先日は、「上手な褒め方」の話をしました。今日は、「上手な叱り方」がテーマです。叱るって難しいですよね。叱り方が下手だと反発されたりして逆効果。場合によっては「あの人嫌い!」となってその後のコミュニケーションが取れなくなってしまいます。褒める以上に難しいのが叱り方です。だったら、いっそ全く叱らないという方法もあるのですが、それでは本人のためになりません。上手に叱って、本人を正しい成長に導けたら、本人もチームもWin-Winです。叱るにあたっても、最新の心理学が教えるニューロロジカルモデルという人の意識構造が有用です。
上手な叱り方とは?
前回もお伝えしましたが、人にとって重要なものから順番で、意識構造は以下の5つのレベルに分かれます。1 存在・アイデンティティー2 信念・価値観3 能力4 行動5 環境 人を叱る場合も、この5つのレベルのどこかです。
実際に、やってみましょう。自分が叱られたと思って感じてみてください。
まずは環境レベルから。「靴に泥がついているよ。お客様に会う前に汚れを取っておこう。」「机の上が汚いね。探し物で時間を取られると不効率だから整理整頓しよう。」
どう感じました?自分の外側に対するフィードバックですよね。理由とセットで改善提案を示されたら割と素直に聞き入れられるのではないでしょうか。
次に、行動レベル「朝の挨拶がないのは良くないよ。お互いが気持ちよく仕事が始められるように朝は元気な挨拶をしよう。」「人に教えてもらっている時はしっかりメモを取ろう。時間を使ってくれている相手に失礼の無いようにね。」どうでしょう。これも割と素直に聞き入れられたのでは無いでしょうか。
次に、能力レベル。「酷いデザインセンスだな。もっとセンスを磨いた方がいいね」「あなたはプレゼンが下手だな。もっと練習した方がいいね。」どう感じましたか?センスや能力を否定されるとカチンときますよね。素直に努力しようとは思えないかもしれません。私だったら「はい、はい、どうせ私はデザインセンスがありませんよ。そもそも私にこんな仕事を任せたあんたが悪いんじゃないですか!」と人のせいにしたくなります。センスや能力を否定されたら、その分野は捨てて、他の分野で頑張ろうと思います。
さらに、信念・価値観レベル「あなたは仕事に向かうスタンスが良くない!」「あなたの効率主義一辺倒は顧客に対して失礼だ!」どうです?なんか、相手から生き方を否定されているように感じませんか?「この人は自分を全く理解していないな」「きっと自分みたいなタイプが嫌いなんだろうな」といったネガティブな感情を相手に抱く事になるのではないでしょうか。
最後に、存在・アイデンティティーレベル「お前はなんてダメなヤツなんだ!」「最低な人間だな!」あなたという存在の全否定です。自分が大きな失敗して後悔して反省しているのに、上司から追い討ちをかけるように存在の全否定をされたらもう立ち直れません。「自分は、ここに居るべきではないのでは?」「この仕事は自分に向いていない」と悩みが深まり、やがては心を病んだり、退職に逃げ込んだりするかも知れません。
もうお分かりだと思います。叱って良いのは、「環境」と「行動」だけなのです。「能力」「信念・価値観」「存在・アイデンティティー」は常に肯定しなければ相手との信頼関係が壊れてしまいます。「能力」や「信念・価値観」、「アイデンティー」を肯定しつつ、「環境」と「行動」の改善を促すのです。
「あなたは、仕事に対する情熱が素晴らしいのだから、朝も元気な挨拶でそれを表現するといいよ」価値観を肯定しつつ、行動の改善を促す。
遅刻が多い社員に対しては、「遅刻するなんて、あなたらしくないね。何か、事情がありそうだね。私で手伝えることはないかな?」アイデンティティーを認めつつ、改善支援を提案する。
決してやってはいけないのは、「なぜ遅刻したんだ?」と”Why”を問うことです。”Why”を問うことは、「能力」「信念・価値観」「存在・アイデンティティー」の否定に繋がります。遅刻やミスをしたい人はいないのです。「環境」が整っていないだけなのです。資格試験の勉強、親の介護疲れ、借金返済のための深夜アルバイト、不安を抱えて毎晩深酒等、様々な環境の事情で遅刻するだけなんです。
上手な叱り方とは、「能力」や「信念・価値観」、「アイデンティー」を肯定しつつ「環境」と「行動」の改善を促し支援することなのです。フィードバックを受けた方がポジティブな気持ちで改善に向かってこそ、叱る意味があります。
子育てにおいても大変有効です。是非、実践してみてください。
株式会社ワークハピネスは人材育成研修・組織開発コンサルティングを通して
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公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。
現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。