新入社員の育成は”継続的なフォロー”が重要:今どきの新入社員育成で押さえておきたいこと
売り手市場といわれているなか、苦労して獲得した新入社員を早期に戦力化し、企業の成長に貢献してもらうために、新入社員の教育は極めて重要です。まずは、明確な人材育成目標に基づく綿密な教育体系を確立する必要があります。当記事では、新入社員教育の概要を解説し、成果を出すためのポイントを考えてみます。
少子高齢化が進む日本。現場の人手不足感も強く、就職戦線での売り手市場が続くなか、何とか獲得できた新入社員たちは企業にとってまさに「金の卵」です。定着してくれるよう大切にしたいところですが、同時に、早期に戦力化して収益への貢献を果たせるように、しっかりと育成したいものです。
新入社員教育の3つの主な目的とは?
まずは、新入社員教育の主な目的を確認しておきましょう。3つあります。
1.学生意識の払しょくとビジネスパーソンとしての意識づけ
学生までは社会から守られる立場でした。しかし、卒業して社会人になると、今度は社会を守る立場に変わります。社会に依存することをやめ、社会人として自立し、仕事を通じて社会を支え貢献しなければ、という意識を持つ必要があります。従って、甘えが許された学生意識を払しょくしなければなりませんし、ビジネスパーソンとして「働くこと」の意義や価値を理解し、また社会の一員としての義務や責任感を持つことの大切さをもしっかり意識づけする必要があります。
2.基本的なビジネスマナーや仕事の進め方の習得
あいさつの仕方、名刺の渡し方・受け取り方など、ビジネスマナーを習得することは、一人前の社会人として認められるための第一歩です。ビジネスマナーは単に形式的なものではなく、円滑な人間関係の形成・維持や、お客様、取引先に良い印象を持ってもらうために重要な役割を果たしていることを、新入社員には理解してもらわなければなりません。
また、報連相(ほうれんそう)、すなわち「報告」「連絡」「相談」といった上司・先輩社員等との望ましいコミュニケーションの基本や、仕事の段取りの仕方、スケジュールの立て方など、期限までに質の高い仕事を行うための効果的で効率的なノウハウを学んでもらうことは、早期の戦力化のために極めて重要な育成ポイントです。
3.自ら考えて動ける自律性、積極性の醸成
まだ右も左も分からない新入社員は、まずは前項で示したビジネスマナーや、仕事の進め方のノウハウ等を素直に吸収し、実践してもらわなければなりません。さらに、入社初期の研修期間が終わって、ひとまず各部署に配属されたら、上司・先輩社員の指示・命令を忠実に守り、早く仕事を覚える必要があります。
しかし、いつまでも受け身の態度では困ります。言われないと動けない「指示待ち社員」とならないためにも、自ら考え判断し、行動に移せる「自律性」を養ってもらいたいところです。また、現場の仕事の進め方には改善の余地がいくらでもあるものです。
まだ入って間もないからこそ、「こうしたらもっと効率的にやれるのでは?」と気づくことができるわけですから、積極的に先輩、上司に提案するような気概を持ってもらうための意識づけも重要です。自律性があり、積極的に関わる社員こそが、組織を成長させるからです。
新入社員教育の種類と押さえておくべきポイント
次に、新入社員教育の具体的な方法について整理してみましょう。 まず、「時期」によって分類すると以下の3つに分けられます。
1.入社前研修
内定後、入社式までに行う研修です。「内定者研修」と呼ぶこともあります。会社が属している業界についての基本的な知識や、ビジネスマナー、早めに取得してほしい各種資格のための学習を奨励することが多いようです。後述する「研修スタイル」としては、集合研修や通信教育(e-ラーニング)が用いられます。
2.導入研修
導入研修は、入社式後、各部署に配属されるまでの間に行われる、いわゆる「新入社員研修」です。期間は会社によって異なりますが、数日から数週間、数カ月に及ぶこともあります。導入研修において、ビジネスマナーや仕事の進め方のノウハウから、業務に必要な知識やスキルを集中して学ばせます。
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3.フォローアップ研修
フォローアップ研修は、新入社員が各部署に配属されてからおおむね半年後に行われるものです。現場で無我夢中で働いてきた新入社員に、いったん立ち止まって過去の自分の仕事を振り返る機会を与え、今後、より良い仕事ができるようになるために、自分の意識・行動をどのように軌道修正すべきかを自ら考え、具体的な目標に落とし込みます。自律性や積極性を養うよい機会です。
