ワールドカフェとは? 実施する効果から進め方や事例まで紹介
社員研修・人材育成

ワールドカフェとは? 実施する効果から進め方や事例まで紹介

従業員のアイデアや意見を収集する有効な方法の1つに、「ワールドカフェ」が挙げられます。ワールドカフェを実施することで、参加者同士の相互理解を深め、新たな発見や気付きを得られるようになります。しかし、ワールドカフェと言われても、ピンと来ない方もいるでしょう。

そこで本記事では、ワールドカフェについて実施する目的ややり方、実施事例を詳しく解説します。ワールドカフェを活用し、企業の課題解決や組織活性化につなげましょう。

チームの心理的安全性を上げる!チームビルディング研修はこちら

ワールドカフェとは?

ワールドカフェとは、カフェのようなくつろげる雰囲気の中、少人数でテーブルを囲みながら対話する会議を指します。従来の会議とは違い、発表や議論ではなく対話に重点を置いた手法です。

具体的な方法としては、1つのテーブルに対して4〜5人程度で座り、一定時間ごとにメンバーを入れ替えながら対話を続けます。ワールドカフェは参加人数が多くても少人数で対話できるため、相手の意見を聞きやすく、自分の意見も伝えやすいところが特長です。

ワールドカフェ誕生のストーリー

ワールドカフェは、1995年のアメリカでアニータ・ブラウン氏とデイビッド・アイザックス氏によって開発、提唱されました。

きっかけとなったのは、カリフォルニア州サンフランシスコ市郊外にある自宅で開催された「知的資本のパイオニア」というテーマの会議です。世界各国から二十数名の専門家を招待していましたが、急な悪天候により当初予定していた庭の散策ができず、リビングでテーブルを囲みながら気軽なおしゃべりが始まりました。

前日に知的資本についてすでに話し合いが行われていたため、自然と話題は知的資本に。予定外の対話に、参加者たちはテーブルクロス代わりに敷いていた模造紙にメモを残しました。そして、参加者の1人から「他のテーブルの話が気になる」という意見が出て、テーブルを移動してさらに対話が続けられました。

話し合いのあと、思い思いに書かれた模造紙には、想像以上の成果が生まれていたそうです。この出来事に感銘を受けたアニータ氏とデイビッド氏によって、ワールドカフェの基本的なルールや進め方が体系化されました。

ワールドカフェの目的

ワールドカフェの目的は、参加者同士の相互理解を深めることです。発表や議論ではなく対話に重点を置くことで、参加者は自由に意見し、お互いの思いや考えを探求できます。参加者同士の相互理解が深まれば、自然と新たな気付きや洞察も得られやすくなるでしょう。

なお、ワールドカフェは答えを出すことを最終目標としていないため、問題解決や合意形成を目的とする場合にはあまり適しません。

ワールドカフェの効果

ワールドカフェの効果は、以下の通りです。

  • アイデアや意見が出やすい
  • 相手の意見を受け入れやすい
  • 精神的なゆとりがある
  • 発言の機会が増える
  • 参加者の満足感が高い
  • より多くの知恵や考えを収集できる

ワールドカフェでは、参加者が少人数のグループに分かれて話し合いを行うため、相手の顔が見える距離で意見を聞くことができます。また、発言の機会も均等に与えられることから、自分の考えも周囲に伝えられます。1人ひとりの参加意識が高くなることで、テーマに対してより真剣に考えるようになるのです。

さらに、自分の意見をしっかり聞き入れてもらえるため、参加者の満足度が高くなる傾向にあります。仕事へのモチベーションが高まりやすく、生産性やエンゲージメントの向上といった効果も期待できるでしょう。

