
部下育成でよくある失敗と成功のポイント|上司の悩みを解決するには?
管理職にとって部下を一人前の社員に育てる「部下育成」は、重要な業務の一つです。部下にとっても今後のキャリアを形成する上で大切な過程であるとともに、組織が成長を続け、成果を出していくためにも適切な人材育成は欠かせません。
しかし部下育成はやり方を間違えると、相手の成長を阻害してしまったり、ストレスになったりして早期離職や内定辞退などにつながるリスクもあります。
本記事では、部下育成の重要性や具体的な方法、よくある失敗、成功させるポイント、部下育成を行う上での上司の心得や悩みの対処法などを解説します。部下をどのように育成すれば良いのか分からないと悩んでいる管理職や人事部の方は、ぜひ参考にしてみてください。
部下育成とは
会社における部下育成では、部下をただ指導するのではなく、部下の学びをサポートすることが大切です。部下を育成する上で、上司による指導は欠かせないものの、部下自身が仕事を通じて多くの経験や成功体験を積み重ね、自分で成長のチャンスをつかんでいく必要があります。そのために上司は、本人の特性や適性を見極めるとともに、学びやスキル向上のきっかけとなる機会を与えるための配慮も欠かせません。
また部下の取り組みに対する、公正な評価やフィードバックも重要です。あらかじめ決められた目標を提示してやらせるのではなく、部下の能力や特性に応じた目標を設定し、共にどうすれば達成できるかを考えながら、成長を支援していきましょう。
部下育成の重要性
組織が成果を出して、成長を続けるためには人材の育成が必要不可欠です。特に、近年では、ビジネスにおける環境変化を背景に、部下育成の重要性が大きくなっています。
昨今は、変化が激しく未来の予想が困難な VUCA 時代(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性が大きい時代)です。VUCA 時代では人々が持つ価値観や働き方に対する考えが多様化しており、労働人口の減少により各業界では人手不足が問題化しています。
ビジネスを取り巻く環境の変化や人手不足などの問題に対応して存続するためには、常に優秀な人材の数を増やさなければならず、将来を見据えた人材確保・育成が重要です。適切な人材育成を行い、長期的な部下の成長を促すには、育成する側である上司の能力開発や成長も必要となるでしょう。
部下の育成でよくある失敗
上司が部下の育成でしてしまいがちなのが、以下のような失敗です。
● 簡単な仕事・裁量権が小さい仕事だけを任せる
● 感情的・高圧的な態度で接する
● 指示中心のコミュニケーションを取っている
● 育成に計画性がない
● 上司が自分の意見・価値観を押し付ける
それぞれの失敗について、どのような問題があるのか、どこが原因なのか、詳しく解説します。
簡単な仕事・裁量権が小さい仕事だけを任せる
簡単な業務や裁量権が小さい仕事だけを任せてしまい、部下の成長を阻害してしまうのは、部下育成によくある失敗の一つです。
部下が未熟な段階で難しい仕事を任せるのは、躊躇してしまうかもしれません。しかし人は仕事にやりがいや責任を感じないと、成長しなくなってしまいます。責任が軽くて簡単な業務や裁量権がない仕事ばかりを与え続けていると、スキルの向上や経験の蓄積に結び付かないだけでなく、「自分は期待されていない人間だ」と感じてモチベーションを下げてしまう可能性もあるでしょう。
裁量権が小さい仕事しかもらえないと逆にストレスが高くなり、部下のメンタルヘルス不調にもつながります。上司には、部下にある程度、仕事を任せて挑戦させる姿勢も大切なのです。
感情的・高圧的な態度で接する
部下に対して、感情的・高圧的な態度や言葉遣いで接してしまうのも、育成の際に上司がよくしてしまう失敗です。
部下に恐怖感を与える接し方をしていると、主体性や積極性が育たなくなる原因になります。
また昨今では高圧的な態度がパワハラと見なされる可能性もあるため、注意が必要です。パワハラが問題化すると、部下の離職を招き、上司の立場だけでなく、企業のイメージまでも悪化させる恐れもあります。
感情的・高圧的な態度が出る上司は、マネジメント能力や管理職としての資質に欠けた、器が小さい人物として、部下からもマイナス評価を受けかねません。尊敬でき、話を聞こうと感じる上司でなければ、部下も付いてこないでしょう。
