タイパの先に待ち受ける未来
Z世代は忙しい・・・
Z世代の若者たちは、ドラマや映画を倍速で見ているとのこと。
見るならまだ良い方で、10分に短縮したファスト映画で終わらせる人も多いとか。
倍速で見たら微妙な表情の演技とか「間」とかが味わえないから本当の意味で映画を鑑賞したことにならないでは?と考えるのは昭和世代の発想。
Z世代の若者が映画を見る理由は別のところにあります。
SNSでは目まぐるしくトレンドが移り変わり、話題のドラマも映画もあっという間にオワコンになってしまいます。日々友人たちとの話題についていくためには話題の映画もドラマも倍速で視聴しなければ追いつけないのです。
大学生なら授業にも出なければいけないし生活費を稼ぐためにアルバイトもしなければならない。
そして、大量のトレンドの海を泳がなければならない。
Z世代はとても忙しいのです。
会話についていけない=社会からの脱落に等しい
そんな彼らが常に意識しているのが「タイパ(タイム・パフォーマンス)」
オンライン授業も倍速が標準。話題の小説も漫画もネタバレのまとめサイトであらすじを追う。
やらなければならない勉強やバイトをやりながら本当にやりたい趣味や娯楽である音楽、ゲーム、推し活、そしてチル(まったり)する時間を確保するためには、その他の活動のタイパを上げるしかありません。
タイパを求める若者の傾向はさまざまなブームや商品を生み出しています。
・TikTok等の短尺動画
・イントロがないヒット曲
・33種類の栄養素が一食で摂れる日清の「完全メシ」等々
目まぐるしく変わるトレンドの海に溺れずに乗っていくためには映画もドラマも倍速で見るしかないZ世代の若者。
ちょっと立ち止まって俯瞰してみましょう。
トレンドの海に乗っていかなかったらどんな結末が待っているのでしょうか?
友達との話題についていけないと本当に友達を失うのか?
話題だけのために大切な時間を使ってあらすじだけを倍速で視聴するなんて時間の無駄ではないか?
逆に、トレンドに流されない骨のある人?本質を追求する人?として面白い立ち位置を得れば良いのでは?
このような発言はオヤジの戯言で、若者にとってはSNSでの会話についていけないことは社会からの脱落に等しい大事件なのです。
タイパに囚われた人間を救うのは「教養」
今後も増えていく一方のエンタメコンテンツやSNSの情報の洪水。
社会から脱落しないために若者はますますタイパ意識を強め、人によっては睡眠時間を削ってトレンドについていこうとするでしょう。
でも、1日24時間は変わらないのでやがて限界がやってきます。
限界の先には何が待っているのでしょうか?
昭和世代の自分の若い頃を思い返せば「タイパ」に等しい概念で「効率」というものがありました。
仕事現場にパソコンが登場してワープロと表計算ソフトと電子メールが標準となり、仕事の効率は格段に上がりました。
以前よりも効率が上がって時間に余裕ができるはずなのですが忙しさは変わりませんでした。
なぜなら、効率が上がったのは私一人ではなく社会全体だったからです。
ビジネスは他社との競争ですから業界全体の効率が上がったらその浮いた時間でより多くの仕事をこなしてライバルに差をつけなければなりません。
資本主義に暮らす限りITツールの発達によってビジネスの効率はどんどん向上してきますがビジネスパーソンが忙しさから解放される日は永遠に来ないのです。
公認会計士として働く若い頃、ITツールを駆使して仕事の効率を高める努力を日々続けても一向に減らない業務時間に息苦しさを感じました。
私たちは途中下車のできない高速鉄道に乗せられてその速度は日増しに加速している、そう気づいたのです。
当時、仕事は忙しかったのですがスマホもSNSも無かったので私生活では効率(タイパ)を求められることはありませんでした。
そんな時、ふと興味が湧いたのが哲学と歴史でした。
人間は何のために生きるのか?
人類はどのようにして今日の文明社会に至ったのか?
哲学と歴史を学ぶとこの効率を追い求める社会を俯瞰できるようになり、息苦しさが減りました。
ビジネスの渦中に埋没し、視野が狭くなって苦しんでいた私を哲学と歴史が高い場所に救い上げてくれたのです。
私が興味関心を持ったのは哲学と歴史ですが、科学や芸術を学ぶことによって救われる人もいるでしょう。
つまり教養です。
タイパを追求して追い詰められていく若者を最終的に救い上げるのは教養なのです。
今、ちょっとした教養ブームですが、これはタイパを追い求める社会がもたらした必然です。
最近、教養を手軽に教えるYouTuberが増えていますが教養を学ぶ入口が増えるのはとても良いことです。
ただ、学ぶ理由が「ビジネスで成功するため」とか「脱落しないため」という文脈で語られているのはとても残念です。
教養は雑音の多い社会で、たった一度の人生を真っ直ぐ歩くための羅針盤なのです。
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公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。
現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。