“いい会社”とは働く人が活き活きと幸せに働いている会社 鎌倉投信 取締役 新井和宏さん
対談インタビュー

“いい会社”とは働く人が活き活きと幸せに働いている会社 鎌倉投信 取締役 新井和宏さん

今回のリーダーズインタビューは、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』にも出演した新井和宏さんです!経済的な指標だけではなく、これからの社会に本当に必要とされる会社に投資をしている新井さんが考える「社会を豊かにする仕組み作り」についてお話しいただきます。


■新井和宏さん
東京理科大学工学部卒。1992年、住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)に入社。2000年にはバークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)に入社。多岐にわたる運用業務に従事し、ファンドマネージャーとして数兆円を動かした。
2008年11月、志を同じくする仲間4人と、鎌倉投信株式会社を創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い 2101」の運用責任者として活躍している。経済的な指標だけではなく社会性も重視する、投資先企業をすべて公開する等、従来の常識をくつがえす投資哲学で運用されている商品ながら、個人投資家約1万7千人、純資産総額約280億円(2017年6月末時点)となっている。2014年には格付投資情報センター(R&I)の最優秀ファンド大賞(投資信託国内株式部門)を獲得するなど、人気・実績を兼ね備えた投資信託へと成長している。

【主な著書】『投資は「きれいごと」で成功する』(ダイヤモンド社)、『持続可能な資本主義』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

インタビュアー: 新井さん、こんにちは!「持続可能な資本主義」拝読しました。これからの社会において、経営においてとても重要な気づきがたくさんありました。多くの人に読んでいただきたいと思いました。 まずはいきなりですが、多くの人が興味あるであろう、鎌倉投信さんがどういう判断基準で投資先を決めているのかについてお伺いできますか?

新井:いきなりですね。(笑)
会社って基本的に人でできているわけですから、必ず人を見ますね。マニュアルが会社をマネジするわけでない。よくない会社は、マニュアルが人をマネジしちゃう。

その会社の社長や社員にお会いするのですが、何はともあれ、大事なのは会社の雰囲気です。 つまりは、そこに流れる空気に違和感がないかです。 結局これも感じる部分なので、感性なんですよね。会社に入った瞬間、なんか変だなとか、なんか嫌な感じと思う時があります。

そういうと、大体の人が元気な挨拶してくれる会社はいい会社じゃないかと思いますよね。でも、入った時にみんなが席を立ってこっち向いて「おはようございます」っていうのは微妙です。私に挨拶しているわけではなくて、挨拶することが目的化してしまっていることが多い。本気で私に挨拶してくれているかというのはわかりますよね。この人普段から挨拶してないなーとか。感覚は裏切らないです。

あと、対話していて心地がよい人と心地がよくない人がいるじゃないですか。 経営者も同じで、この人愛されているんだろうなという人と、人と話すの嫌なんだろうなと思う人がいて、話しているとわかるんですよ。

話が上手い人もいると思うのですが、そういうところじゃなくて、この人不器用だけど愛されているんだろうなって人が一番信じられます。

よくわかるのは、お茶が出された瞬間にわかります。お茶を出してくれた人にどういう対応をするのか、ということです。

“いい会社”の経営者はその人たちに感謝していて、もっとすごい経営者は、お茶出しをしてくれた社員を自慢の社員のように紹介してくれる。ホスピタリティが違いますよ。そういった言葉の節々に人間性を感じるんですよね。

でも、話をしていて心地がよくない人で業績がいい会社の経営者の方っているんですよ。普通だと業績は上がっているので投資対象としてはありですよね。でも、そういう人を鎌倉投信の受益者総会に連れて行ったら、「新井さんはこういう人を呼んだんだ」になっちゃう。やはり「うちのお客様はどういうことを感じるだろう、お客様の総合的な幸せは増えるかな」、そういうことを考えます。

私たち鎌倉投信の投資の目的は、経済的リターンだけの最大化ではなくて、それも含めたお客様の幸せの最大化です。経済的リターンだけでなく、その会社がどういう信念をもって社会に貢献しているのかということが重要です。そういう会社とともに社会に私たちは貢献しているという心の喜び、心の形成も含めて私たちのお客様へのリターンだと定義しているので、話をしていて、心地がよくない経営者と付き合わないという選択をしています。

