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ホテルの再建物語 その4 中華レストランの開業

転がり込んできた新規レストラン開業のチャンス

早朝の地下鉄出口でのポケットティシュ配りから始まり、日中は各種改革プロジェクトのミーティングが休みなく続き、夜になってから経営計画の立案等のペーパーワーク等々、、、毎日終電まで働くのがルーチンだった老舗ホテルの再建請負。(初回記事はこちら

肉体的にも精神的にもハードだったのですが、そんな中でも文字通りの”ボーナス”と思える楽しい仕事がありました。

それは新規レストランの開業プロジェクトです。

当時、その老舗ホテルでは、食事の選択肢が”90年の伝統あるフレンチ”だけでした。

”フレンチ”だけでは宴会場の魅力が半減です。

高齢者や子供が好きな中華料理やお寿司等の和食を提供できれば、還暦祝いや法事等のファミリー利用ももっと強力に呼び込むことができます。

中華料理と和食を提供することはその老舗ホテルの長年の夢だったのですが、長期に渡る赤字の連続でその実現は絶望的でした。

ところがワークハピネスがホテル運営会社を経営することになり、ビルオーナーから中華や和食レストランの新規開業に関して資金援助の申し出があったのです。

これはホテルの収益力を高める絶好のチャンスです!

個人的にも美味しい食事とお酒、お洒落なスポットは元々大好きだったので、レストラン創りは仕事と趣味が両立した本当に楽しい時間でした。

そして、最終的には中華料理、寿司割烹、イタリアン、アイリッシュパブ、、なんと1年間で4つのレストランを創ることになります。

最初に手掛けたのは中華料理レストランです。

このボーナス仕事のプロジェクトマネージャーは、お洒落スポット好き、元銀行員のIさんです。

年末、繁忙期がやっと終わって一息つこうとした矢先に、

「ボーナス仕事があるよ!」と私に騙されて突然このホテルに送り込まれ、正月返上で休みなく働き続けてきたIさん。

ついにボーナスタイムゲットか?

今回も無理そうです。

秋の宴会シーズン前に開業したいということで、なんと準備期間はたったの4ヶ月。

残業と休日出勤はまだまだ続きそうです。

急ピッチで進むお店作り

ところで、中華レストランの開業。

まず、最初に何から手を付ければ良いのか?

レストランは味が第一ですから、まずはシェフ探しから始めることにしました。

腕があってコックたちのマネジメント力もある優秀な料理長が採用できれば成功に一歩近づきます。

優秀な人に出会えなかったら、、、、、悲惨な結果が待っていることでしょう。

優秀な料理人が職安に求職したり、募集広告で応募してきたり、、、、なわけありません。

中華料理人に知り合いいないし、出会い方もわからないので手当たり次第に友人に電話です。

「訳あって、中華レストラン開業しなければならないんだけど、誰か良い人知らないかな?」

なんと、この戦法でいきなりホームランが出ました!

都内一流シティーホテルの中華部門の元総料理長にいきなりたどり着いたのです。

政財界の集まりに大宴会場で同時に2000人規模で中華料理を提供してきたとか。

調理の段取り力や大勢のコックたちのマネジメント力は並大抵ではないことが想像できます。

お名前は”謝(シャー)”さん。大柄で迫力ありました。

試食会を開いてもらい、みんなで食べたら、、、

「これが、、、うまい!」

一流の味!

満場一致で謝さんの採用決定。

ちょーラッキー!

謝さんさえ居れば鬼に金棒です。

あとは、お店のメニューとサービス内容を決め、内装を仕上げて、人材を採用してトレーニングすればお店は出来上がるはず。

努力で何とかできそうです。

またまた友人の紹介で、腕利きの飲食コンサルタントを紹介してもらいました。

たらたらと中華レストランに関する自分なりに考えた様々な希望やアイデアを語っていたら

コンサルタントからバッサリ切り捨てられました。

「吉村さん、レストランの設計にあたって1番重要なのはターゲットと来店動機なんです。全てのアイデアはターゲットと来店動機に整合しなければダメなんですよ。

なるほど!!

舞い上がって経営学で習ったマーケティングの理論をさっぱり忘れていました。

例えば、ターゲットとしては近隣サラリーマン、友人同士、ご家族、カップル等々。

来店動機としては、夕食、コンパ、接待、デート等々。

ターゲットと来店動機を明確にした上で魅力的なコンセプトを生み出し、それを食事とお酒のメニュー、サービス、インテリアで表現する。

これが成功への第一歩となるとのこと。

大納得です。

ホテルの立地と周辺環境を考えると、ターゲットは”近隣の勤め人”で、高い客単価を狙えば来店動機は”接待”となりそうです。さらに、自分が行きたくなるという観点から”カップル”が”デート”で使うオシャレなお店という線も追加しました。

そんな話をコンサルタントに聞いてもらったところ、1週間後に彼らから提案されたコンセプトは、、、

”マダム・シャーのおもてなし”

「???」

いきなり、何でマダムなの?

