CEO BLOG

大勝負!老舗ホテル再建物語 その1

危機からの脱却

前回のブログにも書いた通り、クライアントからのどんなお困りごとでも「できます!」とダボハゼの様に食らいついて何とか売り上げを上げていたワークハピネスですが、

創業から2年目にスコット博士と出会い、”ジパング”という金塊を採掘するゲームで学ぶリーダーシップ開発プログラムを手に入れたおかげてやっと売上が安定してきました。
(スコット博士とのストーリー「会社の救世主との出会い」はこちら)
https://workhappiness.co.jp/blog/ceo/kyuseishu/

ゲームで学ぶことのパワーを知った私たちは、そのノウハウを様々な企業の課題解決に展開していきました。その中の一つが医薬品会社ファイザーの新卒採用イベント向けに開発した、MR(医薬情報担当者)の仕事をゲームで学ぶ”ヴァーチャル・ファイザー・ワールド”という大人数参加型のプログラムでした。未知のウイルスに犯されている人類を救うために仲間と力を合わせてファイザーが開発した新薬を普及させるというミッションを競い合うのです。今思えば未来を予言していたかのような内容です。

このファイザーの新卒採用イベントが学生の間で大評判となり、日経新聞の朝刊に取り上げられた時には、私たちらしいユニークな価値創造ができたことを大変嬉しく思いました。転職が失敗だったのか?と親に疑われていたあるメンバーは新聞の切り抜きを親に送っていました。

”ヴァーチャル・ファイザー・ワールド”を実施する全国行脚も終わって一息ついていたそんな年末のクリスマスイブの直前に、今までの案件とは難易度のスケールが桁違いの大きな案件が舞い込んできました。

老舗ホテルの事業再生です。

思いがけない依頼と上司の呪文

90年の歴史ある老舗ホテル。館内の老舗フレンチレストランの顧客名簿には政財界の大物や皇室の方々の名前も。かつてはブライダルも大盛況で年間2000組以上のカップルの挙式と披露宴も行われていました。ところが近年は競争激化と顧客ニーズの変化によって収益力が低下し、直近では15年連続の赤字でした。欧米のホテル業というのは大抵、ビルのオーナーとホテルを日々運営しているオペレーター企業というのは別企業ということが多いのですが、そのホテルもビルのオーナーとオペレーターは別企業でした。

ビルオーナーの財政状態は健全でキャッシュが豊富にあるのですが、そのホテルのオペレーション任されているオペレーター企業が赤字続きで債務超過状態でした。

ホテルの再建はビルオーナーからの依頼でした。由緒あるこのホテルを存続させるため、債務超過状態のオペレーター企業を買収して経営再建に乗り出してくれる優良なホテルオペレーターを探してきて欲しいというものでした。

事業再生のシナリオを描いて優良な買い手を探してくる。これまた私の人生初のチャレンジで難易度が高そうでしたが、公認会計士時代、”世界初の日米同時株式上場”という難関なチャレンジを潜り抜けたことがある私は、当時の上司から叩き込まれた「人間が頭で想像できた事は必ず実現可能」との呪文を信じ、二つ返事で「できます!やりましょう!」と答えていました。

今回のプロジェクトは財務に関する知識と経験が必要です。そんな時、元銀行員のIさんが、”ヴァーチャル・ファイザー・ワールド”の全国行脚を成功させた達成感と安堵感に包まれた幸せそうな顔でオフィスにやってきました。

私は満面の笑みでIさん出迎え、こう言いました。

「全国行脚、お疲れ様!ラッキーな事にIさんにしかできない面白いボーナス仕事が入ってきたよ!面白い仕事をやり遂げる人には報酬としてさらに面白い仕事が舞い込んでくるんだね。ついてるね!」と、極めて楽しそうに事業再生プロジェクトの概要を伝え、そのままホテルに直行(連行?)です。

再建計画プレゼンと逆提案と悪寒

事業買収調査&経営再建計画立案のため、私たちはホテルの1室を1ヶ月間占拠し、休日と年末年始を返上し、元旦も午前中だけ休んで突貫工事で調査を行いました。独立してコンサルタントをやっていた私の公認会計士時代の友人や元野村証券公開引受部の友人にも手伝ってもらいました。

