超円安。上手な値上げに挑戦しよう!
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超円安。上手な値上げに挑戦しよう!

1ドル140円を超える超円安。

エネルギー価格や輸入物価の高騰で私たちの日々の生活は大変ですが、外国人観光客にとってはこの超円安、大バーゲン。

日本で390円のビックマック、アメリカで食べたら約700円。

世界一物価の高いスイスでは900円もするのです。

ちなみに中国やタイでもビックマックは今や約500円します。

気づいたら、日本は世界一物が安い国になっていたのです。

世界中で同じ商品であるiPhoneも長期のデフレで財布の紐が硬い日本人に配慮してか、なんと世界最安値で売られています。

外国人が日本に観光に来て、iPhoneをたくさん買って帰ればそれだけで大儲けできちゃいます。

さらに、昨年のダボス会議(世界経済フォーラム)での旅行・観光開発指数で日本は世界第一位。

山あり海あり、スキーからシュノーケリングまで楽しめるほど自然が多様で、歌舞伎、相撲、神社仏閣等々、豊富に文化遺産があって、電車が時刻表通りに正確に運行し、トイレは清潔でウォシュレット完備。

水道水が飲めて、深夜に女性が一人で歩けるほど安全で、何より食事が安くて美味しい。

こんなにたくさんの観光資源があって清潔で安全で、しかも安い!そんな国はどこにもないのです。

コロナ禍が沈静化して外国人旅行客の入国規制が撤廃されれば、雪崩を打って外国人観光客が日本にやってくることは間違いありません。

2019年に3200万人だったインバウンド数(消費額約5兆円)ですが、倍増の6,000万人(消費額10兆円)になる日は近いでしょう。

日本の基幹産業である自動車の輸出額は約10兆円ですから、外貨を獲得する基幹産業が観光業に置き換わる可能性もあります。

ちなみに、日本がお手本としている世界一の観光大国フランスは毎年約9,000万人の旅行客を受け入れ、観光産業による消費額はGDPの約7%でフランスの立派な基幹産業。

強かったエレクトロニクス産業が破れ、最後の砦の自動車産業も世界のEV化の流れの中で取り残されているなか、政府も観光業の振興には大変力を入れています。

超円安によるインバウンドの増加は日本を失われた30年から浮上させる好機です。

そんな前途明るい観光産業ですが、このインバウンドを受け入れる飲食店や宿泊業の経営者の方々の話を聞いているとそこには手放しで喜べない大きな課題が横たわっていました。

それは、、、

超人手不足

少子高齢化によってコロナ前から飲食・小売等の労働集約型産業は人手不足に苦しんでいました。

その人手不足を埋めあわせていたのが外国人労働者。

ところが、この超円安で日本は外国人労働者にとって全く魅力のない出稼ぎ先となってしまったのです。

インバウンドが大量にやってきても、もてなす人がいなければお店が開けられません。

このままでは人手不足倒産です。

どうすれば良いのか?

答えは時給アップです。

時給@1,000円を@1,500円にアップしてでも他の産業から人を連れてくる。

未就労だった主婦や高齢者に働いてもらう。

外国人労働者に再び出稼ぎに来てもらう。

しかし単に時給アップしただけなら利益が減ってしまいます。

忙しいのに全く利益が残らない。もしくは赤字なんてことになったら商売をやっている意味がありません。

解決策は時給アップと同時に客単価をアップさせることです。

いきなり価格を上げたら今まで来てくれていた日本人の顧客が離れてしまいます。

客単価のアップは、商品やサービス内容のアップとセットでなければならないのです。

肝に銘じるべきスローガンは「お値段以上ニトリ」です。

客単価2,000円の回転寿司も客単価30,000円の高級寿司店も、顧客がリピートする繁盛店は「お値段以上」の価値を感じさせているのです。

「2,000円でこの味なら大満足だね!」と言って顧客はリピートするのです。

「銀座の高級店で確かに美味しいけど、40,000円はちょっと高いね」となれば、もうお客様は来てくれません。

例えば飲食店で顧客に価値を感じてもらえるポイントは、お店の内装の豪華さや清潔感、最初に出されたおしぼりの厚み、料理の提供スピード、料理の味、器の高級感、料理の盛り付け(プレゼンテーション)の美しさ、サービススタッフのホスピタリティー、隣で食べているその他の客の雰囲気等々無数にあります。

顧客はこれらを五感で無為意識に感じて「お値段以上」の価値があるか否かを総合判断しています。

客単価1,000円のラーメン店でも、客単価50,000円以上の高級フレンチであっても、繁盛店は総合力で顧客に「お値段以上」の価値を感じさせているのです。

商品やサービス内容のアップとセットで客単価をアップさせる。

失われた30年、長期間のデフレ経済に慣れてしまった日本の経営者は値上げが苦手ですが、インバウンド増加の好機に乗じて値上げを成功させるしかありません。

客単価のアップ、何から何まで新たに設計できる新店舗ならば容易ですが既存店の場合はどうするか?

内外装を高級店にリノベーションするにはお金がかかりすぎます。

既存店で上手に客単価をアップさせるには何かきっかけが必要です。

私が馴染みにしているイタリアンは、シェフが変わってメニューが一新して単価がアップしました。

肉料理がメインだったのが、シェフがシチリアの一流店で修行していたとのことで魚料理がメインに変わりました。

味もプレゼンテーションもワンランクアップしたので、この値上げには「お値段以上」を感じて納得。

これまた馴染みのお寿司屋さんは、銀座への移転を機に、サービスやメニュー内容は同じまま単価をアップさせました。

いわゆる銀座価格。

交通至便な銀座ならば接待利用にも好都合。

これも納得です。

気軽な和食屋さんだったのが、やたらとトリュフを削ってキャビアを乗せて価格を上げてきました。

お店の雰囲気や内装が変わらないまま高級食材を足されてもバランスがチグハグ。「お値段以上」が感じられなくなり、その店には行かなくなりました。

円安によるインバウンド増加で超人手不足がやってきます。

観光関連産業による人件費単価の上昇は全産業の人件費単価の上昇へと波及します。

経営者はこれを好機と捉えて、「お値段以上」が感じられる上手な値上げに挑戦しましょう。


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この記事を書いた人この記事を書いた人

吉村慎吾

公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。

現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。

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