OJTトレーナーが本当に押さえておくべき大事なこと〜効果的なOJTで早期戦力化!
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OJTトレーナーが本当に押さえておくべき大事なこと〜効果的なOJTで早期戦力化!

ここ最近、新入社員の採用に苦戦しているというお話をよく聞きます。製造業では大卒が取れないので高卒の採用にシフトしている企業様も増えてきました。

苦労して確保した新入社員も数年後には頼もしい戦力となり、企業活動に貢献してもらえれば苦労も報われるものですが、そんな苦労は露知らず、新入社員研修を終えて現場に配属された後の育成(OJT)は現場任せ、現場頼みとなっている企業がほとんどです。

そんな現場では以下のような悲鳴も聞きます。

マネージャー
マネージャー

「ただでさえ忙しいのに育成を押し付けられた」
「イマドキの若い子との接し方がどうも分からない」

担当者
担当者

「自分の仕事も忙しいのに、育成なんてできるのか不安」
「この教え方でいいのか正解が分からない」

新入社員
新入社員

「成長実感や貢献実感が湧かない」
「職場に居場所がない気がする。そもそもこの会社でこのまま働き続けることは自分にとって最適な選択なのだろうか」

この状態が続くことで、新入社員のエンゲージメント低下、メンタル不全や退職につながりかねません。新入社員のみならず、トレーナーも疲弊してしまい、新入社員と共倒れといった最悪の事態も起きかねません。

このような状態を防ぎ、マネージャーが新入社員の育成にコミットし、OJTトレーナーも一人で背負いすぎることなく、新入社員も成長を実感できるような手法をご紹介します。

OJTトレーナーとは

OJTとは何か?

「OJT」とは「On-the-Job Training」の略称です。実際の業務を通じて、新入社員や中途社員の入社時や、新たに他部署へ配属された時に、上司や先輩社員がその部下や後輩に対して、業務を通じて知識や技術を教える育成方法のことです。

それに対して、「OFF-JT」は「Off-the-Job Training」で、職場外で講習や研修で教育するのが技術を習得する教育訓練のことを言います。

OJTトレーナーとは

OJTでは、教える側の人を「トレーナー」で、教えてもらう側の人を「トレーニー」と言います。OJTを担当する者の呼称は企業によって様々です。

「トレーナー」「ブラザー/シスター」「コーチャー」

等々、任命されるのも若手3年目から中堅社員、職場によっては若手がいないのでベテランがなることもあります。この呼称は役割認識を持たせるのに大きな影響を持っており、例えば「トレーナー」の呼称を用いる場合、自分は「教えるのが仕事(役割)」と自分の役割を規定しまいがちなのが人間です。

もともと、OJTは、アメリカの職業訓練施設で使われていたプログラム手法で、そのときに使っていたのが次の「4段階職業指導法」でした。

  1. 1.やってみせる
  2. 2.説明する
  3. 3.やらせてみる
  4. 4.確認、追加指導する

日本では、海軍司令官であった山本五十六の次の文がOJTの考え方として、よく引用されています。

  1. 1.やってみせ
  2. 2.言ってきかせて
  3. 3.させてみせ
  4. 4.褒めてやらねば人は動かじ

トレーナーとメンターの違い

トレーナーは一言で言えば「指導する人」です。よくパーソナルトレーナーやスポーツトレーナーといった形で耳にすることがあると思いますが、目の前のトレーニーに直接的に指導をし、より良い状態に向けて前進していくことを助ける人です。

メンターも指導者ではありながらも、目の前のメンティーが自律的に前進する上でマインド面のサポートをすることが多いです。ビジネス上で言えば、何か悩んでいる時に相談したりする存在だと思います。他部署の斜め上の先輩をメンターにおき、利害関係ある人にはできない相談に乗ってもらうという位置付けで制度化している企業も多く見受けられます。

語源を探れば色々な解釈ができるのでしょうが、まずは期待したい役割を明確化して、そこに込める思いを呼称にすることが大切です。

関連記事:メンターとは?メリットや制度の導入を成功させるポイントを解説

OJTの目的と期間

OJTの期間は企業によって様々です。ただ、弊社が支援している企業様を見ていると、入社後1年間(3月末)を区切りとされる企業様が多いと思います。そもそも忘れてはならないのが、OJTはビジネスパーソンとして一生続くものだということです。では、多くの企業が1年を期間としているOJTは一体なんのOJTなのでしょうか?

