シニア人材とは?企業ができるキャリア自立を図る方法を解説
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シニア人材とは?企業ができるキャリア自立を図る方法を解説

一般的には60歳以上をシニアと呼ぶことが多いようですが、今、少子高齢化による人手不足もありシニア人材の登用を模索する企業が増えています。しかし雇用する側にとってシニア人材の活用については不慣れなことも多く「雇用して本当にうまくいくだろうか」と悩むことも多いのではないでしょうか。

この記事ではシニア人材の概要から、求められている社会的背景、雇用を成功させるためのポイント、キャリア自律を促す方法などを解説します。

注目が集まるシニア人材とは

注目が集まるシニア人材とは

シニアとは高齢者のことですが、何歳からをそう呼ぶのか明確な定義はありません。国連の世界保健機関(WHO)では65歳以上を高齢者としていますが、一般的には定年の60歳や65歳以上を指すことが多いです。

「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果の要約,概要,統計表等」によると、65歳以上の就業者数は増加傾向にあり、2011年では約571万人だったものが2021年には約912万人となっています。

国も中小企業庁が合同企業説明会を催すなどシニア人材が活躍するためのサポートをさまざまに行っています。

シニア人材が注目される理由

シニアといえば引退をして悠々自適に暮らすというイメージがありましたが、なぜ、仕事の現場でシニア人材が求められているのでしょうか。

定年が引き上げられた

シニア労働者が増えた背景には、定年年齢の引き上げがあります。

2012年に「改正高年齢者雇用安定法」を制定されたことに合わせ、定年の年齢を引き上げられました。改正高年齢者雇用安定法では、企業に対して「定年制の廃止」「定年の引き上げ」、あるいは希望者を対象に「雇用継続制度(65歳まで)」のいずれかを導入するように義務付けています。

さらに2020年に改正高年齢者雇用安定法が交付され、65歳までの雇用確保義務に加えて、70歳までの就業確保措置をとることが、企業の努力義務として追加されました。これにより、以前は60歳を過ぎると就業機会が減るシニア世代も、働きやすくなりました。

また特別な申請をしなければ老齢年金の受給開始時期は65歳であるため、60歳で退職をしてしまうと、5年間の収入の空白時期が生まれることもあり、60歳以降も働きたいと考える人が増えているようです。

少子高齢化による労働力不足

シニア人材の活用に国が熱心に取り組む背景には、少子高齢化による労働力不足があります。

厚生労働省職業安定局「改正高年齢者雇用安定法について」(PDF)によると、全人口に占める65歳以上の割合は1950年には5%程度でしたが、2015年には26%に昇っています。総人口も2006年をピークに減少が続いているため、今後さらに少子高齢化による人手不足が深刻になると懸念されます。

また厚生労働省職業安定局の「人手不足の現状把握について」(平成30年6月1日)によると、人手不足が著しい業界では、若手・中堅社員が離職しやすいという傾向が出ています。人手不足業界において、34歳以下が59.6%、35~59歳が59%もの若手・中堅社員が3年以内に離職しているとあり、人手不足による多忙さも、その理由だと考えられます。

以上のことから、各世代の安定した就業状況を整えるためにも、シニア人材の活用を考える必要があります。

参考:厚生労働省職業安定局「改正高年齢者雇用安定法について」(PDF)

厚生労働省職業安定局「人手不足の現状把握について」(平成30年6月1日)

シニア人材の活用状況とは

ところで実際にシニア人材の活用をしている企業は増えているのでしょうか。

厚生労働省が、従業員31人以上の企業16万4,151社に対して調査した「令和2年『高年齢者の雇用状況』集計結果」によると、65歳を定年としている企業は3万250社(対前年1.2ポイント増)で、66歳以上でも働ける制度を設けている企業は5万4,892社(対前年2.6ポイント増)となっています。さらに70歳以上でも働ける制度を設けている企業は5万1,633社(対前年2.6ポイント増)に昇っています。

