人生100年時代の子育て
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人生100年時代の子育て

子供にとって親からの影響力は絶大ですから、親が子供に何を教えるかはとっても重要ですよね。

親は子供に良い人生を歩んでほしいから、良い人生を歩むための規範を教えたいと思います。

でも、だいたい親も未熟だから何を教えて良いかわかりません。

それで結局自分が子供の頃に親から言われていたことを当たり前のように子供に伝えているのが実情だと思います。

「嘘をついてはいけない」

「人に迷惑をかけてはいけない」

この二つの教えは日本人の人生規範の二台巨頭ですよね。

果たして、これを守ると良い人生を歩めるのか?

「嘘をついてはいけない」

これは古今東西色褪せない良い人生規範となりそうです。

では、

「人に迷惑をかけてはいけない」

はどうでしょう。

狭い国土、ご近所と力を合わせて農作業をしていた時代にはとても大切な人生の規範でした。

でも、グローバルに活躍してイノベーションを起こさなければならない現代においてはこの規範は邪魔にしかなりません。

イノベーションは社会に新たな価値をもたらすことですが、それは同時に古い価値を破壊すること。つまり一部の「人に迷惑をかける」ことを厭わない勇気が必要なのです。

時代や環境が変われば子供に教えるべき人生の規範も変わってしかるべきです。

ゆとり教育で台頭してきた

「自分らしくありなさい」

という規範はどうでしょう?

良い目標だとは思いますが、とても実践が難しそうです。

「良い学校を出て良い会社に入って・・・」といった人生の必勝パターンが崩壊した現在、よい大人たちも「自分らしさ」を求めてさまよっています。

そもそも人間には安定した「自分らしさ」などありません。

人間は箱で、学習や体験によって中身はどんどん入れ替わります。死ぬまで人間は変わっていくのです。

二刀流で大活躍している大谷翔平選手も野球選手から卒業したらあっという間に「自分らしさ」が消滅します。野球を辞めた後の人生の方が長いのです。

「自分らしくありなさい」という目標は少年少女が抱えるには重すぎます。

取るに足らない特徴や一瞬の好みを「自分らしさ」と主張して柔軟性を欠くという成長におけるマイナスの影響さえあります。

自分らしさなど求めずに、もっと気楽に「元気で生きているだけでよし」と言ってあげたらどうでしょう。

さて、これからの社会、どんな人生規範を持ったら良い人生になりそうか?

これから人間の仕事はどんどんAI&ロボットに奪われると言われています。

大震災、経済危機、パンデミック等、100年に一度と謳われる未曾有の災害が数年おきにやってくる世界。

こんな物騒な世界を「人生100年時代」で長期に渡って楽しまなければならないのが現在の子供達なのです。

私が子供に教えたいのは、

「良いことも悪いことも愛おしい貴重な体験」です。

私は、人間は体験するために生まれてきたのだと信じています。

だから、悪いことも貴重な体験。

喜怒哀楽の、喜と楽だけの人生ほど味気ないものはありません。

たとえて言うならばライオンで生まれてきたのに動物園の檻に飼われて毎日餌をもらっているようなものです。

嫌なことも少ないけど、喜びも少ない。

サバンナの草原で腹を空かしてシマウマをハンティングしていたら、苦しいこと、悲しいこと、悔しいことも多いでしょうが、だからより一層、楽しいこと、嬉しいことも増えます。

良いことが起きたら「幸せだね!」と喜ぶ。

悲しいことが起きたら「悲しいね。でも体験できてよかったね!」と喜ぶ。

スポーツに打ち込んでいる子供が、試合に勝ったら

「勝って嬉しいね!」と一緒に喜ぶ。

負けて涙を流していたら

「悔しいね。でも、泣けるほど悔しいって幸せだね」と、耳元で囁く。

友達と一緒に仲良く遊んだ日は、

「楽しかったね。幸せだね」と一緒に喜ぶ。

友達と喧嘩して泣いていたら、

「悲しいね。喧嘩するとこんな悲しい気分になるんだね。勉強になったね」と、耳元で囁く

親の方が先に死ぬのだから、子供に不幸なことが起きないように守り続けることはできません。

人生だから、良いことだけではなく、悪いことも必ず起きます。

良き友人や素敵なパートナーと出会うのは人生の喜びだけど、だから悲しい別れも必ずやってきます。

一生懸命に練習に打ち込んで、勝てばとても嬉しい。だから負ければ涙が出るほど悔しい。

喜怒哀楽は必ずセットなのです。

私がこの確信に至った貴重な体験があります。

約20年前、あるセミナーで余命数ヶ月の方の魂のプレゼンテーションを聞きました。

その人は、子供の頃、親から虐待を受け、言葉を失いました。上手に話せないので学生時代には友達から壮絶ないじめに遭い、苦しくて何度も自殺を試みました。

でもピアノという自己表現手段を得て人生が変わりました。

そしてやっと40歳にして夢だったCDデビューを果たすのです。

そして、その喜びの中、末期癌を宣告されます。

「私はもうすぐ死にます。死を前にすると子供の頃の壮絶ないじめにあったときの、あの悲し息持ち、悔しい気持ち、苦しい気持ち、、、、それがとても愛おしいのです」と言って彼女は私たちの前で泣き崩れました。

ひとしきり泣いた後、彼女は立ち上がり、私たちに向かって

「今、苦しみや悲しみの中にいる人もいるでしょう。でも味わってください。それが生きているあかしなんです。逃げないでください。とても愛おしいものなのです」

と、強い眼差して私たち一人一人に訴えたのです。

どんな悲しいことや悔しことが起こっても、死を目前にしたら全て愛おしい体験だと知った時、漠然とした将来への不安が消えました。

「良いことも悪いことも、全て愛おしい貴重な体験」

これが「人生100年時代」を生きていく子供たちに一番知ってもらいたいことです。


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この記事を書いた人この記事を書いた人

吉村慎吾

公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。

現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。

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