JAしまねは2015年3月に“県内一JA”として、島根県内の11のJAが統合しました。これは全国的にも珍しく、現在日本有数の組合員数と職員数を抱えています。現在、JAの役割である「農業振興」「地域振興」および「地域貢献」を積極的に展開しています。組合員はもとより県民そして次世代(若者・子供たち)と共にJAの存在意義を高め、大地の恵みと食文化の尊さを継承していくために「気づく力」「行動力」や「実現力」のある人材を必要としています。
- 課題
-
- 詰め込み型の教育体系
- 本店と各地域にバラバラに配属されるため同期の絆を持ちにくい
- 実施策
-
- 新人の仕事へのマインドセット(自分がJAで働く意義を明確にする)
- 新人のフォローアップによるスキルの習得(優先順位付け、報連相、コミュニケーション)
- 新人を受け入れるメンターのセットアップ(新人の特性に合わせたコミュニケーション)
- 効果
-
- 研修の受け入れ期間を3ヶ月→1ヶ月に短縮
- 横のつながりが生まれ、コミュニケーションが円滑になった
- 新人の離職率が低下
インタビューのご協力
総務教育部 次長 伊藤 誠 様
総務教育部 渡部 修也
Q.今まではどのように新人(新入職員)の教育を実施されていたのでしょうか?
新人の詰め込み型の教育に時間をかけていた
伊藤:私たちの仕事は、地域に根ざして農業を支えることはもちろん、金融、共済など幅広い事業を通して人々の暮らしを支えることです。「何かあればJAに」と頼っていただけるような存在でありたいと思っていますので、新人の教育も、主役は農家である組合員さんで、その組合員さんの為に何が出来るのかを主眼にした研修に取り組んでいました。
新人の教育ですが、以前は詰め込み型の教育体系でした。研修では仕事で必要とされる様々な座学や知識を講義していましたね。平成24年位からは教育に力を入れて、研修期間を3ヶ月に延ばしました。
Q.新人の教育体系を考える中で、その企画の背景は何でしょうか?
研修の質を高め、オールしまねとしての理念への”意識づけ”と組織の”一体感”を持たせる
伊藤:しばらくは研修を3ヶ月間で実施していたのですが、預かり期間のコストの問題や、「現場は人員不足なので早く配属させてほしい」という声から見直しを検討しました。ただ、単純に研修期間だけを短縮しても現場で戦力化しなければ反対に負担になるだけではないか?という懸念もありました。今までと遜色ないレベルの新人を短い期間で送り出すには、研修期間の質を上げることであり、その為には最初に強烈なマインドセットが必要だと考えました。
また、最初に一回研修しただけでは効果は薄れてしまうので、配属して初めて経験する問題の対処や円滑なコミュニケーションの取り方などを適切なタイミングで教えてあげたい。副次的には同期が集まる機会をガス抜きとしてほしいという思いもありました。
現在では研修期間を1ヶ月間にまで短縮しましたが、その一役をワークハピネスさんにお願いしています。
Q.ワークハピネスの研修を導入していただきましたが、弊社の研修を選んだ理由は何でしょうか?
知識やスキルではなく、入社の想いを深堀りしマインドセットする
伊藤:実は企画責任者だった者が、以前ワークハピネスさんの研修に参加したことがあり、そのときの効果を感じたからというのがきっかけです。研修もただ知識やスキルを教えるのではなく、「JAで何がしたいのか」「どんな貢献ができるのか」という入社の想いを深堀りするマインドセット研修だというのが最初の印象でした。
Q.新人の育成では、この1年でどのような取り組みをされましたか?
