マネジメント能力とは？　必須スキルと管理職の能力を高める方法を解説

管理職が部下をまとめ、チームで成果を上げていくため、必要とされるのがマネジメント能力です。マネージャーにはプレイヤー時代とは異なるスキルが求められるため、管理職になってからも従来と同じスタイルで業務を進めていると、思うように成果が出ない可能性があります。それでは、どうすれば管理職に必要なマネジメント能力を身に付けられるのでしょうか。

本記事では、管理職に求められるマネジメント能力の内容や必要なスキル、マネジメント能力を向上させる方法を解説します。管理職のマネジメント能力に課題を感じている企業の人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

マネジメント能力とは

マネジメント能力とは、組織に必要な経営資源のヒト・モノ・カネを管理する能力です。「マネジメントスキル」とも呼ばれ、経営者なら会社全体が、管理職なら自分が担当するチームや部署が管理範囲となります。

組織が成果を出すためには、経営資源を適切に管理する能力が必要不可欠です。役職によって規模は異なるものの、組織の中である程度の人員を動かし、まとめていくためには、欠かせない能力といえるでしょう。

マネジメント能力とリーダーシップの違い

マネジメント能力とよく似た言葉にリーダーシップがあります。どちらも管理職に求められるスキルで、ヒトやモノを管理する能力を指す点は共通です。

しかし、マネジメント能力とリーダーシップでは、管理する対象の違いから、必要な能力も以下のように異なります。

• リーダーシップ：ヒト（人材）を中心として、目標達成に向け、メンバーを率いて成果を出す能力。
• マネジメント能力：ヒト・モノ・カネの全てに関わり、組織全体を管理する能力。

対象が異なるため、両者のアプローチ方法も次のような違いがあります。

• リーダーシップ：メンバーの自発的な行動を促す。
• マネジメント能力：組織としての活動を維持できるように管理するとともに、成果を上げるため効率的な方法・手段を模索する。

リーダーシップには、ヒトを育てる中長期的な視点が求められるのに対して、マネジメント能力には短期的から長期的まで、より幅広い視点が必要です。

マネジメント能力に含まれる8つのスキル

マネジメント能力は、マネジメントを行うための総合的なスキルであり、主に以下の8つに細分化できます。

• 意思決定スキル
• 進捗管理スキル
• 状況把握スキル
• 課題解決スキル
• テクニカルスキル
• コミュニケーションスキル
• コーチングスキル
• アセスメントスキル

それぞれのスキルについて詳しくみていきましょう。

意思決定スキル

意思決定スキルは、複数ある選択肢の中から、最適な選択を検討して選び出す能力です。管理職には、さまざまな場面でチームにとって最適な選択肢を導き出す能力が求められています。

一般的に、チームメンバーには意思決定権がないため、管理職が正しい決断を下せなければ、組織は成果を出せません。意思決定スキルには、パフォーマンスを上げるだけでなく、トラブルが起きた際、損害を大きくしないために対策する能力も必要です。

正しい意思決定には、情報を収集・分析し、結果を予測する能力が求められます。マネージャーや管理職に意思決定力がないと、生産性が改善しない、メンバーとの信頼関係を構築できないなどの問題が起こりかねません。

進捗管理スキル

進捗管理スキルは、目標達成に向けて現在の進行状況を把握し、必要に応じて適切な調整を行うスキルです。日常業務では、部下に権限を委譲する「エンパワメント」も必要になるため、管理職は意思決定を行った後も目標に向かって順調に進められているかを常に把握しておかなければなりません。

日々の業務やプロジェクトが計画通りに進むケースは少ないため、適時、計画の修正やリソースの再配置が必要です。部下一人ひとりのスケジュールやタスクを把握して、無理な計画や偏りを防止しましょう。上司の進捗管理スキルが不足していると、計画が予定通りに進まなかったり、リソースが浪費されてしまったりするなどの問題が起こる可能性があります。

