会社のビジョンを達成するために、中堅社員を中心に「心からワクワクするビジョンの発見」をコンセプトに人材育成プログラムを企画しました。共通言語を持つまでやりきることが大事だと考え、組織風土をより良くしていくために3日間の管理職研修を実施しました。
研修後、人に対する興味関心の度合いが変わり、外から見ても、研修前と全く違う!っという印象をもてるような3日間でした。
- 課題
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- 部下の主体性を引き出すマネジメントスタイルへの転換
- ワクワクするビジョンを発見してほしい
- 参加者が共通言語を持つことによる、コミュニケーションの促進
- 実施策
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- 普段関わりが少ない同世代と答えが決まっていない課題と向き合い、意見交換する場を持つ
- 自分はどうしたいかを見つけるキッカケを作り、研修後に活動を続けるプロジェクトを立ち上げる
- 効果
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- 部下へのフォローの関わりが全く変わり、個々人の個性を理解しようとするようになった
- 自分を深く知ることで「本当にやりたいこと」がみつかる人が増えた
- 共通言語が生まれ、コミュニケーションが促進した
インタビューのご協力
執行役員 人事部長 井上淳 様
人事部 樋口麻里子 様
『やってみなはれ』の精神が社員を後押し、チャレンジできる組織風土を創る
<ポイント>
- 社員一人ひとりのやる気を引き出すマネジメントスタイルへ
- 自分を深く知ることで「本当にやりたいこと」が見つかる
- 「共通言語」がコミュニケーションを促進させる
2020年ビジョンに向けて
2020年の連結売上高2兆円というビジョンに向け、新たな価値創造を行っていくためには、“柔軟に新しいテーマに挑戦していく”組織風土をより強く作っていく必要があります。一人ひとりの社員が、“自分は、こういうことに挑戦したい!”という想いを明確にしていくことが重要であると考え、営業系管理職の約230名に「マネジメントスタイルの転換」、主要会社の中堅社員の約270名に「心からワクワクするビジョンの発見」をコンセプトに人材育成プログラムを企画しました。
安心感があるからチャレンジできる
サントリーグループには『やってみなはれ』という言葉があります。これは、サントリーの創業者である鳥井信治郎氏の口癖で、「やってみよう。やってみなければわからない。」という意味合いになります。ただし、『やってみなはれ』という言葉はどんなことも自由に挑戦させてもらえるという意味ではなく、そこには必ず「やりきってみる」という強い意志のこもった『みとくんなはれ』という言葉がセットで存在しています。
自分がやりたいと強く想うことがあるからこそ「やりきってみる」の『みとくんなはれ』につながる。『やってみなはれ』は自分が言うことではなく、言ってもらうことです。上司はその想いを理解しているからこそ挑戦させてくれ、仮に失敗しても終わりではなくて、それを次に活かしてもらうことを信じている。こうした上司の支援があるから安心してチャレンジできるのです。そして、こうしたサイクルがチャレンジできる風土を作っており、これこそ『サントリーグループの強み』だと思います。
立ち止まって考える余裕を作る
業績必達という結果(数字)にばかりフォーカスしすぎると、社員の挑戦心や創造性が失われ、やらされ感が蔓延していくことを危惧しています。今までのマネジメントスタイルは、自分自身も上司からそのように鍛えられたからこそ今の功績があると認識している経緯もあり、なかなか過去の成功体験を手放せないものです。
人事部が行っているヒアリングで感じたことですが、職場の中核を担う中堅世代ほど、日常の仕事に手一杯になり、新しいことを考える時間が作れなくなっていました。良いアイデアを持っていても取り組む余裕がなかったり、自分が行っている行動が『やってみなはれ精神』を体現していることに本人は気付いていなかったりします。
そこで、あえて業務から離れて立ち止まって考える時間が必要だと思い、集合研修の機会を設けました。普段関わりが少ない同世代の人と意見交換をしながら、自分たちが本当は何を望んでいるのかを改めて考えたり受け止めたりすることで、次のチャレンジにつながるのではと期待していました。
妥協はしない
研修「ワクワク冒険島」を企画するにあたり、今まで部課長クラスに2泊3日で研修を行ったことがなく、最初は決断しかねていました。「多数の管理職を3日間も業務から外してしまうのはToo Muchではないか」と。でも、「組織風土をより良くしていくためには、中途半端なことをやっても意味が無い、共通言語を持つまでやりきることが大事だ!」と腹を括りました。
後日談ですが、やはり3日間で間違ってなかった。2日間ではここまで変わらなかった確信があります。当初、現場との板挟みの中で妥協点を探っていましたが、妥協はいかんということを改めて部下に気付かされました。
