新入社員のオリエンテーションはいつ・どう行う？　実施の目的や形式も解説

多くの企業が新人への基礎的な教育の場所として実施するオリエンテーションは、新入社員にとって、新たな環境にスムーズに適応するための大切な機会です。新入社員を迎える企業として、少しでも不安を減らし、新人をサポートしてあげられる方法やアイデアを探している人事部の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、新入社員オリエンテーションの意義や目的から、代表的な内容、形式の他、オリエンテーションにおすすめのプログラムを紹介します。ぜひ最後までご確認いただき、次年度からの参考にしてみてください。

新入社員のオリエンテーションとは？

「オリエンテーション（Orientation）」には、日本語にすると「環境への適応・順応」「物事の方針・方向性の決定」「新入社員を対象とした説明会」などの意味があります。日本では主に、新入社員が入社後の環境に適応できるようにするための教育・指導や、新入社員教育を目的とした講習・イベントなどを意味する用語として使用されている言葉です。

昨今では、多くの企業が新入社員研修のファーストステップとして、オリエンテーションを実施しています。

実施のタイミング

新入社員オリエンテーションは、実際の業務や研修を受ける前に実施するのが一般的です。内定式後か入社式当日にオリエンテーションを済ませた後に、新入社員研修のカリキュラムを進めるケースが多いでしょう。

オリエンテーションには会社の経営層や新入社員の上司も参加するケースもあるため、人事部としては、事前に内容のすり合わせや日程調整を計画的に行う必要があります。

新入社員オリエンテーションを行う意義・目的

企業が新しく入社してくる社員に対してオリエンテーションを実施する意義・目的は、以下の通りです。

• 企業理解を深める
• 社員同士の仲を深める
• 社会人としての心構え・行動を伝える
• 新入社員の早期離職を防止する

業務そのものよりも、新入社員に会社への愛着や働きやすさを感じてもらうのが大きな目的といえるでしょう。それぞれの意義・目的について詳しく解説します。

企業理解を深める

入社する企業への理解を深めてもらうのが、新入社員オリエンテーションを行う目的の一つです。

新入社員の自社への理解が深まれば、研修・業務でのトラブルや不安を減らしたり、社員のベクトルを合わせたりといったメリットが期待できます。入社後に業務をスムーズに進めるためには、新入社員オリエンテーションが不可欠といえるでしょう。

社員同士の仲を深める

社員同士による交流を促進し、仲を深めてもらうのもオリエンテーションの大切な役割です。

同期の社員はもちろん、新入社員オリエンテーションによって新入社員が上司や先輩たちと面識を持つことができれば、以後の研修や業務をスムーズに進められるでしょう。コミュニケーションを活性化し、従業員の意識を統一させる効果も期待できます。

社会人としての心構え・行動を伝える 

社会人として仕事をしていくために必要なことを身に付けてもらうのも、オリエンテーションの目的の一つです。

オリエンテーションを通じて、会社組織の一員として働くための心構えや目指すべき行動、マナーなどを伝え、社会人に必要な基礎力を養います。新入社員が早く学生気分からの切り替えを行い、新社会人としての自覚を持つためにも大切な機会といえるでしょう。

新入社員の早期離職を防止する

オリエンテーションは、新入社員の早期離職防止にも効果的です。昨今では、大卒社員の約3割が入社後3年以内に離職するとのデータもあります。

新入社員の早期離職を防ぐには、本人たちに「この会社でやっていこう」と思ってもらうことが重要です。しかし、全ての新入社員が入社後すぐに高いモチベーションで業務に当たれるとは限りません。新入社員オリエンテーションを行うことで、同期同士の絆を強めるとともに、入社時から業務に対するモチベーションを高めることで、新入社員の早期離職を防止する効果も期待されます。

※参考出典：厚生労働省.「新規学卒就職者の離職状況(令和２年３月卒業者)を公表します」.
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00006.html .（参照 2024-6-10）.