またこの調査では31人~300人規模の企業を中小企業、301人以上規模を大企業としていますが、定年制廃止企業は中小企業が4,370社(3%)、大企業が98社(0.6%)など、中小企業のほうが、シニア人材の活用に積極的であることも明らかです。

シニア人材の活用は確かに増えてはいますが、その分、体力的なことに関する問題など、シニアだからこそ起こり得る課題も見受けられます。課題については以下で解説していきます。

参考:厚生労働省 「令和2年『高年齢者の雇用状況』集計結果」

シニア人材の活用に向けた課題

ここからはシニア人材活用のための課題を紹介します。シニア人材の豊かな経験を社会に役立てるために参考にしてください。

キャリアマネジメントが難しい

まずシニア人材を十分に活用するには、キャリアマネジメントについて考えなければいけません。

シニア世代の実績やスキルは企業にとっても活用したいですが、任せたい仕事があっても体力の低下があり、以前と同様の業務ができなくなっている可能性があります。できることを見極めながら、シニア層が生き生きと活躍できるキャリアマネジメントをしていかなければいけません。

またシニア層になるとフルタイムで働くことを望まず、家時間や趣味の時間を多くとりたいと考える人も出てきます。体力的にも厳しくなっていることから、時短勤務やリモートワークなど豊富な働き方を用意することが必要です。

自社だけでのマネジメントが難しい場合はシニア人材に強い派遣会社を利用するのも一つの方法です。自社の業務に合う人材を紹介してくれ、週3日だけ勤務など、企業にとって必要な量だけ仕事を任せることができます。

シニア人材自身が自分の能力を把握し切れていない

シニア人材の中には「以前はできていた」ために今でもできると思い込み、現状を把握できていないケースがしばしば見られます。

簡単に覚えられたはずの新しい業務がなかなか覚えられなかったり、記憶力の低下により大きなミスを招いたりする場合もあります。体力の低下からケガや体調不良を引き起こす人もいるでしょう。過去の成功例に捉われ、柔軟な発想ができなくなることもシニアの特徴です。

面談の機会を設け、常にシニア人材の状況に気を配るとともに、本人にも自分の能力を把握する機会を設けるようにしましょう。体力の低下がある場合には、危険度の高い仕事からはずし、記憶力などの低下が見られる場合には、仕事を細分化して単純なものにしたり、二重のチェック体制を整えたりするのをおすすめします。

シニア人材を活用するためにはキャリア自律が必要

キャリア自律とは主体的に自分の価値や周囲から望まれることを理解し、学び、キャリア開発をしていくことを示しています。シニア人材の活用では、キャリア自律を促すことが重要です。

シニアは高い技術力を発揮したり、これまでの人脈を継承してビジネスをまとめたりすることには強みを持ちますが、キャリア自律は得意とはしていません。

シニア世代では業務内容や配属などは企業に決められて従ってきたため、他律になりやすく、自律への発想の転換が難しくなっています。しかしグローバル化やIT化などで業務が目まぐるしく変化するなか、キャリア自律ができていないと、働いていくのは困難です。

「どうせ高齢なのだから」と能力を発揮していない人もいるかもしれません。企業の中には「多くの経験をしてきたシニアなら若手のように面談を行う必要はないだろう」と考えているケースもあります。しかし「本人がやりたいこと」「できること、可能性」「企業が望むこと」をすり合わせるために面談などを行うことは必要です。キャリアデザインをしてキャリア自律を促すことで、モチベーションを高め、パフォーマンスの向上につなげられるのは、若手社員であっても、シニア人材であっても同様といえます。

社内の若手にも良い影響を与える

一般社団法人 日本人材紹介事業協会、職業紹介業高齢者雇用推進委員会の「職業紹介業 高齢者雇用推進ガイドライン」によると、「活躍しているシニア人材が企業に果たしている貢献」としてもっとも多いのが「的確な業務処理」60%であり、次いで「若手・中堅社員への指導・気づきを促す」が56%となっています。シニア人材が若手・中堅社員へ良い影響を与えていることが分かります。

