コラム「これからの時代の人と組織」第3回 人と組織の習癖②
前回は「人と組織がもつ習癖(無意識に持つ行動習慣)①」の組織が陥りやすい状態についてお伝えしました。今回はその続きをお伝えしたいと思います。今回は組織でメンバー同士の関係から生まれる習癖について考えたいと思います。
■参考記事:コラム「これからの時代の人と組織」第1回 働き方改革時代に何をすべきか
■参考記事:コラム「これからの時代の人と組織」第2回 人と組織の習癖①
主体性が欠如する組織の特徴
それでは前回から引き続き、2枚目の絵です。さて、この絵は組織のどんな状態を表しているのでしょう?少し1、2分考えてみてください。
この絵から、例えばこんなことが読み取れるのではないでしょうか?
- They,TheyというTシャツを着ていて、お互いを指差している
- 口は笑っているが、目が笑っていない
これらのことは何を意味しているのかを以下説明していきます。
実際に私たちが、組織の変革等のお仕事をするときに、なるべく多くの社員に組織のことについてお話を聞きます。そうすると、社員の方からは、
- 営業に話を聞くと「うちは工場がラインを臨機応変に変更してくれないからお客のニーズに答えられない」
- 工場(製造や開発)で話を聞くと「うちは営業が商品の本質的価値をお客さんに訴求できていないからすぐにカスタマイズを受けてしまう」
- 一般社員に話を聞くと「うちの部長(や経営陣)は考え方が古くて、新しいことができない」
- 管理職(や経営陣)に話を聞くと「うちの社員は”主体性”がなくて、言われたことしかやってくれない」
など、多くの不安が出てきます。これは絵のように、「お互いの口は笑っており、表面的には仕事がうまくいっているかのようで、実は目は笑っておらず、本音で対話できていない」、、、ということが現場ではよく起きているのです。
誰が悪いということではなくて、これが“人と組織の習癖”なんです。組織というものは放っておくとこういう状態になります。余談ですが、昨今のコロナ禍でも、社会において同じようなことが起きていないでしょうか。また組織においても起きていませんでしょうか?
簡単に言うと、組織は大きくなればなるほど、”主体性”がなくなるんです。自分と組織は別のものであり、うまく行かないのは組織や組織の中の誰かのせい、なんですね。何かを変えようと思ったとき、まは、新たな価値を生み出そうと思ったとき、”主体”がないところからは本質的な価値は何も生まれません。
どれだけ多くの組織の中で、この”主体”のないプロジェクトが横行しているでしょうか。常に”誰か”に何かをやらせようとしている取り組みが多く、実際の対外的なお客さんに繋がる価値になっていないのです。
私たちが、組織開発の取組みをお客さんとやるときは、課題や取り組みを”自分ごと”として、自分が当事者として創出したい価値を語る人を組織の中で探し、その人達をネットワーキングしてプロジェクトグループを創ります。私はそれを”変態ネットワーク”と呼びます(笑)
組織の慣習や相対価値軸ではなく、「絶対軸」「自分軸」で価値を語り表現できる人たちとやらないと、本質的な価値が生まれないからです。
組織の中で変化や新しい価値を生み出すために重要なことは、
1.(短期的に)主体のある人を探し、ネットワーキングさせ、プロジェクトを生み出す
2.(長期的に)主体性を育むための施策を増やす ことです。
現在の組織のほとんどは、主体性を”剥ぐ”ように動いています。評価制度一つとっても、組織や上司の忖度(そんたく)をしたほうが評価されます。そのため、今までのシステムに沿わないことができないし、自分軸で動くことが非常に難しい仕組みになっているのです。
これも今まで作り上げてきた組織の巨大システムと連動しているので、部分的にすぐ変えることが困難なのです。昨今の働き方改革では、主体性を育む制度としての「社内副業制度」を取り入れているのもその一つなのです。
企業の主体性を高める活動
業種業態にもよるので、副業の導入が難しい組織もたくさんあると思いますが、一部の企業では機能し始めています。具体期な例として、MIZUHOさんのERG(Employee Resource Group)活動などです。こちらは、副業制度ではないですが、グループ横断かつグローバルで社員が主体となって、プロジェクトを立ち上げ活動することができます。
旧来の大組織が、自律分散型マネジメントの比率をどう高めていけるかの課題を抱えています。そこで、最近の勢いのあるベンチャーでは、中央集権的組織システムではなく、主体性と自律を前提とした「自律分散型のプロジェクト型組織システム」になっているところがかなり増えているのです。
大きな流れとしては、やはり組織も中央集権的マネジメント(大量生産大量消費時代に向く)から、自律分散的マネジメント(多様な価値創造に向いている)へ向かう必要があるのだと思います。機能別や事業別の組織形態はまだ残りますが、主体性のある人達による自発的プロジェクト型の仕事の比率を高めていくことが重要です。
長くなりましたので、今回はここまで。次回もお楽しみに!
株式会社ワークハピネスは人材育成研修・組織開発コンサルティングを通して
人と企業の「変わりたい」を支援し、変化に強い企業文化をつくる支援をしています。
新入社員〜管理職・役員研修のほか、全社向けチームビルディングまで
貴社の職場課題に合わせたカスタマイズ対応が可能です。
ウェブサイトにはこれまでに弊社が支援させていただいた研修および
組織コンサルティングの事例を掲載しております。ぜひご参考ください。
大学卒業後、富士銀行(現みずほ)入行。2002年ワークハピネスの立ち上げに参画。
世界有数の外資系製薬会社の採用戦略コンサルティング、数十年利益の出ていなかった 老舗ホテルのターンアラウンド、民放キーテレビ局の人事制度改革など数多くを成功に導く。現在は、従来の組織マネジメントにパライムチェンジを起こす組織開発プロセスデザイン等を手掛ける一方、これからの人類文明の進化における社会システムの創造研究を行う。