メンターとは?メリットや制度の導入を成功させるポイントを解説
数十年前に比べて昨今は雇用の流動性が大きくなる傾向があります。雇用の流動性は労働市場に活気を生む効果が有る反面、雇用する企業側にとって人材の流出は時に痛手となるでしょう。特に昨今は採用した新入社員が早期離職してしまうというケースも少なくないようです。
そうしたなかで注目されているのが「メンター制度」です。メンター制度を導入することで、離職防止や社内のコミュニケーション活性化などにつながります。またメンターはもちろん、指導される側にもメリットがあります。
本記事ではメンターについての解説の他、メンター制度の導入を成功させるポイントも紹介するのでぜひ参考にしてみてください。
メンターとは
メンターとは日本語で「相談者」「助言者」を意味し、知識や経験の少ないビギナーに対して指導する立場の人を指します。ビジネスシーンや企業においては一般的に同じ部署内の先輩や上司がこれにあたるでしょう。新入社員に対して助言・指導・相談に乗ったりすることで成長を促すことがメンターの目的です。
逆にメンターの指導を受ける側となる若手社員や新人はメンティーと呼ばれます。またメンターが助言や指導を行いメンティーの成長をサポートすることをメンタリングと呼びます。
メンターは業務などに関することだけでなく精神的な面からもサポートしなければなりません。そのためメンターとメンティーの良好な関係構築が求められます。
メンティーが仕事上の悩みや不安を打ち明けやすい環境を作るため、通常メンターは直属の上司や先輩よりも業務と直接関係しない部署に属していて、年齢も比較的メンティーに近い人材が選ばれます。
OJTとの違い
メンタリングに似たものでよく耳にするのがOJTではないでしょうか。OJTとは「On-The-Job Training」のことで、業務に必要な知識やスキルなどを学ぶための制度です。そのためOJT講師として任命されるのは、同じチームの先輩社員や上司となるのが一般的です。
実際の実務を通じての職業訓練・教育を目的としているため、会話の中心となるのは業務の指示・業務報告などに関することで、通常OJTの場合は通常メンタル面のケアは含まれません。
一方メンター制度の場合は業務に関することだけでなく、会社内の人間関係や中長期的なキャリア形成、ワークライフバランス、また業務とかけはなれたプライベートな内容など、メンティーとの会話も多岐にわたり、メンタル面からもメンティーと深く関わることになります。
したがってOJTと異なり、メンターは直接業務に影響を及ぼすことがないよう他部署から選ばれます。
関連記事:OJTトレーナーが本当に押さえておくべき大事なこと〜効果的なOJTで早期戦力化!
コーチングとの違い
同じくメンタリング・OJTに似た制度でコーチングがあります。OJTが業務指示・指導を目的としているのに対してコーチングは上から指示や命令をするのではなく、一対一の対話を通して、指導される側自らの気付きを促すことが目的です。したがってメンタリングと似た要素を持っているといえます。メンタリングとの違いはその目的です。
コーチングは特定の目標を実現するために実施されることが多いのに対して、メンター制度のように会社で働く悩み全般を対象としています。その他にもメンタリングはメンターがメンティーにとっての人生の先輩やロールモデルとしての役割を担っているという点もコーチングと異なるといえるでしょう。
関連記事:コーチングとは?ティーチングの違いやビジネスでの効果的な使い分けを解説
メンターの役割を確認しよう
メンターの役割はメンティーの自発的な行動や成長を促すことです。業務に関することについて具体的に指導・アドバイスをすることよりも直属の上司や先輩社員に言いづらい仕事上の相談や生活面での悩みなど、メンティーの持つ課題や悩みに対して相談に乗り、メンタル面からサポートすることでメンティーの人としての成長を促進させることがメンターの大きな役割となります。
企業がメンター制度を導入するメリットとは
企業がメンター制度を導入するメリットとして「離職防止・人材確保」「人材育成」に役立「コミュニケーションの活性化」の3点が挙げられます。それぞれ具体的に見ていきましょう。
離職防止・人材確保につながる
実務からは離れた位置からメンティーをサポートすることでメンティーに精神的な安心感を与えることができます。新人社員にとっては右も左も分からない状態で精神的に緊張している状態が続く事もあるでしょう。そのような中でメンターの存在がいることで離職防止・人材確保につながる効果が期待できます。
質の良い人材育成に役立つ
メンターは社会人としてメンティーにとってのロールモデルとなる役割を担っています。メンティーの自発的な行動や社会人としての成長を促すことで、質の良い人材育成に役立ちます。
コミュニケーションの活性化につながる
通常メンターは直属の部署やチームではないところから配属されます。メンターが部署間のつながりをつくるきっかけにもなり、結果として社内におけるコミュニケーションの活性化につながります。
メンター側のメリットとは
メンタリングはメンター・メンティー双方にメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのかまずはメンター側のメリットを見ていきましょう。
キャリアプランの検討に役立つ
メンタリングは自分の今までのキャリアや経験で培ってきたものが反映されます。そのため過去を振り返ることで結果的にメンタリングが今後の自分のキャリアプランを考えるきっかけにもなります。
仕事に関することだけでなくメンティーの人生やライフスタイルの点からも助言するのがメンターです。逆にメンターでいることが自身のワークライフバランスを考えることにもつながります。
メンター自身の成長につながる
メンティーから仕事やプライベートの相談を受けるメンターは、メンティーにとっての大きな支えとなります。時にメンターの助言が仕事だけでなくメンティーの今後の人生を大きく変えるきっかけとなる可能性もあるでしょう。
