経営幹部育成は難しい?企業が直面する課題と成功のために知っておきたいこと
後継者不足が深刻化しており、企業は社内の優秀な人材を集めて経営幹部にするための育成に追われています。経営幹部の育成は一般的な社員を育てるのとは異なり、さまざまな知識やスキルを身に付けさせる必要があります。人材が育たず、つまずいてしまう企業も少なくありません。
本記事では企業では経営幹部の育成がなぜ重要なのか、育成で失敗する際のよくある課題などを解説します。あわせて優秀な経営幹部を育成する方法も紹介しているので、ぜひ役立ててください。
経営幹部を育成する重要性
企業で経営幹部の育成が重要視されているのには理由があります。本章では経営幹部の育成の重要性を解説します。
経営者視点で判断できる人材が必要不可欠
経営幹部の育成が重要視されているのは、企業で経営者の視点から判断を下せる人材が継続的に必要になるからです。コロナ禍や働き方の多様性、などへの対応に加えてビジネス環境の変化も激しさを増しており、経営に関するスピーディーな判断が求められています。
企業に経営者の視点で判断を下せる人材がいなければ、対応の遅れによって機会損失のリスクが高まります。一方で経営者の視点で意思決定を行える経営幹部がいれば迅速な判断・対応が取れるので、企業の成長につなげることもできます。
後継者不足が深刻化している
経営幹部の育成が重要と考えられているのは、後継者不足が企業の課題になっているからです。企業に優秀な経営幹部がそろっていても、いずれ定年を迎えて現役を引退しなければなりません。
経営幹部のポストに就ける人を育てるには時間がかかるため、人材が不足してから育成を始めても、経営幹部のポストに空席を作ることになるでしょう。後継者不足になる前に経営幹部の育成を始めることが、企業が存続する上で重要です。
企業には実行力が欠かせない
企業が存続していくためには、実行を伴うスキルを持った経営幹部が欠かせません。迅速かつ適切な経営判断を下せることができても、実行力がなければ机上の空論で終わってしまいます。
実行力とは単に計画を行動に落とし込む能力ではありません。経営幹部はどの範囲まで実施するのか、どの程度の水準まで目指すのかなどの落としどころを見極められる能力が求められます。
経営幹部の育成がなかなか進まない理由とは
経営幹部の育成がうまくいっていない企業も少なくありません。本章では、経営幹部の育成が進まない理由を解説します。
リソースの不足
経営幹部の育成がうまくいかない理由として、教育に携わるリソースが不足していることが挙げられます。
経営幹部の育成は一般の社員研修などと異なり、座学によるインプットだけでは必要なスキルや経験は得られません。経営幹部の候補者に重要なポストを任せる、自社の経営に携わらせるなどの実践も含めて育成を行う必要があります。
しかしそういった育成経験がなかったり、外部研修を活用するコストがなかったりといった理由で、十分な育成を行えない企業も少なくありません。経営幹部を育てるためには候補者が成長できる環境を整備し、育成にかかるリソースの見直しもしっかりと行っておきましょう。
育成期間が足りない
経営幹部の育成が進まない場合、育成期間を十分に取っていない可能性があります。一般的な管理職の育成にかかる期間は、約1~3年です。経営幹部や後継者を育成する期間は短くて3年、長ければ10年かかる場合もあります。
経営幹部がプレイヤーになっている
現場で優れた実績を築いた人や功績を残した人が、経営幹部に抜擢されるケースもめずらしくありません。もともと経営幹部のための教育を受けているわけではないので、人によって候補者の育成方法に偏りが出てしまう可能性が高いです。
例えば自分と似ている経験や知識、スキルなどを持つ人材に対しては、自身の経験に基づいた、丁寧な指導を行うことができます。しかし経営幹部の候補者のタイプが指導者と異なる場合は、前述したような適切な指導を行えません。
育成がうまくいかなければ業務や権限の委譲ができないので、経営幹部がプレイヤーにとどまらざるを得ない状況が続いてしまいます。。事前に育成の方向性や具体的な方法、教育する内容などを明確にしておきましょう。
経営幹部がマネジメントに注力している
経営幹部が現場のマネジメントにばかり注力してしまうことで、育成がなかなか進まないケースがあります。原因は経営者のビジョンや意志などが、現場で共有されていないからです。
