若手・中堅社員育成を次のステージへ:主体性とオーナーシップを引き出す研修設計
社員研修・人材育成

若手・中堅社員育成を次のステージへ:主体性とオーナーシップを引き出す研修設計

今日の企業を取り巻く環境は、変化のスピードが加速し、人材の流動化も進んでいます。特に、入社数年後から中堅層に移る社員、いわゆる「若手・中堅社員」層においては、業務のルーティン化や成長実感の低下、次世代役割への準備の不明瞭さなどが、組織にとって大きなリスクとなっています。

こうした背景を踏まえて、企業が注目すべきは「指示されたことをこなす人材」ではなく、「自ら選び、変え、行動する人材」です。まさに、社員が自分の“マイカー”にオーナーシップを持ち、走らせる感覚を持てるようになること。そこにこそ、若手・中堅社員育成の新しいスタンダードがあります。

本記事では、「若手・中堅社員育成」を、単なるスキル強化研修ではなく、主体性・オーナーシップ醸成+職場実践+定着化を設計する視点から整理します。


基本概要(定義・目的・効果)

若手社員/中堅社員とは

「若手社員」としては、おおよそ入社1〜5年程度、業務習熟期を終えて次のステップを模索する層と位置づけられます。「中堅社員」とは、入社5〜15年程度、業務遂行力を備え、チームや部署の中心的役割を担い始める層です。
本稿では、この「若手・中堅社員」層を、次世代のけん引者、組織変革の起点となる人材として捉えます。

目的・効果

育成の目的は三つに整理できます。

  1. 若手層から中堅へのスムーズな移行を支援し、次のステージで活躍できる基盤を整える。
  2. 中堅層に対しては、単なる管理・遂行ではなく、変革・改善・巻き込み型のリーダーシップを発揮できる土台を築く。
  3. 組織としては、エンゲージメントの向上、自律的な人材の増加、そしてチーム・部署全体のパフォーマンス向上につなげる。

効果としては、社員の主体性・オーナーシップが高まり、離職率低下・改善提案数増・チームの成果向上といった実績につながるケースが多く確認されています。例えば、ある製造業では「若手社員研修」で参加者が“自分の仕事が全体提供価値にどう貢献しているか”を理解し、主体的に動けるようになったという声があります。株式会社ワークハピネス

習得内容・スキル詳細

若手社員に必要なスキル

  • 主体性・オーナーシップ:自分の仕事を「誰かに言われてやる」ではなく「自分がやる」と捉えられる姿勢。
  • 協働・巻き込み力:自身と周囲の関係を整理し、他者を巻き込んで動ける力。
  • セルフマネジメント力:業務を整理・優先順位を付け、振り返り改善を繰り返せる。
  • 学びと実践の循環力:学んだことを現場で試し、振り返り、改善を行う習慣づくり。

中堅社員に必要なスキル

  • 視野拡大・課題発見力:自身の役割を俯瞰し、「何を変えられるか」「どう改善すべきか」を整理できる。
  • 変えられることに集中する力:変えられない事情に悩まず、影響可能な範囲にフォーカスする。
  • 育成・チーム導く力:後輩・若手を支援しながら、自らも動くことができる。
  • キャリア自律・戦略的思考:自分の成長軸を描き、組織の方向性と合わせてキャリアを設計できる。

共通して重視すべき軸

  • 内発的動機づけ:外部動機ではなく、「自分が関わりたい」「自分で選びたい」という意欲を起点とする。
  • 環境整備・障害除去:「業務過多」「理解ない上司」「役割の曖昧さ」などの障害をあらかじめ設計段階で扱う。
  • 実践‐振り返り‐改善のサイクル:知識習得→実践→振り返り→改善という流れを定着させる。

実施方法・プログラム種類

研修形式

  • 集合研修(対面):体験・演習・ワークショップ形式で高い対話性を確保可能。
  • オンライン/ハイブリッド研修:地理的に広がる組織の場合、eラーニング+ライブセッション併用が実用的です。
  • OJT/実践フォロー型研修:研修後の実務場面で使用する仕掛けを用意し、上司やメンターがフォローすることで定着率が高まります。

チームビルディング・アクティビティ活用法

  • 混合年次(若手+中堅)をチームにすることで多様な視点を引き出し、視野拡大につながります。
  • “マイカー”型のオーナーシップを養うため、参加者が自らゴールを定め、グループで競走・協力するゲーム仕立ての体験を用意することで、主体性が高まります。
  • 研修後に「次月までに○件改善提案を実施」「部署横断プロジェクトを立ち上げる」など、実務チャレンジを設定し、成果発表セッションを設けることで学びを現場に落とし込みます。