JAで働く意義を追求させながら、現場のフォローを設計していく
伊藤:最初の導入研修で“JAで働く意義”を徹底的に追求していきました。その後のフォローアップ研修では実際に働いて感じた報連相や優先順位付けの大切さと職場で使えるスキル付与、対人関係を円滑にするコミュニケーションスキルを学んでもらいました。また同時に新人だけではなく、配属先のメンターにも新人と同じ内容を伝え受け入れの心構えや、メンター同士が抱える疑問や悩みを共有できるように設計しました。
さらに新人とメンターとで交換日誌(育成計画書)を企画し、配属後の5月から3月まで9ヶ月を期日として活用しています。これは受け持つ新人に「このような人物に育って欲しい」という人物像を共有し、そのために学んで欲しいことをスケジュール化する。直接話せないことでも交換日誌を通じてコミュニケーションできるようにしました。
Q.弊社ワークハピネスの研修を選ばれて実際いかがでしたか?
新人の主体的な思考をトレーニングする
渡部:研修を初めて見て刺激を受けました。あそこまで新入職員が考えている深い部分まで引き出す。自分ひとりだと気づかなかったものを周りから気付かされる。周りが言ってあげることで、それが自分にとっての自信になったりすることがあります。やはり、現場に行ったとき、自分の考えの核があれば、困ったときも対応できると思います。
伊藤:徹底して突き詰めていくところがワークハピネスさんの研修らしさですね。自分の人生をあそこまで深く考え、知る時間や場所を体感する機会はなかなかないと思います。チームもお互いが深く話し合いができていました。自己開示することで、相手も本音で語ってくれることを現場でも活用してほしいと思います。
JAグループの取り組みである『※JA自己改革宣言』も同じで、その言葉の裏で何を大事にしているかまで理解できるようになるところまでいってほしいですね。
※JA自己改革宣言・・・JAグループでは、各JAで農業者の所得増大等に向けた取り組み(それを実現するための人財づくり等)を宣言しています。
Q.研修を実施してみて、受講生や周囲にどのような変化がありましたか?
新人と職場のメンバーが話しやすい関係づくりが整えられた
伊藤:最初にマインドセットしたことで、その後の学ぶ意識が高まったからだと思います。研修期間は1ヵ月間に短くなったので少し心配していましたが、地区本部からの声によると、今までの3ヶ月間の研修後に配属された新人と遜色がなかったと聞きました。大幅に短く出来たことで、現場にも負担なく、新人もスムーズに仕事に入ることができたのはとても良かったですね。また、フォローアップの研修をいれることで、再度新人が研修で再会し、同期の一体感が醸成したと思います。その研修の場では新人の配属した後の気持ちや声を聞くこともできますし、ささいなキーワードも見落とさずに、新人が思っていることを確認できたので意義があります。明らかに表情も違うと感じました。
渡部:アンケートでは「自分自身を深く考えることができ、仕事がやりやすくなった」とか、「相手の行動スタイルを知ることで相手の立場で考えるようになり、相手を理解できるようになった」という声がありました。またメンターからは「交換日誌がとても活用できた」「以前に比べて新人との話しやすい関係づくりが整えられた」という声がありましたね。
Q.今後、取り組んでいきたいことは何でしょうか?
伊藤:やはり、JAしまねの組織風土をさらに進化させていくために、他の階層でも人材育成を展開していきたいと思います。人事のミッションは『JA自己改革宣言』を実行できる人材を組織の中に増やしていくことですが、「前例踏襲ではない新しいことにチャレンジする」とか、「地域と一体となって取り組む」などを実現していきたいと思います。また、JAしまねでは研修の標準化など、魅力ある職場づくりもさらに進めていきたいと考えています。
さらに、現場に出て役に立つ業務スキルや知識を身につけてほしいです。各地区で教えられるものは各地区でやる。“思考の器”を広くするものが集合研修の醍醐味で、器を広げるのが人事の仕事だというメッセージを発信していきたいです。
Q.ワークハピネスに期待していることは何でしょうか?
渡部:何のためにJAしまねで働いているのか、そのために必要な業務知識をどう身につけさせるかという目的を持って、これからも研修で強化していただきたいと思います。
伊藤:会社の名前がワークハピネス。以前セミナーに参加したとき、ワークハピネスの想いについても聞かせていただきました。その社名のように、「仕事を楽しむイズム」をこれからも愚直に実践し続けてもらいたいと思っています。