指示中心のコミュニケーションを取っている
部下とのコミュニケーションが仕事の指示ばかりになってしまっているのも、ありがちな失敗の一つです。
指示が多いか少ないかは個人の主観であり、上司が適切な量だと思っていても、部下側は辟易している可能性があります。部下の意見や考えを聞かず、一方的に指示を出して自分のやり方を押し付ける上司は、いずれ部下から見放されてしまうかもしれません。
業務において上下関係は大切な要素ではあるものの、上司である自分の意見が絶対的に正しいといった思い込みがあると、指示が多くなったり、細かい部分まで指示が発生してしまったりするため注意が必要です。上司から指示されてばかりいると、部下は自分で考えなくなり、指示待ち人間になって成長が止まってしまう恐れがあります。
育成に計画性がない
人材の育成に対して計画を持たないまま部下育成を進めてしまうのも、多くの上司に起きる失敗です。部下育成では、どのように会社に貢献できる人材に育てていくかといった育成計画が欠かせません。個人の性格や経歴、キャリアに応じて育成していく必要があり、あらかじめ研修フローや計画書の作成を行うとともに、適切なフォローアップも大切です。
計画を立てた後は、部下本人とも共有して、お互いに進捗を確認するようにしましょう。部下自身が育成の目的やスケジュール、現状の足りない部分などを把握していないと、目指すべきゴールが曖昧になり、会社で活躍する人材に成長できなくなってしまいます。
上司が自分の意見・価値観を押し付ける
上司が部下に自分の意見や価値観を押し付けてしまうのも、部下育成のよくある失敗といえるでしょう。仕事において、過去の経験は大きな財産です。しかし変化が激しく、新しいテクノロジーやアイデアが次々に生まれている時代では、柔軟性の欠如は大きなマイナス評価になります。
現代の組織において、重視されているのが多様性です。異なる経歴や性格、経験、価値観などを持つ人材が集まると、従来になかった斬新なアイデアやイノベーションの創出が起こりやすくなり、課題の早期解決につながる可能性があります。部下の意見を認めず、自分の価値観を押し付ける上司の存在は、衰退の一因にもなりかねません。
また意見や価値観の押し付けは、部下の反発を招き、信頼関係の構築失敗や離職につながる恐れもあります。
部下育成を成功させる 4 つのポイント

部下育成を成功させるために欠かせない、以下の 4 つのポイントを解説します。
● 部下の特性に合ったサポート
● 明確な目標設定
● 適切なフィードバック
● 心理的安全性の確保
それぞれのポイントについて、詳しくみていきましょう。
部下の特性に合ったサポート
部下育成では、一人ひとりの特性に応じたサポートを心がけましょう。以下のように、個々の特性を理解して、それぞれに合ったマネジメントを行わないと、部下のモチベーション低下にもつながりかねません。
● 能力が高く意欲的な部下:挑戦的な仕事や裁量権の大きな仕事を積極的に任せていくとともに、与えられた業務を部下が自分一人の力でやり切れる環境を整える。
● 自信がなく能力的にも未熟な部下:頑張ればやり遂げられる難易度の仕事を与えて、小まめに相談に乗りながらフォローを行い、成功体験を積ませて徐々に自信を付けさせていく。
また仕事を割り振る上では、キャパシティの個人差にも注意しましょう。部下のキャパを正しく把握して仕事を与えていかないと、パンクする人や期待されていないと感じて意欲を失う人が出てきます。
明確な目標設定
育成を行う際には、明確な目標設定を行うとともに、部下との共有・理解を深めましょう。
その場しのぎの指導を行っていては、部下の能力向上は見込めません。部下育成には目標の立案・共有が不可欠です。
目指すキャリアや将来像などは人によって異なるため、目標を立てる際は、本人の意見や意思を確認するようにしましょう。また立案した目標は、部下への共有も重要です。部下が育成計画やスケジュールを理解していないと、どこを目指せば良いのか分からず迷走し、成長が停滞する恐れがあります。
計画に対して、現状とのギャップや目標達成後に得られる成果を明示して、うまく本人のやる気を引き出していきましょう。なお目標の押し付けは、部下のモチベーションや帰属意識を下げてしまうため NG です。
