ドラマや漫画で野球やサッカーの弱小チームが様々な困難を乗り越えて成功する感動ストーリーがありますよね。才能あるけどやる気にムラがある、初心者だけど何か光るものがある、真面目で熱心なんだけど才能が疑問?みたいな仲間たちが、喧嘩をしたり、事件を起こしたりしながら、やがて全国大会で優勝する。これよくある物語ですが、実はこれ、組織開発のセオリーなんです。
高いパフォーマンスを上げるチームができあがるまでには次の4つのプロセスが必要です
- Form(形成)
- Storm(混乱)
- Norm(統一)
- Perform(成果)
まずチームが編成”From”され、揉め事や喧嘩といった混乱”Storm”を経てチームが統一” Norm”された後に、成果”Perform”が生まれるのです。
雨降って地固まる。
このチームビルディングのプロセスを知っていると、チーム内の揉め事をポジティブな目で見守る事ができます。
ネットバブル絶頂の1999年の話です。公認会計士であった私のチームは世界初の日米同時上場のプロジェクトに奮闘していました。取り掛かって分かったのは私たちの拙い英語ではアメリカの証券取引委員会”SEC”の審査を通すのは不可能だということでした。急遽ニューヨークから上場のスペシャリストを招くことになりました。やってきたのはトム。高級そうなストライプのスーツをビシッと着こなすウォール街で見かけそうなイケメンの青年です。
私たちは拙い英語でクライアントの状況や日米の会計基準の違い、米国基準に修正するための問題点等をトムに説明しました。厳しい表情で説明を聴くトムは、「準備がなっていない」、「とても難しい」、「うまくいくかわからない」とネガティブな言葉を連発するのです。期限内に仕事を成し遂げ、クライアントを米国市場に上場させなければならないプレッシャー、慣れない英語、連日の睡眠不足で若輩者の私のキャパは一杯一杯。トムのネガティブな態度にイライラし、開始から3日目、遂に切れて爆発してしまいました。
「難しいとか分かんないとかネガティブな事ばかり言いやがって。トム!お前は何をしにニューヨークから遥々極東の果てまで来たんだ?不可能を可能にするのが仕事だろう?できないんだったらニューヨークに帰れ!”Yankee go home!”」とその時だけはなぜかスラスラと出てきた英語で怒鳴りつけ、椅子を蹴飛ばし、机に書類を叩きつけて会議室を出ました。
タバコ部屋で「やっちゃった。これでプロジェクトは破綻だ。どうしよう(涙)」と善後策を考えながらタバコをふかしていると、米国人のパートナーがやってきて私に謝ります。「トムはまだ若い。そして日本人の優秀さを理解してない。私からよく言って聞かせるから機嫌を直してもう一度ミーティングをしてくれないか?」と。渡りに船とはこの事です。
この事件を機にトムと私たちとのコミニケーションは大変円滑になりました。トムは、英語は下手だけどShingoたちは馬鹿ではないと理解してくれたのでしょう。米国証券取引委員会の審査はスピーカーホンから流れてくる審査官の質問に対して、私がトムの耳元でたどたどしい英語で返答し、トムがそれを堂々とした流暢な英語でまくしたてるという戦法で乗り切りました。
クライアントの米国ナスダックへの上場が承認された夜、私たちは寿司屋で日本酒を酌み交わして大いに盛り上がりました。出だしにしかめ面だったトムは実はお茶目でカワイイやつでした。彼がいなかったらこの日はありませんでした。トムに何度もお礼し、あの時の非礼を詫びました。彼は「俺も悪かった。極東の果てに凄いチームがいると俺は世界中に宣伝して回るぜ!」と言ってくれました。
日本人だろうが外国人だろうが世界共通で”Form, Storm, Norm, Perform” です。そして、成果を出したかったら本音でぶつかり合い、喧嘩を恐れない。
雨降って地固まる。
覚えておいてください。
株式会社ワークハピネスは人材育成研修・組織開発コンサルティングを通して
人と企業の「変わりたい」を支援し、変化に強い企業文化をつくる支援をしています。
新入社員〜管理職・役員研修のほか、全社向けチームビルディングまで
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公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。
現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。