若手・中堅にとってはシニア人材がキャリア自律により前向きに働く姿を見るだけでも、良い刺激が受けられているという声もあるようです。

参考:職業紹介業 高齢者雇用推進ガイドライン

シニア人材のキャリア自律を成功させるために企業ができることとは

シニア人材のキャリア自律を成功させるために企業ができることとは

シニア人材を活用しキャリア自律を成功させるために、企業がすべきことはなんでしょうか。ポイントについて解説します。

ジョブ型雇用を導入する

シニア世代の持つスキルを生かすために、これまでの人事制度を見直すことも考えましょう。能力に合った仕事を任せ、成果、職責などによって評価を受けられるようにしていきます。

例えばジョブ型雇用を用いるという方法があります。ジョブ型雇用とは企業が求める業務に対して、適した人材を雇用する仕組みです。従来の企業に所属してから部署を決めるという「メンバーシップ型雇用」ではなく、業務に合った人材を採用する「業務ありき」の雇用となります。

雇用される側は自分に合った業務ができるため無理なく働けます。成果が可視化されるので能力にあった評価を受けられ、モチベーションを保ちやすくなります。

企業にとってもシニア人材が持つ必要なスキルを有効活用でき、慣れない仕事を一から教える際の時間や人件費を削減することも可能です。

社員が職務の内容を選択できるようにする

職務の内容を社員が自ら選択できるようなシステムを設けるのも良いでしょう。自分でやりたいと手を挙げたことで、「やらされている感」が薄まり、モチベーションも高まります。方法としては職務の担当者募集情報を公募にするというものがあります。

立候補するには、やりたい職務が「やれる職務」であるかどうか考えなければなりません。「やりたいこと」という未来と、「できること」という現在のギャップを知り、足りないものを補おうとすることで、さらにキャリア自律が促されます。

自律意識の醸成をサポートする

キャリア自律を促すためには、企業は直接的なサポートをしていくことも大切です。

ある程度の社歴があると先が見えてしまい、キャリアを「他人ごと」のようにしてしまいがちですが、「自分ごと」と捉え、自分の現状と将来を見つめ直させる機会を設ける必要があります。

サポート方法としては、カウンセリングや1on1で対話の機会を設け、シニア社員の状況を把握し、細やかなアドバイスを行うと良いでしょう。また社員それぞれに合った研修を実施してみてください。

シニアに対する研修や教育についてノウハウが十分ではない場合は、研修やコンサルティングの会社に外注することもおすすめです。

まとめ

人手不足を補うためにもシニア人材の活用が企業にとっては重要です。シニア人材の活用ではキャリア自律を促す必要があります。ジョブ型雇用の導入や時短勤務などを用意し、やりがいを持たせるとともに、体力が落ちたシニアでも働ける環境を整えるのもおすすめです。

もしシニア人材の活用についてお悩みがある場合には、研修のプロにお任せください。ワークハピネスはテレワーク時代に対応し、研修、ワークショップ、コンサルティングをすべてオンラインで行っています。人材育成研修や組織開発コンサルティングを通して、企業が抱える課題を共に解決していきます。

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この記事を書いた人この記事を書いた人

藤岡 征太郎

大学卒業後、外資系医療機器メーカーで営業に従事。
6年間で8人の上司のマネジメントを経験し、「マネジャー次第で組織は変わる」と確信し、キャリアチェンジを決意する。
2009年にワークハピネスに参画し、チェンジ・エージェントとなる。

医療メーカーや住宅メーカーをはじめ、主に大企業の案件を得意とする。また、新人から管理職まで幅広い研修に対応。
営業、営業企画、新人コンサルタント教育を担当後、マーケティング責任者となる。
一度ワークハピネスを退職したが、2021年から復帰し、当社初の出戻り社員となる。現在は、執行役員 マーケティング本部長。

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