次に、「研修スタイル」別に見てみましょう。大きくは「Off JT」すなわち職場を離れたところでの教育と、「OJT」、すなわち各部署での仕事をしながらの教育に分かれます。さらに、OJTに近いものとして、このところ導入する企業が増えている新しい制度、「メンター制度」があります。
1.Off JT(Off the Job Training)
Off JTとしては、会議室や施設などに新入社員を集めて行う「集合研修」と、社員一人ひとりが個別に空き時間や自宅などで学ぶ「通信教育(e-ラーニング)」があります。どちらの研修スタイルを行うかは、教育内容次第であり、例えばグループで議論するようなワークショップの場合、集合研修が適しているでしょう。
2.OJT(On the Job Training)
OJTは、上司や先輩社員とともに客先訪問に同行する、議事録を作成してそれを上司に添削してもらうといった、現場業務を通じて仕事のやり方を身に付けてもらうものです。指導する上司・先輩社員も仕事をしながらの教育となりますので、おざなりにならないよう、指導する側が明確な「教育目標」や「指導方法」を事前に計画しておくことが必要です。
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3.メンター制度
メンターとは「助言者」という意味です。新入社員が各部署に配属されたあと、別部署の勤務歴3−5年ほどの先輩社員が「メンター」となり、新入社員が仕事をするなかでの悩みや課題を聞いて助言を与えます。直接的に命令関係のない別部署の先輩社員が担当することがポイントで、新入社員は率直な思いを伝えることができることから、仕事上の壁を突破し成長を果たすきっかけになったり、退職に至るかもしれない問題の芽を早めに摘み取ったりする効果が期待できます。
さとり世代の新人教育における留意点
さて、新卒採用を続けてきた大手企業の多くは、新入社員の育成方法は基本的に確立していることでしょう。しかし、近年の若年層は「さとり世代」と呼ばれ、以前の新入社員と比較して仕事に対する意識や意欲が大きく異なっているといわれています。従って、新入社員対象の教育内容の見直し、改善が必要となってきています。
さとり世代の最大の特徴は、成熟した社会に生まれ、インターネットを通じて豊富な情報が入手できる環境で育つなかで、将来について現実的な見方をするようになっていることがあります。ある種の「悟り」を開いたかのように、無駄な努力や衝突を避け、過度の夢や期待を持とうとしません。従って、仕事にがむしゃらに取り組むような一途さを持つ若者は少なくなり、上昇志向も弱いのです。人と比べることを好まず、自分は自分の生き方をするという気持ちが強いといえます。
このような意識を持つ「さとり世代」の新入社員の育成におけるポイントはズバリ、一人ひとりを「個」として扱い、指導・育成方法を柔軟に変えることです。モチベーションが高くなるポイントが一人ひとり異なることを理解し、きめ細かなコミュニケーションを心掛けなければなりません。従って、入社時の研修以上に、フォローアップ研修や、メンター制度による継続的な育成が求められます。
一方で、組織の一員となったからには、会社のビジョン、ミッション、価値観を共有すること、また同僚と協力して仕事に取り組むことは必須であり、一人ひとりの個性は相互に尊重しつつも、「チームワーク」を高めるための教育は不可欠です。この点において、グループで取り組むワークショップ形式の集合研修は依然として重要だと考えられます。
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大学卒業後、外資系医療機器メーカーで営業に従事。
6年間で8人の上司のマネジメントを経験し、「マネジャー次第で組織は変わる」と確信し、キャリアチェンジを決意する。
2009年にワークハピネスに参画し、チェンジ・エージェントとなる。
医療メーカーや住宅メーカーをはじめ、主に大企業の案件を得意とする。また、新人から管理職まで幅広い研修に対応。
営業、営業企画、新人コンサルタント教育を担当後、マーケティング責任者となる。
一度ワークハピネスを退職したが、2021年から復帰し、当社初の出戻り社員となる。現在は、執行役員 マーケティング本部長。