先日「これからは中間管理職が消える。」とブログで書いたところ、多くの方から「それは難しいのでは?」という反響をいただきました。
確かに、軍隊や鉄道業のような官僚機構を必要とする組織ではそうかもしれません。しかし、withコロナ&VUCAの変化が激しい環境下、柔軟で効率的なフラット組織が、サバイバルには有効と思われます。
流動性の高い「プロジェクト型組織」へ
私の体験談です。約30年前、私の最初の職は、外資系の公認会計士事務所だったのですが、100名の人員に対して、5人のパートナー(共同経営者)がいて、あとはフラットでした。
柔軟、迅速、効率的で、人が早く育ち、常にエキサイティングな環境でした。監査業務は、in-charge(主査)と呼ばれる現場責任者をリーダーとして、その都度必要なメンバーが選抜されるプロジェクト型チームで行われていました。
毎月、パートナーに指名された主査達によるメンバーのドラフト会議が開催され、優秀なメンバーを取り合いながら、Assignment Sheet(人材配置表)が埋まっていきます。Assignment Sheetが、事務所の掲示板で発表されるとスタッフは悲喜こもごもです。
自分の行きたかった監査現場にアサインされてガッツポーズをする者、どこにもアサインされず、屈辱のAvailable(利用可能=社内失業)が表示されてガッカリする者。
社内人材マーケットで、誰が必要とされる優秀な人材で、誰が不要な人材なのか?毎月、赤裸々に掲示されます。「実力主義」という合理性を感じると同時に、キャリアの自己責任原則が全社員の気持ちを引き締めます。
監査は、毎年繰り返されるのですが、メンバーは常に流動的でした。毎週出勤現場と指示命令を受けるリーダーが変わるのです。
毎回リーダーが変わって”人事評価”はどうするのか?
評価はプロジェクトが終わる度に、”パフォーマンスレポート”という成績表がリーダーから事務所に提出され、それを半年毎に集計して昇給・昇格が決まります。流動性の高いプロジェクト型組織のメリットとして以下が挙げられます。
【経営視点】
・人という経営資源を柔軟にプロジェクトに配分でき、資源の偏りが即座に解消される
・様々なプロジェクトに関わることで、優れたナレッジが素早く全体に共有される
・緊急で大型の仕事にも対応できる
・個々で常に社内人材マーケットで競いあっているので、切磋琢磨し人材の成長が早い
【従業員視点】
・多用な人々と一緒に仕事をするのでマンネリせず刺激を受ける
・上司との人間関係に悩まなくて良い
一方でデメリットは、経営視点ではほとんどありません。人材という経営資源が、社内マーケットという市場で、即時に最適配分されるシステムは経済学的に完璧です。新市場開拓やR&Dといった長期ミッションに関しても、プロジェクトチームで対応していたので、いわゆる「市場の失敗」も防げていました。
従業員視点でのデメリットは、「一貫して自分の成長を見ていてくれる上司がいないので不安」というとこでしょうか?これも、個々人の自立を促すという意味ではプラス。最初の数年は愚痴をこぼす同僚もいましたが、やがて受け入れました。
透明な市場原理とキャリアの自己責任原則で、一貫性が通っていることが納得性を高まるポイントです。withコロナ、テレワーク、大不況到来、理想の柔軟で効率的な組織を既成概念抜きで考えてみる良い機会かもしれません。
株式会社ワークハピネスは人材育成研修・組織開発コンサルティングを通して
人と企業の「変わりたい」を支援し、変化に強い企業文化をつくる支援をしています。
新入社員〜管理職・役員研修のほか、全社向けチームビルディングまで
貴社の職場課題に合わせたカスタマイズ対応が可能です。
ウェブサイトにはこれまでに弊社が支援させていただいた研修および
組織コンサルティングの事例を掲載しております。ぜひご参考ください。
公認会計士として世界4大監査法人の一つであるプライスウォーターハウスクーパースにて世界初の日米同時株式上場を手がける。創業した株式会社エスプール(現東証1部上場)は現在時価総額約600億円の企業に成長。老舗ホテルのV字再生、水耕栽培農園を活用した障がい者雇用支援サービスなど、数々の常識を覆すイノベーションを実践してきた。
現在経営するワークハピネスは、3年前からフルフレックス、リモートワークをはじめとした数々の新しい働き方や制度を実証。その経験を生かし、大企業の新規事業創出や事業変革、働き方改革で多くの実績を持つ。2020年4月に自社のオフィスを捨て、管理職を撤廃。フルリモート、フルフレックスに加え、フルフラットな組織で新しい経営のあり方や働き方を自社でも模索し、実践を繰り返している。