現場実装への移行設計

  • 研修直後に アクションプラン作成(参加者が自ら“変えたいこと”“やること”を宣言)
  • 各月・四半期ごとに 振り返り・1on1面談 を設計し、支援的上司が障害を除去・応援を行います。
  • 社内で 成功事例紹介・横展開セッション を定期的に実施し、仲間からの応援を仕組み化。
  • “言い訳できる環境”や“役割が曖昧なまま”という障害を、研修設計段階から洗い出し、環境整備を行います。

導入プロセス(準備・実施・フォロー)

準備段階

  • 目的・ゴールの明確化:例として「若手層から改善提案を年間5件以上」「中堅層がチームKPIを10%改善」など、測定可能な目標を提示します。
  • 対象社員の動機づけと選定:対象者に「なぜこの研修を受けるのか」「自分が変わることで何が起きるか」を説明し、選択制または自主参加を促すことで主体性を高めます。
  • 環境整備と障害除去(ロードブロックマネジメント):研修参加・実践推進を妨げる可能性のある環境(例えば、上司の理解不足、業務量が多すぎる、実践後にフォローがない等)をあらかじめ洗い出し、対策を講じます。
  • 設計・講師選定:アクティビティ・演習・振り返りが中心の設計とし、講師・ファシリテーターは参加者が自分ごとと感じて主体的に動くよう促す設計にします。

実施段階

  • キックオフ/意図共有:研修開始時に、企業の価値観・ビジョン・戦略を共有し、「自分の仕事が組織の変化にどう貢献するか」を参加者自身が認識する場を設けます。
  • ワーク中心の体験型演習:ロールプレイ、ケーススタディ、チーム課題、ゲーム型シミュレーションなどを用い、参加者が「自ら選び・変え・動く」体験を得られるようにします。
  • アクションプラン宣言:研修の最後に、参加者各自が「自分が次月に実践すること」「チーム/部署で仕掛けること」を宣言し、役割・期限・共有先を明確にします。

フォローアップ・定着化段階

  • 振り返りセッション:研修から1〜3か月後にフォローアップを行い、実践アクションの進捗・課題整理・改善案作成を支援します。
  • 支援的上司/メンターの関与:受講者を支える上司・メンターが定期的に面談し、障害を共に除去することで、習得したスキル・意識が現場行動につながります。
  • 成果の可視化と共有:成功/改善事例を社内で共有し、学びを横展開することで、当事者意識を醸成し、仲間からの応援文化を生みます。
  • 次回設計への反映:研修後の実践で出た課題を次回の研修設計・育成体系に反映し、育成が一過性ではなく、継続的な成功循環(関係性→思考→行動→結果)へとつながるように設計します。

効果最大化のポイント

内発的動機づけを促す

研修設計において重要なのは、「なぜこの研修を受けるか」「自分が変わることで何が起きるか」「自分自身が選んだ道である」という意識を参加者に持たせることです。
また、研修後に「言い訳できる環境」を残さないことが定着の鍵です。例えば「忙しくてできない」「上司が理解してくれない」「自分の役割が曖昧」という障害を先に除去することで、研修後の行動変容が加速します。
さらに、支援体制(仲間の応援、上司の支援、定期フォロー)を研修設計段階から組み込むことで、内発的動機づけが行動につながりやすくなります。

測定・評価方法

研修成果を評価するためには、以下の三段階評価が有効です。

  • 知識・スキル習得:研修直後にテスト・自己評価を実施。
  • 行動変容:上司・同僚の観察アンケート、受講者の行動報告などで実践度を確認。
  • 成果・定着:改善提案数、チームKPIの変化、エンゲージメントスコアの改善、離職率の動きなどを追う。
    業界や企業規模によって指標は異なるため、自社に適したKPIをあらかじめ設定しておくことが重要です。

業界・企業規模別の考慮点

  • 中小企業では、若手・中堅両層が複数役割を兼務しているケースが多いため、「マルチロール対応」や「少人数でのリーダー経験付与」が有効です。
  • 製造業/サービス業/IT業界では、求められるキャリア・スキル・育成スピードが異なります。例えば、IT業界では「継続的学び」「自律的キャリア形成」が中堅層においてより重要視される一方、製造業では「改善提案力」「現場と経営の橋渡し力」が中堅層に期待されやすいです。
  • また、業界変化の速さによって研修設計の周期やフォロー頻度を調整することが望まれます(例:変化が速い業界では3~6か月ごとのフォローが有効)。

成功事例・導入企業紹介

御社の実績から、若手・中堅社員向けの研修導入例をいくつかご紹介します。読者である人事・研修担当者に「自社でもできる」というイメージを持っていただけることを意図しています。

① 若手社員研修:製造業(約300~1,000名規模)