適切なフィードバック
部下育成では、上司による適切なフィードバックも重要です。仕事を任せた際は、目標に対する成果を確認し、良かった点や課題などをフィードバックしてあげましょう。
フィードバックを実施する際は、評価の内容や部下の特性に合わせて、課題を伝えて改善を促す「ネガティブフィードバック」と、良かった部分や評価できる点を伝える「ポジティブフィードバック」の両方を使い分けます。課題については前向きな言葉で話すなど、モチベーションを下げないよう、伝え方にも工夫が必要です。
フィードバックは仕事が一区切り付いた際など、早い段階で小まめに伝えるようにします。
分かりやすくするため、数字や事例を使ったり、部下の性格や特性に合わせて話し方を変えたりするなどの工夫も大切です。
また一方的に話すのではなく、部下の意見も聞き入れましょう。適切なフィードバックには、そもそも部下との信頼関係が必須な点にも注意が必要です。
心理的安全性の確保
部下育成では、心理的安全性の確保が欠かせません。心理的安全性が確保されている状態とは、組織の中で自分の意見や考えを誰にでも安心して発言できる状態のことです。心理的安全性が低い組織だと、部下は周囲のネガティブな反応を恐れて、能動的な言動をしなくなってしまう可能性があります。その結果、成長が鈍くなってしまうかもしれません。逆に、心理的安全性が確保されていれば、部下との情報共有がスムーズになり、個人のパフォーマンス向上も期待できるでしょう。
部下の心理的安全性を高められるよう、部下と接する際は、常に話を傾聴して意見を受け入れる姿勢を意識しましょう。社内での立場に関係なく、相手を尊重する姿勢が重要です。問題が起きた際の犯人探しや責任追及など、部下のやる気を削ぐ行為は控え、常にどうすれば良い結果が出るか、ポジティブな視点から業務を進行させていきましょう。
部下育成を行う上司の心得
部下育成を行う上司の心得として、重要なのは以下の 6 つです。
● 部下を育成するための時間は十分に確保する
● 長期的な視点を持ってできるまで継続させる
● 建設的なコミュニケーションを行う
● 自分で気付く・思案するヒントを与える
● 結果だけでなくプロセスにも注目する
● 感謝と謝罪を行う
それぞれの心得について、詳しくみていきましょう。
部下を育成するための時間は十分に確保する
部下の育成を担当する際は、十分な時間を確保しましょう。部下育成では、部下一人ひとりに時間をかける必要があります。部下が「上司は自分をよく見てくれていない」と感じると、上司を信頼できず、指導やフィードバックなどを受け入れにくくなるでしょう。部下の成長率が下がると任せられる業務が制限されるため、組織としての成長もできません。
部下育成を行う際は、週に 2 時間以上は育成のための時間を確保して、仕事やメンタルの成長サポートに当てましょう。
なお株式会社 EdWorks が行った「部下育成の課題に関する実態調査」によると、部下の育成に割く時間があまり取れないと感じている管理職は 36.4%となっています。
部下育成での時間不足を悩みにしている上司は多いため、会社としてあらかじめ対策を行う必要があるでしょう。
参照:※ EdWorks. 「【部下育成の課題に関する実態調査】管理職の 62%が部下育成に悩みがある」 . https://ed-works.co.jp/research/20230705 ,(参照 2024-09-27)
長期的な視点を持ってできるまで継続させる
部下育成では、長期的な視点を持って、できるまで継続的にやらせる姿勢が重要です。部下が成長していくためには、成功体験を積ませる必要があります。しかし仕事は最初から全てがうまくいくわけではありません。できないからと諦めるのではなく、失敗しても上司が寄り添って指導を行い、粘り強く取り組ませていく必要があります。
失敗しても部下を責めず許容するとともに、適切なタイミングでフォローアップやアドバイスを行いましょう。そして部下には、自分で考えながら目標達成を目指せるよう、継続的に挑戦させることが大切です。
また指導する際は、各々のスキルに応じて、段階的に難易度を上げていくのがポイントです。
初めは手取り足取り教えていき、慣れてくれば一人で作業させ、上司は最終確認や抜き打ち確認を行うなど、徐々にステップアップしていきましょう。