経営幹部は経営者の意志などを現場に分かりやすく伝達し、現場で出た改善点などを経営者に伝えるなどの役割を担っています。
現場でのマネジメントがうまくいっても、経営者の考えが反映されていなければ、組織として機能しているとはいえません。経営幹部がどちらか一方に注力してしまうと、経営者と現場の間で軋轢を生む可能性があります。
経営幹部は経営者と現場をつなぐ役割を果たせる人材に育てることが重要です。経営幹部を育成する際は、経営者と現場のそれぞれの立場で意思決定や行動ができる人材を意識した育成カリキュラムを作成しましょう。
研修の効果が出ない
経営幹部の育成が進んでいない理由の一つに、候補者を対象にした研修の成果が出ていないことが挙げられます。
経営幹部の育成のために社内研修を行うだけで終わってしまうと、結果的に意識や行動が変わらない場合が多いです。モチベーションが高まっても研修後に具体的な行動を変えられる環境や体制が整っていないために、一時的なもので終わってしまいます。
座学による研修で、経営幹部に必要な知識を学ぶ機会を設けることも大切です。しかし得た知識をどのように実践で活かすのかを考えさせ、行動に移させる方が重要です。
育成に携わる関係者は、研修で習得した知識やスキルを現場で活用する機会を作るのと同時に、育成プログラムの見直しや改善も継続的に行うようにしましょう。
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経営幹部に求められる力とは
経営幹部に求められる力は、大きく分けて3つあります。どのような能力が求められるのか、以下で確認しておきましょう。
問題提起力
経営幹部に求められる力の一つは、問題提起力です。問題提起力とは文字どおり、課題や問題を発見し、重要性を投げかける能力のことです。課題や問題を提起するためには、先入観を持たずにあらゆるものに疑問を持つことが大切です。
例えば自社で新商品の開発を進める際に、既存の人気商品をまねするだけではなく、独自性のある機能を追加するなどの工夫が求められます。ただし似たような商品が他社から発売されれば、値下げによる競争でしか優位性を確保できなくなるリスクも付きまといます。
自社が安定的に経営していくためには、ときには一般的な常識を疑い、他社がまねできない新たな視点を持つことが重要です。そこで必要になるのが問題提起力です。問題提起力を身に付けた経営幹部がいれば、時代の変化にも対応していけます。
ビジョンを明確にする力
経営幹部は自社が目指すべきビジョンを明確に提示する力が求められます。
現代は、高度経済成長期に比べ、優れた商品・サービスを提供しても売れにくい時代といわれています。消費者が求めるのはモノから体験に変わってきているからです。またコロナ禍や多様性、グローバル化などの影響もあり、ビジネスモデルはより複雑化しています。
企業が継続的に経営を行うためには、その時代にあったビジョンを持たなければなりません。したがって経営幹部は自社がどのような会社を目指すと良いのか、自社の企業活動で社会にどのような影響を与えたいのか、などを考え、社内に共有します。
ビジョンを明確にできる経営幹部を育成すれば、社内でビジョンを共有でき、ブレない組織を築くことができます。
人間力
経営幹部は上述した2つの能力に加えて、人間力も必要です。人間力と聞いても、どのような能力を示すのか分からないかもしれません。
内閣府の人間力戦略研究会では、人間力を「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義しています。つまり人間力とは知識やスキルに加え、自分の生き方を追い求める力を指します。
経営幹部の意思決定はビジネス上で得た知識やスキルだけでなく、自身の生き方や考え方による影響も大きいです。どのような信念や倫理観、社会性などを持っているのかによって、企業の方針は変わります。
社員の模範になる人間力を持つ経営幹部を育成できれば、不正などの誤った方向に向かうのを防ぐことができます。
(引用:人間力戦略研究会「人間力戦略研究会報告書」若者に夢と目標を抱かせ、意欲を高める ~信頼と連携の社会システム~)
必要な能力を身に付けた経営幹部を育成するためには?