クライアント:株式会社シード(コンタクトレンズメーカー)

  • 課題:所属組織での役割意識が薄い/主体的に周囲を働きかけ巻き込む力が足りない。株式会社ワークハピネス
  • 実施策:成人発達理論を活用し、価値連鎖(バリューチェーン)を俯瞰するワーク「バリューチェーン バードビュー」を実施。
  • 効果:受講者が、自分と他者を客観視し、組織全体の価値創造連鎖を理解できるように。例えば「自分だけで頑張る」から「誰かの力も借りて余裕を持って作業する」に思考が変化。
  • ここから得られる学び:若手期に価値連鎖を理解させることで、自分の役割=組織貢献という意識が芽生え、行動変容への第一歩になります。

シード様|主体性を高める研修の事例はこちら

② 組織開発/中堅層も含むワークショップ:サービス・小売(約300~1,000名規模)

クライアント:株式会社STAYGOLD(リユース/アパレル)

  • 課題:理念の認知はできているが浸透が進んでいない/事業部間交流が少ない。
  • 実施策:チーム分けと「バリューチェーン バードビュー」研修を通じて、他部署との協力・視野拡大を図る。
  • 効果:「部署を超えて同じ方向に向かう」という意識が生まれ、受講者から「他部署にも目を向けることができた」という声が多数。
  • 学び:中堅層を含むクロス部署研修では、視野を広げる設計・チームビルディングの要素が有効です。

STAYGOLD様|理念浸透ワークショップの事例はこちら

③ 中堅社員研修:製造・設備関連(約300~1,000名規模)

クライアント:フルテック株式会社(自動ドア装置販売・設計・施工)

  • 課題:ネガティブな理由の離職があった/管理職前段階の役割認識が薄かった。
  • 実施策:アクティブマインド研修「ワクワク冒険島」を実施。自己探求+グループワーク+コーチングを通じて、自分自身の貢献ビジョンを探す。
  • 効果:参加者が「自分自身で仕事のやりがいや貢献ビジョンを導き出せる」ようになったという声。
  • 学び:中堅層に対しては「立ち止まる時間」「自己理解」「ビジョン化」がキーとなります。

フルテック様|アクティブマインド研修の事例はこちら

費用・期間・選び方

費用・期間の目安

  • 研修設計としては、1日~2日集中型+3か月フォローアップ型が基本ですが、実践・定着まで含めると6か月~12か月のプロジェクト設計が望ましいです。
  • 費用は研修形式・カスタマイズ度・フォロー支援量によって大きく異なります。重要なのは「研修をやったら終わり」ではなく、実践を前提にした設計+フォロー体制込みでの投資と捉えることです。

選び方のポイント

人事・研修担当者が研修プログラムやパートナーを選定する際には、以下の点を確認してください。

  • 自社の「成長フェーズ」「抱えている課題」「目指す姿」を明確にし、それに合った設計が可能か。
  • 研修後の定着支援・フォローアップ体制が設計に含まれているか。
  • 対象社員が「自分で選び・主体的に参加」できる仕掛けがあるか。
  • 効果測定・フォローアップ設計が明確で、数値・行動・振り返りが設計の一部になっているか。
  • 環境整備(研修後に実践するための体制)や障害除去(言い訳できる環境・役割曖昧さ)など、研修外部の要素を含めて検討されているか。

まとめ

若手・中堅社員の育成は、企業の成長・変革の鍵を握る重要な投資です。ただし、単なる「スキル研修」ではなく、社員自身が自ら選び、変え、行動できる“マイカー”型のオーナーシップを醸成し、環境整備・障害除去を通じて行動が現場に落ちる設計が不可欠です。
御社が掲げる「レンタカー理論」「エンパワーメント」「ハイパフォーマーの特徴」「葛藤の解消」「エンゲージメント」などの価値観は、まさにこの育成アプローチと高い親和性を持っています。
本稿でご紹介したプロセス・スキル・実践方法・事例を活用し、若手・中堅社員育成を通じて自社の組織変革をさらに加速させていただければ幸いです。

この記事を書いた人この記事を書いた人

滝澤 正教

人材アウトソーシングのベンチャー企業㈱エスプール(ワークハピネスの親会社)の創立3年目に新卒にて入社。新規現場、プロジェクトの立ち上げから不採算支店を売上日本一の支店に再生するなど、同社の株式上場に貢献してきた。

多数のプロジェクトを通じ、多くのスタッフと携わる中で「人間の無限の可能性」を知り、「人の強みを活かすマネジメント」を広めるべく、2006年よりワークハピネスに参画。

中小企業を中心とした人材開発、組織風土変革コンサルティングPJを推進している。

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