「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念を具現化するために策定した社員全員が共有する指針「小野薬品ミッションステートメント」を価値観の軸、判断の軸として、日々の業務の中で実践する会社風土を醸成するための人財開発部の取り組みをご紹介します。
- 課題
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- ミッションステートメントの認知度は高いものの、業務における実践まで十分繋がっていない
- 実施策
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- 階層を越えた同一テーマでの研修実施
- サーベイの結果を用いた定期的な対話
- 効果
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- ミッションステートメントを踏まえた行動が顕在化してきたこと
インタビューご協力
小野薬品工業株式会社 人財開発部 部長 大澤成行 様
小野薬品工業株式会社 人財開発部 人財育成課 課長 溝手紳太郎 様
Q 今回の研修を導入された背景を教えて下さい。
「社員に小野薬品のミッションステートメントの“理解”から“実践”へとつなげる」
大澤:2014年に小野薬品工業株式会社(以下、当社)のミッションステートメント(※後述)が策定されたため、人財開発部では、「社員にミッションステートメントをどうやって深く浸透させていくか?」ということをテーマに掲げ、どのようなプログラムなら社員の心に響くのかといったことについて試行錯誤しながら検討を重ねてきました。
体系化されてから数年経過し、ミッションステートメント自体は少しずつ浸透してきたのですが、「それが実際に社員の行動につながっているのか」ということに疑問を感じていたタイミングで、ワークハピネス社よりZIPANGU(ワークハピネスのリーダーシップ研修)をご提案いただきました。そこで、人財育成課全員で体験セミナーに参加しました。ZIPANGU(ジパング)はとても気づきの多いプログラムで、その中には当社の課題にも自然に気づける仕掛けが含まれており、このプログラムならミッションステートメントをより多くの社員の実践につなげることができそうだと強く感じて導入を決めました。
※小野薬品ミッションステートメント=企業理念/PHILOSOPHY「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」と、めざす姿/VISION「熱き挑戦者たちであれ)、行動原則/VALUE「小野は、世界を変えるチームとなる・小野は、壁にぶつかった時ほど奮い立つ・小野は、矜恃を胸に行動する)から成り立ち、めざす姿、行動原則は社員が自ら考え判断するための道しるべとなるものです。
Q 実際に、受講生が研修を受ける様子をご覧になっていかがでしたか?
「受講生が課題に前向きに取り組むことができるインパクトのあるプログラム」
溝手:これまでいろんなプログラムをやってきましたが、このプログラムは受講者にとって大きなインパクトがあったように思います。実際、研修後も受講者から印象的だったという感想を多くもらえましたね。
階層別研修でありながら、部長や所長、次長、課長、と階層を越えて、同一のテーマで一貫して実施するという研修内容は、我々運営サイドにとっても挑戦でした。結果的には、上記のインパクトも手伝って、研修で学んだ組織運営に対する考え方、自社に対する誇りや課題認識を共有できたように感じました。
大澤:研修3ヶ月後に人財開発部から管理職に対してアンケートを行ったところ、その質問の1つである「あなたの部下がミッションステートメントを踏まえた行動をしているとあなた自身が感じることはあるか?」には、9割の方が「感じる」と回答がありました。さらに、そのアンケートの自由記述には、ミッションステートメントの行動原則にある「世界を変えるチームとなる」の「チーム」や、めざす姿の「熱き挑戦者たちであれ」の「挑戦」というキーワードにまつわるエピソードが様々書かれており、我々が取り組んだ成果は出ていると感じています。研修企画の意図が受講者である管理職の方々に伝わっていて、その部下にも間接的に普及しているものと感じました。
また、時間が経つと研修での効果が薄れてくると一般的に言われていますが、私共はその効果を極力維持する施策として、スクエアホイールサーベイを活用しています。スクエアホイールサーベイは、まず研修前に全管理職に実施してもらい、自組織の研修前の状態を見える化してもらいました。そして研修後、「研修の学びを実践した上で、あなたのチームはどう変わったのか」を確認するために、もう一度サーベイに回答してもらうことで、再度自組織の状態を見える化し、研修前後の差を踏まえて、自組織での取り組み内容について議論いただくように案内しました。
なかには、こちらの呼びかけがなくても自主的に管理職がサーベイしている例も数多くあり、サーベイの結果を用いて定期的に対話をしているチームが増えるとともに、研修を受講した管理職の意識が変わったと捉えております。
一般的なサーベイは、診断結果に一喜一憂して終わってしまうということを他社さんではよく聞きますが、このサーベイに対して、当社ではネガティブな反応はほとんど聞こえてきません。結果が1つの絵で表現されているので、自分の管理するチームがどんな絵(状態)になったのかに関心を持ってくれています。また、親しみやすいアウトプットなので、その結果を楽しくかつ、真摯に受け止めて、次にどう活かすのかといったように、ポジティブに活用できる良いツールになっています。
Q 小野薬品さんにとって、ミッションステートメントにはどういう想いがありますでしょうか?