新入社員オリエンテーションの内容

新入社員オリエンテーションで講習・研修を実施していく主な内容やテーマは、以下の通りです。

• 自社の基本事項
• コンプライアンス
• ビジネスマナー

それぞれの内容について、詳しく解説します。

自社の基本事項

代表的な講習内容の一つが、以下のような、自社に関する基本事項の説明です。自社について紹介することで、新入社員に会社への理解を深めてもらうことができます。

• 企業理念
• 事業内容
• 歴史
• 社内体制
• 企業文化
• 社内ルール
• 社内共通の価値観
• 行動規範
• 就業規則など

会社の基本事項には、歴史のように普段はあまり学ぶ機会のない知識や、理念・行動規範のようにぱっと見ただけでは理解するのが難しい情報もあります。新入社員が組織の一員として働くためには、企業に対する基礎知識を身に付け、理念や行動規範などの共通認識を持ってもらわなければなりません。

コンプライアンス

仕事に関するコンプライアンスも、新入社員オリエンテーションで伝えるべき内容の一つです。コンプライアンスとは、会社と従業員が遵守するべき法令や社内規定・社会常識などを指します。特に近年では従業員の言動が大きな問題になるケースが増えており、新入社員への周知徹底が必要です。

研修では、コンプライアンスが守られていないと、企業や従業員本人の社会的信頼が損なわれるリスクがある点をしっかりと伝え、なぜ遵守する必要があるのかを新入社員がしっかりと理解できるようにしましょう。ケーススタディなどを実施して、どのような場合が問題になるのか具体的に学習するのもおすすめです。

ビジネスマナー

オリエンテーションでは以下のように、社会人として必要なビジネスマナーに関しての研修も行います。

• 身だしなみ
• 挨拶
• 敬語
• 名刺交換
• 電話対応
• 来客対応
• ビジネス文書作成

ビジネスマナーは、日常の業務をスムーズに進めるため必要となるだけでなく、社内や取引先との人間関係構築に欠かせません。新入社員が一人前に成長するため、ビジネスマナーは必要不可欠といえます。しかし現場に配属されてからではなかなか学ぶ時間がないことも多いため、仕事に対する姿勢として、新入社員向けのオリエンテーションで身に付けてもらうのがよいでしょう。

代表的なオリエンテーション形式 

新入社員向けのオリエンテーションを実施する際には、以下のような形式が代表的です。

• 座学
• ゲーム
• ケーススタディ
• OJT研修
• 内定者懇親会

それぞれの特徴やメリット、デメリットなどを詳しくみていきましょう。

座学

座学は、一般的な新入社員オリエンテーションの形式で、情報や知識のインプットに向いています。会場を借りたり、会議室を使用したりする方法の他、オンラインでも実施できます。入社前の研修で、会社から遠くて参加のハードルが高いい社員がいる場合に採用するのもよいでしょう。

ただし、座学は一方的に講師の話を聞くスタイルのため、新入社員の集中力の維持という点で注意が必要です。合間に休憩時間を設ける、講義後にテストを実施するなど、効率的に学習できるよう工夫を行いましょう。

ゲーム 

ゲーム形式のオリエンテーションでは、以下のように、レクリエーション要素のあるゲームを研修に取り入れます。

• 共通点探し
• バースデーライン（身振りだけで誕生日を伝えるゲーム）
• 謎解きゲーム
• ペーパータワー（紙で塔を作り、高さを競うゲーム）
• NASAゲーム（チームで話し合ってコンセンサスを取るゲーム）など

新入社員に主体性を持ってもらいやすく、リラックスして参加してもらえるため、近年ではゲーム形式のオリエンテーションを取り入れる企業も増えています。新入社員はゲームを通じて緊張がほぐれ、コミュニケーションが取りやすくなるでしょう。参加者同士の交流を深めたい、仲間意識・チームワークを養いたい場合などにおすすめです。

ケーススタディ

ケーススタディは、実際の業務を想定した問題に対して、解決策や対処法を検討してもらう形式です。職場で起こったトラブルやヒヤリハットなどをテーマとして、参加者に原因やどのように対応すべきかを考えたり、話し合ったりしてもらいます。

