VUCA時代の経営理念の作り方
経営理念やパーパスの大切さを掲げワークハピネスを初めて20年を過ぎますが、年を追うごとにその重要性が増してきている気がします。
VUCAな時代。企業経営における雑多なノイズが多いです。羅針盤となる経営理念やパーパスがなければ迷子になってしまいそうです。
良い経営理念に共感して人は集まってきます。
そして、Z世代は働くことにお金ではなく意義を求めます。
Z世代の傾向についてはこちら
共感できる経営理念があればそこで働く人々のエンゲージメントが高まり、経営理念に共感しているからこそ、働く人々は効果的に協力することができるようになります。
「あなたは何のために生きてますか?」
ワークハピネスは経営理念を最重要テーマと掲げてきたので、私自身も数多くのクライアントの経営理念の策定に携わってきました。そのどの仕事もとても思い出深く、また一緒に働いた経営者をはじめとする多くの人々に喜んでいただいた自負があります。
経営理念を策定するとき、ワークハピネスのアプローチにはとても本質的な強みがあると思っています。
経営理念を策定するワークショップは次の質問から始まります。
「あなたは何のために生きていますか?」
あまりに大きなテーマで参加者は大変戸惑いますが、突き詰めれば「幸せになるため」と思い当たります。
問いは「あなたにとっての幸せの定義を教えてくれますか?」と続きます。
人は「幸せになるため」に生きているのに、ほとんどの人は自分の「幸せの定義」を考えたことがありません。
人は多様です。だから「幸せの定義」も人それぞれ。世間の一般的な「幸せ」イメージを追い求めても自分の「幸せ」はやってきません。
「幸せになるため」には、自分にとっての「幸せの定義」を探求することがスタートです。
「良い経営理念」とは、「幸せになる」ための指針
大人になると多くの時間は仕事をしているわけですから、自分の「幸せの定義」を発見して、それが仕事を通して手に入るようになったら毎日が充実しそうです。
ワークハピネスが考える「良い経営理念」とは、仕事を通して「幸せになる」ための指針を与えてくれるものです。
だから、経営理念の策定とは、企業の経営者とそこで働く主要メンバーの「幸せの定義」の探求から始まるのです。
働くことを通して「幸せ」を感じる時間が多いならば、働くことが楽しくなります。楽しければ続けることができます。続けることができればやがて成功します。
働くことを通して「辛い」時間が多いならば、働くことが苦痛になります。苦痛なことは続きませんから、やがては失敗します。
さて、自分の「幸せの定義」はどのように発見するのか?
幸福感の正体
幸せは頭で分析して得るものではなく、身体が感じるものです。
- ワクワクする
- スッキリする
- 充実感を感じる
- 嬉しい
そんな身体の感覚が幸福感の正体です。
だから「幸せの定義」は論理的に導き出すものではなく、自分の身体に聴くものなのです。
素直に身体の声に耳を傾けるためには固定観念の少なかった幼少期に戻ることが近道です。
ワークハピネスのワークショップでは、参加者が自然と幼少期に戻れるように工夫を凝らします。
まず、幼少期を思い出して印象的な出来事をクレヨンで絵に描いてもらいます。
その絵を通して、参加者の五感を呼び戻します。
「何をしていますか?」
「何が見えますか?」
「どんな音が聞こえますか?」
「どんな香りがしますか?」
「何を感じていますか?」
「他には何が見えますか?」
「何が聞こえますか?」
幼少期の特定の場面の気分を思い出してその時代にタイムトリップします。
ある参加者の事例です。
何をしていますか?
ー「真っ暗な押し入れの中にいます」
何が聞こえますか?
ー「お茶の間で親父とお袋が罵り合っています」
何を感じていますか?
ー「もっとみんな仲良くすればいいのに」
他にはいかがですか?
ー「お茶の間で家族全員でドリフターズの『8時だよ全員集合』を見ています」
何が聞こえますか?
ー「親父やお袋、そして妹の笑い声が聞こえます」
何を感じていますか?
ー「テレビってすごい!お笑いってすごい!」
彼にとっての「幸せの定義」は周囲の「笑顔」や「笑い」そして「良好な人間関係」だということに気づきました。
彼は今、テレビ局でお茶の間で家族全員の「笑い」と「笑顔」が溢れるためのバラエティー番組を制作しています。
彼のチームの経営理念は「お茶の間の笑顔を増やす!」ことです。
「幸せの定義」=「企業の経営理念の柱」
幼少時代の楽しかった思い出にその人の「幸せの定義」が隠れています。
「夢中でプラモデルを作っていた」
「サッカーボールを蹴っていた」
「友達と遅くなるまで空き地で遊んでいた」
「何冊も昆虫図鑑を見ていた」
答えは人それぞれ。
その企業における主要メンバーの「幸せの定義」の重なり部分が、その企業の経営理念の柱となります。
「幸せの定義」が明確になれば、あとは簡単。
欲しいものは差し上げたいものです。
自分達の「幸せの定義」を事業を通して顧客に渡せば良いだけです。
万人を満足させることはできません。自分達と価値観が近い人々を顧客とすれば良いのです。
自分達が欲しい「幸せ」を事業を通して顧客に届ける。
「幸せの定義」の事業表現が”ミッション”や”パーパス”となります。
自分達の「幸せの定義」が「笑顔」「笑い」「良好な人間関係」で、事業がテレビ局ならば、番組制作を通して「お茶の間の笑顔を増やす!」ことが”ミッション”や”パーパス”となります。
自分達が「ワークハピネス」したいから、ワークハピネスの”ミッション”は「世界中のワークハピネスを増やす」となるのです。
事業モデルは変わっても”ミッション”や”パーパス”は不変
ワークハピネスには、ワークハピネスの”ミッション”に共感したメンバーが集い、そしてワークハピネスの”ミッション”に共感するクライアントが私たちを選んでくれます。
テクノロジーや社会の変化によって事業モデルは変わるかもしれませんが”ミッション”や”パーパス”は不変です。
かつてはコンサルティングやワークショップを通してクライアントのワークハピネスを増やす活動をしていましたが、コロナ禍を経てテクノロジーや社会が変わってきました。
なので、今はオンラインやデジタルコンテンツを通して「ワークハピネスを増やす」活動にも力を入れています。
昨年、創業20周年記念パーティーを開催できたのも、そして毎日楽しく働くことができるのも明文化された経営理念があったおかげだと感謝しています。
「幸せの定義」の発見から策定する経営理念。おすすめです。
弊社ワークハピネスが行う、経営理念を構築する流れはこちら。ご参考になれば。
公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。
現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。