インタビュアー:それを貫き通されているというのは感動しますね。いい空気感や雰囲気、とても曖昧ですが、とてもよくわかります。そういう会社は社員が活き活きと働き、その能力を最大限発揮できていて社員本人も幸せでしょうね。またホスピタリティのある社員が多い会社は、社会に対しても貢献度が高いでしょうね。そして、その信念が結果として長期的なリターンにもつながっているということなんだと思います。

新井:そうじゃなければ、うちの社員が幸せじゃなくなるし、お客様が幸せじゃなくなります。 お金を目当てにしている経営者とお金を目当てにしているお客様を呼んじゃいけないと思うんですよ。

そういうことをしてしまうと場が荒れるというか、場が濁っちゃうんですよ。 清めていかないといけない、本当は楽しかった場が楽しくなくなってくるんですよね。

私たちは「いい会社」に投資をして、社会を豊かにする仕組みをつくることを目的としているので、それができなくなるのは本業のリスクなんですよ。

鎌倉投信が見ているのは、そこで働く人が活き活きと幸せに働いているか

インタビュアー:「いい会社に投資をして、社会を豊かで幸せにする仕組みをつくる」とても共感します!新井さんのお話は今の社会が陥っている状況そのものですね。たいていの企業では、経済合理性と効率性で意思決定がなされていて、それ以外の判断軸を持つことは邪魔だとされてしまう。それによって多様性がつぶされていく、当然イノベーションは起きなくなるし、そこで働く社員たちは生きる喜びを感じられなくなっていく。

人はそれぞれが違った才能を持って生まれてきて、やりたいこともそれぞれあって、それがうまく組み合わさって社会的な価値創造が生まれてくる。そんな舞台を整えることが経営の本来の役割だと思うのですが、短期的リターンに目がいくほど本来の経営ができなくなっていく。誰が悪いわけでもなくそういった状況に陥りやすいこの社会の仕組みを変えていきたいですね。

新井:そういうよくない状況の例が、大企業に面白い人が集まらなくなってきているということにつながっている。もちろん、大企業にも面白い人はいますが、比較的少ない。なぜ大企業に面白い人が集まらないかというと、合理的な判断をするからです。

判断基準を設定して、その基準を越える人達を、いかに効率的に集めるかという仕組みを極めようとしてしまうから、一見うまくいっているように見えて、全然うまくいっていない。

とんでもないことをしそうな人を雇えないわけです。とんでもないことをしそうな人たちがイノベーションを起こす可能性が高いにもかかわらず。

今の組織の仕組みそのものですよね。ピラミッドで、上にいけばいくほど小さくなっていきます。自分がピラミッドから外れないように生きていく。外れないためには、上の人から嫌わられない、または、失敗をしないことが目的化されます。そうなると、優秀なんですけど、つまらない人が比較的に多くなってくるんですよね。

インタビュアー:そう考えると鎌倉投信さんの投資先って大企業はほとんどないですよね。でもそういう大企業集団って短期的には業績が上がってしまうケースがありますよね。

新井:そう、短期的には、業績があがってしまうこともありますね。効率を追求しているから、ことごとく無駄だと思うものは排除していくことで短期的な業績向上を狙う。ただ、ダイバーシティが全く活きない組織ができてしまう。

個々が違うんだから、個々が活き活きと活躍していくためには、個々に合った役割や、働き方についてマネジャーは真剣に考えていくべきだと思うんですよね。本当は一人ひとりと向き合っていかなくてはいけない。

にもかかわらず、学校教育や会社では、わかりやすさを追求するために一律の基準を設けてしまう。それ自体が悪いわけではなく、一律の基準のみで判断することが当たり前になってしまうのが悪いのだと思います。

“そこからずれるのは普通”ぐらいで考えていればいいんですが、あるべき姿がそれだけ!ということにしてしまうから、マニュアルに人間が使われるといった状況が生まれてしまいます。

そういう組織にしないために、多様な人たちが多様に働けるように考えていくということの究極が障碍者雇用だと思うのですが、障碍者雇用ですらいつの間にか形式雇用になってしまう。 雇用率さえ守っておけばいいという目的に変わってしまう。雇用率さえ守っていれば、社会的責任を果たしているという議論自体が、そこには人のハピネスが何もない。

鎌倉投信が会社を選ぶ時に観ているのは、障碍者雇用率ではなく、そこで働いている障碍者のハピネスです。働いている障碍者が活き活き働いているかどうかが重要なわけで、人数の問題じゃない。なぜならば、そういう会社が増えないと社会は豊かにならないし、社員も成長しないですよ。結果も出せないし、優秀な人たちが飼い殺しになってしまう。

100年続く企業にするためにフレームや仕組みに魂を込める

インタビュアー:前はバークレイズで働かれていて、体調を崩された時に、坂本先生の「日本でいちばん大切にしたい会社」という本を読まれて、やっぱりやりたいことはこれだ!と思って、今のお仕事をされているということを伺ったんですが、今やっていることについて貫き通そうとするのは、当初怖くなかったですか?