新入社員に、実務に入った後ですぐ必要になるスキルを習得してもらうのに向いており、同様の事例が起きた場合の問題を回避するための助けとなります。論理的思考やイレギュラーに対する判断力・対応力を身に付けてもらうのにもおすすめの方法です。

OJT研修

OJT研修は「On the Job Training」の略で、実際に現場で業務を行いながら上司や先輩社員から指導を受ける形式です。新人研修によく用いられる手法ですが、オリエンテーションにも有効で、講義を受けるだけの座学と比べて、より実践的な学びを得られます。

ただしOJT研修だけでは、体系的な知識が身に付きにくくなる点には注意が必要です。OJT研修を取り入れる際は、座学やケーススタディなどと組み合わせるなど、別の形でのインプットも行いましょう。

内定者懇親会

内定者懇親会は、同期や先輩社員との交流を目的に、入社前のタイミングで実施する懇親会形式のオリエンテーションです。新入社員が入社前に社内の雰囲気を味わえるのに加え、同期や先輩・上司との交流を深める場にもなります。

食事会やグループワークなどを介することで、年齢やキャリアに差のある先輩社員・上司など、新入社員にとってコミュニケーションのハードルが高いと感じる人とも交流の機会を作れる点がメリットです。

新入社員のオリエンテーションで取り入れたいおすすめプログラム2選

最後は、オリエンテーション時に新入社員が同期との仲を深めるのに役立つ、おすすめのチームビルディングプログラムを紹介します。今回紹介するのは、次の2つのプログラムです。

• 協力＆コラボレーション「The Big Picture」
• 協調性＆創造性が試される「Beat the Box」

それぞれのプログラムについて詳しくみていきましょう。

協力＆コラボレーション「The Big Picture」

「The Big Picture」は、全員で一枚の大きな作品を作りながら、チームでの協力や互いの持つ能力をコラボレーションさせる力を育むチームビルディングプログラムです。会社の理念やビジョンを反映したデザインを用意し、メンバー全員の力で一つのアート作品としての完成を目指します。

全体像が見えない不明瞭なデザインから一つの絵画を作り上げるには、メンバー間の協力やコミュニケーション、チームによる分担作業などが必要不可欠です。プログラムを通じて、日々の仕事では分かりづらく見失いがちな、チームで働く意味・ビジョンの理解につながる効果が期待できます。

このプログラムは、共同作業によって一体感や達成感を高めたいチームにおすすめです。参加者に企業理念を浸透させる効果もあるため、新入社員のオリエンテーションに最適なプログラムといえるでしょう。

協調性＆創造性が試される「Beat the Box」

「Beat the Box」は、チームで謎解きに挑戦しながら、協調性や創造性といった能力を育てるチームアクティビティです。用意された暗号をチームメンバーとともに解読しながら、鍵のかかった4つのアタッシュケースを開けていき、隠されたメッセージを見つけ出します。時間制限の中で謎を解くためには、チーム全体での協力とコミュニケーションが欠かせません。

また、他のチームが持っているツールがなければ解けない謎もあるため、チーム同士での協力も不可欠です。目標を達成すれば、参加者全員で達成感や高揚感を共有できます。

このプログラムは、部署ごとの枠組みを越え、会社全体としてパフォーマンスを発揮する状況を疑似体験できる機会となります。新入社員オリエンテーションはもちろん、部署同士の関係構築を行いたい場合などにもおすすめです。

まとめ

新入社員オリエンテーションは、新人が会社や働き方に対する理解を深め、同期や先輩・上司などと交流してスムーズに職場になじむための大切な機会です。入社時にはできる限りオリエンテーションを実施して、新入社員をサポートしていきましょう。

オリエンテーションには多様な形式があり、学ぶ内容もさまざまです。自社の新入社員にどのような能力を身に付けてもらい、経験を積んでほしいのかを考えた上で、はさまざまなアイデアを取り入れて内容・形式を決定することが重要です。

ワークハピネスでは、新入社員オリエンテーションにも役立つバリエーション豊かな研修プログラムを提供しています。新入社員オリエンテーションを実施する際は、ぜひご活用ください。