ジャニーズ帝国の未来に暗雲?
先日、人気絶頂のKing&Princeから一部メンバーの脱退が報道されました。
また、若手の育成を担当していた副社長のタッキーこと滝沢秀明さんも退社。
ジャニーズ事務所から大物の退所が相次いでいます。
盤石と思われたジャニーズ帝国に未来に暗雲が垂れ込めてきました。
今、ジャニーズ事務所に何が起きているのでしょうか?
経営学的な観点から見ると今ジャニーズ事務所には大きく次の2つの問題があると思われます。
1つ目
偉大なる創業者であるジャニーさんの後継者問題。
2つ目
ビジネスモデルの陳腐化問題。
1つ目
偉大なる創業者であるジャニーさんの後継者問題
2019年7月に偉大なる創業者であるジャニー喜多川さんが亡くなりました。
偉大な創業者の喪失は、人材の求心力とモチベーションの両面で多大なマイナスとなったはずです。
ジャニーズ事務所に所属する多くのタレントはジャニーさんに見出されティーンネイジャーでジャニーズ事務所に入所します。歌やダンスのレッスンを積み重ねやがてメジャーデビュー果たします。
ティーンネイジャーにとってジャニーさんは親のような存在で、彼らの多くは自分のためであると同時にジャニーさんに褒められたくて、喜んでもらいたくて日々努力を続けてきたわけです。
ジャニーさんに見出された多くのタレントにとってジャニーさんのいない事務所は、そこに所属する理由の半分を失ったに等しいでしょう。
さらに、ジャニーさんの不在は、仕事における葛藤を増やし、モチベーションを低下させます。
豊富な実績を持つ偉大な創業者の意思決定は、盲目的に人々を服従させ、日々の仕事に対する葛藤を減らしてくれます。
議論が百出するような難しいテーマであっても一度創業者が決断を下せば、反対意見を表明していたメンバーも、覚悟を決め、葛藤を消してその決断に従います。
経営の第一線を退いていたとはいえ、ジャニーさんが笑っていれば、現経営陣の日々の決断はパワーを与えられていました。
経営陣が反目する場面でも、ジャニーさんが上手に仲を取り持っていたことが想像できます。
人のモチベーションを下げるのは「なぜやる?」「なぜそっち?」「なぜダメ?」「なぜ私?」「なぜ彼?」等々の葛藤です。
でも、そのジャニーさんという葛藤除去装置を失った今、ジャニーズ事務所で決定される様々な決断はいちいち賛否を巻き起こして多くの人の心に葛藤を生み出しているはずです。
副社長であったタッキーこと滝沢秀明さんの退社は現社長のジュリー藤島さんとの確執が原因だと伝えられていますが、ジャニーさんが存命中ならば、上手に葛藤を消し去ってくれたであろうことが予想されます。
カリスマ的創業者の跡を次ぐのはどんなに優れた経営者でも困難です。
経営に100%全員が納得する意思決定などありません。
会社を発展させるためには少ない情報、見通せない未来の中でも勇気を持って迅速に決断していく必要があります。
常に賛否両論がある中で果敢に決断していくのが経営なのです。
カリスマ経営者は賛否を乗り越えた決断から生まれた混乱や不満を早期に収束させるパワーがあります。
後継者にはそのような影響力はありませんから、意思決定が遅くなりがち。
遅い意思決定は不満を生み出し、時に会社を衰退に向かわせます。
逆に、果敢に決断しても不満が生まれ、実行力が低下します。
では、今後ジャニーズ事務所はどのようにすれば良いのか?