ワールドカフェにおける対話(ダイアログ)とは

ワールドカフェのキーワードは「対話」です。対話とは、自分の意見を伝えた上で相手の意見を聞き入れ、お互いの価値観を共有・理解し合うことを指します。

例えば、新商品の開発や新規顧客の開拓など新たな価値を創造する場面においては、お互いの価値観を共有することで多様な視点や考えを取り入れられます。対話では「こうあるべき」という価値観がなくなるため、これまでにないアイデアやソリューションが生まれやすくなるのです。

対話と類似する言葉に「会話」や「議論」がありますが、いずれも異なるものです。会話は情報や感情を交換することを目的とし、相手の意見を理解・共感することが重要です。一方、議論では結論を出すことを目的とし、自分の意見によって相手を納得させなければなりません。

ビジネスにおいては、会話・議論・対話を使い分けて、コミュニケーションを取る必要があります。

ワールドカフェの流れ

ワールドカフェの流れは、以下の通りです。

  1. 4~5人グループを作って1回目の対話
  2. グループを変えて2回目の対話
  3. 1回目のグループに戻って3回目の対話

上記の流れに沿って、具体的な進め方や注意点について見ていきましょう。

4~5人グループを作って1回目の対話

まずは4〜5人のグループを作ります。参加者同士が全員に意見を聞いてもらえるよう、グループの人数は最大5人までに抑えましょう。参加者には20〜30分を目安に、テーブルにある模造紙にメモを取りながら対話してもらいます。

また、いきなり話し合いを始めるのではなく、1人ひとり自己紹介してもらうとよいでしょう。ワールドカフェではリラックスした環境づくりが重要です。自己紹介を行うことで、参加者同士が打ち解けやすくなり、対話の活性化につながります。

なお、ワールドカフェは主体的な対話を促進するため、司会進行役は置きません。代わりに、参加者同士の対話が円滑に進むようサポートする「テーブルホスト」を1人設置します。

グループを変えて2回目の対話

2回目の対話では、テーブルホストを1人残して、残りのメンバーは興味のあるグループに移動します。テーブルホストは新たなメンバーを迎え入れ、自己紹介を促します。その後、1回目の対話で話し合った内容を共有し、感じたことや生じた疑問などを意見してもらいましょう。

2回目の対話ではメンバーが変わることで、新たな視点や意見が加わります。このとき、新しい意見に対して否定しないよう周知することがポイントです。否定されると自分の意見を受け入れてもらえないと感じ、積極的に意見を出せなくなる雰囲気が生まれてしまいます。新しい意見には「なぜそう思ったのか」の深掘りを促してください。

1回目のグループに戻って3回目の対話

3回目の対話では1回目のグループに戻り、2回目の対話で得たアイデアや意見を出し合います。この対話でも、意見に優劣を付けたり1つにまとめたりするのではなく、さまざまな視点や意見を尊重し、新たな発見や気付きを得ることに重点を置きます。

最後は、グループで出た意見を全体に共有しましょう。参加者全員が共通の認識を持つことで、ワールドカフェの目的を達成できます。

ワールドカフェにおける7つのルール

参加者全員がリラックスして対話できるように、ワールドカフェにはいくつかのルールが設けられています。代表的なルールは、以下の7つです。

  • 参加者との対話を楽しむ
  • 発言している人の意見をきちんと聞く
  • 他人の意見を否定しない
  • 他人の意見へ統合することを受け入れる
  • 質問して対話を広げる
  • 話し合った内容を紙に書き留める
  • テーマに焦点を絞る

ワールドカフェの成功のためには、他人の意見を受け入れて認めることが重要です。そのため、意見を否定したり批判したりすることは避けましょう。また、他人の意見が自分と異なる場合でも、相手の意見を尊重し理解しようとする姿勢が求められます。

分からないことがあれば質問し、話した内容のメモを残して視覚化しておくと、より効果的です。

ワールドカフェの事例

最後は、ワールドカフェを実際に行った自治体や企業の事例を紹介します。ワールドカフェを実施する際の参考にしてください。

北海道函館市

北海道函館市では、市の職員らがワールドカフェを実施しました。「未来の函館」をテーマに、函館の特徴や理想の未来像、将来のために私たちができることについて話し合いが行われました。

テーブルの中心に模造紙と数種類のペンを置いて、思い思いに自由に意見を出し合い、最後に全体で共有。模造紙からは、活発な対話が行われた様子がうかがえました。

参考:北海道函館市.「函館市基本構想[2017-2026]」, (2023-12-21).