新井:引退しようと思っていたから、完全に捨て身攻撃でしたよ。 これで失敗してもこの業界に戻るつもりはないから。もしここで失敗してしまって、もう一回業界の中で仕事しようと思ったら、レッテル貼られてしまうから残れなくなる不安があるじゃないですか。

そうなるとリスク取れないんですが、僕の場合、(体調を崩した時に)このまま去ろうと決めてまして。。ですので、これからは使命としてやろうと、これで失敗しても心残りはない!と決意していましたので、気にならなかったですね。
そういう意味で、捨て身になれるというのは大きかったですね。その機会を病気がつくってくれたというのがありますね。
それが他の方と違うところじゃないですかね。能力が高いとか、低いとかじゃなくて。

インタビュアー:いやいや、能力もかなり高いと思いますけど。。

新井:いやいや、逆に中途半端じゃなくてよかった。 ずっと金融マンとして15年間クオンツとして、金融工学とか計量経済学とかの数字だけで会社を見ていました。 会社の社長や社員にも会わないし、単純に世界中から財務諸表が集まってきて、それからデータ分析して、解析して、それでもってどこが一番儲かるかってやっていたんですよ。

鎌倉投信を始めるまで、実際に投資先の社長に会ったことがなかったから、経営については私の知識は真っ白だったんですよ。 社長ってどんな人で、どういう役割?か全くわからなかったので、何がよかったかというと、すべて教わることができた。すみません、素人ですっていって。 いい社長ってどういう社長ですか?って、色んな方々からアドバイスをいただいて学びました。

そういった意味で、全く白い状態だったので色々割り切れました。例えば、いい会社とは社会が選ぶものだと開き直りました。

そして、いい会社を選ぶためのフレームワークを残すことを大事にしました。最もこだわったのは、いい会社の選び方よりも、いい会社を選んで、ここに出してモニターして、お客様からいい会社かどうかについてたくさん意見をもらって、よくないと言われたときに冷静に投資先から外すことができるフレームワークですよね。

なので、お客様からクレームがあったときに、“答えられなくなったら投資先から外しましょう”というルールにしました。 それで、あくまでもいい会社が残るように管理をしていって、数字は今まで15年やってきたクオンツでの経験を活かし、精緻につめていって、結果を出すといったハイブリット型になりました。

インタビュアー:すごい仕組みですし、それをやるって相当大変ですね。

新井:実はそのほうが、持続可能性があります。フレーム化することで、人が変わってもこの事業が残るので。 何故日本に100年企業が多いのかを考えてみると、海外の企業は個人の名前が出るのですが、日本は屋号が出ます。 託すものが違っちゃいけないと思う。自分がヒーローだ!ってやっちゃった場合、100年は続かないんですよ。フレームワークや仕組みに魂を込めることが大事です。そこが100年企業の共通点ですね。

お金でできることに限界があるからこそ、お金ではない価値を提供する仕事が大切

新井:あと、“いい会社”を経営されている本物の経営者に触れるというのは幸せなことなんですよ。その人たちに会えるというのもすごい財産なんですよ。 お金を稼ぐ社長じゃなくて、人格者の社長とうちのお客様が会っていただくのは、お金以上のものを得ているんですよ。

お金でできることに限界があるということを、お金を扱ってきて知りました。

お金じゃない価値をたくさんお客様に提供できることのほうが、よっぽど大切な仕事だと思いますよ、ってお金を運用している会社が言っていますけど。

インタビュアー:サスティナブルに得をするということですね。

新井:波に乗って違うことをやったほうが、お金のリターンの最大化はできるのかもしれないけれど、たぶんそこには幸せはないと思うんですよね。なぜならそこでは得られないものがあるからです。何だと思います?

