次世代リーダーの育成をうまく行うには?よくある課題や成功のポイントを紹介
コロナ禍や多種多様な価値観、働き方が生まれるなかで、多くの企業で次世代リーダーの育成が重要視されています。次世代リーダーといっても、具体的にどのような人材を育成すればいいのか分からない方もいるでしょう。
本記事では企業が育成すべき次世代リーダー像とはどのようなものなのか、詳しく解説します。次世代リーダーを育成する際の課題や、成功させるためのコツも合わせて紹介しているのでぜひ役立ててください。
現代で求められる「次世代リーダー」とは
次世代リーダーとは次の世代を牽引していく、経営幹部や経営者の候補を指します。少子高齢化を始め、多様性やコロナ禍などの時代の変化に適応できる経営を行うためには、変化に柔軟かつスピーディーに対応できる次世代リーダーの育成が欠かせません。
しかし従来の育成方法では、次世代リーダーを育成するのは難しいといわれています。企業が求める次世代リーダーを確実に育成するためには、客観的な評価手法を積極的に取り入れていくことが大切です。
ある調査報告書によると、回答した企業の過半数が「従来の人事評価」や「ラインによる推薦」を活用した選抜方法を実施していることが分かりました。結果的に、次世代リーダーに適した人材が不足しているなどの課題が浮き彫りになっています。
次世代リーダーは企業の未来を担っていく人材であるため、経営戦略や財務などの知識はもちろん、組織の課題の発見や解決するスキルを身につけるための教育が必要です。
次世代リーダーの育成は、以下3つの軸によって支えられています。
- 経営幹部になるための教育
- 人格主義的な観点によるコミュニケーションの取り方
- 課題形成と解決力を習得するための教育
単に表面的なスキルだけでなく、内面を磨いていくことが大切でしょう。
次世代リーダーの対象となる層・必要とされる能力
次世代リーダーの育成の対象となる層は、企業の考え方によって異なります。既存の管理職ではなく、若手社員の中から対象者を絞り込み、次世代リーダーを育成しようと考える企業も増えてきました。
次世代リーダーに求められる能力は、さまざまなものがあります。一般的に次世代リーダーの育成研修で習得できると考えられているのは、次のような能力が挙げられます。
- 意志決定力:企業で決めた目標を達成するための最適な手段を選び、決断する能力
- 実行力:策定した計画を具体的な行動に落とし込み、遂行する能力
- 管理能力:組織を円滑に運営するためのマネジメント能力
次世代リーダーは将来の経営者候補になるため、上記に挙げたもの以外の能力やスキルも求められます。
次世代リーダーの育成が難しい理由・課題とは
次の世代を引っ張っていく人材が不足している企業が多いといわれています。本章では、育成が難しい理由・課題を解説します。
育成環境が整っていない
次世代リーダーの育成が難しいとされている理由の一つとして、企業の育成環境が整備されていない、という問題があります。育成を成功に導くためには、従来の評価制度を見直し、必要に応じて改善する必要があるでしょう。
また候補者が経営に関する経験を積むために、今よりも責任が重い役職に抜擢するなど、前向きなチャレンジができる環境を整えていくことも大切です。
育成の優先順位が低くなりがち
次世代リーダーの育成が進まないことで悩む企業も多いといわれています。なぜなら近い将来の業績アップなどの短期的な施策を優先するため、人材育成の優先順位が低くなっているからです。
また現場の優秀な人材を失いたくないと考える管理職がいる場合、次世代リーダーの候補者から外されてしまう人材が出てしまうケースも少なくありません。
選定基準があいまい
育成がうまくいかない理由には、候補者を選定する基準が明確になっていないことも考えられます。
選定する人がどのような立場にいるかによって、次世代リーダーの候補者選びで重視すべき能力や基準が異なってきます。明確な選定基準が定まっておらず、共有できていない場合、選考の段階で行き詰ってしまうケースも多いです。
成果が目に見えない
次世代リーダーの育成は目に見える成果が得られにくいため、育成が進まない場合があります。