私の提案は、偉大な創業者であるジャニーさんの想いの明文化。
経営理念の策定です。
経営者は、自分の価値観ではなく常にジャニーズ事務所の経営理念に照らして経営の意思決定をする。
その意思決定の理由を常に経営理念に照らして周囲に説明する。
創業者が偉大であればあるほど、その後継者の経営は困難になります。
ならば、その偉大な創業者のパワーを経営理念に昇華させて借りてしまえば良いのです。
これはジャニーズ事務所に関わらず、偉大な創業者を継ぐすべての経営者が採るべき最善の策です。
ビジネスモデルの陳腐化問題
King & Princeの一部メンバーが退所を決めた理由にグローバル展開に対する想いやスピード感の違いがありました。
彼らが見ていたのはK-Popで世界を席巻したBTSだったはず。
同じアジア出身のボーイズグループであるBTSが米音楽チャートのビルボードで1位を獲得し、グラミー賞にノミネートされて世界のBTSとなったのです。このことがKing & Princeの一部メンバーの焦燥感を生み出したのは想像に難くありません。
SNS等でグローバルに情報が飛び交う現代、野球をやっていたら「メジャーリーグで勝負したい」、エンタメやっていたら「グラミー賞を獲りたい」と思うのは自然なことです。
BTSのビジネスモデルはその誕生時から世界を獲るために最適化されていました。
ところがジャニーズのビジネスモデルは日本で成功するために最適化されています。
だから、ジャニーズのグループが世界で成功するためには非常なる努力が必要です。
ジャニーズのビジネスモデルは、伝統的主要メデイアであるTV地上波の枠をしっかり押さえてタレントを大量に露出させるプロモーションが柱です。肖像権等の著作権を厳格に管理して露出をコントロールし、情報に飢えるファンの渇望をCD、コンサート、グッズ、ファンクラブ等で売上として回収します。
ポイントは肖像権の厳格な管理です。
この真逆を行くのがBTS。
韓国の弱小事務所から生まれたBTSはTV等のメディアに露出させる力が無かったので当初からYouTubeやTwitterといったSNSで地道にプロモーションを続けました。
デビュー前の過酷なレッスン風景や個々人の葛藤を丁寧に発信して全世界にARMYと呼ばれる熱狂的なファンを獲得していきます。
肖像権や著作権の管理をゆるくして、ARMYたちがBTSの映像や楽曲を世界中に発信することを黙認。
国や言語の壁を超越して繋がるARMYは事実上BTSを世界的メジャーにするプロモーター集団となりました。メンバーの誕生日にはARMYたちが集めたお金で、事務所の許可なく巨大ビルボードやラッピングバスを占拠し、メンバーの肖像付きハッピーバースデー広告が登場したりします。
一方で、本当に厳選した最新のメンバーの情報や限定オンラインライブなどはファンとの専用交流アプリであるWeverseで独占配信して課金。
SNS時代を上手に活用したとても現代的なビジネスモデルなのです。
肖像権等を厳格に管理するジャニーズモデルは日本限定では手堅く稼げるのですが、世界を席巻するにはパワー不足です。
ところで、何で私がこんなにBTSとARMYに詳しいのかって?
私の妻と高校生の娘が生粋のARMYで、日々食卓で教育を受けているからです(笑)。
数年前、私が無邪気に「ジャニーズのアイドルとBTS何が違うの?」などという無防備な質問をし、「歌もダンスもレベルが段違いなの!」と烈火の如く叱られたところから教育は始まりました。
実際、BTSの歌や踊りは素晴らしい完成度で、ルックスやキャラだけでファンを獲得している日本のアイドルグループとはレベチです。
さらに、言葉や人種を超えて世界中に散らばるARMYの存在がBTSメンバーの意識を高め、社会問題に対する積極的な発言やチャリティー活動に対する熱心な参画をもたらしています。
BTSメンバーとARMYは長年の対話を通して互いに良い影響を与えあい、通常は排他性の強いはずのファン集団とは一線を画した成熟した意識の高い集団となってるように見えます。
貧困、格差、差別、気候変動等、世界の様々な社会課題に向き合うBTSとARMYは図らずもZ世代マーケティングのお手本になっているのです。
ジャニーズ事務所にここまでの覚悟があるでしょうか?
アイドルとエンタメで世の中を元気にすることは素晴らしいことですが、世界はその先を求めているようです。
盤石と思われたジャニーズ帝国も世界の変化に取り残されつつあります。
ジャニーズ事務所の今後の変化を注視していきたいと思います。
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公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。
現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。