「苦楽をともにする」ということです。お客様は、投資先企業と苦楽を一緒に乗り越える投資家じゃないといけないんですよ。会社が辛い時期を乗り越えてきたというのが喜びじゃないですか? だから、苦楽をともにしないと、リターンの最大化はできてもハピネスの最大化はできないんじゃないですかね。

だから、愛される投資家じゃないといけないんですよ。楽ばっかりしている投資家であってはいけない。私はこのような選択をしていて、必ずそれは幸せの最大化ができるんだと信じています。

信頼関係があって、切磋琢磨し、よりよい社会をつくるために苦楽をともにする。それを実現したいというのが鎌倉投信の想いです。

だからどんなに赤字であっても社会に必要な会社であれば、投資する。社会のためにと言っておきながらやっていることが違えば、今度はお客様がそれを感じて見透かされる。 だから鎌倉投信は本物じゃないといけないし、だからお客様と苦楽をともにする。それが運用者の役割です。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、私たちは本当にそう思っていますよ。

インタビュアー:でも、そういった“いい会社”には、ファンがつくので、持続的な成長をしていきますよね。

新井:別に私たちはお客様に損をさせているんじゃなくて、むしろ長期的にはこっちのほうが得をするんじゃないかということを伝え続けているだけなのです。

インタビュアー:以前の著書でも「投資は『きれいごと』で成功する」ということをおっしゃっていますよね。実は、私たちも本当にそう思っていて、今は、きれいごとを本気で貫き通す時代になったなと。ちょっと前まではきれいごとは単なるきれいごとだけにされていた時代もあったとは思うんですけど、今は違うと。

新井:それをちゃんと支えてくださるお客様もいる時代ですからね。

インタビュアー:また、普通の人のほうが、よっぽどきれいごとが大事だという感覚になっていますよね。逆に、いきすぎた消費至上主義経済の時代にお金や権力を手に入れてしまった人のほうが、感性が鈍ってしまっているということが起きている。

新井:金融というのは、普通の人が、普通に財産形成ができるようにするのが金融のやるべき仕事であって、お金持ちをさらにお金持ちにするのは金融の仕事じゃないと思いますね。

本来の株主の存在意義は、投資先企業の究極の雑用をこなすこと

インタビュアー:そういう意味では新井さんがまさにこれからの金融の仕事および株主の姿を体現されていますよね。本当に仕事の幅が広く、いろいろなところに引っ張りだこで本当にお忙しい。

新井:株主の本来の意義とは何かということを考えるうえで、私は“究極の雑用をこなす”ことを標語にしているので、それで忙しくなっているということありますね。その会社の雑用係として、できる限りのことをするという。

例えば、個人向けの商品を扱っている投資先企業の場合は、できるだけたくさんのお客様を連れて行って、私自身が営業マンとなって、できるだけたくさん商品を紹介させていただくことをやっています。営業マンといっても、目的はお客様にちゃんと知っていただいて、共感していただいて、興味を持っていただくというだけなんですけど。まずはその企業や商品のことをしっかりと知っていただくことが重要なので。

ちなみに、営業相当上手いと思いますよ。商品紹介しまくりますからね。そんなことばかりやっているから時間がなくなるんですよ。好きでやっているからいいんですけどね。

インタビュアー:そういうことって本当に重要ですよね。ちなみに、持続性のある成長をする会社には、先ほどの空気感じゃないですが、よいエネルギーが流れているじゃないですか? いつも新井さんと話をしていて思うのは、新井さんがそのよいエネルギーを企業に注入する役割を担っているように感じます。それは株主でもある運用者としてとても重要な役割だと思います。

一方で、株主の中には「どう利益をあげるのか?!ビジネスモデルはどうなっているんだ?!?」ということばかりを重視し、もちろん重要なことなんですが、逆に悪いエネルギーを企業に注入している役割になってしまっていて逆効果になっていることも起きがちですよね。

新井:本来相手の役に立つ株主とは何かということになるのですが、一(いち)ステイクホルダーの役割として、“何のためにどんな貢献ができるのか”ということが重要なのに、そういう(悪いエネルギーを注入する)スタンスになってしまう投資家もいますね。

それは、会社は誰のものかという“所有”の概念がおかしいからだと思いますね。

日本がどんなに欧米化して、すごく自由で活発な活動になったとしても、欧米の思考のベースに“所有”の概念があるので、会社は株主のものという勘違いが起きてしまう。“所有”の概念をベースにいろんなことが語られてしまう。
でも、理想の日本企業のあり方は違うと思います。

