未経験の部署(人事部)に配属された時のチームマネジメント! 〜新メンバーのパフォーマンスを最大限に発揮させる方法〜
1.未経験の部署(人事部)に配属されたとき
人事部にはじめて配属された時、配属された方はどんな感情を抱くでしょうか?
例えば、人事部の場合。大学で教育学や心理学、または人的資源管理などを専攻して、人事部志望の方もいるかもしれません。しかし、多くの方は、人事異動で、未経験の部署に配属され戸惑うのではないでしょうか。
ここではそんな人事部に異動になった時の田中主任(仮名)の事例です。
2.転入した部員の戸惑いの原因は?
<田中主任の声>
「私は営業現場で順調に働いていましたが、突然人事部への転勤を命じられてびっくりしてしまいました。大学でマーケティングを学び、大阪支店ではゼロから新規開拓をして顧客基盤をつくり、最近は同期の中でも上位の業績を上げています。これまでの信頼関係をもとにさらにビジネスを拡大しようとプランも練っていました。
それがここまで積み上げた成果を手放して、本社の人事部門に転勤とは納得できない気持ちです。直属の上司に説明を求めましたが、『本社勤務もチャンスだろう、人生はいろいろあるが頑張りなさい』という抽象的な激励だけでした。
人事部に赴任すると、営業現場の活気のある雰囲気とは異なり、静かなオフィスで緊張感が高まります。それに今までは社外に出て様々なニーズのお客様と会話ができたし、行動の自由もあったのですが、ここでは社内での会議が中心です。何より、予算目標などの具体的なものが見えないので、自分が何のためにどう行動すればよいのかが手探りでわかりません」。
確かに私自身(藤岡)も、野村證券時代、企業の投資価値評価や国際分散投資を専門にしていて、人材開発部長の辞令を受けた時は、大いに戸惑いました。
異分野から人事部門に参加してくる新しいメンバーは、誰もが次のような不安を抱くものです。
新しいメンバーが抱く疑問(不安)
・会社は、私に何を期待してこの異動を決めたのか?
・これからのキャリアをどう設計すればよいのか(今までのキャリアは無駄?)?
・どのような技能を磨けば人事部門で自分の力を発揮できるのか?
・自分の存在価値を証明できるのか?
・時間配分や生活スタイルの変化にどうやって適応できるのか?
このような不安を解消するために、周囲のメンバーはどういう点に注意する必要があるでしょうか。
3.新しい部員への既存メンバーの関わり方
人事部長や上司は、転入した部員に、ただ「任務・タスク」を指示するのでは不十分です。
ましてや、突き放して「自分で考えろ」という方法は危険です。本人は感情的に不安定になっているのです。
その場合には、質問のチャンスを十分に与えて、何回か対話しながら、上記の新しいメンバーの疑問を解決する道筋をつけることが必要です。
感情は、表情心理学によれば、5つの要素があります。
それは、「幸福、驚き、怒り、悲しみ、嫌悪」です。人事部への転勤を希望していないとしたら、そこにある感情は、驚き(突然の辞令だ)、怒り(今までのキャリアを無視された)、悲しみ(自分の強みが活かせない)、嫌悪(本社の中は息苦しい感じ)などが想定されます。そのような感情が渦巻いている可能性を考慮して、使命感や本人の成長のチャンスにつながるように対応していく必要があります。
4.新しい部員が生み出す大事な価値
新しい部員は、最新の人事部の外の世界を体感しています。
営業現場や製造現場または研究開発やシステム開発かもしれません。最近の予測困難で予定調和のない変化の時代では、本社部門は時代の変化から遅れている傾向があります。人事部門の長い経験だけでなく、現在の現場からの情報の価値が高まっている時代です。
したがって、彼らにどんどん「質問」「提案」「意見」の機会を奨励しましょう。
変化の時代では人事のいままでの「当たり前」が会社にとって「成長の壁」「ムダ」になっている可能性が高いのです。それを指摘できるのは、慣れていない人です。
例えば、一人ひとりの意欲や生産性を求める中で「勤怠管理システム」という表現は適切でしょうか?「怠ける」という文字からどんなイメージを想像しますか。
あるいは、アジア経済全体が猛スピードで動いている中で、日本国内の出張届けとアジア各国への出張届けをどこまで区別すれば良いのでしょうか。
成熟経済の日本の基準で成長経済の国々とのビジネスを推進できるのでしょうか。
人事部門は制度を安定運用したいという力学が働きます。しかしその制度は以前の環境に最適化するように工夫されたものであったり、既存のITシステムの制約を受けたものだったりと、現在の環境や競争には不適応なシステムかもしれません。転入者には、その事実を赤裸々に報せてくれる大切な役割があります。
5.新しい部員の絶好の成長のチャンス!
人事部門で働くことは、社員にとって成長のチャンスになり得ます。
第一に、全社的な視点で経営を見ることができます。
大阪支店の特定地域の営業や研究開発の特定分野の専門家ではわからなかった“経営視点”を磨くことができます。どのような人材をどのような分野に配属し育成していくのか考えるには、事業分野別の発展段階を考察することが必要です。例えば、「この会社・事業は何のために存在しているのか」という問いへの解がなければ、採用活動でも応募者と深い会話をすることはできないでしょう。
第二に、組織の活性化は、チームのメンバーの関係性に依存しています。
そのためには、経験や技能に着目するだけでなく、人材開発・組織開発のセンスを高めなければなりません。人事制度を運用することにとどまらず、人間の意欲の源泉や組織の行動原理を知ることが求められます。
そのためには人材開発・組織開発の標準的テキストを学習したり、人事のプロフェッショナルが集まる団体に参加して、外部の専門家や他の企業の人事の方と学ぶことも有効です。
どんな仕事も一人ではできず、チームやネットワークが必須であり、未経験部門(人事部門)に在籍することで、その分野の知見を高めるチャンスに近づきます。
ただ、所属して日常の業務をこなすだけではなく、「成長チャンスを構築する」という意思が必要です。その結果、人事系でキャリアを積む場合だけでなく、どのような部門においても、高い成果を出せるチームを創れる人材になれるのです。
今後さらに、部員の”成長の場”を計画的に設計していくマネジメントが各部門にも必要になってきます。そのための準備をしっかりとしたいところです。
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チーフカタリスト。
証券アナリストとして、時代の先を呼んだ判断力の高さでNTT民営化前から通信産業リサーチ、EU統合前から欧州株ビジネスを創業。野村證券で投資調査部長、企業調査部長を歴任。その後、野村総合研究所人材開発部長として全社研修体系の再構築、リーマン統合後の野村證券人材開発部シニアアドバイザーとして、グローバル研修体系の構築を推進。その後、航空機リース会社、信託銀行の取締役を経て、2011年に「組織と人の活性化」という理念に共鳴し、ワークハピネスに参画。世界の様々な企業の企業価値を分析した知見をもとにした組織風土改革の提言と実行をライフワークにしている。ATD-JAPAN理事。日本人材マネジメント協会代表常任役員。
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資格 国家資格キャリアコンサルタント、日本証券アナリスト協会検定会員、シニア・アクションラーニングコーチ、DiSC認定トレーナー、SLⅡ認定コンサルタント、MBTI認定ユーザー、Realise2プラクティショナー