それは「ビジネスパーソン」としての基本行動の習得と、配属された職場での基本実務を遂行するための知識・スキルの習得の2つを1年目終了時に期待しています。

ただ、そこまできちんと明確に線引きしておらず、弊社が支援している企業様には「何も知らない新入社員には指導員が必要。1年経てばできることが増えてくるので、その後は指導員はいなくても問題は起きないだろう」といった思いで設計しているところもあります。ただ、そもそも設計思想がないと、指導する側が「なぜ、何を」指導すればいいのかが分からず、指導される側も「期待されている速度で成長しているのかどうか」も分からなくなり、指導や成長に対する動機も希薄になってしまいます。

OJTの制度設計をするのであれば、目的やゴールと期間を明示し、指導する側、される側に共通認識を持たせる必要があります。

OJTを担う者の役割とは?

OJTを担当する者の役割は何か、それは「新入社員の指導役、相談窓口」と狭義に捉えてはなりません。担当者の役割は「(職場ぐるみで人を育てる)新入社員育成のプロジェクトリーダー」です。

担当者に期待される役割・行動は以下の5つです。

  • 育成目標や計画について上司と合意
  • 職場のメンバーに協力を要請
  • OJT対象者と関係構築
  • OJT
  • OJT対象者へ成長実感と成長予感を醸成

最初は順にやっていくものの、そのあとはそれぞれ並行してやり続けます

育成目標や計画について上司と合意

目的・目標を明確化してOJTに取り組むことは、その効果性を高めるために重要なことです。

OJTトレーナーになった方は、上司を巻き込み、育成目標と計画、いつどんな状態を目指すのかを明確化するべく働きかけをしていきましょう。そして、どのようにしてその状態まで育成するのか、この計画は、最初の時点で全て決められることは難しいことが多いですが、向こう1ヶ月の指導計画や時期が決まっているイベント的要素のあるものなどは押さえておく必要があります。そして、その指導項目を実際に誰が指導するのか、こちらも名前を入れていく必要があります。上司と相談しながら、その指導担当を決めていきましょう。

職場メンバーに協力を要請

役割として大事になるのが、職場の方の巻き込みです。職場にはOJTトレーナーより先輩がいるケースが多いでしょうから、ここでも上司を巻き込んで職場の方の理解を得ていきましょう。

職場のミーティングでOJTの担当者であることを職場メンバーに理解してもらい、目標や計画を共有し、指導項目によっては担当となる方に協力を依頼することが大事です。人は期待を掛けられたら粋に感じるものです。頼りにしている旨を合わせて伝えていきましょう。

OJT対象者と関係構築

トレーニーの配属初日、対象者は転校生のような気持ちです。どこまで「あなたは私たちの仲間」というメッセージを伝えてあげられるかが、今後のオンボーディングに大きな影響を与えます。

対象者には、「トレーナーはあなた」と紹介されるはずですので、対象者はまずトレーナーであるあなたが頼りです。しっかりと自己紹介をするとともに、少しずつ色々なことを教えつつも、その対象者のことを理解していきましょう。「理解して理解される」という言葉があるように、ぜひ目の前の対象者の「内面」を理解しようと努めてくださいスキル的な問題ではなく、理解しようとする姿勢が何よりも大事です。色々質問も織り交ぜながら対象者のことを知り、かつ何か共通項を見つけていくようにしましょう。

矛盾することもお伝えしますが自分のことも話していかないと、ただただ尋問する人になってしまい、心を開きにくくなりますのであなたも徐々に自己開示していきましょう。その繰り返しが信頼関係となります。どんなこともあなたに相談してみようという気持ちになっていきます。

OJT「On-the-Job Training」

とうとうOJTが始まります。OJTの対象は多岐に渡ると思いますが、整理すると以下の4つの領域になります。

  1. A:この職場で働く上での基本(知識、技量等)
  2. B:自社で働く上での基本(理念、制度、風土等)
  3. C:社会人としての基本(ビジネスマナー、社会人としての基本行動等)
  4. D:人としての基本(礼儀礼節、誠実さ、謙虚さ 等)