日本本来の「企業は公器である」という考え方からいえば、以前は株主の力はもっと弱かったはず。確かに弱いという意味で、株主という立ち位置が軽んじられていた部分はあったんだと思います。かといって欧米のように会社は株主のものということが強調されてしまうと、日本のよい企業は「あっ、そんなこと言うのならもう事業やめます!社員が全員辞めますから」っていってボイコットすると思うんですね。 “所有”の概念ってマイナスに働くことのほうが多いと思います。

インタビュアー:新井さんは、“八方良し”を提唱されてますもんね。あれ、日本的で素敵です。

新井:公の器である企業と、株主はどうやって関わることが理想なのかがテーマとなっていて、それを私たちがやって背中で示さなければいけない。 そうやって社会を変えていくためには極端な例がないといけないので、「株主がここまでするの?!」という存在でありたい。

そうすると少しずつ動くんじゃないかと。だから究極反対側に寄ってやろうと思っています。だから株主として、「投資先企業の究極の雑用係になる」ということを標語にしています。そして時には、No1営業マンになると。

長期的な視点を持った投資家と長期的な視点を持った経営者がつながることで幸せな社会が実現される

インタビュアー:すごく理想的ですね。 株主である投資信託を運用する鎌倉投信の新井さんがNo1営業マンになるためには、その会社のファンじゃないとなれないと思うんですよね。その会社の商品とかその会社のことが心底好きだからなれるのだと思います。

新井:そうですね。確かにそこには想いがないとできないですね。 商品の手触り感とかその企業様が大切にしていることを知って、それをみんなで応援しようという姿勢をリーダーとして示していかないといけない。だから鎌倉投信を愛していただけているのかなと思います。

この前も、投資先のサイボウズさんが株主総会で「鎌倉投信が株主に加わってくれました!」って発表してくれたぐらいですから、「そういう株主が入る会社だ」って発表していただけることは本当に幸せですね。

インタビュアー:それはすごいですね。でも実際、鎌倉投信が投資してくれるとそれだけでお金が集まったり、業績が伸びやすくなったりということが起きていますからね。

新井:いい会社に関わることで幸せになっていくという社会をつくっていきたいんですよね。でも株主の世界ではそういった議論がなかなかなくて、経営効率だったり、市場の奪い合いだったり、どうしてもそういう観点での話になってしまう。

インタビュアー:“八方良し”のような理想の社会をつくっていくためには、その状況が変わらないといけないですね。

新井:幸せな社会は、企業が長期の目線で見ていて、なおかつ、投資家が長期の目線で見ていてそういう人たちを金融がマッチングしない限り実現しないんですよ。 私たちはその長期の目線を持った人同士をつなぐことを仲介役としてやっているだけです。

でも、多くは、短期的な要求をする人たちがいて、短期的な結果を求める人がいるから、変なカタチで成立しちゃうんですよね。例えば、多くの株主は短期的な結果を要求している、サラリーマン経営者は自分の任期での短期な結果しか考えていない、そういう人同士がマッチングするということが成立しちゃっているわけです。

インタビュアー:そういった意味では、その短期的な思考同士のマッチングは、ここ数十年で発展してきましたね。

新井:悲しいことにかなり発展してきたと思います。 最近、ようやく本当は違うところにあるということに気づき始めているように感じます。

インタビュアー:もちろんそれによって発展した面があったことも事実ですが、今は短期の視点で動いていくことに世界全体が息苦しさを感じるようになってきていますよね。

「人間の判断は合理的ではない」、モノやサービスが飽和した社会ではファン経済が重要

新井
そうやって苦しくなってきた時に、どのようにそれを変えていくか。短絡的に法律化するなどルールを強化するだけでは限界があるということを知らなくてはいけないと思います。

最近よく「人間の判断は合理的ではない」という話をします。

判断する時に合理的なケースと、合理的ではないケースというのがあって、合理的なケースというのは、例えば粗大ごみを捨てる時は基本的に合理的なんですね。200円で捨てることができる場合と300円かかる場合だと、皆さん必ず200円を選びます。300円を選ぶ明確な理由がないので。だからそういう時は合理的でかつ効率的に判断します。つまり、価格のみで判断する時は、合理的で効率的に判断できるんですね。

