組織改革とは、企業を取り巻く外部環境の変化に適応し、持続的成長を果たすために、「組織」の構造や役割、機能、仕組み、運用方法を抜本的に変えることです。目指すのは、組織のあるべき姿(理想)の実現であり、改革の対象は、理想と現状のギャップを生み出している組織内のひずみです。
今回は組織改革を円滑に進める枠組みやポイントについて解説します。
なぜ組織改革が必要となるのか?
企業は大きくなるにつれ、さまざまな制度やルールが確立されていき、一定の体制や仕組みのなかで業務を回せるようになることを目指します。なぜなら、そうすることで効率的に業務が遂行でき、生産性が向上し、利益率を改善できるからです。あるいは、利益を確保しつつ、競合他社との価格競争に打ち勝つことが可能になります。
ところが、企業を取り巻く外部環境は刻一刻と変化しています。現時点での外部環境の下ではうまく回っていた仕組みが一年後にはひずみが生じ、非効率なものになることは、環境変化が激しい現代では珍しいことではありません。
従って、企業は、生産性向上のために組織の体制確立や仕組み化を志向する一方、変化し続ける外部環境に適応し、持続的な成長を果たすために、しばしば組織の体制や仕組みを見直し、適切に変更しなければならないのです。しかしながら、いったん確立された体制や仕組みを変えるのは容易なことではありません。
なぜなら、いったん確立された組織や仕組みのなかで業務を遂行することに慣れた社員にとって、現状を維持したいという意識の方が強く、やり方を変えることには強い抵抗感を持ってしまうからです。外部環境変化のスピードについていけず、旧態依然たるやり方を続けて時代遅れになってしまう企業が発生するのはこのためです。
そして、時代遅れとなった企業はじり貧となり、最悪は倒産、あるいは廃業、もしくは他社に売却といった末路を迎えることになります。ですから、企業はしばしば、今の外部環境に応じて、大きく体制や仕組みを変える、すなわち「組織改革」に取り組む必要があるというわけです。
組織改革を考えるうえでの7つのS
それでは、組織改革にどのように取り組むべきなのでしょうか。まずは、組織改革の対象となる企業の構成要素である7つのSをご紹介します。これは、1980年代前半にトム・ピーターズとロバート・ウォーターマンが主導し、マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した枠組みです。
7つのSは、大きくは以下の通り2つに分けられます。「ハードのS」と「ソフトのS」です。
ハードのS
- Strategy 戦略:重点的な投資の方向性、ヒト・モノ・カネの使い方
- Structure 組織:戦略遂行に最適な組織体制、機能
- System システム:人・組織を動かす仕組み、人事・会計・会議・教育などの制度、ルールの整備
ソフトのS
- Shared Value 価値観:事業のミッション、大切にすべき価値観
- Skill スキル:専門的な能力、業務遂行に必要な知識・能力
- Staff 人材:求める人材像、アイデンティティや意識
- Style スタイル:社員の行動や思考習慣を規定する組織の風土、企業文化
組織改革に当たっては、これら7つのどの要素の改革に取り組むことが望ましいのかを検討しなければなりません。もちろん、各要素は相互に強い関連性があるため、例えば、組織体制を変更すると、それに伴ってシステム、すなわち仕組みを変えることが必要になってくる場合があります。
この組織改革において企業トップがしばしば犯す過ちは、ハードのS、すなわち戦略や組織、システムばかりを頻繁に変更してしまうことです。ハードのSは、ハードという言葉が示すように、表面的、形式的な面が強く、簡単に変更が可能です。
例えば、売り上げ重視の戦略から利益重視の戦略に変更する、ピラミッド型の組織からフラット型の組織に作り替える、といったことはトップダウンで決断すれば、一夜にして可能です。このため、業績が低迷するといったような行き詰まりを感じた経営者は安易にハードのSを変えてしまうのです。
しかし、ハードのSをいじるだけではうまくいかないのが現実。ハードのSの下で働く社員たちの意識や行動、能力が変わらなければ真の改革は実現しません。これら、すぐには変わりにくい要素が、ソフトのSとして定義される価値観やスキル、人材、スタイルなのです。
前述したように、人は現状を維持したい(その方が楽だから)という意識があるからこそ、なかなか変えるのが難しいわけですが、ソフトのSに手を着けなければ組織改革は成功しません。組織とは、結局のところ多様な人の集まりであり、全社員の意識・行動・スキルが好ましい方向に変化していかなければ、外部環境変化に適応できないのです。ですから、組織改革の要点としては、ハードのS以上に、ソフトのSの改革に重点を置くことが求められます。
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組織改革の8つのステップ
次に、組織改革の進め方について、リーダーシップ論の世界的権威、ジョン・コッター氏が説く組織改革のフレームワークを紹介します。以下の通り8つのステップで進めていくことをコッター氏は提唱しています。
ジョン・コッターの8段階組織変革プロセス
STEP1「社員に危機意識を持たせる」
STEP2「強力な改革推進チームをつくる」
STEP3「ビジョンを策定する」
STEP4「ビジョンを組織全体に周知する」
STEP5「社員が行動しやすい環境をつくる」
STEP6「短期的な成果を出す」
STEP7「成果を生かしてさらなる改革に取り組む」
STEP8「新しい行動様式を企業文化に根付かせる」
8つのステップは、「社員に危機意識を持たせる」が出発点となっています。これは、「現状のままでは会社の将来が危うい」という気持ちを高めることにより、変わりたくないという心理的抵抗を弱め、変わるための行動を起こすことが狙いです。
ただし、危機感をあおり過ぎると、社員のなかには不安や恐怖といった負の感情が先立ち、むしろ殻に閉じこもって改革に抵抗してしまう人も出てくるリスクがあります。
名経営者として世界的に著名なGEの元社長、ジャック・ウェルチ氏は、GEの組織改革に乗り出すに当たり、会社の危機を訴えつつ、同時にこの危機は大きなチャンスだと鼓舞し、危機を改革するエネルギーに変えることに成功しました。すなわち、危機を乗り越えた先にある明るい未来を示すことも大事だといえます。
また、STEP6の「短期的な成果を出す」ことは、改革を持続するために重要なポイントですが、逆に初期の小さな成功に満足してしまい、抜本的な改革を成し遂げることができず、結局は失敗に終わるケースも多いようです。短期的な成功は、抜本的な改革を成し遂げるための弾みをつけることが目的であることを忘れてはいけません。
さて、たとえ8つのステップを忠実に遂行したとしても、常に一定の抵抗勢力は存在し、さまざまに論点をすり替えて改革に非協力的な態度を維持しようとしてくるものです。こうした抵抗勢力を鎮圧することはひと筋縄ではいきませんが、大事なことは論理的な説得だけでなく、人々の「感情」に訴え、納得感、一体感を与えて、本気の協力を引き出すための努力を惜しまないことです。
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