これらの指導のあり方は異なることを頭に入れておく必要があります。AとBについては、先輩や職場のメンバーが「状況に応じて都度教える」ということです。事実や行動を基に理由と共に説明することで、対象者は理解していきます。

それでは、CとDについてはどうでしょうか?こちらは「大前提として事前共有されているものであるので、注意する」ということです。そもそも対象者が仮に新入社員であっても一人の自立した大人として接する、つまり注意することは相手のためであることが前提です。

ここさえ押さえておけば、OJTのベースは整ったと言えます。あとは、対象者の習熟度を理解しながらティーチング、コーチング(問いかけて考えさせる)のバランスをとっていきましょう。

OJT対象者へ成長実感と成長予感を醸成

あなたは入社後どれくらい成長しましたか? こう質問されてすぐに答えられる人は少ないと思います。それだけ人の成長とは計りにくいし、定点で観測もしていないものです。

OJT対象者が成長を実感するためには、「定期的に」本人の自覚を促すような問いかけを投げかけると共に、指導する側から見て成長したポイントをフィードバックすることが大事です。巻き込んでいる職場メンバーからも事前に情報を収集し、あなたが間接的にポジティブなフィードバックを伝えることも対象者が成長実感を得るのに有効でしょう。

また、実感だけだと残念ながら完璧ではありません。今後、この環境で自分はどれだけ成長できるのだろうか、こう考える人は多いですから、今後こんな(新しい、チャレンジングな)業務があなたには用意されていて、それを頑張ってやっていくことでもっと成長できる、ということをきちんと伝えていくことも大事になります。

OJTトレーナーに必要な心構え

OJTで大事な心構えとは?

OJTを実施する際は「相手は自立した一人の大人である」という前提に立つことが大切です。私たちは「思い込み」をする生き物ですから、新入社員はまだ何も知らないはず、と何でもかんでも善意で教えてあげたくなってしまいますが、そこはきちんと相手の成長という目的に照らし合わせて、「適切なマインドセット」する必要があります。

ただ、大人であっても業務や知識の習得具合は、人によって変わっていくものです。トレーナーとしてはここまで(何回も)教えたのにな・・・と思っていたとしても、対象者がまだ習得できていないようであれば「丁寧さ」と「根気」を持って指導にあたることも大切でしょう。

OJT制度運用の進め方

私どもが支援させていただく場合、以下のようなツールを人事事務局様と一緒に作ることから始まります。

シートの名前は「OJTコミュニケーションシート」だったり、「成長実感シート」だったりとお客様の想いに沿ったものとしています。

このツールの目的は、以下の3つになります。

  • 「OJTのゴール」を関係者が共通認識化することでOJTの質を高める
  • 指導側(担当者やマネージャー)と指導される側(新入社員)の「目線合わせ」を通じて育成を加速する
  • 指導される側が成長実感と成長予感を得る

このOJTコミュニケーションシートを使って、OJTを進めていきます。

OJTコミュニケーションシート使った進め方

コミュニケーションシート例
コミュニケーションシート例

このOJTコミュニケーションシートに記載されている項目は4つです。

  1. A「OJTのゴール(目標とする姿)」 図内上部(左)
  2. B「OJT協力者」            図内上部(右)
  3. C「ビジネスパーソンとしての基本行動」 図内左
  4. D「職場での業務」              図内右

このコミュニケーションシートを使ったOJTの進め方は以下の通りです。

1)「ビジネスパーソンとしての基本行動」を事務局で設定

C「ビジネスパーソンとしての基本行動」は配属先に関係なく、新入社員にとって欲しい基本行動です。

人事制度からの要請、職場での課題などの観点から項目を考えます。項目は6〜8つ程度をお勧めします。表現に際しては「●●している」のように、日常的にその行動が取れているかを問うことが大事です。

2) マネージャーや担当者にOJT制度の説明

事務局として、なぜなんのために新入社員のOJTを現場に期待しているのか、先述のツールの概要と共に定例面談の実施やコメント入力、ツールの提出等のフローについて説明します。

3) マネージャーと担当者で育成ゴールを設定

説明を受けたのちにマネージャーと担当者で育成ゴール(A)を設定します(マネージャーが作って担当者に落とし込みます)

