ワークハピネスもついに来年で創業20周年です。
人事組織コンサルティングや企業研修とは縁もゆかりもない7名で創業したので、立ち上げ当初は全員分の給料を稼いでくるのに四苦八苦の毎日でした。
”会社四季報”の代表電話から何とか企業の人事部長につないでもらってアポを取り、お困りごとを聞き出して、翌週までにみんなで勉強してなんとか提案書を作成してお仕事をいただく。
・家電量販店の接客マニュアルと教育ビデオの作成
・卸売市場の営業改革
・フリーペーパーの立ち上げ支援等、
給料を稼ぎ出すために脈略なくどんな依頼にも「できます!」と宣言して引き受けました。
「できます!」と宣言し、ゼロから勉強して何とか納品する。
こんな”何でも屋”では売り上げが安定しません。
そして、この繰り返しは何より精神的にしんどいのです。
メンバーの不安を取り除くため、事務所の裏の中華料理屋で餃子とビールをご馳走し、前途洋洋な明るい未来を無理に語り続ける自分がいました。
「何とかして売上を安定させたい!」
そこで狙いをつけたのが管理職研修です。
みんなで勉強して独自のリーダーシップ研修を作り上げ、様々な企業に売りに行くのですが、座学とディスカッションでワークシートを埋めるというありきたりなプログラムなので競争力がありません。満足度も低調なのでリピートしてもらえないのです。
創業から1年経っても売り上げは安定せず、大赤字。このままだと大リストラ、もしくはチームを解散するしかありません。
そんなピンチの時、Mさんが”宝探しゲームで学ぶリーダーシップ研修”を受注してきたのです。
当時のワークハピネスにはそんなプログラムはありません。
社内は軽くパニックです。
「何でそんなありもしないものを売ってくるんだよ!」とMさんを批判する声も聞こえます。
Mさん曰く、既存のリーダーシップ研修を提案したところ、クライアントに「つまらない」と却下され、「それならどんなプログラムなら買っていただけるのですか?」と聞いたところ、「もっとおもしろいユニークなプログラム」が欲しいと。そこで以前、大手電機メーカーの人材開発部長から聞いた「海外には宝探しゲームでリーダーシップを学ぶプログラムがある」との話を思い出し、それをそもまま提案したら「是非やりたい!」との事で受注したと。
Mさんは、「できます!」と宣言してから勉強して知恵を絞って何とか作りあげて納品するという当時のワークハピスの行動規範を忠実に実行したわけです。
研修実施日は2ヶ月後。
何とか作りあげるしかありません。
するとその晩、調査が得意なTさんが
「見つけた!」と叫びました。
金塊を探すゲームで学ぶプログラムを発見したのです。
ゲームの舞台はゴールドラッシュに沸く米国西部、ネバダ州の砂漠。
金塊の埋蔵場所を示した地図を拾って冒険が始まります。
開発者は米国サウスカロライナに住むスコット・シマーマン博士。世界三十数カ国、マイクロソフトやGEといったそうそうたる企業1000社以上で実績がありました。
しかもゲームとファシリテーションマニュアルはネットで購入可能。
赤字企業には痛い出費でしたが、さっそく航空便で取り寄せ、徹夜で翻訳して社内でテスト開催したところ、そのインパクトは強烈でした。
2時間のゲームの中で起きる様々な人間のエゴ。リーダーシップが無い組織が陥る悲劇。リーダーシップが機能する組織が生み出す高いパフォーマンス。そんな良質な組織体験がたった2時間のゲームの中でワクワク、ハラハラ、ドキドキという感情とセットで見事に体験できるのです。座学では教えられないリアルな人間模様。今、目の前で起きたこと、自分が正に行ってしまったことを通して、保身やセクショナリズムが生み出す悲劇とその解決方法を学びます。
もちろん、大手飲食チェーンの管理職研修も大成功。担当者も大満足です。
「このプログラムは会社の救世主になる」と直感。
日本での独占販売権を手に入れたら、、、きっと売上げが安定する!
スコット・シマーマン博士は交渉に応じてくれるだろうか?
そもそも”博士”だから、頑固者かも?