「ミッションステートメントは、全社員が共通して目指すところ、判断軸であり、社員の拠り所」
大澤:ミッションステートメントは、「全社員が共通して目指すところ」であり、様々な意思決定の「判断軸になるもの」です。ミッションステートメントには今この激しい環境変化の時代において、社員が迷ったり悩んだりした時に自主性を持って判断するにあたっての拠り所としていただきたいと云う当社トップの強い思いが込められています。
さらに付け加えると、我々自身がミッションステートメントに強く共鳴しています。私(大澤様)は営業出身で医療関係者の方々と長年接しながら、患者さんのために働いてきましたし、溝手(様)も研究開発部門で新しいお薬を患者さんに届けるという想いで仕事をしてきました。改めて入社当初から企業理念やめざす姿、行動原則に強く共感して働いてきたのだと思っています。
Q 今後の小野薬品の人財開発のビジョンを教えていただけますか?
「ミッションステートメントの実践者と、VUCA時代に活躍するより適応力の高い人の育成」
大澤:人財開発部のビジョンは大きく2つあります。1つ目は「ミッションステートメントをより実践する人をたくさんつくること」、もう1つは「先の読めないVUCA(ブーカ)の時代に必要な適応力を社員にさらに身につけてもらうこと」です。会社が社員に「求める人財像」として「チャレンジする」と「自律する」をあげています。ミッションステートメントをもとに、当時の本部長の方たちがどの部署でも使えるものとして「求める人財像」をまとめました。人財開発部は、全社員を求める人財像に近づけていくことに挑戦しています。
Q 弊社ワークハピネスに今後期待していることはありますか?
「受講生を引きつける革新的で実践的で楽しめるプログラムを」
大澤:私の印象として、ワークハピネスさんの大きな特徴は、体験型のコンテンツを研修プログラムにうまく盛り込んでいるところです。大事にされているのは「楽しく学ぶ」ということ。実際、楽しく学ばないと、感情が動かず、身につきにくいところがあると思っています。楽しんでやればやるほど、気づきも多いですしね。弊社の社長方針の一つに2017年、2018年は「楽しんで克つ」ということをテーマにしていたこともあり、方針の落とし込みにも貢献してもらえたと思います。
また、リーダーシップの考え方は世の中に様々あるかと思いますが、ワークハピネスさんの場合は、フォロワーシップも大事にするリーダーシップ論であるということが、チームワークを重視する当社の考え方にも似ているので、そのリーダーシップがさらに強化できるコンテンツを提供して欲しいと思います。
どの会社さんにお聞きしても、研修は仕事が忙しい中参加させられていると不満を感じたり、動機づけされていない中で受け身になったりしている参加者が多いと聞きます。それを考えると、ZIPANGU(ジパング)のようなコンテンツを用いてワクワクさせながら、受講生をいかにひきつけるかが研修を企画する我々にとっても大切なテーマであると思っています。
研修の企画にあたって、色々ご提案いただきながら、プログラムを導入させてもらいました。これからも新しい切り口のコンテンツ、後々現場でも使えるコンテンツなども、是非ご提案いただければと思います。