状況把握スキル

チームのリーダーには、現在置かれている状況を正しく把握するスキルも必要です。正しい意思決定を行うためには、次に何をすべきか判断材料を収集する必要があります。適切に状況を把握するには、部下からの「報告・連絡・相談」が不可欠です。状況把握スキルが不足すると、空気が読めない、状況に応じて臨機応変に動けない人間だと判断されてしまい、マネージャーとしてもマイナスになります。

状況把握スキルを身に付けるには、まず部下との間で円滑なコミュニケーションが取れる良好な人間関係を築く必要があるでしょう。部下から話しかけにくい上司だと思われると、トラブルが起きた場合にも情報が入ってくるのが遅れてしまい、適切な現状把握ができなくなります。

課題解決スキル

課題解決スキルは、目標に向かって進んでいく中で出てくる課題を特定し、適切なアクションを検討・判断をして解決するためのスキルです。チームで成果を上げていくためには、課題の発見から解決、新しい課題の発見の手順を繰り返していく必要があります。

課題解決能力を持ったマネージャーは、組織全体の効率化や生産性向上を実現できるでしょう。反対に、課題解決スキルがないと、トラブルやミスへの対応が遅れたり、メンバーの不信感を招いてしまったりして業務に支障を来す恐れがあります。

課題解決スキルを高めるには、論理的思考が欠かせません。課題を見つけたら、PDCAサイクルを回し、解決への道筋を検討していきましょう。また課題解決には、メンバーや周囲の人にも協力してもらわなければならないため、コミュニケーション能力も必要です。

テクニカルスキル

テクニカルスキルとは、管理職が自分自身の業務遂行に必要とされる知識・技術などの専門的な能力です。上司が部下を適切に管理・指導していくためには、実際の業務遂行能力も欠かせません。部下だけで解決できないトラブルが発生した場合には、マネージャーが自ら対応しなければならないケースもあるでしょう。

求められるテクニカルスキルは、職種や業務内容によって異なります。テクニカルスキルが不足した状態でマネジメント職に就いていると、チームの成果を出せないだけでなく、現場メンバーとの信頼関係構築が困難です。管理職になると実務に携わる機会は減るものの、部下のロールモデルになるためにも、経験や知識を生かしたテクニカルスキルが大切になります。

コミュニケーションスキル

コミュニケーションスキルとは、双方向で意思の疎通を行えるスキルです。マネジメントには、部下との間で良好な信頼関係を築くためのコミュニケーションスキルが欠かせません。コミュニケーションスキルには、部下の話を聞く、自分の考えを伝える、質問するといった全ての能力が必要です。管理職の場合、単に外交的な性格であれば、コミュニケーションスキルが高いとはいえません。あくまでもコミュニケーションにおける双方向性が重要です。

コミュニケーションスキルが不足すると、メンバーとの信頼関係が構築できなかったり、チームの現状や課題を把握できなくなったりと、さまざまなトラブルが起きる恐れがあります。コミュニケーションスキルを高めるため、会話の中で自分が話す割合やノンバーバル（非言語）コミュニケーションへの意識が必要です。

コーチングスキル

コーチングスキルとは、チームメンバーが持っている潜在的な能力を引き出し、成長を支援したり、人材を育成したりするスキルです。部下一人ひとりの能力を高めれば、チーム全体のパフォーマンス向上にもつながります。

コーチングスキルとは、単に自分が持っている知識や技術を指導するだけの能力ではありません。対話や問いかけを通じて、メンバーが自ら課題や目標に気付き、答えや解決方法の学びを得てもらう必要があります。

知識やスキルを教えるだけのやり方は、ティーチングスキルであり、コーチングとは別物です。ティーチングは、新入社員のように、経験の少ない相手なら有効になるケースもあります。しかし、経験のあるメンバーへのティーチングは、命令や指示と捉えられ、メンバーの成長につながらなくなってしまうため注意が必要です。

アセスメントスキル

アセスメントスキルは、個人やチームのスキルや性格を把握してパフォーマンスを評価し、改善やアドバイスを行うスキルです。アセスメントには、客観的な評価や査定などの意味があります。チーム内で適材適所の人材配置や能力開発などを実現するには、管理職によるアセスメントが欠かせません。