経営幹部に求められる能力を身に付けた人材を育成するには、中長期的な育成計画を立てていきます。先述した通り、経営幹部に求められる能力を身に付けさせるには、数年~10年の長い時間をかけます。短期間で知識を詰め込むだけの教育では、経営幹部に必要な能力を身に付けさせることはできないでしょう。
中長期の育成となると、環境や体制を整備してからでなければ実施できません。また育成に割くことができるリソースが不足している、ハイレベルな人材育成の経験がないなどの理由から、自社での育成が難しいなどのケースも考えられます。
この解決策の一つとして、経営幹部の育成に実績のある研修専門会社を利用する方法があります。実際に研修を通して自社内の課題解決に至った事例を紹介します。
経営幹部育成研修の事例
経営幹部育成を成功させた企業であるJA雲南の事例を紹介します。
JA雲南では問題を先送りする風土や、現場の声が経営幹部に届かないなどの課題を抱えていました。組織全体に「何を言っても上は聞かない、何も変わらない」「新しいことをしようとしても前例や予算が無いという理由で一蹴されてしまう」という空気が蔓延しており、なかなか自社内だけでの解決は難しい状況だったのです。
そこで、経営幹部の意識改革に重点を置いた研修が実施されました。まず、100人以上の現場でのヒアリング内容を経営幹部に共有し、現場のキーパーソンを見つけてボトムアップ型の組織を目指す施策を実行。同時に、JA雲南の存在意義は何なのか?ということを突き詰め、自分たちがこの地域で果たすべきことや、それを実現するための組織体制をどう作っていくかをとことん話し合い、支店長以上の役職者が、お互いに意見をぶつけ合えるような関係構築を目指しました。
結果的に現場の若手職員の発案で開催したイベントで大成功を収めたり、組織内の情報共有の仕組みを立ち上げたりするなどの効果を上げることに成功しています。この事例からも、経営幹部育成は組織や経営改革にもつながる重要な要素であることが分かるでしょう。
経営幹部育成研修の事例:経営幹部の意識改革から風土改革を実現する
まとめ
経営幹部には問題提起力、ビジョンを明確にする力、人間力の3つの能力が求められます。なかでも意思決定などに影響を与える人間力は、重要視すべき能力の一つです。そのため自社の将来を担う経営幹部の育成は難しく、なかなか進まないと感じている企業も少なくないでしょう。優秀な経営幹部を育成するためにはマネジメント研修を実施し、個々の人間力を鍛えることが大切です。
ワークハピネスでは管理職を対象にした「仕事に対する原動力を高める研修」などの人材育成を含むさまざまな研修に対応しています。経営幹部に求められる人間力を高めることにフォーカスしたマネジメント研修にも対応していますので、経営幹部の育成に悩んでいる方は、ぜひご相談ください。
大学卒業後、外資系医療機器メーカーで営業に従事。
6年間で8人の上司のマネジメントを経験し、「マネジャー次第で組織は変わる」と確信し、キャリアチェンジを決意する。
2009年にワークハピネスに参画し、チェンジ・エージェントとなる。
医療メーカーや住宅メーカーをはじめ、主に大企業の案件を得意とする。また、新人から管理職まで幅広い研修に対応。
営業、営業企画、新人コンサルタント教育を担当後、マーケティング責任者となる。
一度ワークハピネスを退職したが、2021年から復帰し、当社初の出戻り社員となる。現在は、執行役員 マーケティング本部長。