会社は大赤字、解散間近?という大ピンチ。やるしかありません。
苦手な英語と格闘しながら、文面を練りに練ってスコット博士にメールしました。
「日本のGDPは世界第二位。あなたのビジネスを日本でも展開しませんか?そして日本で組むベストパートナーは私たち、ワークハピネスです。私たちにはあなたのビジネスを日本で大々的に展開するマーケティングプランがあります。今後に関してディスカッションしたいので近日中にご来日ください・・・」
そんな趣旨の英文メールを博士に送りました。
返事は…、なんとオッケー!
1ヶ月後にスコット・シマーマン博士は本当に日本にやってきました。
会社を大きく見せるため、社長の私の登場は遅い方が良いと思い、Aさんが
”Welcome Dr. Scott Simmerman”
と書いた看板を持って博士を車で成田まで出迎えに行きました。
スコット・シマーマン博士は予想を裏切り、笑顔がチャーミングで常にジョークを連発するとっても陽気なアメリカ人でした。
会社の会議室で、私たちのローカライズプランを説明しました。
博士の開発したゲームは、ゴールドラッシュの時代を背景にしたネバダ州の砂漠での冒険。私たちはタイトルを”ジパング”に変え、「マルコポーロが見た金塊が中尊寺金色堂の中から見つかった!埋蔵場所は恐山!」という物語を披露しました。博士は、大変興味を持ってくれました。
独占販売権を得るためにはとにかく博士と仲良くなってこちらを信頼してもらうしかありません。
信頼を得る鍵は一緒に過ごした時間の長さです。
私たちは博士との二泊三日の旅を用意していました。
「スコット。今から一緒に恐山に行こう!」
私たちは三陸ルートで恐山までの旅に出発したのです。
初めて実物を見た中尊寺金色堂は意外に小さくてがっかりしました。
スコットは感激して、ワイフのための朱塗りの箸のお土産を買いました。
盛岡では”わんこそば”を大量に食べ、八戸ではスコットのビリヤードの上手さに絶句しました。
初めて体験する”恐山”はその名に負けない不気味で恐ろしい雰囲気の霊場でした。
そして、この旅のクライマックス、”いたこ”の登場です。
「スコット、マリリンモンローでもJFKでも、誰でも好きな人に会えるよ。誰にする?」
「お父さんに会いたい。会って、最後に聞きたかったことを聞きたい。」
「”いたこ”さん、スコット博士のお父さん、お願いします!」
「私、英語が話せないので、無理です!」と渋る”いたこ”さんを、「私が完璧に通訳するから大丈夫!」となだめすかして何とかスコットのお父さんを降してもらいました。
私が必死で2人のやりとりを通訳していると、スコットの目から涙が溢れ出てきました。
「本当に聞きたかったことが聞けてスッキリした。」とスコット。
”いたこ”さん、恐るべし!です。
帰りの新幹線の中、スコットが「シンゴ、あなたを信頼してパートナーになる」と言ってくれました。
契約内容は破格でした。スコットの持つすべての教育トレーニングプログラムに関しての日本での超長期の独占使用販売権。さらに、今から彼が新たに開発する新プログラムに関しても全てにおいて日本ではワークハピネスが権利を持つという内容。
”ジパング”によってワークハピネスは解散の危機を脱しました。
そして、スコットが教えてくれた人と組織に関する豊富な知恵がワークハピネスの開発する全サービスのベースとなりました。
あれから18年、スコットとは今でも大変に良い関係が続いています。
70歳をすぎたスコットのビジネスパートナーに息子のジェフも加わり、”ジパング”も、ITに強いジェフの力によってオンライン版に生まれ変わりました。
あの時、Mさんが、ありもしない”宝探しゲームで学ぶリーダーシップ研修”を「できます!」と言って受注してこなかったら?
スコットとの出会いも無く、私も会社も全く違う姿になっていったことでしょう。
ピンチを救うのは直感。
たった一つの出会いが運命の分かれ道なのです。
昨年、ワークハピネスを100%オンラインカンパニーに変えた決断も直感。
きっと良い未来が待っています♪
株式会社ワークハピネスは人材育成研修・組織開発コンサルティングを通して
人と企業の「変わりたい」を支援し、変化に強い企業文化をつくる支援をしています。
新入社員〜管理職・役員研修のほか、全社向けチームビルディングまで
貴社の職場課題に合わせたカスタマイズ対応が可能です。
ウェブサイトにはこれまでに弊社が支援させていただいた研修および
組織コンサルティングの事例を掲載しております。ぜひご参考ください。
公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。
現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。