コロナ前、b-monsterという暗闇ボクシングジムに通っていました。
暗闇の中でサンドバックを殴り、続いて腕立て伏せやシットアップ等の筋トレ、そして再びサンドバックを殴る。
有酸素運動と無酸素運動を繰り返すサーキットトレーニングは、肉体的にかなりハードで心拍数、爆上がり。
汗が大量に吹き出します。
大音量の音楽、暗闇の中で光るレーザー光線、周囲の参加者の頑張る姿、そしてトレーナーの「休まない!まだまだ行けるよ!」と励ます声に促され、自分で考えた限界をはるかに超える領域へと追い込まれました。
45分間の暗闇ボクシング&サーキットトレーニングが終わると、凄まじい達成感と爽快感に包まれます。
これほどハードできついトレーニングを続けられる理由は何でしょうか?
それは動機付けです。
米国の心理学者であるエドワード・デシが提唱したモチベーション理論に従えば、この暗闇フィットネスジムは「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」の設計が上手です。
「内発的モチベーション」とは、自分の内側から湧き上がる興味・関心を起点にして、自分で掲げた目的・目標で生まれるモチベーションです。
b-monsterの宣伝を見た時、私が感じたのは
「暗闇で人目を気にせず思いっきりサンドバックを殴ったら気持ち良いだろうな〜」という興味。
そして、日頃からのテーマである「痩せたい!」が実現するかも?という関心。
早速体験入会を申し込んで、実際に45分間の暗闇ボクシングがスタート。
思いっきりサンドバックを殴って、大量に汗をかいて、苦しくても途中で脱落することなくやり切った後におとずれたのは、、、、、
凄まじい達成感と爽快感。
ドーパミン大噴出です。
「また、この気分を味わいたい!」
内側から湧き出るやる気。
「内発的モチベーション」爆上がりです。
ところで、この強烈な「内発的モチベーション」。実は「外発的モチベーション」の助けがあって生まれたのです。
「外発的モチベーション」とは、”アメとムチ”。頑張ったら褒めてもらえる。認められる。何かご褒美をもらえる。頑張らなかったら、叱られる。恥ずかしい思いをする。罰を与えられる。
「ジャブ、ジャブ、ストレート、ジャブ、ジャブ、ストレート、、、フック、フック、フック、フック、、」
と休まずサンドバックを殴り続けて「もうダメ〜。苦しい〜」なんて時に、トレーナーは突然、
「バービージャンプ!」なんて指示を出してきます。
「嘘でしょ〜」と、思うのですが、暗闇の薄明かりの中、周囲の老若男女がものすごい勢いでバービージャンプを繰り返している姿を見ると、私も思わず老体にムチ打って飛び跳ねてしまうのです。
「バービージャンプ、早く終わってくれ〜」と耐えていると、次の指示が、、
「ニーアップ!(全力での腿上げ運動)」
この女性トレーナー、「鬼」です。
体力の限界を超えている私。自分の身を守るために、腿を低く上げて誤魔化していると、なんとあの「鬼」トレーナーがステージから降りて私に近づいてきました。
そして、笑顔で「まだまだいける!」と叫び、私の前で凄まじい速度のニーアップを披露するのです。
男として、これにお応えしないわけには行きません。
私も全力でニーアップ。汗が吹き飛び、阿修羅の形相。
こんなに心拍数が上がって汗を出したのは中学バスケット部の夏合宿以来です。
人間の限界って、本人が思っているよりもかなり先にあることを再確認させていただきました。
頑張っている仲間の存在。そして励ますトレーナー。これが「外発的モチベーション」です。
そして「外発的モチベーション」が私を「凄まじい達成感と爽快感」まで連れていってくれました。
一瞬、「鬼」だと思った女性トレーナーには感謝しかありません。
この暗闇ボクシング、興味・関心からくる「内発的なモチベーション」で自発的に参加しました。
さて、全く興味・関心が無い人を強制的にこの暗闇ボクシングに参加させたら、、、、
最初は地獄体験、そしてトレーナーは忌み嫌うべき「鬼」でしょう。
でも、「外発的モチベーション」に励まされて最後まで到達したら、、、
その達成感と爽快感で「内発的なモチベーション」が湧き上がるかもしれません。
「外発的モチベーション」は大変役に立つのです。
「内発的」と「外発的」の違い
「内発的モチベーション」は、本人の内側から来るものなのでそのやる気が長期間持続します。
そして、創意工夫や探究を必要とするテーマに大変フィットします。
内側から湧き出る興味や関心があると、四六時中、そのテーマを考えています。そして、ふっとした瞬間に素晴らしい創造的なアイデアが湧き上がります。
全ての発明や革新的な創造は、「内発的モチベーション」による長期的な活動によって支えられてきました。
現代のナレッジワーカーの主たる仕事は知的創造物の生産ですから「内発的モチベーション」は全ての企業で重視されるべきテーマです。
ただ、人によって「内発的モチベーション」を刺激するツボが異なるので厄介です。
一方で、「外発的モチベーション」は、その効果が短期間しか続きません。
「アメとムチ」は、短期的には有効ですが、その喜びや痛みは短期間で忘れ去られてしまいます。
ただし、評価や報酬・賞罰はその設定が簡単で、誰にでも有効なので経営においてはベースとして必ず活用されます。
上司からの励ましや、仲間からの賞賛も「外発的モチベーション」です。
仕事においてはこの「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」の両方が必要です。
ところがコロナ禍、テレワークによって特に「外発的モチベーション」が少なくなっている傾向があります。
オフィスワーク時代、朝、上司と「おはよう」と笑顔で視線を交わしたことで「承認」という「外発的モチベーション」をもらっていた人がいます。
「おっ、髪の色変わったね。とっても似合っているよ!」なんて一言で、やる気倍増。
仲間と会話を交わし、「昨日、新しい契約が取れた!」と喜んでいる姿を目にして「自分も負けられない!」と、「評価」という「外発的なモチベーション」が刺激されることもあります。
言葉を交わさなくても、朝からハイペースで仕事をしている同僚を見るだけで、ちょっと背中を押されます。
周囲が忙しく動き回っている姿が「外発的モチベーション」となって行動を促されていた人も多いです。
ところが、テレワークになると仲間の頑張っている姿が自然には目に入ってきません。
「内発的モチベーション」でやりがいを持って仕事をしている人であっても、以前ほどは頑張れていないかもしれません。
ちなみに暗闇ボクシングのb-monster、コロナ禍で一時閉鎖になりました。
健康と痩身維持のため、困った私はパーソナルトレーナーを雇いました。
週2回、オンラインでサーキットトレーニングを行ったのですが、以前のような達成感も爽快感もやってきませんでした。
トレーナーは、b-monsterのように「まだまだ行ける!」と励ましてくれるのですが、そこには「頑張る仲間の姿」がないのです。
人のモチベーションは気分や体調で日々変化します。
「頑張る仲間の姿」はとても大事です。
テレワークでは上司や仲間とのコミュニケーション時間を積極的に増やし、「頑張る仲間の姿」を毎日感じていきましょう。
株式会社ワークハピネスは人材育成研修・組織開発コンサルティングを通して
人と企業の「変わりたい」を支援し、変化に強い企業文化をつくる支援をしています。
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公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。
現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。