時間や手間をかけて人材を育成した場合、必ずしも次世代リーダーになる人材に育つかどうかは分かりません。数値化できる業績ばかりを追ってしまうと、将来、企業を背負える人材が育たなくなり、後継者不足のリスクも高まります。
次世代リーダーを育成する手順を解説
対象になる人材をどのように育成すればいいのか、以下で手順を紹介します。自社で候補者を育成する際に役立ててください。
計画のゴールを設定する
次世代リーダーを育成するためには、まずゴールを設定します。ゴールを設定する上で重要になるのは育成の必要性を明確にし、関係者が共通の意識を持つことです。ゴールの設定後は育成に携わる人に周知しておきましょう。
要件・基準を明確にする
自社でどのような次世代リーダー像を定めるのか、具体的な要件や選考基準を決めましょう。次世代リーダーに求める知識や能力などを明確にしておくことで、後述する候補者選びをスムーズに進めやすくなります。
企業がどのような人材が必要だと考えているのかによって、選定基準の条件は変わってきます。意思決定力や実行力、管理能力などのリーダーが備えておくべき能力を条件に設定するのが一般的です。他にも、人間力などの内面を重視する企業もあります。
候補者を選抜する
次に選定基準を満たす候補者を選びます。
育成する段階で人材を絞り込んでしまうと、潜在能力を発揮できていない優秀な人材を見落とす可能性が高まります。最初から候補者を限定するのではなく、段階ごとに人材を絞り込んでいく、ロングリスト・ショートリスト方式を導入するのも一つの方法です。
また次世代リーダーの候補者を選抜する際は他薦だけでなく、自薦による応募も可能にし、できるだけ多くの人材をリストに上げるようにしましょう。
個別に育成施策を実行する
次世代リーダーの育成段階では、個別の育成施策を実施します。個別の育成プログラムを企画して実行する理由は、候補者の強みや弱みなどに合わせて柔軟に育成を進めていくためです。
一般的に経営戦略やマネジメント、財務などの経営者に必要とされる知識を身につけるための座学を行います。またタフ・アサインメントと呼ばれる、候補者に実力以上の重責を担う役職を任せる手法を実行する企業も多いです。
モニタリングする
育成施策の実行後は、モニタリングを実施します。
育成計画に沿って実行するだけでは、次世代リーダーを育てることはできません。モニタリングを行い、育成前に設定したゴールにどのくらい近づいたのか、実力以上の役職を任されて、難しい課題をクリアできそうかなどの途中経過を確認します。そして適切なタイミングでフォローやサポートを行います。
経営層の管理職を候補者のメンターにするのも有効です。あわせて候補者の個別の課題に向けた指導を行える体制も整備しておきましょう。
結果を評価・改善する
次世代リーダーの育成は実施すれば終わりではなく、結果を評価し、適宜改善を行いましょう。
育成計画の精度を高めていくためにはPDCAサイクル(P:計画、D:実行、C:評価、A:改善)を回し、継続的なブラッシュアップを重ねていくことが大切です。
また候補者に対する成果のフィードバックを行い、個々のモチベーションの維持・向上につなげることも意識して進めます。
次世代リーダーの育成を成功させるコツ
次世代リーダーの育成を円滑に進め、成功に導くためにはコツがいります。本章では成功のコツを解説します。
最優先課題とする
次世代リーダーの育成を成功させるコツの一つは最優先課題を設定し、関係者に周知させることです。次世代リーダーの育成を企業全体の最優先課題にするためには人事部門だけでなく、経営層の理解を得て育成施策に巻き込むことが重要です。
経営層の理解を得るためには、普段から人事部門と経営層の間で活発なコミュニケーションが取れる関係を構築していきます。
また次世代リーダーを育成する必要性を説明し、経営層を納得させることも大切です。
候補者と交流する機会を設ける
次世代リーダーの育成を成功させるには、候補者が普段から経営者の視点や考え方に触れる機会が必要です。経営者の視点や考え方を身につけさせるためには、候補者が経営層と直接話し合う機会を積極的に設けるようにしましょう。