千葉県柏市

千葉県柏市では、第五次総合計画策定の一環として「柏市職員ワールドカフェ」を開催。第五次総合計画の策定への活用を目的に、市の職員がまちづくりの将来について話し合いました。具体的には、子ども・子育てや健康・福祉、経済・産業、防災・防犯など、幅広いジャンルがテーマにあがりました。

参加人数407名、開催回数20回という、大規模なワールドカフェとなりました。

参考:千葉県柏市. 「柏市職員ワールドカフェについて」(2023-12-21).

パナソニック ホールディングス株式会社

100年以上の歴史を持つパナソニック ホールディングス株式会社は、未来の社会を洞察し、新たな価値を創造するための組織「KIZASHI-LAB」を設立。KIZASHI-LABは、さまざまな社会変化の兆候を分析し、未来の社会像をシナリオとして描いています。

KIZASHI-LABが描いたシナリオと、社会変化仮説を活用し、参加者が自分や事業の未来について考えるため「KIZASHI-WORKSHOP」が実施されました。KIZASHI-WORKSHOPに参加したのは、全国のパナソニックグループ13社から、営業や技術、研究開発など、さまざまな領域で活躍する社員です。

後半にはワールドカフェの手法を用いて、参加者が関心を持ったテーマについて、少人数のグループに分かれて対話が行われました。業務の中で考える未来だけでなく、自身の未来を考える良いきっかけとなったようです。

参考:KIZASHI LAB. 「これからのビジネスや働き方が見えてきた!未来洞察を体験し語り合うワークショップ」.(2023-12-21).

まとめ

ワールドカフェとは、参加者全員がフラットな立場で多様な視点や意見を尊重しながら、自由に対話する手法です。テーマに対して参加者同士の相互理解を深めたり、新たな発見や気付きを得たりするのに役立ちます。

ワールドカフェを行うことで、企業の課題解決や新商品・サービスの開発、従業員のコミュニケーション活性化につながるでしょう。

ワークハピネスでは、組織風土変革や新規事業開発をテーマにしたお悩み相談会を行っています。「ワールドカフェが自社に適しているのか分からない」「ワールドカフェをより効果的に実施するコツを知りたい」などの悩みを抱える人事担当者や経営者の方は、気軽にお問い合わせください

この記事を書いた人この記事を書いた人

藤岡 征太郎

大学卒業後、外資系医療機器メーカーで営業に従事。
6年間で8人の上司のマネジメントを経験し、「マネジャー次第で組織は変わる」と確信し、キャリアチェンジを決意する。
2009年にワークハピネスに参画し、チェンジ・エージェントとなる。

医療メーカーや住宅メーカーをはじめ、主に大企業の案件を得意とする。また、新人から管理職まで幅広い研修に対応。
営業、営業企画、新人コンサルタント教育を担当後、マーケティング責任者となる。
一度ワークハピネスを退職したが、2021年から復帰し、当社初の出戻り社員となる。現在は、執行役員 マーケティング本部長。

人材・組織開発に携わる方必見!サービス資料や、お役立ち資料をダウンロードはこちら
ONLINE セミナーダイジェスト 人気のセミナーを3分程度の無料動画にまとめダイジェスト版をご用意致しました。セミナー受講の参考に、ぜひご覧ください。SEE ALL DIGEST MOVIE

INDEX

新着記事

サービス資料・お役立ち情報満載!

資料ダウンロード

まずはお気軽にご相談ください!

フォームから問い合わせる