適切なアセスメントスキルがないと、メンバーの離職や意欲の低下につながる恐れがあります。管理職には、部下の資質や長所・短所を把握して一人ひとりに応じた業務割り当てや育成方針、新しい管理職候補の選出を考えることが求められます。

管理職のマネジメント能力を高める方法

管理職がマネジメント能力を向上させるのに有効な方法は、以下の通りです。

• 管理職の業務量を最適化する
• ロジカルシンキングを意識する
• ストレスを解消する
• 管理職向けのマネジメント研修を受ける

管理職のマネジメント能力を高める方法を詳しく解説します。

管理職の業務量を最適化する

管理職が適切なマネジメントを行うためには、業務量の最適化が必要です。管理職に時間的・精神的な余裕がない状態では、プレッシャーが大きくなり、マネジメントに集中できなくなります。

しかし、実際には、人手不足のためプレイヤーとの兼任を強いられるケースも少なくありません。特に新任管理職は、管理職に必要なマネジメント経験も不足しているため、結果としてキャパオーバーになってしまいます。

会社側にも管理職の業務量を増やし過ぎず、マネジメントに関する知識のインプットや管理職としての基礎スキルを身に付ける時間を作るなどの配慮が必要です。

ロジカルシンキングを意識する

マネジメント能力を高めるには、ロジカルシンキングを意識することも大切になります。ロジカルシンキングとは、物事を順序立てて論理的に考える思考方法です。直感や感覚的な思考でなく、物事を理論的に考えられれば、正しい状況把握・判断を行えます。

普段から以下のような方法を意識してもらい、ロジカルシンキング能力を向上させていきましょう。

• 自分の考えを言語化する
• 物事を伝えるとき具体的に言う
• 仮説を立てて考える
• セルフディベートを行う

ストレスを解消する

管理職がマネジメント能力を発揮するには、ストレス解消も重要です。大きなストレスを抱えたままの状態だと、気持ちの余裕がなくなり、マネジメント能力の向上まで意識が向かなくなってしまいます。

企業は管理職がストレスをためこまないよう、以下のように適切なストレスケアの実施が必要です。

• 相談窓口の設置
• メンタルヘルスを学ぶ機会の提供
• 各種サーベイの活用　など

管理職が日々のストレスを解消しながら、チームをまとめていける体制を整えていきましょう。

管理職向けのマネジメント研修を受ける

マネジメント能力を向上させるには、管理職向けのマネジメント研修を受けるのも効果的です。管理職に求められるスキルにはさまざまな種類があり、必要な知識・能力もプレイヤーとは大きく異なります。

マネジメントに必要な能力を向上させるには、正しい知識を学ぶのに加えて実践とフィードバックが最重要です。新しいスキルを身に付けるのに研修が有効なのは、管理職であっても変わりません。特定のスキルが不足している場合は、個別での研修も別途必要となります。

まとめ

管理職がチームをまとめ成果を上げていくためには、ヒト・モノ・カネを適切に管理するマネジメント能力が欠かせません。マネジメント能力には、意思決定や進捗管理、コーチングなど、さまざまなスキルが求められます。スキルの幅が広いため、中にはマネジメント能力の習得に苦戦する管理職もいるでしょう。マネジメント能力を向上させるには、ロジカルシンキングや業務量の最適化など社内でできる対策に加えて、管理職向け研修を受けるのも効果的です。

ワークハピネスの管理職向けマネジメント研修「ZIPANGU」では、ラーニングゲームを通じて、マネージャーとして課題を解決していく能力を身に付けられます。ゲームを通して分かりやすく、楽しみながらマネジメント能力を学べると受講者からも好評です。管理職のマネジメント能力向上に課題を感じている企業の方は、ぜひ実施を検討してみてください。

管理職研修の導入をご検討の際は、ぜひワークハピネスにご相談ください。貴社の課題に、一緒に取り組んでいきましょう。