座学で経営知識を学ぶだけでは、実際に経営者の立場になったときに適切な対応が取れません。経営者との接点を増やし、候補者が日常の業務で「経営者ならどう考えるのか」などの視点を自然に身につけさせることが、成功につながるコツの一つです。
候補者に寄り添う
次世代リーダーの候補者に寄り添ったフォローやサポートを行うことも、育成の成功に繋がります。候補者に選ばれた人のなかには、今後の育成方法の内容などに関する不安や疑問、「選考から落とされるのではないか」などの悩みを抱える人も少なくありません。
候補者が安心して育成プログラムに参加できるように、人事部門や直属の上司、メンターによる個別面談などの機会を定期的に設けるようにしましょう。またサポートする側に対し、候補者へのフィードバックの方法などを指導します。
対象から外れた人のケアを怠らない
必ずしもすべての候補者が次世代リーダーになれるとは限りません。残念ながら最終的には、次世代リーダーの候補者から外されてしまう人も出てきます。
候補者のサポートも大切ですが、次世代リーダーの対象から外れてしまった人のフォローを行うことも重要です。例えば表彰制度を作って活躍の場を設ける、個別にフィードバックするなどの方法が有効です。
他社の事例を参考にする
他社の事例を見て、自社の次世代リーダー育成に役立てることも成功に導くのに有効な手段でしょう。ここでは実際にリーダー育成に対する課題を抱え、研修を通して解決に至った企業の紹介をします。
まずは個々のキャリア形成の機会を持てていない課題を抱えている企業の事例です。Modis株式会社では、会社の求める技術力を磨くことがキャリア形成である、という固定観念にとらわれており、個人ごとの強みやライフビジョンとの関連付けができていませんでした。研修を通して個人やチームごとに内省する時間を設けたところ、個々が目指したい姿に気付くことができ、今後の方向性を考えるきっかけを作ることに成功しました。
管理職向けキャリア研修の事例:人生を振り返り、これからの人生を描く
次に紹介するのは、人間力の高いマネージャー層の育成が課題の企業の事例です。日本特殊陶業株式会社では役員になる社員には人間力が必要だと考え、そのための社員育成をしたいと考えていました。そこで、次世代リーダーとなる社員を集め、個々人が無意識的に避けていた行動に向き合ったり、自分自身の大切にしてきた信念や価値観を理解したりといったカリキュラムの研修を行うことで、深い人間理解に基づいた人との関わりを持てる人材の育成に成功しました。
まとめ
次世代リーダーとは、企業の次の世代を優れたリーダーシップで引っ張っていく経営者候補や経営幹部を指します。次世代リーダーの育成が難しいとされる理由は、育成環境が整っていない、優先順位が低いなどが挙げられます。
育成を成功させるためには企業の最優先課題に設定し、関係者に周知させることが大切です。そして候補者と経営者の交流の機会を増やし、経営者の視点を身につけさせ、成長を促しましょう。
とはいえ、「自社の課題が何かを掘り下げられていない」「次世代リーダーの育成は急務だが、育成環境が整っていないなか自社だけで実施するのは難しい」という企業も少なくありません。そのようなお悩みを抱えている企業のご担当者様はぜひ一度ワークハピネスにご相談ください。弊社では、他社事例でご紹介したように、各企業の課題に合わせた最適な次世代リーダー育成に向けた研修カリキュラムをご提案します。会社規模、組織文化、受講者数など、さまざまな要件に対応可能です。
大学卒業後、外資系医療機器メーカーで営業に従事。
6年間で8人の上司のマネジメントを経験し、「マネジャー次第で組織は変わる」と確信し、キャリアチェンジを決意する。
2009年にワークハピネスに参画し、チェンジ・エージェントとなる。
医療メーカーや住宅メーカーをはじめ、主に大企業の案件を得意とする。また、新人から管理職まで幅広い研修に対応。
営業、営業企画、新人コンサルタント教育を担当後、マーケティング責任者となる。
一度ワークハピネスを退職したが、2021年から復帰し、当社初の出戻り社員となる。現在は、執行役員 マーケティング本部長。