人に優劣のレッテルをはってしまう状況とは
人の「性格」に優劣というのは一切ありません。どの性格も不可欠で、様々な性格の人間が集合するからこそ、私たち人間は環境変化に対応できたと考えられます。組織においても、お互いの性格の多様性を受け入れ、活かすことが組織を円滑にする条件と言えるのではないでしょうか。その多様性を活かすことができる検査・診断サーベイについてお伝えします。
アフリカで生まれたホモサピエンスとよばれる現生人類は、世界中に拡大していく中で様々な場面に遭遇したはずです。例えば、日照りが続き生存が困難な状況では、「ここから移動すべきか」「このまま止まるべきか」という判断が求められました。環境変化によって、ある時は移動した人々が生き残り、ある時は止まった人が生き残り、それを何千年という時をこえて、私たち人間は子孫を残したといえるでしょう。
その判断軸として、例えばリスクに対して、「リスクをとるタイプ(挑戦)」と、「リスクを避けるタイプ(安全)」があり、それぞれ引き継がれてきたのではないでしょうか。どちらが優れているということではなく、様々な性格の人間が集団にいることで、生存できと考えられます。そのようにして、私たちはその状況でより適切な判断をしてきたのではないでしょうか。
例えば採用の場面で、「元気な人が欲しい(採用したい)」といった採用担当者の声をよく聞きます。しかし、この“元気”というのは、状況や人によってそれぞれ違います。「元気がある」というのは、その人が脳内で「快」を感じ、その行動をとれている状態です。
人の快と不快の特性を知る
ここで大切なことは、人によって「快」を感じることは異なっているということです。新しいことを始めることに「快」を感じる人もいれば、今までと同じことを続けていくことに「快」を感じる人もいるわけです。
私たちは、この「快」によって行動する意欲が高まります。一方、「不快」を感じる行動を強いられれば意欲は下がり、ストレスを感じるのです。
自己理解とは、自分の意欲のスイッチを知ること
ギリシア最古のデルポイの神託所には、「汝自身を知れ」という言葉が刻まれていたと伝えられています。それでは、なぜ「自己理解」は必要なのでしょうか。
それは、自分自身の「快」や「不快」をうみだす原因を知ることで、「自分はどんな意欲のスイッチを持っているのか」を認識することができるからです。そうすれば、環境の変化の中で適切に対処することができます。どれほど、技能が高くても、意欲が空回りしていれば成果を出すことはできません。試験、試合、交渉の場面などで私たちが本来の力を発揮できないとき、この意欲の空回りが発生していることが多いのです。
私たちは、知識学習や経験によって「技能」を磨くことに力を入れていますが、自分の意欲の源泉である「自己理解」は、その技能を磨くこと以上に大切とされています。
自己理解の方法:人気の検査・診断ツールの事例紹介
個人の性格形成は、人類の歴史と個人の生育環境の影響が強いといわれてきました。その性格を知るためのツールである性格検査をここでご紹介します。
ストレングス・デベロッパー
ストレングス・デベロッパー(Strength Developer®)は個人の強みを診断しその活用の指針を示す検査です。ポジティブ心理学をベースに日本の組織開発の専門家が中心に開発されました。開発元は一般社団法人ポジティブイノベーションセンターです。最大の特徴は、「個人の強みの使用頻度」を特定できることです。診断結果は、
(X)強みの使用頻度
(Y)強みが実際に活力を生んでいるか
の2軸で測定され、39の特性の中から検査を受けた人に特に当てはまる特性が、次の4つの象限にプロットされます。
(1)活力を生む強みで、使用頻度が高い「イキイキゾーン」の特性
(2)活力を生む強みでありながら、使用頻度が低い「宝箱ゾーン」
(3)活力を生みにくく、使用頻度が低い「努力ゾーン」
(4)活力はそれなりだが使用頻度が高い「着実ゾーン」
受検者は、検査結果を見て、自分の強みが何かだけでなく、それをこれからどう発揮すべきなのかを考えることができます。したがって、現在の業務上のストレスの原因や対処方法、自分のキャリアプランを考えるベースにするにも有効です。