先述のようにメンターはメンティーのロールモデルとなる必要があります。したがってメンターでいることは常に自分の立場を意識しておかなければならず、それはメンター自身の成長につながります。
メンティー側のメリットとは
新入社員や特に新卒の新入社員にとっては慣れないことの連続で、時に長期間大きなストレスを抱えた状態になることもあるでしょう。そのようなときに精神的に大きな支えとなるメンターの存在はメンティーにとって重要です。
緊張から解放される時間・空間を得られることでリラックスした状態で業務に集中できる効果も期待でき、それはメンティー自身の能力を十分に発揮することにもつながります。
メンターに適している人材とは
メンターを選任するにも適した人材を選ばなければなりません。どのような人材がメンターに適しているのでしょうか。
必要な能力が備わっている人材
先述のようにメンターの役割は直接業務の指導やスキルを伝授するわけではなく、メンティーの成長を促すことです。したがってメンティーと同じ目線に立つことができる人物でなければなりません。
メンティーは業務以外にもさまざまな相談を持ち掛けてきます。メンティーが今どのような状況なのか、何を伝えようとしているのか、抱えている問題は何なのかを理解することが重要です。そのためには拝聴力・傾聴力・共感力などを伴う高いコミュニケーション能力が求められます。
メンターという役割に対する理解がある人材
新卒新入社員や新人の育成が人材の成長につながり、会社としての成長にもつながります。したがってメンターとしての活躍はメンター自身の成長につながること、会社としてのメリットもあることを理解している人材が適切です。
メンタリングはあくまでもメンティーの自己成長を促す・潜在能力を引き出すものでありメンティーに命令・教育するものではありません。メンターの役割を理解せずメンティーをライバル視したり、高圧的に接したりする人材は避けるのが望ましいでしょう。メンターとしてメンティーと共に成長するという考えを持った人材が適しています。
またメンターはメンティーからプライベートな相談も受けます。なかには個人情報に関わるものもあるでしょう。したがって情報の取り扱いに理解がある人材が適切です。
メンター制度を成功させるためにメンターが理解しておくべきポイントとは
メンター制度を成功させるためにメンターが理解しておくべきポイントがあります。ここからはメンターが知っておくべき心構えを紹介します。
成長スピードは人によって違うことを念頭に置く
メンターはメンティーと同じ目線に立つことが重要であると先に述べました。換言すればそれはメンティーの性格や個性を理解することともいえるでしょう。人の個性は十人十色です。同様に成長スピードは人によって違うことを念頭に置いておかなければなりません。
それを理解し、ときにはメンティーが業務を理解しスキルを身に付けるまで辛抱強く見守ることが必要です。
メンティーに対して説教や命令はしない
メンタリングはメンティーの自発的な成長を促すことです。とはいえ、ときにはメンティーの行動や発言、姿勢などに対して注意したり叱ったりしたくなることもあるかもしれません。
しかしながらそのような時にメンティーに説教や命令をするのではなく、何がいけないのか、どうするべきなのかをメンティー自身が気付き、答えを見いだせるようにフォローすることがポイントです。
他言しない
メンティーはメンターに対して業務内のことだけでなく会社内の人間関係やメンティーの生活などプライベートな部分まで深く接することになります。メンティーがメンターにそれらの相談をするのはメンターへの信頼に基づくものです。
メンターが軽々しく他言してしまうようではメンターとメンティーの信頼を壊してしまうこととなり業務にも差し支える可能性があります。メンター守秘義務があることを自覚しておくことが重要です。
メンター制度を成功させるために会社ができること
メンター制度を成功させるためには全体的な推進体制を綿密に構築する必要があります。そのためには会社側がメンタリングの趣旨・目的・効果などを理解しておかなければなりません。その上で「どのような人材をメンターとして採用するのか」「実施する期間」「実施方法」「運用規定の設定」などを構築することが求められます。
また選出されたメンターもメンタリングスキルの習得となります。そのためにはメンタリングの趣旨・目的・スキルの習得向上などを目的とした研修制度の導入も必要です。
メンティーを精神面からサポートするメンターは非常に大きな役割を担っており、そのためメンター自身に大きなプレッシャーや負担が掛かってしまうケースも想定されます。メンターをケアするための制度やシステムを構築することも重要です。
まとめ
人材の確保が難しく、また採用しても直ぐに退職してしまうといった風潮がある昨今においてOJTやコーチングとは異なるメンタリングが注目を集めており、メンター制度の導入を実施している企業も年々増加傾向にあります。
ワークハピネスはそのような時代において人材の育成・組織開発・新規事業などに携わるコンサルティングサービスを提供しています。
新型コロナが発生してからその在り方を再検討させられたという企業も少なくありません。そのようななか株式会社ワークハピネスは「クライアントが抱える課題を、共に解決していく」という精神のもと、企業にとって最重要項目の一つである「人材」に特化した人材育成コンサルティングを請け負っています。デジタルでグローバルな時代を生き残るためにもぜひ弊社のサービスをご利用ください。
メンターを育成するために効果的な研修
大学卒業後、外資系医療機器メーカーで営業に従事。
6年間で8人の上司のマネジメントを経験し、「マネジャー次第で組織は変わる」と確信し、キャリアチェンジを決意する。
2009年にワークハピネスに参画し、チェンジ・エージェントとなる。
医療メーカーや住宅メーカーをはじめ、主に大企業の案件を得意とする。また、新人から管理職まで幅広い研修に対応。
営業、営業企画、新人コンサルタント教育を担当後、マーケティング責任者となる。
一度ワークハピネスを退職したが、2021年から復帰し、当社初の出戻り社員となる。現在は、執行役員 マーケティング本部長。