建設的なコミュニケーションを行う
部下育成では、建設的なコミュニケーションが大切です。建設的とは、以下のような前向きにより良くするための姿勢を意味します。
● 部下の話をきちんと聞く。
● 感情的にならずに冷静な話し合いを心がける。
● 相手を批判・非難するのではなく、問題や課題にフォーカスして解決策を考える
● 課題の改善を促す際は、なるべく具体的に何が問題かを指摘する。
● 部下を叱ったり否定したりするだけでなく、できている部分や長所を認める。
● 相手の意見を理解するとともに、良い部分に関しては同意を示す。
「いつまで同じミスを繰り返すつもりなんだ」のように、叱り付けるだけのコミュニケーションでは、部下が萎縮してしまい、成長を阻害する恐れがあります。感情的にならず、部下のモチベーションを高めて、次回につながるコミュニケーションを心がけましょう。
自分で気付く・思案するヒントを与える
部下育成においては、指示を出すだけでなく、自分で気付き・考え・行動するきっかけとなるヒントを与えるのが上司の仕事です。単に課題を指摘するだけや指示を出すだけだと、部下は受動的になってしまい、仕事での成長にもつながりません。
上司は、自分の問いかけによって、部下に気付きを与えられるよう心がけましょう。「なぜ現在の結果に至ったのか」「何が問題だったのか」「どうすれば改善できるか」などを本人に考えさせたり、別の視点で捉える機会を提供したりして、部下に当事者意識を持ってもらうのが大切です。
部下に振り返りを促すとともに、上司も一緒に検討を行います。「どう思う?」と聞いて、正解が出ない場合でも、部下を馬鹿にしたり能力不足を責めたりするのは NG です。適切なアドバイスを与え、部下の考えで正しい部分はきちんと評価して、さらに、部下の気付きや思考力を高められるようにしていきましょう。
結果だけでなくプロセスにも注目する
部下の評価では、結果だけでなく、成果を出すために必要な行動であるプロセスに注目するのも大切です。
結果を残すために必死に考えて行動しても、成果に結び付かないケースは少なくありません。
育成途中の人材に対しては、短期的な成果は期待できないものです。たとえ短期的に成果が出ても、実力として評価しづらい場合も多いでしょう。
成果が出ていなかったとしても、プロセスに注目して良い点や改善すべき点を伝えれば、将来的・長期的な成果につながります。具体的には、「部下の意思決定に柔軟性や迅速性・積極性があるか」「自分の能力を客観的に見られているか」「言動やふるまいに問題はないか」などに着目すると良いでしょう。
感謝と謝罪を行う
人間関係の構築に、感謝と謝罪は必須であり、円滑なコミュニケーションの基本です。部下育成においても、感謝と謝罪の重要性は変わりません。一人の社会人として、立場にかかわらず感謝と謝罪はきちんと行うようにしましょう。
上司から感謝の言葉があると、部下は自分が評価されたと実感でき、パフォーマンスアップにつながります。また上司からの謝罪は、きちんと自分の非を認める人だと思われて、部下の信頼を得るきっかけにもなります。
感謝や謝罪は、ただ言葉にするだけでなく、伝え方も大切です。部下に感謝や謝罪を伝える際は、自分の言葉が正しく相手に受け取られているかどうかにも気を遣いましょう。
部下育成の具体的な方法

ここからは、実際に部下育成を実施する際の具体的な方法や理論を 5 つ紹介します。
● コーチング
● ティーチング
● OJT
● Off-JT
● パスゴール理論
それぞれの方法の特徴や注意点をみていきましょう。
コーチング
コーチングとは、コーチ(上司)とクライアント(部下)の対話を通して、クライアントの目標達成に向けた主体的な行動を支援するプロセスです。
通常の指導と同じように見えますが、コーチングではクライアント(部下)に主導権がある点が異なります。上司が一方的に教えたり、指示を出したりして、部下が従うだけといった進め方はしません。上司の役割はあくまでも、部下の目標達成に必要な現状把握や分析、問題に対する問いかけなどを通じたサポートです。
コーチングにおいては、答えはクライアント(部下)の中にあると考え、部下が自分で気付きを得られるよう導いていきます。部下の積極性や仕事に対する理解を養うため有効な方法といえるでしょう。
ティーチング