ホテルを宿泊部門、宴会部門、ブライダル部門、レストラン部門に分けて現場のヒアリングを行い、そのオペレーションの問題点と改善の方向性をまとめました。

経営上の1番の問題は、予算統制がなく、部門別の月次損益も算出していなかった事です。例えていうならば計器盤無しで飛行機を飛ばしている状態。これでは簡単に墜落です。

問題山積で取り組むべき課題が多いという事は良くなる可能性も大きいということです。

約1ヶ月、休みなく働いて取りまとめた事業買収調査&経営再建計画レポートを携えてホテルビルオーナーを訪問。

ホテル事業の実態とその経営再建策をプレゼンテーションしました。

オーナーはその良くまとまった内容に大変満足し、この1ヶ月間の私たちの努力に感謝してくれました。

「よくわかりました。このプランを実行すれば経営再建する可能性が高いということですね。ところでこの会社を買ってくれるスポンサー企業は見つかりますかね?」

「それはやってみなければわかりません。」と無難な返答をする私。

続いてビルオーナーから、

「私たちがスポンサーとなってお金を出すので、誰か優秀な経営者を連れてくるというのはどうでしょう?」

「それもありです。その場合も、良い人が直ぐに見つかるかは探してみなければわかりません。」とまたまた常識的な返答をする私。

すると次の瞬間ビルオーナーから驚きの発言が。

「吉村さんが経営者になってやってくれませんか?」

想定外の言葉。

背筋に悪寒が走り、心臓の鼓動が高まりました。

当時私は34歳、ワークハピネスもよちよち歩き。経営者としての実績は無に等しく、ホテルを再建できる確信が持てるわけがありません。

”恐怖”を感じました。

ところが、2秒後に、

「わかりました。私がやりましょう。」

と答えていたのです。

企業変革支援へのトビラをこじ開ける

”恐怖”を感じると逃げずに”攻める”という、私の子供の頃からの癖が出てしまいました。「攻撃は最大の防御」と言う価値観が私にはあるみたいです。

ほとんど反射的に引き受けたホテルの再建ですが、冷静な計算も若干ありました。

当時のワークハピネスは”ジパング”の登場によって売上は安定してきたものの、企業の組織開発の実績は乏しく、クライアントからの認識は「面白い研修をやっている会社」くらいな感じでした。

その当時の私たちが一番やりたかったことは”企業変革支援”です。

でも実績は皆無。本格的な経営改革を私たちに任せてくれるクライアントはありませんでした。

もし、この老舗ホテルの再建を成功させることができたなら、”企業変革支援”に関する確かな実績となる。

また、見事に生まれ変わったホテルにお客様をお連れして説明すれば、私たちの実力を示す良いショールームになると思いました。

そして何より提示した報酬が魅力でした。当時の私たちの年間売上額の倍。この収入で累損一掃♪

金銭面でもやりがいのあるチャレンジです。

一方で、もしこの再建に失敗すれば、評判は大いに傷つき、当時のワークハピネスの親会社であるエスプールの上場計画も延期になるかもしれません。そうなれば、投資家や関係各所から大クレーム。私個人のビジネス界での信用も失墜です。

ハイリスクハイリターンは世の常。

ハイリターンを狙うならリスクを取るしかありません。

創業3年目の大勝負です。

引き受けるにあたって私がビルオーナーに示した条件は2つ。

1 全権を吉村に集中させること


2 私が行う変革に関して各方面からオーナー宛に様々な苦情や陳情がやってくるでしょうが、絶対に対応せず、

「すべては吉村さんに任せている」と言って追い返すこと。


当時、日産のカルロス・ゴーンによる日産リバイバルプランが成功し、カルロス・ゴーンがその体験記を示した「ルネッサンス」と言う本が出ていました。私はその本を読んでいました。売上高が10兆円近い日産を立て直すって、凄いことだなと思いましたが、その本を読んでわかった事は、当たり前のことを当たり前にやっただけ。ただ、それを可能にしたのが強固な舞台セットの存在でした。全権をカルロス・ゴーンに集中させ、当時の日産の塙会長が「全てはゴーンさんに任せている」といって、一切苦情や陳情を受け付けなかったのです。

再建にあたっては思いきったリストラ等も行うので社内は混乱します。でも、リーダーの権力基盤が強固ならば従業員の反抗心も薄れ、混乱は早期に収束します。

私が求めたのはこの強固な経営基盤です。

私たちに期待された経営再建のベストシナリオは次の3ステップです。

1 現在のオペレーション企業のオーナー兼経営者から全株式を廉価で譲ってもらう

2 ビルオーナーからの財務的支援を受けて経営を再建する

3 業績を安定させて、経営をビルオーナーに移行する

最初の関門は、現在のオペレーション企業のオーナー兼経営者との交渉です。

度重なる赤字で会社は数億円の債務超過状態。そしてその赤字の補填に現経営者が個人で数億円を会社に貸し付けていました。

私たちが描いたプランは、債務超過の会社を廉価で引き継ぐ代わりに、数億円の貸付金を債権放棄してもらうという条件交渉。

交渉は難航しました。

でも何度目かの交渉の末、私が投げかけた次の言葉が彼の背中を押しました。

「経営者としての晩節を汚す事はありません。伝統あるホテルを存続させるため、そして従業員のために素晴らしい決断をした名経営者になってください。私が必ず立て直してあなたの決断に報います。」

会社への貸付金に関して全額を債権放棄し、同時に全株式を1円で譲ってもらう交渉がまとまりました。

会社の全株式がビルオーナーに移譲された事により、再建のための設備投資に必要な数億円の真水資金がオーナーから約束されました。

経営再建への土台は固まりました。

私はホテルの社長兼総支配人に就任しました。

さあ、ここからが本番です。

90年の歴史があるも直近15年間連続赤字の老舗ホテル。

ワークハピネスの手によって見事に復活するのか?

次回に続く♪


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この記事を書いた人この記事を書いた人

吉村慎吾

公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。

現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。

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