何を言っているのか?さっぱりわかりません。

でも、そのコンセプトに至った背景を聞いて感動。

・そのホテルは大正時代の西洋建築で国の登録有形文化財。

・天井の高い西洋建築の中で食べる中華料理は、あたかも上海の租界での食事風景を連想させる。

・フランス租界でホストのマダムが中華料理とワインでゲストをもてなす世界観を表現。

このホテルの強みである天井の高い大正時代の西洋建築と料理長の”謝(シャー)”さんからインスピレーションを得て編み出したと。

この、コンセプトを味わいながら、完成したお店の雰囲気を想像すると、、、

非日常な異国情緒が見えてきてワクワクしてきました!

コンセプトは、

”マダム・シャーのおもてなし”で決定です!

コンセプトが決まったことで、料理&ドリンクメニュー、サービススタイル、内装&家具等々、全ての作業が同時並行で急ピッチで進みました。

中華料理に合わせるのはワインということでソムリエが必要です。これまた友人の紹介でワインコンテストで世界1位となった田崎真也さんのお弟子さんに出会い、蝦のチリソース煮、北京ダック、フカヒレの煮込み等々、謝さんの得意料理にマッチする素晴らしいワインリストを作ってもらいました。

開業まであと、1ヶ月。

準備はいよいよ大詰め。

サービススタッフの採用と開業前トレーニングです。

サービス技術が未熟な若いスタッフが多く、トレーニングは難航しましたが、Iさんの頑張りで何とか合格水準ギリギリまで到達か?

粗相があったら、あとは愛嬌で乗り切るしかありません。

そして、発案からわずか4ヶ月で、ついに自分的に大満足な中華レストランが完成しました!

”友人のおかげで大成功!

ファサード(お店正面)には大きなショーウインドー。

ガラス越しに見える艶やかな北京ダックと色鮮やかな焼豚。蒸籠からは点心を蒸す湯気があがっていて、食欲をそそります。

長い廊下の先で突然視界が開け、5mの高い天井の大空間と真紅のビロードのカーテンを背負ったウェイティングバーが目に飛び込んできます。バーカウンターの背後に並べられた色鮮やかなリキュールたちがキラキラと怪しい光を放っています。

出迎えるチャイナドレスのサービススタッフ。

ロングドレスの脇の大きく空いたスリットが妖艶です。

客席に目を転じれば、中華格子の衝立の向こうに並ぶ丸いテーブルと純白のテーブルクロス。テーブルの上には色鮮やかなブルーのショープレート(飾り皿)と、大、中、小、3脚のワイングラス。

「フレンチレストラン?」

その奥には天蓋とピンクの緞帳で仕切られた個室が並びます。

「ここはどこ?」

なんとも不思議な異国情緒溢れる世界です。

テーブルに着き、白いナプキンを手にすると、その一角には”淡いブルーの蝶”の刺繍があしらわれています。

青い迷彩色柄のメニューブックを手に取ります。

開くと、対面に座っているお客様だけに見える”淡いブルーの蝶”。

デートで訪れた時、男性がメニューブックを開くと、向かいの席の女性が、

「わあ、綺麗な蝶!」

と驚く。

男性が、

「えっ?蝶?どこに?」

で始まる楽しい会話のための心憎い演出。

今宵、お二人の関係も深まることでしょう、、

と、なったかどうかは検証していません(笑)。

完全な自己満足の世界

どうでしょう?

”マダム・シャーのおもてなし”はまだ序の口。

ここからが本番です。

絶品料理とワインのマリアージュであなたはひらひらと蝶が舞う夢の世界へ。

味、雰囲気、サービス、全て最高ということでレストランは連日大盛況。謝さんの食材原価マネジメント力も完璧で、館内で1番の稼ぎ頭となりました。

オシャレなグルメ雑誌「東京カレンダー」にも載りました。

芸能人の方もきました。

開業して一年後には、なんと日テレ、「ぐるナイ〜ゴチバトル」にも出ちゃいました(笑)。

素人が初めて手がけたレストランにしては上出来です。

謝さんにいきなり出会えたことが幸運の始まりですが、全ての幸運のきっかけは常に友人。

人で困れば友人が適切な人を紹介してくれる。知恵に困れば、友人が知恵を持っている人を紹介してくれる。

公認会計士時代の上司の教え、

「吉村さん、大切なのは”Know how”じゃなくて”Know who”だよ!」が身にしみたプロジェクトでした。

友達に大感謝!

次回は、レストランの開業、”寿司割烹”編です。

ビギナーズラックは続くか?

お楽しみに♪

この記事を書いた人この記事を書いた人

吉村慎吾

公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。

現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。

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