ティーチングとは、経験や知識、ノウハウなどを持っている上司・講師が答えを提示して、部下や生徒に学ばせる指導方法です。コーチングとよく似ていますが、コーチングとティーチングは以下のように異なります。
● コーチング:部下のサポートを行って、答えを引き出す、または共に探求していくことを目的としている。
● ティーチング:上司側が部下を主導して教える方法。1 対 1 だけでなく、1 対多数の講義形式でも実施される。
必要な情報やスキルを短時間で教えられるのがティーチングのメリットです。その反面、部下に自分で考えさせ、自立を促す効果は低く、上司が持っている知識や経験以上の内容は教えられないデメリットがあります。
ティーチングとコーチングの特性を理解し、シチュエーションに合わせて使い分けることが大切です。
OJT
OJT とは、実際の現場での業務を通じて部下に仕事を学ばせる「 On-the-Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」を略した用語です。現在、OJT は日本企業における一般的な部下育成の方法となっています。職場での実務を通じて学んでいく形式のため、会社内での実践的な知識やスキルを身に付けられるのがメリットです。
日常業務をこなしながら部下を育成しなければならないため、理解度を図りながら、一人ひとりに合わせた指導を実施していく必要があります。
Off-JT
Off-JT とは、「 Off-the-Job Training(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)」を略した用語で、職場以外の場所で部下に必要な指導を行う育成手法です。職場内で得られない知識やスキルを身に着けさせたり、ビジネスマナーのような現場に出る以前の基礎的な教育をしたりするのに適した方法といえます。外部機関や他社と交流の機会になるのもメリットです。
一方で研修を受けるのに費用や時間を要する点や、身に付くスキルがすぐに現場で使えるものではない点などはデメリットといえるでしょう。
パスゴール理論
パスゴール理論とは、部下がゴール(目的・成果)を達成するために、リーダーがどのようなパス(経路)を通れば良いのか、明確な方針を示して働きかけを行う必要があるとする組織論の一つです。
この組織論では、環境的条件と部下の要因によって適するリーダー像が変わるとされています。このことから、リーダーが部下に有効な道筋を示す際は、現在の環境と部下の状況によって接し方やコミュニケーションの取り方を変えていかなければなりません。
リーダーが使い分けるリーダーシップのタイプには、「指示型」「支援型」「参加型」「達成志向型」があります。それぞれの特徴は、以下の通りです。
● 指示型:リーダーの考えを具体的に指示・指導する。部下の能力が低い場合や目標が曖昧なケースに有効。
● 支援型:リーダーは細かな指示は出さず、部下に配慮・支援を行いながら目標に導いていく。目標が明確な場合や部下育成に有効。
● 参加型:リーダーは部下に相談して決定を行う。部下の能力や自立性が高い場合に有効。
● 達成志向型:高い目標を設定して、部下に全力の努力を求める。難しい目標に挑戦する際に有効。
部下育成では、現在の状況がいずれに当たるかを見極めた上で、部下が成長できる適切なスタイルを選択しましょう。
部下育成における管理職の悩みと対処法
部下育成に取り組む管理職には、以下のようなさまざまな悩みが付きものです。
● 世代間ギャップで意見・価値観が合わない
● 相談できる人がいない
● 会社と部下の板挟みになる
● 業務量が多い・忙し過ぎる
● 部下と信頼関係が築けない
最後に、それぞれの悩みと対処法について詳しくみていきましょう。
世代間ギャップで意見・価値観が合わない
部下育成では、部下と上司の世代間ギャップや意見・価値観の相違に注意が必要です。特に新入社員の Z 世代は、以下のように、上司世代とは大きく異なる特徴を持っています。
● 小さい頃からスマートフォンや SNS が当たり前のように存在しているデジタルネイティブで IT スキルが高い
● 他者の評判や評価を気にする傾向が強い
● キャリアへの考え方では出世よりも自分らしい働き方を大切にする
● 転職に対する抵抗感は少ない