でもビジネスではそういう合理的な判断だけではやってはいけない。合理的な判断をされている時というのは、価格でのみ選ばれるビジネスになっている可能性があります。

わかりやすい例だと価格一覧サイトです。一番価格が安いものが選ばれるようになると、最も合理的で、もっとも効率的で、もっとも資本があるところが勝つようになってしまう。

そうなった場合、経営はもっともっと効率的になっていくので、ハピネスを度外視して、人を切ったりし始めてしまう。そんなところで戦うのではなく、本来戦うべきところは、「なんだかわからないけど楽しい」というところなんです。

先日、ネットで新幹線の車内販売のワゴンが売り出されてたのですが、私たちからすれば粗大ゴミのように思えても、鉄ちゃん(鉄道マニア)からするととてつもなく宝物なんです。それですごく売れる。

ファン経済とか、ファン株主の世界では、合理的で効率的な人って誰もいないんですよ。合理的で効率的なんて楽しくないじゃないですか。

だから、本来、人間の判断は曖昧で、趣味の領域であればあるほど曖昧になっていく。そういうファン経済というものを創出していかなくてはいけない。

もっと感覚的に好き嫌いで選んでいく世界を創っていかなくてはいけなくて、だから共感ビジネスが重要だと私は思っています。 モノ・サービスが飽和するとあとは共感ビジネスでファン経済を創っていくこと、そこにイノベーションも起きると思います。

そこで、ワークハピネスさんが言っている「ハピネス」がキーワードになってくるのですが、ハピネスの定義が曖昧だからいいのだと思います。

ハピネスが合理的に語れるようになったらおしまいで、ハピネスの量を測ることは大事だけど、どういう状態がハピネスかということが定義されるようになったら少し危険だなって。

インタビュアー:著書の「持続可能な資本主義」の中でも「いい会社」の定義をしないとおっしゃってますよね?まさにその通りだなって思いました。

新井:定義しないということはすごく大事ですよ。 これは、人間の個性とは何かということなんですが、あなたの幸せってこれですよね?って勝手に定義されたら、嫌ですよね。

インタビュアー:合理的であることが有効だった時代から、定義しないことも重要な時代に入ってきたのかもしれません。これから社会は定義できることはAIがやるようになって、まさに定義しない方がいいことを人間がやっていくんでしょうね。

わたしたちも曖昧な“ハピネス”を感性的に定義するくらいにしておいて、曖昧さを残さなければいけない部分はちゃんと残してやっていきたいと思います。

次世代のリーダーたちへのメッセージ

インタビュアー:まだまだお話は尽きないですが、最後に次世代のリーダーへのメッセージをお伺いできますか?

新井:若い人たちに伝えたいことは、「お金が解決してくれることなんてたかが知れている」ということです。お金以外の価値を見つけなさいと。

ただ、お金というのは、悪いものではい。お金というのは無表情であって、使う人によって、良い表情にもなるし、悪い表情にもなる。お金は便利な手段でしかない、何のために生きるのかというと幸せになるために生きる。じゃあ幸せになるということは、どういうことか。

幸せになるというのは、それは人の役に立つということ。 人に喜んでもらえることをすればいい。多くのことは仕事の中で得られること。 だから幸せに生きられる職場を探さなければいけない。 だから私らは幸せに働ける職場を創っていかなければならない。

幸せな職場を増やすために、この命を使わなくてはいけない。私たちが残せるのはそれだけですから。頑張ります!

インタビュアー:今日は素晴らしいお話をありがとうございました!新井さんとお話させていただいて、私たちも元気をいただきました。ともに、“いい会社”を増やして“豊かな社会”を実現していきたいと思います!

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株式会社ワークハピネスは人材育成研修・組織開発コンサルティングを通して
人と企業の「変わりたい」を支援し、変化に強い企業文化をつくる支援をしています。 
新入社員〜管理職・役員研修のほか、全社向けチームビルディングまで
貴社の職場課題に合わせたカスタマイズ対応が可能です。

ウェブサイトにはこれまでに弊社が支援させていただいた研修および
組織コンサルティングの事例を掲載しております。ぜひご参考ください。

この記事を書いた人この記事を書いた人

ワークハピネス

株式会社ワークハピネス

「世界中の組織をワークハピネスあふれるチームに変える」をミッションに、人材開発、組織開発、事業創造支援を主に行うコンサルティングファーム。人の意識を変え、行動を変え、組織を変えることに強みを持つ。

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