョンと戦略という文脈で人事考課する。働くものは会社の経営戦略上で必要とされる人材であり続けるために不断の努力をする。

労使に生まれる緊張感が経営者と従業員一人ひとりの能力開発を促して業績向上へとつながるはずだ。

さらに言うならば、定年退職制度も理不尽な年齢による差別である。

2025年に定年は65歳まで引き上げられるが、それでも人生100年時代。私はたくさんの元気ハツラツとした65歳を知っている。

年を経る毎に健康管理を含めた日頃の自己管理が大きな個体差となる。55歳時よりも65歳時の方が心身の健康に関する個体差は大きい。

私自身の人生を振り返ると、やはり仕事ほど面白くやりがいを感じるものは他にない。

それを突然、年齢一律で奪われるほど辛いことはない。

願わくば、米国のように定年退職制度を廃止し、個々人の能力等の実情をしっかり測定して何歳であっても適材適所で処遇される社会であってほしい。


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この記事を書いた人この記事を書いた人

吉村慎吾

公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。

現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。

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