上司は指導の際、部下世代の価値観を正しく理解するとともに、相手の価値観を尊重する姿勢を見せましょう。
相談できる人がいない
部下育成を担当する上司は、周囲に相談できる相手がいないと悩んでしまう可能性があります。後輩の立場では上司や先輩に相談できていたものの、自分が上司の立場になると誰にも相談できず、メンタル的にも悪影響が出るかもしれません。
悩みを抱えた場合には、一人で抱え込んだりせず、カウンセリングを受けるなどの対処法を実行しましょう。部下育成の悩みは個人で対処しにくいため、周囲の助けを借りる必要があります。また人事部がマネージャー同士で対話できる機会を設けるなど、会社全体で管理職のストレスを軽減する施策を実施するのも大切です。
会社と部下の板挟みになる
上司が会社と部下の間で板挟みになってしまうのも、部下育成に起きやすいトラブルです。
指導に当たる上司は、部下からも会社からも要望が集まるため、ストレスを感じやすくなっています。早く部下に一人前になってもらわないと困るのは確かですが、指導側が力を尽くしても、部下が急激に成長するとは限りません。
まずは、普段から部下に上司が味方であると示し、周囲に理解者を増やしましょう。誰かに相談するときは、社外のカウンセラーなど、本人と利害関係のない人を選ぶのがポイントです。会社としても、上司が適度にストレスをため込まないようカウンセリング窓口を用意したり、管理職向けの研修を行ったりとサポートを用意しましょう。
業務量が多い・忙し過ぎる
部下育成の際は、業務量の多さや忙し過ぎによって手が回らないなどの悩みが出てくる場合もあります。管理職は、自分の日常業務に加えて、部下の育成からチーム・部署の統括まで多岐にわたる業務を遂行する必要があり、マルチタスクになりやすく、部下を指導する時間や心理的な余裕がなくなってしまうかもしれません。
多忙な管理職が部下育成を成功させるためには、管理職向けのコーチングを受けると良いでしょう。マネージャー研修を受講したり、同じ管理職が集まる場所に参加して情報交換したりすると、マネジメント能力の向上に結び付き、今までよりも業務の負担を軽減できるはずです。
部下と信頼関係が築けない
部下との信頼関係構築も、多くの管理職が持つ悩みです。前述の通り部下育成では、上司と部下の間に適切な信頼関係が必須といえます。部下から信頼を得られていないと反発を受けたり、フィードバックを拒否されたりしかねません。
部下と信頼関係を構築するためには、相手を否定したり、一方的に意見を押し付けたりするのを避け、相手を受け入れる姿勢を見せましょう。上下関係や仕事での能力の差だけにこだわらず、部下の話をきちんと聴く、成功したら褒める、感謝や謝罪を素直に口にするなど、相手を一人の人間と認めて接する態度が重要です。
まとめ
部下育成は、管理職としての重要な職務であると同時に、組織がビジネス環境の変化に対応して成長を続けるためにも欠かせません。部下育成では、上司が全てを指示するのではなく、部下が自ら気付き、学んでいけるようサポートすることが大切です。マネジメント能力を向上させるには、まず管理職自身の現状と課題の把握が必要になります。
管理職向けゲーム体感型マネジメント研修「ZIPANGU」は、ゲーム体験を通じてチームマネジメントのコツを学び、プレイングマネージャーを育てる管理職研修です。ゲームに熱中するうちに、人や組織のクセが表面化するようにデザインされており、自分自身の行動パターンを把握するとともに、リーダーとして不足している行動に関する気付きの機会を提供します。部下育成にお悩みの管理職や人材開発に力を入れていきたい人事部の方は、ぜひ導
入を検討してみてください。
管理職向けゲーム体感型マネジメント研修「ZIPANGU(ジパング)」の詳細はこちらをご覧ください。

人材アウトソーシングのベンチャー企業㈱エスプール(ワークハピネスの親会社)の創立3年目に新卒にて入社。新規現場、プロジェクトの立ち上げから不採算支店を売上日本一の支店に再生するなど、同社の株式上場に貢献してきた。
多数のプロジェクトを通じ、多くのスタッフと携わる中で「人間の無限の可能性」を知り、「人の強みを活かすマネジメント」を広めるべく、2006年よりワークハピネスに参画。
中小企業を中心とした人材開発、組織風土変革コンサルティングPJを推進している。





