また上司や人事の立場からは、メンバーの能力の活かし方、技能の成長支援のヒントにもなるでしょう。オンラインでの受検が可能で、ライセンスを持ったファシリテーターの下で「自己理解」「人間関係構築」などの研修において効果的です。弊社の講師はライセンスを保有しています。
DiSC
教育や文化の影響を受けて大人となった現在の自分の行動様式を基本の4つのスタイルで認識できるのがDiSC®です。ここではX軸とY軸の二つの軸が重要です。Y軸は環境と自分のパワーの比較です。環境を動かすだけのパワーがありそうだと認識しているか、そうでないと認識しているかです。X軸は、環境が自分にとって望ましいと感じるか、望ましくないと感じるかです。これによって、
・D(主導)
・i (感化)
・S(安定)
・C(慎重) という四つのスタイルに分類されます。
最初にオンラインまたは紙の質問紙で検査をした上で、使用ライセンスを受けたファシリテーターの下で自己理解を深めます。例えば、Dスタイルの人は、環境よりも自分がパワフルで、現在の環境は望ましくないと認知をしているので、「私がこの状況を変えてみせる」という行動をとりがちです。
したがって周囲からは自信家の強いリーダーに見えたり強引な人に見えたりします。人間関係において、自分の日常行動が、異なるスタイルの人からはどのように見えたり、またストレス原因になるかを知るのはとても重要です。心理学者のW.マーストン(米)が発想したもので、John Wiley & Sonsが運営しています(日本での代理店はHRD株式会社)。
ストレングス・ファインダー
性格という視点ではなく、「どうやるか」というHowの視点で個人の「強み」を明らかにしようというのが「強み診断」です。これは精神分析系の心理学ではなく、ポジティブ心理学に基礎をおいたものです。
知名度の高いものとしては、「ストレングス・ファインダー」®があります。これは成功者へのインタビュー結果から34種類の資質を抽出したものです。Gallup(米国)が運営しており、オンライン・テストによって自分の資質の順位を特定することができます。その中で上位の資質が特に強みとなっていることがわかります。
検査・診断ツールの活用のポイント
人事部門の立場では、複数の優れた性格検査、強み診断を調査、試用して、その中から目的に応じて適切なものを選択することが必要です。その上で、それを社員ひとり一人のために、①増やすべき態度・行動と、②減らしたり、止めるべき態度・行動のヒントにつなげることが有効でしょう。
実際の運営場面での留意点は二つです。
第一にその検査・診断に関してトレーニング受け、十分に理解した上で運営できるファシリテーター(ライセンスを受けた講師)を選んで実施しましょう。
第二に検査・診断結果だけで、社員を選別したり、配置転換したり、「こういう性格の人は●●に違いない」いったレッテルを貼ることは危険です。人の性格や強みは、社員の個人の財産であり、あくまで個人が成長していくためのベースです。それを尊重する姿勢を大切にしていくことが大事です。
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組織コンサルティングの事例を掲載しております。ぜひご参考ください。
チーフカタリスト。
証券アナリストとして、時代の先を呼んだ判断力の高さでNTT民営化前から通信産業リサーチ、EU統合前から欧州株ビジネスを創業。野村證券で投資調査部長、企業調査部長を歴任。その後、野村総合研究所人材開発部長として全社研修体系の再構築、リーマン統合後の野村證券人材開発部シニアアドバイザーとして、グローバル研修体系の構築を推進。その後、航空機リース会社、信託銀行の取締役を経て、2011年に「組織と人の活性化」という理念に共鳴し、ワークハピネスに参画。世界の様々な企業の企業価値を分析した知見をもとにした組織風土改革の提言と実行をライフワークにしている。ATD-JAPAN理事。日本人材マネジメント協会代表常任役員。
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資格 国家資格キャリアコンサルタント、日本証券アナリスト協会検定会員、シニア・アクションラーニングコーチ、DiSC認定トレーナー、SLⅡ認定コンサルタント、MBTI認定ユーザー、Realise2プラクティショナー