4) 育成に巻き込む職場メンバーについて担当者と共有

マネージャーから育成に巻き込む職場メンバー(B)について担当者と共有します。マネージャーは別途Bのメンバーに、今後のOJTへの協力要請をしてもらうことが大事です。

5) OJTトレーナー研修を実施

ここまで前段の準備を整えてOJTトレーナー研修を実施します。研修の内容や進め方は後述します。

6) 定期的に担当者と新入社員で面談を実施

新入社員との初回面談フロー

実際のOJTがスタートし、OJTとは別で1ヶ月に1度(頻度やスケジュールは企業ごとに設定)担当者と新入社員が定例面談を実施します。最初の面談の流れは以下のような流れです。

  • アイスブレイク&面談趣旨の伝達
  • 新入社員と関係構築
  • 新入社員と育成目標・計画すり合わせ
  • 今後に向けて認識共有

これがきちんとできたら1ヶ月程度OJTを進めていきます。

新入社員との定例面談

新入社員との定例面談フロー

1ヶ月経過したら定例面談を実施します。定例面談の流れは以下の通りです。

  • アイスブレイク&面談趣旨の伝達
  • 新入社員による振り返り
  • トレーナーからのフィードバック
  • 今後に向けて認識共有

新入社員はこの1ヶ月を振り返りながら、やれるようになったこと、できるようになったことを言語化することで経験学習サイクルを回していくことをトレーナーが支援していきます。

また、この面談の際にコミュニケーションシートのビジネスパーソンとしての基本行動の実践度合い、成長度合いを定量的に図っていく(段階評価する)ことで、なかなか評価が難しい行動の発揮度合いについても自己評価、トレーナーから評価ができるので、新入社員の課題意識を醸成したり、指導する側、される側の目線合わせをしたりすることができます。もちろん、それぞれの行動が月を追うごとに数字が上がっていくことも成長実感につながります。

新入社員の時は、最初は知らないことを知る段階のため、「成功体験」と言えるものを体験できず、自信を持ちにくい環境です。こういった成長の実感の積み重ねが自信につながっていくと考えます。

OJTによる人材育成のポイント・気をつけること

新入社員であれば、「配属してから半年間」や「入社1年目の終わり(3月まで)」といったように期間を明確化し、その最後の地点どどんな状態を目指すのか言語にして、育成する側、される側ともに認識を揃えることが何よりも大事です。その目標自体は人事制度内の等級・グレード制度の役割や能力要件からの要請という観点もあれば、入社1年目のこの時期ではこれくらいになって欲しいという現場目線での目標もあるでしょう。

この目標をきちんと上司からオーソライズしていくことが大切です。

OJTを効果的にするには、OJTトレーナーの育成が大事

多くの企業でバラエティに富んだ研修が用意されています。しかし、仮に究極に企業内研修を絞るとしたら「考課者(評価者)研修」と「OJTトレーナー研修」の2つだけは残します。両方実務に直結しますし、ここをきちんと押さえておかないと、他のどの研修をやっても効果は限定的になってしまう可能性があるからです。

OJT対象者の採用に多額の費用がかかっており、それをきちんと回収するためにもこのOJTトレーナーの質は蔑ろにできないことは誰もが納得するところだと思います。

ワークハピネスが提供しているOJTトレーナー研修

私どもは、新入社員の配属の時期も踏まえつつ、短時間の研修を数回に分けながらインプットと職場実践を繰り返すアクションラーニング形式でも良いですし、1日の研修でしっかり学び切る形式でも良いと考えています。

ワークハピネスのOJTトレーナー研修の内容についてはこちらをご覧ください。

OJTトレーナー育成研修

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この記事を書いた人この記事を書いた人

滝澤 正教

人材アウトソーシングのベンチャー企業㈱エスプール(ワークハピネスの親会社)の創立3年目に新卒にて入社。新規現場、プロジェクトの立ち上げから不採算支店を売上日本一の支店に再生するなど、同社の株式上場に貢献してきた。

多数のプロジェクトを通じ、多くのスタッフと携わる中で「人間の無限の可能性」を知り、「人の強みを活かすマネジメント」を広めるべく、2006年よりワークハピネスに参画。

中小企業を中心とした人材開発、組織風土変革コンサルティングPJを推進している。

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