本企画にあたっては、人事部内にも『やってみなはれ精神』が体現されていたと感じます。部下の熱く強い想いを信じて、上司がそれを後押しする。上司の期待や支援してくれる安心感があるから思い切ってチャレンジできる。このサイクルがあるから「やりきってみせる」気持ちがさらに強くなるのだと思います。
素の自分になれた
研修中は最初、どのような研修かと皆が疑心暗鬼でしたが、挨拶の試練から表情が変わり、真剣にのめり込んでいくのが分かりました。研修の教えにもありましたが、結果にフォーカスするのではなく、相手の考えや意図を理解するために歩み寄るといった関係性を重視するアプローチが良かったと思います。(相互の信頼があり安心安全が満たされれば、結果は後からついてくる)
アンケートでも「最後は気持ちがスッキリした。鎧を脱ぎ捨てた。素の自分になった。」という意見が多かったですね。自分の過去を振り返ったり、吐き出したり、本音で語り合えたからこそだと思います。
初の試みでしたが、支社長から部課長まで階層をシャッフルしてチーム分けしたことで「共通言語」を全員で持てたのも良かったですね。家族にも話したことのないことまで共有したという人もいました。お互いの信頼関係が深まることで、その後、今までほとんどなかった事業部や会社を越えた飲み会にも行くようになりました。
これが一つの成功体験になったので、職場での信頼関係構築に活かせると思います。結果は後からついてくると思いますが、間違いなく『人』に対する興味は変わったと思います。
その後の変化・・・
外から見ても研修を受けた人と研修後に配属された人との違いが目に見えて分かります。特に部下へのフォローの関わりが全く違いますね。管理しすぎると主体性が発揮されないので、引き出さないといけない。「やる気になるポイント、スイッチの入れ方」を学んだので、人それぞれ育ってきた環境や関心が違うことから、個々の特性を見ながら理解しようとしている。これこそ「ダイバーシティ」につながります。また、挑戦したらやりがいが見つかることも学んだので、これは「やってみなはれ」の精神に通じます。
中堅社員は、短い時間でしたので結果に現れるのはこれからだと思いますが、「自分たちの生い立ちを振り返ったり、何故サントリーに入社したのかを思い出すことができた」ので、“自分はどうしたい”を見つけるキッカケが作れたと思います。
また研修後の継続フォローとして、「未来のたねプロジェクト」という有志の活動を人事部主導で立ち上げ、ビジョン実現のための実践的取組みとして活動が続き、そのうち3つがプロジェクト化され、現在も進行しています。また、管理職同様に部門を超えたコミュニケーションにつながっているので、仕事以外のつながりや気付きを得ることができたので有効な機会だったと思います。
意識調査の上昇率が最高値
サントリーグループ全社で取り組んでいる「意識調査」で一番高い上昇率が出ました。支社を良くする会が立ち上がったり、隣の人をもっと良く知ろうとするなど、自発的な動きにつながった結果だと思います。また、日常の仕事で手一杯になり、考える時間を作れなかったことにも改革を施し、この3年くらいで労働時間は10%改善することができました。
別枠で動いていたTOO(となりの・おせっかい・おじさん)が機能したことも大きな要因でした。役職を勇退したシニアの方に、仕事の5割の時間を使って職場の関係作りに当ててもらいました。これら一連の流れは全てつながっていると思います。研修で学んだ管理職の意識も変わり、TOOの仕組みもでき、その結果若い人たちも自発的になりと、すごく良い方向に向かっているので、今後はどう継続するかですね。
人事部も一緒になって創り上げた
自分たちの想いから始めた「プログラム」なので、必ず意味があると信じていました。自分たちがまず研修を受講し、そこで得たことや感じたこと、職場で活かしてほしいことなどを、2回目以降の研修の冒頭で参加者に伝えました。
人事部もプログラムが軌道にのるまでは経過を見守りながら、フォローすることが重要だと感じています。参加者の反応を見ながら、研修内容やフォローなど、状況に即してプログラムを急に変えてもらうこともありましたが、度々ブラッシュアップに尽力していただき、感謝しております。
どうしてそこまで情熱を注げるか?純粋に「人」に対する興味関心が高いのかも知れません。何事にも本気になれるのは、基本的に全員が会社を好きなんでしょうね(笑)その背景には、皆もついてきてくれるという安心感もありますね。
最後に、『やってみなはれ』を、あまり重く考えすぎないのも大事だと思います。新しいことだけでなくても、日々の仕事の改善や、前例に捉われないことも含まれますので、何事にもチャレンジできる風土や仕組みを継続して創っていきたいと思います。
<編集後記>
サントリー食品インターナショナル様の担当をさせていただいて、私自身が日々味わっていることは、世の中に、これほどまでに社員一人ひとりの挑戦であったり、自分はこうしたいという気持ちを全力で応援する会社が存在するのだという感動体験です。一人ひとりの個性が生み出す化学反応とその可能性に投資を惜しまぬ企業姿勢には頭が下がる思いです。個が輝く組織づくりを本当に実現しようと、答えのない課題と向き合い、理想を追い続けるサントリー食品インターナショナル様の『やってみなはれ』×『みとくんなはれ』魂の継承に関われていることを誇りに思っております。【担当:奥村美絵】